資料 3-2

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注 : 平成 年度募集研究種目 国際的に評価の高い研究の推進 研究費の規模 / 研究の発展 H には 新たに基盤研究 (B) 若手研究 (A) の 種目に基金化を導入 若手研究 9 歳以下 ~ 年 (A) 500~,000 万円 (B) ~500 万円 研究活動スタート支援 年以内年間 50 万円以

参考資料1_学術研究関連データ集

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イノベーションの担い手の活動状況07

新長を必要とする理由今回合理性の要望に設 拡充又は延⑴ 政策目的 資源に乏しい我が国にあって 近年 一層激しさを増す国際社会経済の変化に臨機応変に対応する上で 最も重要な資源は 人材 である 特に 私立学校は 建学の精神に基づき多様な人材育成や特色ある教育研究を展開し 公教育の大きな部分を担っている

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(3) その他 全日制高校進学率の向上を図るため 更に公私で全体として進学率が向上するよう工夫する そのための基本的な考え方として 定員協議における公私の役割 を次のとおり確認する 公立 の役割: 生徒一人ひとりの希望と適性に応じて 多様な選択ができるよう 幅広い進路先としての役割を担い 県民ニーズ

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女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

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第5回 国際的動向を踏まえたオープンサイエンスの推進に関する検討会 資料1-1

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本要望に対応する縮減案 ページ 2 2

いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

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学術研究助成の在り方について(研究費部会「審議のまとめ(その1)」) 3/5(参考資料5ー11~5ー23)

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ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

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Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

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資料 3-2 見え消し修正版 基礎研究強化に向けて講ずべき長期的方策について 基礎研究を支えるシステムの改革ー ( 素案 ) 総合科学技術会議基本政策専門調査会 基礎研究強化に向けた長期方策検討ワーキング グループ

資料 3-2

資料 3-2 目 次 はじめに Ⅰ 基礎研究強化の必要性 基礎研究の定義 基礎研究の重要性 Ⅱ 基礎研究強化に向けた研究資金の改革 提言 1. 運営費交付金等の削減見直し 2. 科学研究費補助金をはじめとする競争的資金の拡充等 ( 科学研究費補助金等の計画的な拡充 ) ( PI 制度の導入 ) ( 科学研究費補助金制度の全体的な検討 ) 3. 競争的資金の体系的整備 ( 制度数の増加 ) ( 競争的資金の体系化 ) ( 不合理な重複の排除 ) 4. 評価体制の充実 5. 研究成果の公開 6. 研究に対する支援体制 ( 競争的資金の基金化など弾力的な制度の構築 ) ( 研究を支援するリサーチ アドミニストレータの配置 ) Ⅲ 基礎研究強化に向けた研究人材の育成 提言 1. 若手研究者への支援の充実 ( 特にスタートアップ時への配慮 ) 2. キャリアパスとしての 新しいテニュア トラック制 ( テニュア トラック制の目的 ) ( 新しいテニュア トラック制 ) 3. 大学等の構造改革による若手研究者が活躍できるポストの確保 4. 研究人材が活躍する場を拡大 Ⅳ 国際競争力の強化を目指した拠点の形成 提言 1. 卓越した大学院拠点の形成を目指して 2. 特色を持った 多様な拠点 形成 3. 拠点における システム改革 への取組み

資料 3-2

はじめに 基礎研究は 大きなブレークスルーを創出する可能性を有し 持続的なイノベーションを生み出して 我が国の国際競争力を高めるための土台となるものである 未曾有の経済危機にある今こそ 長期展望に立って 基礎研究を強化することにより 新分野の開拓 画期的研究の展開を図り 世界トップクラスの科学技術を創出 発展させ 我が国の国際競争力を長期に亘って高めることが求められる これまでの3 期にわたる科学技術基本計画においても 基礎研究は重視され 幅広く着実に推進されてきているところであるが 上記のような認識の下 新たに 基本政策推進専門調査会に 基礎研究強化に向けた長期方策検討ワーキング グループ を設置し 平成 21 年 2 月以降 外部有識者からのヒアリングを交えて議論 検討を行い 同年 5 月 27 日に基本政策推進専門調査会へ審議経過を報告した その後 本ワーキング グループでは 基礎研究の強化に向けた長期方策という観点から 基礎研究を支えるシステムのうち改革への取組が特に必要と考えられる 1 研究資金の確保 2 研究人材の育成 3 研究教育拠点の形成 という3つの課題に焦点を当てて検討を重ね ここにその結果を報告書としてとりまとめたところである 今後 各府省や大学等 ( 大学及び大学共同利用機関をいう ) 研究機関などの関係者においては 本報告書において掲げられた提言を着実に実施するとともに 相互に連携し 全体としての効果を最大化するよう取り組むことを期待する また 総合科学技術会議においては 報告書に掲げられた提言の進捗状況をフォローアップし 基礎研究強化に向けた取組を政府一体となって進めていくことが必要である なお 現在 第 4 期の科学技術基本計画の策定に向けて検討が進んでいるが 本報告書の 提言を踏まえ議論が行われ 基礎研究強化に向けた成果が得られるよう強く望む - 1 -

