う というコスト意識を持った提案が出てくることはほとんどないことに不満と不安を抱いていたのである しかし これまでは業績も右肩上がりであったこともあり あえて社員のやる気に水を差すようなやり方はすまいと 目をつぶってきた しかし 今回の話は別だ このグローバル化が実現しなければ A 社は将来的に衰退

Similar documents
3

図表 1 中期経営計画と要員計画 年における 対 11 年比 売り上げ ( 百万円 ) 79,200 91, , , , 海外売上高 15,849 26,163 39,900 52,272

目次 国内企業の事例から学ぶこと これからの課題 GRC Technology の活用 なぜデロイトがクライアントから選ばれているのか 本資料の意見に関する部分は私見であり 所属する法人の公式見解ではありません 2

統合型リゾート (IR:Integrated Resort) ~ ゲーミング ( カジノ ) 市場及び主要 IR 施設の概要 ~ 2014 年 11 月 IR ビジネス リサーチグループリーダー 有限責任監査法人トーマツパートナー 仁木一彦 当該資料中 意見に亘る部分は著者の私見であり 著者の属する

税務情報 固定資産の加速減価償却の範囲が拡大 ~ 財税 [2014]75 号の施行 ~ 2014 年 10 月 20 日付けで 固定資産の加速減価償却に係る企業所得税政策の完備に関する通知 ( 財税 [2014]75 号 以下 75 号通知 と表記 ) が公布され 2014 年 1 月 1 日から遡

日本におけるジェネリック医薬品 ~ 今後の展望と対策

統合型リゾート (IR:Integrated Resort) ~ マネーロンダリング防止の取組み ~ 2014 年 12 月 IR ビジネス リサーチグループリーダー 有限責任監査法人トーマツパートナー 仁木一彦 当該資料中 意見に亘る部分は著者の私見であり 著者の属する法人等のものではありません

図 起床してから携帯電話を確認するまでの時間 日本では 起床後直ちに携帯電話を確認するユーザーの比率が であり 他の先進国より高い Q. 起床してから携帯電話 * を確認するまでの時間は? 0 8 わからない 3 時間以上 6 2~3 時間以内 時間以内 30 分以内 5 分以内 5 分以内 34%

Japan Tax Newsletter

2004年7月

[ 図表 1]S 社の正社員構成イメージ なるほど 当社では国内旅行市場が急成長していたバブル期に大量採用を行っているが そのとき採用した人材が人員数のピークになっているということか この要員構成に 年齢給などの安定的な昇給という人事制度 運用が掛け合わさることで 大幅な人件費単価の上昇が過去から現

目次 サマリ 3 アンケート集計結果 5 回答者属性 12

能と思われます ミーティングの参加メンバーから まあ そうだな という空気が流れてからしばらくの沈黙の後 人事部長は一つの質問を口にした 新卒採用をストップして 将来的なサービス水準を維持できるのだろうか? 採用をストップすることのリスクとは 人事部長は言葉を続けた 昔の話になるが バブル崩壊の際も

Global Tax Update

タイの医療市場の現状と将来性~医薬品業界の市場動向と M&A・参入事例~

ブロックチェーン技術によるプラットフォームの実現 デロイトトーマツコンサルティング合同会社 2016 年 4 月 28 日 For information, contact Deloitte Tohmatsu Consulting LLC.

コーポレート機能の仕組みが企業変革の障壁に グローバルでの競争激化とデジタル化の進展により 日本企業を取り巻く事業環境は急速に変化しています 従来の市場の枠組みが壊れ他業種プレイヤーがテクノロジーを武器に新たに市場参入してくる中 戦い方を大きく変えなければなりません また顧客のニーズや価値観の変化に

要員 人件費を最適化し 人的生産性を最大化せよ 要員を捻出し もうかる支店に人材を集中投資せよ!( 前編 ) 高山俊たかやましゅんデロイトトーマツコンサルティング ( 株 ) シニアコンサルタント 各支店の要員 人件費を最適化せよ! 今回の主役は 旅行業 A 社である A 社は東日本を中心に約 20

支店タイプ別の大まかな傾向は分かったが 平均値だけだとやはり情報が足りないな 例えば フラッグシップ でも人件費効率が小さい支店や 郊外 ( 駅周辺 ) でも規模が大きな支店もあるだろう そういった状況もうまく 見える化 できないかな そういえば 箱ひげグラフ という見せ方を聞いたことがあります ち