Ⅰ 基礎研究強化の必要性 基礎研究の定義 研究活動は 一般に 基礎研究 応用研究 開発研究 に区分され この区分が研究に関する施策や関係統計に使われている 第 3 期科学技術基本計画では 基礎研究には 研究者の自由な発想に基づく研究と 政 策に基づき将来の応用を目指す基礎研究がある と記述している 本ワーキング グループにおいては 上記のようなこれまでの整理を踏まえながら 基 礎研究 の強化に向けて必要な方策を議論することとした 基礎研究の重要性 研究者の自発的な発想に基づく基礎研究は 人類の英知新たな知を生み出すものである ことを目的とする 先人により生み出され蓄積されてきた知識にを継承するたげでなく 基礎研究により 新たな英知を加えて後世に引き継いでいくことは その時代に生きる人類の責務と言える 基礎研究はいくつかの形があるが いずれもこれまでの常識を覆したり 未知の世界を 開いたりする新しい知の創生を目指すものである 多様な基礎研究を行う中での試行錯誤や そこから生まれる新しい発見や思いがけない 発見がきっかけとなって イノベーションをもたらすような革新的な技術が生み出され ることもまれではない また 明確な具体的な課題を解決するという出口を明確にし イノベーション創出をめ ざす目的基礎研究から は新たな領域が開けることも多く 将来の産業 経済の持続的 な発展には こうした基礎研究が不可欠である 平成 20 年には 4 人の日本人が同時にノーベル賞を受賞したが このことは わが国に大きな感動と自信を与えただけでなく 広く世界においてわが国に対するイメージアップにつながった このように 優れた基礎研究の成果を創出することは わが国の国際的な存在感を高めることにつながる - 2 -

以上のような基礎研究の重要性にかんがみ は 大学等や研究機関が中心となって取り組み 国はそれを長期的展望に立って支援すべきである 今後 さらに一層の基礎研究の強化について 国を挙げて取り組むことが必要である なお 基礎研究は成果が出るまで長い時間がかかる場合が多いが 国民の税金を使って研究を行っている以上 国 研究機関 研究者の各々が国民に対して 研究内容や成果とその意義をわかりやすく説明するよう努めるべきである - 3 -

Ⅱ 基礎研究強化に向けた研究資金の改革 現状および課題 大学等や研究機関における基礎研究を支える研究資金は 日常的な恒常的 継続的な研究活動を支える基盤的経費 ( 国立大学等 ( 国立大学及び大学共同利用機関をいう ) や独立行政法人研究機関に対する運営費交付金や私学助成等 ) と 科学研究費補助金など優れた研究を優先的 重点的に助成する科学研究費補助金をはじめとする競争的資金との二本立て支援体制 ( デュアルサポートシステム ) によって構成構築されている 研究者の自発的な発想に基づき優れた基礎研究が行われるためには 基盤的経費により教育研究環境が整備されることが大前提であり その上でこそ 競争的環境の中で競争的資金が活かされるものである しかしながら 下に述べるように基盤的経費が削減される中で 大学等においては 当初の目的以上に 競争的資金の役割が大きくならざるを得ず 本来なら基盤的経費で賄われるべき大学等における共通的な環境整備も 現状では競争的資金に依存しているとの指摘が多くなされている ( 運営費交付金基盤的経費について ) 基礎研究の多様性を確保するためには 研究者の自発的な発想が研究にスムースにつながるようにしていくことが必要である そのためには常に研究者が安定的 持続的に使える研究費を確保することが必要である そのためにも運営費交付金の確保が不可欠 国立大学等への運営費交付金がそのような研究費の主な財源となるものであるが 運営費交付金は毎年度削減され 国立大学等から研究者に配分される教育研究経費が必ずしも十分でないといわれる しかし 運営費交付金は毎年度削減され 研究者に配分される教育研究経費は年間でお おむね数十万円程度といわれている 各大学や研究機関において運営費交付金等から支 出される研究経費の額についての調査が必要と考える さらに 各国立大学等は運営費交付金により 研究活動及び教育活動を支える共通的基 盤の整備を行ことが必要であるが 運営費交付金の削減により この点が脆弱となって いる 具体的に大型の研究設備にみてみると 一般的には 10 年程度で更新が必要と言 - 4 -

われるが 国立大学等における大型の研究設備 (1 億円程度以上 ) に係る経過年数の現状は 10 年 19 年経過の設備が44% 20 年以上経過の設備も13% と 6 割近くの設備が10 年以上経過のものとなっており 設備の更新が困難となっている状況がうかがえる 加えて 運営交付金の削減は研究活動にとって基礎である人件費の確保に大きな影響を与えている 国立大学の常勤教職員人件費 ( 附属病院を除く ) の現状は 法人化された平成 16 年度と比較すると平成 20 年度は約 400 億円減となっている また 国立大学法人における教員 ( 常勤 ) の平均年齢は一貫して上昇しており 平成 20 年度現在 48 歳となっている 各大学での定年延長や若手教員の採用抑制により 今後 教員の平均年齢がさらにあがることも予想される 私学への経常費補助についても国立大学等に対する運営費交付金削減と同様の削減が 毎年度行われてきており 私立大学の経常的経費に対する 経常費補助金 の割合は 昭和 55 年度に29.5% であったのをピークにして減少し 平成 20 年度には10.9% にとどまっている 科学技術分野における国の戦略目標を実施する上で大きな役割を果たしている研究開発独法 ( 研究開発活動を行っている独立行政法人をいう 以下同じ ) についても 毎年度 他の独立行政法人と同じ基準で 運営費交付金の削減が行われるとともに 人件費についてはいわゆる行政改革推進法に基づき 研究者の人件費も含め人件費総額について 5 年間で5% 以上の削減が図られている ( 競争的資金制度について ) 研究資金については これまで 研究者の研究費の選択の幅と自由度を拡大し 競争的環境の醸成に貢献する観点から その拡充が図られてきた これにより 平成 21 年度現在で 内閣府に対して競争的資金として報告されている制度は 8 府省から47 制度 合計で4,912 億円となっに達している 基礎研究に関しては文部科学省が主に担当しており あらゆる学問分野を対象として研究者の自由な発想に基づく研究を対象と支援する科学研究費補助金 (1,970 億円 ) 戦略目標 研究領域をトップダウン型に提示し目的基礎研究を行う戦略的創造研究推進事業 (498 億円 ) が大きな資金である ま - 5 -

た 総務省 厚生労働省 農林水産省 経済産業省 国土交通省 環境省などでは各々 の府省が所管する 業 に関してにおいても関係する研究開発を推進する競争的資金が 存在する を所管している ( 科学研究費補助金について ) 競争的資金の中で 基礎研究に関して中心的な役割を果たしている科学研究費補助金については 近年応募件数が増加しており 全体の採択率は20% 程度まで低下し その獲得競争が非常に激化している また年齢別に見ると ここ数年の 若手研究 種目の拡充もあり30 代の採択率は比較的相対的に高くなっているが 若手研究 の対象年齢を超えると応募件数 採択率とも大きく低下する状況である 基盤研究 の研究期間については最短の3 年とする申請がもっとも多いが 中でも 小型で申請 採択件数が最も多い 基盤研究 C ( 研究費総額 500 万円まで ) にあっては9 割が3 年間となっている 研究者は1 年間に必要とする研究費をなるべく多く確保するため 研究期間を短くして申請せざるを得ない状況である 研究費の必要額は グループに責任を持つ独立研究者(PI) がチームリーダーや独立した研究者 (PI:Principal investigator) と共同研究者では異なると考えられるが PI が独立して研究を行っていくには 現行の制度では1 件当たりの研究費が小さいため それだけでは十分な研究を行っていくことが難しい場合もある 研究費の必要額は PI と共同研究者では異なると考えられる が多い ( 後述のように課題 1 件あたりの年間平均配分額は300 万円を下回っている ) なお 従来は研究組織の長である大学の教授や研究所の部長 室長等だけが PI と考えられていたが 近年は助教や准教授の PI も増加しており PI の定義が明確ではないこともあり その区別がない を明確にしていく必要がある 提言 1. 運営費交付金等の削減見直し 基礎研究を支える基盤的経費及び競争的資金の各々を充実することにより 基礎研究の - 6 -