営業秘密とオープン&クローズ戦略

投資後の事業運営を見据えた投資案件の分析ポイントと手法

投資情報 中国への短期出張におけるビザの取扱い情報 2015 年 1 月 1 日より中国において 外国人が入国して短期業務を遂行する際の関連手続き手順 ( 試行 ) ( 以下 78 号通達 と表記 ) が施行されたことに伴い 中国への短期出張者に関するビザの取扱いが一部変更されています 1 78 号

目次 調査の背景と調査の意義 3 システム会社依存度の次元分解 ~ 因子分析 11 本調査の概要 4 推定システム会社依存度の 3 因子と経験年数からの分析 12 経験年数との相関分析 5 各因子の 推定システム会社依存度への影響を解析 13 経験年数との相関分析結果の解釈 6 システム会社の手配す

サービスパンフレットについて

[ 図表 2] 過去 ~ 現状分析 で可視化する一般的な指標 財務数値 人件費効率 売上高 営業利益 人件費 付加価値 粗利益 など 売上高人件費率 総費用人件費率 単位人件費当たり粗利益 1 人当たり人件費 など 1 人当たり生産性 1 人当たり売上高 1 人当たり営業利益 1 人当たり粗利益 な

目次 グループ ガバナンス強化のための PMI および地域モニタリングの必要性 3 経理機能強化のための PMI および地域モニタリングに関するソリューション事例 8 当社サービスのご紹介 15

第三者割当増資について

Manage As One グローバル経営時代における海外異動者の最適税務マネジメント

目次 調査趣旨 概要等 3 適用初年度の開示事例分析 6 補足調査 コーポレートガバナンスガイドラインの開示状況 18 ( 参考資料 ) コーポレートガバナンス コードの概要 24 本資料は当法人が公表情報を基に独自の調査に基づき作成しております その正確性 完全性を保証するものではございませんので

健康経営とは 2 健康経営への取り組み方

基礎からのM&A 講座 第3 回 M&A の実行プロセス概要

M&A会計の解説 第11回 事業分離に関する税効果会計

Japan Tax Newsletter

Slide 1

国外転出時課税制度に関する改正「所得税基本通達」の解説

中国医薬品業界におけるM&A のポイント

Tax Analysis

Industry Eye 第 21 回 ミドルマーケット

基礎からのM&A 講座 第4 回 M&A プロセス(1)M&A 戦略の策定

基礎からのM&A 講座 第1 回 M&A(Merger & Acquisiton)のトレンド

Tax Analysis

Slide 1

社会・環境課題マッピング①(食品/飲料品/タバコ業界)

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

資料 5 平成 30 年度 中小企業 小規模事業者のデータ活用及び情報発信サイトのあり方に関する調査研究 説明資料 デロイトトーマツコンサルティング合同会社

基礎からのM&A 講座 第8 回

IFRS 第 11 号および IFRS 第 12 号は 不動産業界におけるジョイント アレンジメントの会計処理について重要な影響を及ぼす可能性がある ジョイント アレンジメントは 例えば リスクの共有 資金調達 付加的な専門的ノウハウを取り入れる手段といった様々な理由により 不動産業界では一般的であ

預金を確保しつつ 資金調達手段も確保する 収益性を示す指標として 営業利益率を採用し 営業利益率の目安となる数値を公表する 株主の皆様への還元については 持続的な成長による配当可能利益の増加により株主還元を増大することを基本とする 具体的な株主還元方針は 持続的な成長と企業価値向上を実現するための投

Japan Tax Newsletter

2012年3月期第3四半期決算および2012年3月期業績見通し

IR 活動の実施状況 IR 活動を実施している企業は 96.6% 全回答企業 1,029 社のうち IR 活動を 実施している と回答した企業は 994 社 ( 全体の 96.6%) であり 4 年連続で実施比率は 95% を超えた IR 活動の体制 IR 専任者がいる企業は約 76% 専任者数は平

サービスパンフレットについて

CFO 本号の表紙チャールズ ダーウィン ( Charles Darwin) 1809 年生まれ 英国の生物学者 地質学者 英国海軍の測量船ビーグル号に乗船し 南米各地やガラパゴス諸島で動植物の多様性に触れる 当時は 神の思し召し によって万物が創造されたと

CHRO/CXO向け人事変革ラボのご提案

品質マニュアル(サンプル)|株式会社ハピネックス

Microsoft PowerPoint - 提案書  (国際税務)