一層の強化を目指すことが必要である 国立大学等法人に対する運営費交付金は毎年度 1% 削減が方針とされ 私学助成も毎年度削減が行われているが 基礎研究の多様性とスムースな研究の大学等の特性を活かした質の高い研究を実現しうる環境を整備するため 国は 運営費交付金をはじめとする基盤的経費の削減方針について見直しを行い 運営費交付金基盤的経費と競争的資金のバランスを図るべきである よう 長期的戦略に基づいて取り組むべきである また 研究開発を行う独立行政法人に対しては 他の独立行政法人と同様に運営費交付金の削減が行われているが 国家戦略的な研究を担う研究開発独法型の独立行政法人は 国の定型的な業務を行う独立行政法人と異なり 運営費交付金の一律のな削減はなじまないことから これらの運営費交付金の削減方針についても見直すべきである また あわせて 研究開発独法には多額の税金が投入されていることを踏まえ 各研究開発独法は 当該法人が担う国家的な 戦略目標 を国民にわかりやすく明示し 研究開発独法の評価においても この 戦略目標 の達成状況が重視されるべきである なお 研究開発独法の人件費に関しては 平成 20 年 10 月に施行された 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律 ( いわゆる研究開発力強化法 ) により 国からの委託費等で雇用される任期付研究者と 運営費交付金で雇用される任期付研究者のうち戦略重点科学技術に従事する研究者及び若手研究者については 行政改革推進法に定める人件費削減の対象から除外されている 各研究開発独法においては この制度の積極的な活用に努めるべきである 2. 科学研究費補助金をはじめとする競争的資金の拡充等 ( 科学研究費補助金等の計画的な拡充 ) 基礎研究を進める上で中核となる科学研究費補助金については 研究者が安定して研究に専念できるようにするため 平均研究期間の長期化や採択率の向上に向けて 基盤研究 を中心に計画的に拡充に取り組むことが重要である 現在の科学研究費補助金の新規採択率は平成 7 年度の27.6% をピークに減少し 現状では上記のように20.3% と20% を下回る直前まできている また 平成 20 年度における採択課題 1 件あたりの平均配分額は289 万円であり これも平成 15 年度の3-7 -

34 万円をピークに減少し続けている 米国における中核的な研究助成機関における1 件あたりの平均年間支給額 (2008 年度 ) は NSF( 米国科学財団 ) で14 万ドル NIH ( 国立保健研究所 ) で35 万ドルであり 日米の間で大きな差がある このような状況の中で まずは 新規採択率も採択課題 1 件あたりの平均配分額も これまでの最高水準への回復を目指して科学研究費補助金の拡充に努めることが必要である 獲得状況を大学別に見てみると 獲得額が1 位の大学を100とすると 10 位の大学はその15% 20 位の大学は6% と 差が大きいことがわかる 多くの大学で活力を持って 我が国全体として厚みのある基礎研究を進めるために トップ以外の大学も十分な基礎研究に係る資金が獲得できるように科学研究費補助金の拡充が必要である この点について 競争的資金の全体規模について同様に 研究競争力で世界の先頭に立っている米国と比較すると その定義や範囲が異なるため単純な比較はできないが 2005 年度の米国の競争的資金は約 4 兆 5 千億円で 我が国の10 倍の規模となっている これに加えて 現在のオバマ政権では 米国の競争力の向上を目指し 基礎研究に対する連邦政府の資金を10 年間で倍増するという方針が示されている 科学研究費補助金を所管する文部科学省においては 今後の所要額について試算を行い 年齢層毎の新規採択率を30%( 総合科学技術会議基本政策推進専門調査会の平成 19 年 6 月 14 日の報告では 欧米では 一般に30% 超は必要と言われている と指摘 ) 全研究種目に間接経費 30% を措置することとし これに研究者数の増加を考慮した場合では 10 年後の所要額を約 3,900 億円 ( 現在の予算額の約 2 倍に相当 ) と推計しており さらに 採択課題 1 件あたりの平均配分額を平成 15 年度の334 万円の水準に合わせると約 4,600 億円と推計している ( 平成 21 年 10 月 29 日科学技術 学術審議会学術分科会研究費部会 ) 我が国においても国際競争力の土台となる基礎研究を持続的に発展させるため これらの試算も十分に踏まえ 国においては 科学研究費補助金をはじめとする基礎研究に対する資金の着実な拡充を計画的かつ長期的に図るべきである (PI 制度の導入 ) 上記の平成 19 年 6 月 14 日に総合科学技術会議基本政策推進専門調査会がまとめた報告書 競争的資金の拡充と制度改革の推進について では 若手研究者の自立支援の観点から 若手の中でも ポスドクなどの研究チームの一員である場合と PI(Principal - 8 -

investigator: チームリーダーや独立した研究者 ) とを分けて研究費の効率的な支援方策を検討する必要がある と指摘した 若手研究者に限らず 我が国として基礎研究全体の底上げを図るためには 研究について責任をもつチームリーダーや独立した研究者であれば 運営費交付金等からの研究費に加え 競争的環境の中で 一定規模の研究費を科学研究費補助金などの競争的資金から得て研究に取り組むことができるようにすることが必要である チームリーダーや独立した研究者である PI の認定は 例えば研究者が所属する大学や研究機関が行い 科学研究費補助金などの競争的資金における一定規模以上の種目については PI からの申請を基本とするような制度を検討することが重要である このような PI 制度の導入により 応募が PI に限定され 審査機関の審査負担が軽減されることも期待できる なお PI の定義については 引き続き議論し明確にする必要があるが 例えば 1 独立した研究課題と研究スペースを持つこと 2 研究グループを組織して研究を行っている場合は そのグループの責任者であること 3 大学院生の指導に責任を持つこと 4 論文発表の責任者であること などが考えられる ( 科学研究費補助金制度の全体的な検討 ) 今後 科学研究費補助金制度については グランドデザインとして 上記の PI 制度も含め 研究者の各ステージに適した研究費の額 研究期間 採択率 採択件数などについて想定しながら 優れた研究については 次のステップの種目に移りさらに研究を深化させるなど 切れ目のない支援ができるように制度全体を再検討することが望まれる その際には 科学研究費補助金の各種目において 優れた研究については切れ目のない支援ができるようにすることが重要である 現在 科学研究費補助金の中での重複採択は原則として認められていないが 今回 文部科学省においては 若手研究 から 基盤研究 への応募は最終年度の前年度でも可能とする緩和措置を行った 後述するように不合理な重複は徹底して排除すべきであるが 一方で優れた研究について継続性を持たせることも 基礎研究の強化のために不可欠である この観点に立って 現在の重複制限の在り方についても引き続き検討を望みたい - 9 -

3. 競争的資金の体系的整備 ( 制度数の増加 ) 競争的資金については 第 2 期科学技術基本計画において その期間中に倍増を目指すという目標が定められ 拡大が図られてきた 第 2 期科学技術基本計画が開始された平成 13 年度の総額が3,265 億円であったのが上記のように現在は4,912 億円となっている また 競争的資金の制度数も この間 25 制度から47 制度と大幅に増加している ( ただし新規募集をしていない継続のみの資金も含まれている ) 競争的資金の制度数が増加しているのは 科学技術の発展や研究内容の高度化 複雑化を背景としたその時々の社会的ニーズを踏まえた結果であるが これにより 研究者としては 個々の制度について具体的な情報が得にくいというような課題も生ずるとの指摘がある ( 競争的資金の体系化 ) このような現状を踏まえ 当ワーキング グループとしては 競争的資金についてその全体の規模は引き続き拡充しつつ 研究者はもとより 社会や国民に競争的資金の内容やその目的がわかりやすいように 競争的資金の体系化などの工夫を行うべきではないかと考える とりわけ 競争的資金については 多様性を持った基礎研究の実施と その成果を社会への還元につなげるシームレスな仕組みが求められているが 各制度について その趣旨 目的や競争的資金制度全体の中での位置づけを明確化し さらに体系化を図ることで 制度間の連携が容易となり シームレスに研究を継続していくことも可能となる このため まずは 各府省において 省内における競争的資金制度の全体像を見直し 効率的な制度の体系化などに取り組むことが必要である また 競争的資金の体系化については 府省ごとの取組みに加えて 府省横断的な取組みも必要である 現在 各府省では 省内で効率的な制度の体系化などの工夫に取り組むとともに いくつかの府省で共通的に取り組まれている課題 別個に取り組まれているが 内容的には共通の課題が存在する 例えば 産学官連携施策 地域シーズの事業化科学技術振興施策 さらには先般 総合科学技術会議が 平成 22 年度の科学技術に関する予算等の資源配分方針 で最重要政策課題と位置づけた 環境と経済が両立する社会を目指すグリーンイノベーションの推進 などを目的とする競争的資金ついては である こ - 10 -