<4D F736F F F696E74202D D8D F4390B3817A AAE97B95F F834F838D815B836F838B8BA C98B8182DF82E782EA82E C83588AEE94D582CC B

Microsoft PowerPoint - Deloitte_グローバルにおける日本のFinTech_ _v1.0_preiew用.pptx

税理士法人トーマツ Newsletter

「Industry Eye」第 12 回 テレコム(通信)業界

匯発 [2014]36 号の詳細は以下の通りです (1) 外貨資本金に係る人民元転の原則外貨資本金の自由元転制度 2 は上海自由貿易試験区において他地域に先駆けて実施されました 匯発 [2014]36 号では 以下 16 区域に対しても外貨資本金の自由元転を実行すると定めました これにより 試行区域

この傾向は日本の回答者に限ってみても同様の傾向がある まさに日本の人事にとって最も大きな課題の 1 つであり ブレイクスルーに 向けて手を打つ必要がある状況にあるといってよい 本稿ではこれからのリーダーに求められる資質について議論したあと その資質を育むためのリーダー育成に関わる課題についてみて い

出所 : ブレードランナー 2049 公式サイト 総務省 HP 2

実践版グローバル_本文.indd

「Industry Eye」 第3 回

Japan Tax Newsletter

外国人住民に係る住民基本台帳制度の改正と住民税課税について

官民連携(Public Private Partnership)第3 回

<4D F736F F F696E74202D A F95BD90AC E31308C8E8AFA5F8C888E5A90E096BE89EF81408DC58F4994C530362E70707

Introduction 現在 企業の人事部門は大きな変革期を迎えています ビジネスのグローバル化 テクノロジーの革新的な発展による市場環境の変化や 少子高齢化に伴う労働人口減少といった問題に企業が直面する中で 人事部門はより戦略的で効率的な組織構築 人材管理を求められつつも 従業員一人一人にとって

各位 平成 30 年 11 月 27 日 株式会社池田泉州ホールディングス 当社及び当社子会社における本部組織の一部変更について 株式会社池田泉州ホールディングス ( 社長鵜川淳 ) 及び株式会社池田泉州銀行 ( 頭取鵜川淳 ) は 第 4 次中期経営計画で掲げた 地域への弛まぬ貢献 と パラダイム


サービスパンフレットについて

Global Tax Update

6 当社は 反社会的勢力に対しては一切の関係をもたず 不当要求を受けた場合等の 事案発生時には 総務部を対応統括部署として警察および顧問弁護士等と連携し毅然とした態度で対応する (2) 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制 1 当社は 取締役の職務の執行に関する情報 ( 株主総会議

5. 内部統制推進部内部統制推進部は NEC グループ企業行動憲章 および NEC グループ行動規範 の周知をはじめとしたコンプライアンス徹底のための各種施策を企画立案し 実施しています また 事業部門およびスタッフ部門が実施するリスクマネジメントが体系的かつ効果的に行われるように 必要な支援 調整

はじめに 個人情報保護法への対策を支援いたします!! 2005 年 4 月 個人情報保護法 全面施行致しました 個人情報が漏洩した場合の管理 責任について民事での損害賠償請求や行政処分などのリスクを追う可能性がござい ます 個人情報を取り扱う企業は いち早く法律への対応が必要になります コラボレーシ

1 教育研修費用総額と従業員 1 人当たりの教育研修費用 (1)1 社当たりの教育研修費用総額 1 社当たりの教育研修費用総額は 2014 年度は予算額 5,458 万円 ( 前回調査 5,410 万円 ) 同実績額 4,533 万円 ( 同 4,566 万円 ) であり 2015 年度は予算額 5

サービスパンフレットについて

サービスパンフレットについて

<4D F736F F F696E74202D A B837D836C CA48F435F >

PowerPoint Presentation

2 マンション管理業界の課題マンション管理業界の課題理事会理事会理事会理事会とのとのとのとのコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーション管理員管理員管理員管理員とのとのとのとのコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーションコミュニケーション学習学習学習学習 研磨研

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

02 IT 導入のメリットと手順 第 1 章で見てきたように IT 技術は進展していますが ノウハウのある人材の不足やコスト負担など IT 導入に向けたハードルは依然として高く IT 導入はなかなか進んでいないようです 2016 年版中小企業白書では IT 投資の効果を分析していますので 第 2 章