れらについては 府省共同で一体的な連携運用を図り 審査は内容に応じて各府省が所管し専門的知識を有する機関が行うという仕組みも検討されるべきである これらも含めて まずは 競争的資金を所管する各府省が情報を共有する場を設け 政府全体で各競争的資金の役割分担を明確にし その上で 効果的に研究が進められるよう 府省の 壁 を超えて 一本化類似制度の整理統合も含め 競争的資金制度の整理や再構築に向けて取り組むことが 今後 必要と考える 強く求められる ( 不合理な重複の排除 ) なお 競争的資金に関しては制度の重複とともに 研究者への配分についても重複が指摘されるところである これまでも 総合科学技術会議においては 研究費配分の不合理な重複や 研究者個人の適切なエフォートを超えた研究費の過度の集中については 排除するよう関係者に求め 実際 研究者一人あたりのエフォート合計分布では100を超える研究者は激減し 関係者における管理意識が高まっていることがうかがえる また 競争的資金を配分する国や独立行政法人においては 応募時に 応募者に対して 他の競争的資金等の応募 受入れ状況を応募書類に記載されることとしており ( 競争的資金に関する関係府省連絡会申し合わせ ) 審査においては これらの記載を踏まえ 不合理な重複を排除するよう取り組むべきである 加えて 平成 20 年 1 月からは 府省共通研究開発管理システム (e-rad) の運用が開始され ここでは 重複確認 のメニューも用意され 個々の研究者に対する資金配分の情報を共有し 重複等のチェックができるようになっている 競争的資金を配分する国や独立行政法人においては これを活用して不合理な重複の排除に努めるとともに 関係者の使い勝手をよくするため 府省共通研究開発管理システム (e-rad) の機能を高め すべての研究資金について最新の情報や 課題名だけでなくその概要も検索できるように努めることも必要である 4. 評価体制の充実 上記のような競争的資金の拡充に伴い 資金配分機関においては 配分に関する審査から 研究の進捗管理 評価に至るまでの一連の業務を丁寧かつ公正に行うことが求められる 現在の第 3 期科学技術基本計画においても 競争的資金に関して 公正で透明性の高 - 11 -

い審査体制の確立 配分機関の機能強化が課題として取り上げられ 各資金配分機関では審査員の拡充や 資金全体を管理するプログラムオフィサー プログラムディレクターの配置及び専任化に取り組んでいる しかし 資金配分を行う独立行政法人では前述した運営費交付金の削減や人件費の削減により このような体制を講ずることが困難な状況であり 例えば 科学研究費補助金の配分を行う独立行政法人日本学術振興会では分野ごとに合計で100 人を超えるプログラムオフィサーを配置し審査業務の管理を行い 約 5,0 00 人の審査員で審査を行っているが このプログラムオフィサーは全員が大学等の研究者であり 兼任者である 競争的資金の拡充に応じたしっかりとした評価システムを設けるためには それに伴って 評価のための人員も時間も必要となるのは当然である 国は配分業務を行う機関に対して 適正な審査が行われるよう 適切な支援を行うことが求められる また 競争的資金の中でも特に具体の的な成果の創出に目的を置く いわゆる出口志向の資金については 達成目標を明確に示し それに基づいて厳格な中間評価 事後評価を行い その結果を国民に公表することが求められる 5. 研究成果の公開 研究者がその研究成果を発表する場は 関係する学会や学術雑誌であるが 加えて 研究資金の財源である税金を負担している国民への説明の観点から また 研究資金による研究成果を産業界との連携によりイノベーションへとつなげる観点から 各競争的資金制度においては 個々の研究についてその成果を登録 公開するベータベースを構築し 研究成果を容易に検索 共有できるようにすることが必要である 科学研究費補助金や厚生労働科学研究費補助金などの件数の多い競争的資金制度においても研究成果が公開され 検索システムも導入されている しかし まだこのようなサービスを提供していない競争的資金制度もあり また 公開されていても 産業界などのユーザーサイドからみると 内容がわかりづらい 情報量が少ない 視覚的に見にくい 検索機能が不十分でなかなか目的の情報にたどりつかない など使い勝手が良くないとの指摘もある 研究成果をより社会に還元するため 各競争的資金制度においてはユーザー視点に立って成果の公開を推進すべきであり 主立った競争的資金制度においては 定期的にユーザーの声を聴取し - 12 -

それを踏まえた公開システムの改善に取り組むことが大切である また 将来的には 競争的資金制度ごとの公開システムを ネットワークを通じた共通のプラットホームのもとに整備し そこからあらゆる研究成果にアクセスできるようになることを目指すべきである 6. 研究に対する支援体制 ( 競争的資金の基金化など弾力的な制度の構築 ) 研究者が競争的資金を活用して効果的に研究に取り組むためには 競争的資金の使い勝手を向上させ 競争的資金に関する管理面での負担を軽減することが求められる 現在でも各競争的資金制度ではそのような方向で改善が行われ また 平成 20 年 3 月からは 関係府省 研究資金配分法人 受入れ機関である大学が横断的に集まる 研究資金の効果的活用に向けた勉強会 が開催され そこで研究資金の課題を抽出し 研究資金に関する制度や運用の改善に取り組んでいる 今後はさらに 競争的資金の使用ルールや会計方式の統一化などに向けて このような取組みを加速させていく必要がある また この中で多くの関係者から課題として指摘される研究資金の年度間繰越についても これを導入する研究資金制度や実際の繰越額も増加してきている この年度間繰越や 研究の進展等による年度間の計画変更に関しては 本年度 研究資金の多年度での運用が可能となるよう先端研究助成基金が設けられたが このケースを参考として 他の競争的資金制度においても 制度の趣旨に応じて 研究者が年度のしばりによらず柔軟に研究資金を活用できるよう 多年度にわたって弾力的な予算執行が可能な基金化などの制度の構築について 積極的に取り組むことを求めたい 特に基礎研究は 優れた成果を創出するため じっくりと継続して取り組むことが必要であり 年度ごとに区切って実施する性格のものではない これを資金面でも十分に踏まえて 研究期間内であれば資金を柔軟に活用できるような制度設計に取り組むべきである このような基金化への取組を含め 競争的資金の使い勝手をよりよくするために 上記の 研究資金の効果的活用に向けた勉強会 などの場においては 研究現場からの意見を十分に吸い上げることが極めて重要であり これらの現場からの声を踏まえながら 改善に向けて活動を活発化することが必要である - 13 -

( 研究を支援するリサーチ アドミニストレータの配置 ) また 研究者の管理面での負担を軽減し 研究者が研究に専念できるという点に関しては 米国では研究資金の申請や資金管理等に関しマネージメントを行う支援専門職 ( リサーチ アドミニストレータ ) が15 万人以上も存在すると言われている このような研究を支援する高度な専門職の存在は基礎研究をはじめ研究を効果的に遂行する上で極めて有効であり 我が国においてもこのような専門職の配置促進に努めるとともに 養成方法や将来的な制度化について検討を行うことが必要である 特に規模が大きい大学や研究機関では これらの専門職の役割を明確にした上でを組織化して配置し 加えて適切な処遇を行うことにより 研究分野における博士課程修了者の然るべき一つのキャリアパスとして確立するように取り組むことが望まれる - 14 -

Ⅲ 基礎研究強化に向けた研究人材の育成 現状および課題 2002 年度から2006 年度における大学院博士課程修了者 ( 約 75,200 人 ) の進路のうち 大学教員 ポスドク等のアカデミア分野へ進んだやポストドクターになった者はその約 34% 程度である また 実際にアカデミア分野に進んだ若手研究者 ( 研究員 助手 講師など ) についても その43% が 将来のキャリア設計のイメージが不透明で 不安を覚えたから 研究者を辞めたいと思ったことがあると回答している 若手研究者に独立して研究できる機会を与えるとともに どのような条件をクリアすれば研究者としての次のステージに移ることができるかという将来のキャリアパスを明確に示すことにより 若手研究者が将来への展望を持つことができるようにすることが必要である 大学においては 37 歳以下の若手教員の割合が低下している ( 平成 10 年度 25.2% 平成 19 年度 21.3%) 専門分野別に見ると 理学 人文科学 社会科学では若手教員の割合が低いが 工学系では若手教員の割合は 他の分野ほど低くはない 特に 国立大学に関しては 国立大学法人化を契機に若手研究者のポストが減少し 運営費交付金の削減 総人件費の削減などにより ポスト数の確保が困難になっているというおり 今後も定年の延長により さらに若手のポストは厳しくなると懸念する指摘が多い 提言 1. 若手研究者への支援の充実 ( 特にスタートアップ時への配慮 ) 基礎研究を強化するためには 優れた若手研究者を育成し 活躍を促進することが極めて重要である これまでノーベル賞受賞者の受賞のきっかけとなった論文等の発表時点は 30 代が多いことからもわかるように この時期における研究者の研究生産性は高く 若手研究者が自立して研究に取り組むことができるように支援を充実することが必要である この点に関し 各府省では若手研究者を対象とした研究資金などによる支援を行い また 日本学術振興会は優れた若手研究者に特別研究員事業を通じ 研究の機会を提供している このような支援について 実際に研究を行っている若手研究者からは 研究の立 - 15 -