FTA EPAの 戦 略 的 活 用 -それはグローバル 経 営 の 重 要 なテーマです- 注 目 が 高 まるTPP( 環 太 平 洋 戦 略 的 経 済 連 携 協 定 ) RCEP( 東 アジア 地 域 包 括 的 経 済 連 携 ) 日 欧 EPAをはじめ すでに 発 効 されているFTA

1. dia

TCS_AI_STUDY_PART201_PRINT_170426_fhj

目次 全社業績の概要 年度の計画と実績 年度業績の概況 3. 売上高 経常利益の推移 4. 事業部門別売上高の推移 5. 費用構成の推移 6. キャッシュ フロー計算書 事業部門別業績の概要 7. サービスラインアップ 8~10. 投資情報事業 11~12.IR 事業

世界モバイル利用動向調査 2017

jp-tax-mfa_guide

IFRS Global office 2013 年 3 月 IFRS in Focus 予想信用損失 - 公開草案 注 : 本資料は Deloitte の IFRS Global Office が作成し 有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです この日本語版は 読者のご理解の参考までに作成したもの

スケジュール 時間内容講師 13:30~ 14:30 ご挨拶 1. 保険会社の ERM 全般 平木英一 (1) 保険会社のERMの特異性 ( 一般事業会社との対比 ) (2) リスクベースの業績評価と資本効率 (3)ERM の中核 =ORSAの状況 (IAIS NAICの基準等 ) (4)ALM の

CSR(企業の社会的責任)に関するアンケート調査結果《概要版》

jp-ls-pred-jp

スライド 1

「IFRS適用レポート」について

アニュアルレポート2016

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

「Industry Eye」 第1 回

Transcription:

要員 人件費を最適化し 人的生産性を最大化せよ 間接部門を半減せよ!( 前編 ) 山本奈々やまもとななデロイトトーマツコンサルティング株式会社シニアコンサルタント グローバル化を実現する そのために国内ですべきこと今回の主役は 大手製造業 A 社である A 社は 国内で断トツのシェア No.1 を誇る X 事業を軸に複数の事業を抱えており 過去 安定的に収益を伸ばし続けていた しかしながら 国内の市場は既に成熟期を迎えており 売り上げ伸張が頭打ちになりつつあった そこで A 社では 今後の成長の源を海外市場に求め 現状 20% の海外売上比率を 5 年後までに 50% にするという中期経営計画を掲げ グローバル化を推し進める体制を整えるべく さまざまな取り組みを開始していた こうしたグローバル化に向けた取り組みの中で 海外企業の買収や海外現地法人の設立等は既に実施し始めており フロント業務は各現地法人の人材に任せることとした しかし グローバル事業の展開に向けた戦略立案や各社の業績管理 人材の育成 配置の検討等 日本国内からはもちろん 地域統括会社を通じても 現地法人をマネジメントするために必要な業務を行うだけの十分な体制が整っているとはいえない状況であった そこで その課題を解決するために グローバル事業の拡大に向けた要員計画策定の命が人事部長に下されたのである そして ある日の経営会議 人事部長から A 社の 5 年間の要員計画が提出された その計画によれば まず 特に優先度の高い各現地法人の戦略立案 業績管理機能を拡充するため 今年度中に社内の優秀人材の再配置および中途採用を実施すること そして その後は社内の人材を育成 再配置するための育成施策を充実させることや 新卒 中途採用における基準 ( 語学力や海外経験などを重視した採用の検討等 ) 採用人数の見直しなどが計画され ていた その結果 売上高を約 1.7 倍にするという中期経営計画に対して 海外現地法人に在籍する社員を除き A 社の国内人員数は現在のおよそ 1.6 倍まで増員する計画となっていたのである 社長の直感約 15 分の説明が終了し 会議室に まあ こんなものではないか という空気が流れ 人事部長がほっと一息ついた瞬間 今まで黙って説明を聞いていた社長から こんな言葉が飛び出した 新たに人材が必要なのは分かるが 本当にこんなに人を増やさなければならないのかね? その一言は 社長が常々心に抱き続けていた疑問でもあった これまで 自分が何か新しいことをしようとすると 出てくるのはまず それならばそれをやるための人を確保してほしい という声ばかり 今いる人を活用しようとか できるだけ省力化してやろ

う というコスト意識を持った提案が出てくることはほとんどないことに不満と不安を抱いていたのである しかし これまでは業績も右肩上がりであったこともあり あえて社員のやる気に水を差すようなやり方はすまいと 目をつぶってきた しかし 今回の話は別だ このグローバル化が実現しなければ A 社は将来的に衰退の一途をたどるしかない そして その道筋はまったくの未知数であり 湯水のように人やコストを掛けら れるわけもない これからは 未知の領域で戦っていく攻めの姿勢だけでなく 同時に 高いコスト意識を持つことが必要不可欠である そう社長は確信し 言葉を続けた 私には これだけの人を増やすことが現実的な方策だとはどうも思えない 確かに 人は資源でもあり資産ではあるが 同時にコストでもあるということを忘れないでほしい 例えば ここに試算されている人数をグローバル事業として抱えるのであれば 今いる国内向けの間接部門の人材は 今の半分くらいに効率化しなければならないのではないか? それくらいの効率意識を持たなければ グローバルで戦っていくことは難しいのではないか というのが 私の直感的な感想だ 結局 この日の会議で 人事部長の提出した計画は決裁されなかった 社長の言葉により まずは 自社の間接部門の現状を明らかにし 効率化余地を洗い出すこと そして その上で本 当に必要な人材投資の在り方を検討することになったのである 自社の間接機能比率の明確化経営会議から戻った人事部長が 計画を否決されて意気消沈する間もなく まず取り組んだこと それは 国内における間接機能の実態 ( 間接機能比率 ) を明らかにすることであった コラム 間接機能比率とは 会社の効率性を判断する KPI(key performance indicator) として 最もポピュラーなものの一つ 間接機能人数 全社員人数 で求められ 日本企業の平均は 10% 程度である ここでいう 間接機能 (*1) とは 純粋な間接機能 ( どのような業態の企業であっても 必ず持っている機能 詳細は以下を参照 ) を指し 収益を生み出す活動 ( 営業等 ) をサポートする機能 (*2) は 他 社と比較する場合は間接機能に含めない 一方 自社の過去推移を把握する場合には 純粋な間接機能 ( バック機能 ) に加えて 収益を生み出す活動をサポートする機能 ( いわゆるミドル機能 ) も含めて その推移を把握することが重要である (*1 経営機能 ( 経営企画部等 ) 総務機能 人事機能 財務 経理機能 IT 情報システム機能 法務機能 監査機能 内部統 制機能 広報 IR 機能 等 ) (*2 営業事務 お客様センター 生産管理 商品企画 等 ) 確かに 社長の言葉を聞き 自社の間接機能の実態について いくつか思い当たる節があった 実は A 社では これまで組織規模を拡大させる中で 事業ごとに独立採算を求めて疑似的なカンパニー制を敷き 一部分社化を行うなど どちらかといえば分散 自立型のマネジメントを志向してきた その結果として共通で持つべき ( 主に間接 ) 機能まで事業ごとに分断され 逆に必要 な人手が増加し非効率的になってしまったり それを効率的にするために複数の業務を兼務する人材が増え その業務に関する専門性やクオリティが低下してしまうといった問題が発生して

いたのである そして 各事業部や子会社に自立を促した結果 本社の間接部門に対して 各事業部や子会社から毎日さまざまな要望が出されることになり それらに応えようとして 本社間接部門でも数多くのプロジェクトや WG( ワーキンググループ ) が立ち上げられ 本来の業務を圧迫するほどであった 加えて 昨今の IFRS 対応やコンプライアンス強化の流れを受けて 各事業において計数管理の徹底を求めるようになっており その結果 各事業部では計数管理のために必要な人材を事業部内で抱える必要に迫られているという状況も発生していた 結果として 間接機能に従事している社員が 部署によらず 社内のありとあらゆるところに存在し 同じような仕事を担当している社員が社内に何人もいる そうした状況が出来上がってしまったのである その結果 A 社では間接機能人員を把握する際に 組織のハコによる識別はまったく役に立たず 結局は社員一人ひとりが担当している業務内容をヒアリング等の実施により把握し 一人ひとりの業務を機能別に仕分けていくという地道な作業を積み上げることで 間接機能の全体像をやっと把握できる という状況であった コラム 間接機能従事者を明確化する際のポイント間接機能人数を把握する際には 他社とのベンチマークはもちろん 過去の自社データと比較することもまた 非常に重要な観点の一つである しかし 多くの企業では 少なくとも数年に一度は組織改編を行っており 過去推移を把握しようとした場合 現在の組織と数年前の組織を 1 対 1 で対応させることが難しい場合がよくある ( 例えば 現在の A 部は 3 年前に X 部と Y 部を統合させて作った部であるが 実は Y 部の一部の機能は B 部へ移管されており A 部と X 部 Y 部は 正確には対応しない 等 ) こうした場合には 組織 ではなく 機能 軸に基づき過去から現状を整理する という考え方が有効である これにより 組織の作り方によらず 各機能 従事者の人数増減を 正確に把握することが可能となる [ 図表 1]

[ 図表 1] 機能 軸に基づき過去から現状を整理 そしてようやく明らかとなった間接機能比率をみるとおよそ 15% と高く ベンチマークを実施した結果を見ると 同業他社の中でも相対的に高くなっているということが判明した さらに ミドル機能まで含めた間接機能の過去推移を見ると 毎年少しずつではあるが 間接機能が肥大化しているという傾向が如実に表れていたのである 社長は この結果を聞いて愕然とした 良い数値ではないだろうと予想はしていたものの まさかここまでとは そこで社長が出した結論 それは 間接機能比率は最低でも現状維持 望むべくは同業他社水準まで間接機能比率を改善させながら かつ グローバル本社としての機能を強化するということであった [ 図表 2]

[ 図表 2] 間接機能比率改善 グローバル本社機能強化のイメージ そして 社長は全社に号令を掛けることになる 間接部門を半減せよ と ( 後編へ続く この話はフィクションであり 実在する人物 団体等とは一切関係ありません )

山本奈々やまもとななデロイトトーマツコンサルティング株式会社シニアコンサルタント要員 人件費計画の立案 中期経営計画の見直しに伴う要員 人件費のリストラクチャリング 役員報酬制度の設計 ( 会社法対応 ストックオプションの設計含む ) 人事戦略 制度設計 グループ人事制度構築等の組織 人事関連のコンサルティングに幅広く従事 トーマツグループについて : トーマツグループは日本におけるデロイトトウシュトーマツリミテッド ( 英国の法令に基づく保証有限責任会社 ) のメンバーファームおよびそれらの関係会社 ( 有限責任監査法人トーマツ デロイトトーマツコンサルティング株式会社 デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー株式会社および税理士法人トーマツを含む ) の総称です トーマツグループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり 各社がそれぞれの適用法令に従い 監査 税務 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています また 国内約 40 都市に約 7,900 名の専門家 ( 公認会計士 税理士 コンサルタントなど ) を擁し 多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています 詳細はトーマツグループ Web サイト (www.deloitte.com/jp) をご覧ください デロイトトーマツコンサルティングについて : デロイトトーマツコンサルティング (DTC) は国際的なビジネスプロフェッショナルのネットワークである Deloitte( デロイト ) のメンバーで 有限責任監査法人トーマツのグループ会社です DTC はデロイトの一員として日本におけるコンサルティングサービスを担い デロイトおよびトーマツグループで有する監査 税務 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリーの総合力と国際力を活かし 日本国内のみならず海外においても 企業経営におけるあらゆる組織 機能に対応したサービスとあらゆる業界に対応したサービスで 戦略立案からその導入 実現に至るまでを一貫して支援する マネジメントコンサルティングファームです 1,800 名規模のコンサルタントが 国内では東京 名古屋 大阪 福岡を拠点に活動し 海外ではデロイトの各国現地事務所と連携して 世界中のリージョン エリアに最適なサービスを提供できる体制を有しています デロイトについて : Deloitte( デロイト ) は 監査 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリーサービス リスクマネジメント 税務およびこれらに関連するサービスを さまざまな業種にわたる上場 非上場のクライアントに提供しています 全世界 150 を超える国 地域のメンバーファームのネットワークを通じ デロイトは 高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて 深い洞察に基づき 世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供しています デロイトの約 210,000 名を超える人材は standard of excellence となることを目指しています Deloitte( デロイト ) とは 英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイトトウシュトーマツリミテッド ( DTTL ) ならびにそのネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します DTTL および各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別個の組織体です DTTL( または Deloitte Global ) はクライアントへのサービス提供を行いません DTTL およびそのメンバーファームについての詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください 本資料は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり その性質上 特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません また 本資料の作成または発行後に 関連する制度その他の適用の前提となる状況について 変動を生じる可能性もあります 個別の事案に適用するためには 当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき 本資料の記載のみに依拠して意思決定 行動をされることなく 適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください 2015. For information, contact Deloitte Tohmatsu Consulting Co., Ltd. Member of Deloitte Touche Tohmatsu Limited