ち上げに当たって 研究機器等を準備するためのスタートアップ経費や一定のスペースを有する研究室へのニーズが高いところである 大学等においては 若手研究者が独立自立して研究を開始できるよう 基盤的経費や競争的資金の間接経費を活用して このような若手研究者のニーズに応えるとともに 国等もこれらを資金的に支援するように努めることが求められる よう スタートアップ時の環境整備に配慮することが求められる 2. キャリアパスとしての 新しいテニュア トラック制 ( テニュア トラック制の目的 ) 現在 国は 若手研究者に自立と活躍の機会を与えることを目的として テニュア トラック制の導入を図る大学等の機関を支援している これは 若手研究者が 任期付きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積み 厳格な審査を経て安定的な職を得る仕組みである この支援を受けて平成 21 年度現在 34 大学において テニュア トラック制が実施され 平成 18 年度 ~ 平成 20 年度において これにより採用された若手研究者は 387 人 採用倍率は約 20 倍となっている 国は この支援を通じてテニュア トラック制を我が国に定着させることを目標としているが 現状ではそれに向けての試行段階にある テニュア トラック制では 選考された若手研究者は 一定期間 研究を継続し成果をあげれば 受入れ機関において定年制ポストに移行することとなるので 若手研究者は将来ビジョンを持つことができる 文部科学省では テニュア トラック教員の新規採用数を増やすため テニュア トラック教員の割合について具体的な数値目標を設定 ( 例えば 全大学の自然科学系における若手の新規採用教員総数のうち2 割に相当する人数等 ) し その達成に向けてテニュア トラック制の導入を進める大学等に対する支援を一層充実することとしている このテニュア トラック制は優れた若手研究者を確保し 育成する上で効果的であり 今後さらに普及 定着させることが必要である 一方 現在の支援策の対象が 大学等の研究機関であるため 取組みが対象となった支援機関ごとに取組方針が異なり また支援を受けていない大学等へは拡がっていかないという課題がある ( 新しいテニュア トラック制 ) - 16 -

そこで当ワーキング グループとしては このような組織に対する支援に加えて 国の機関が国内外から優れた若手研究者を募集 選考し 一定期間 人件費と研究費を支給するという新たな仕組みを提案する 同時に国の機関は 若手研究者を 研究スペースや定年制ポストを用意した上で テニュア トラック教員 として受け入れる大学等の研究機関を募集し この大学等が 国の選考を経た若手研究者を テニュア トラック教員 として採用する仕組みである これにより大学等に採用された若手の テニュア トラック教員 は 一定の期間 本人の給与と研究費の支援を受けて研究を行い その後は その大学等において次の安定的なポストに移っていくことができることとする このような新しいテニュア トラック制は 候補研究者を国の機関が採用募集 選考する点に特徴を持ち 大学等の研究拠点が独自に選考 実施する現行制度と併せて 若手研究者に新しいキャリアパスを提供することとなる また この新しい制度は 現行のテニュア トラック制を実施していない大学 ( 例えば中堅大学や単科大学 ) でも 優れた若手研究者を確保できる機会ともなる ただし この新しい制度を大規模に実施するには さらにその実施に向けての課題を詳細に調査 検討し 制度設計する必要があることから 科学技術のシステム改革を目的とする科学技術振興調整費を活用して まずは 若手研究者の研究分野や対象を限定して モデル的に試行し その結果を踏まえ 本格実施に向けて取り組むことが適当である なお この制度で選考 採用された若手研究者をPI 認定と結びつけることにより 競争的資金においても 優れた若手研究者に独立して研究を行うことができる環境を醸成することとなる 3. 大学等の構造改革による若手研究者が活躍できるポストの確保 優れた若手研究者を確保し 育成するには 若手研究者が活躍できるポストを確保することが最大の課題であるとの指摘が多い しかし現状は上記の通りで 年齢構成から見ると若手研究者の割合は近年減少傾向にあり 大学等の置かれている現在の財政状況からは これを大きく改善することは困難であると言わざるを得ない まずは 政府全体として 若手研究者の確保 育成は 我が国の研究力及び競争力の源ととらえて 大学等や研究機 - 17 -

関に対して しっかりとした財政措置を講ずるべきである 加えて 大学等や研究機関においては 財政措置を待つだけでなく 自らにおいても 若手研究者のポストを確保するよう 大胆に人事や給与費全体の合理化 効率化に努めるべきである これまでの年齢に比例して給与のアップが行われるような硬直した給与体系を見直し 例えば 研究教育活動の実績とその評価に応じた給与制度の導入 一定年齢を超えた研究者に対する昇級の停止や別の給与体系への移行などの工夫を行うことにより 若手研究者へのポストを拡充することが望まれる また 若手研究者に自立と活躍の機会を与えるためには 若手ポストの確保に加え 研究者の流動性を確保して 活力ある研究環境を形成することも必要である この点 大学 研究機関では研究者の公募採用に取り組んでいるが 部長 室長などの幹部級の研究者や研究に責任を有する PI に関して公募は必ずしも進んでおらず 今後は 各機関においては 公募の対象となる範囲を拡大していくことが求められる 世界の科学界では異分野との交流 融合による新領域開拓などの変革が進む時期に 我が国の大学が旧来の硬直的運営にとらわれることがあってはならない これらは大学等の運営方針によるところであるが 国はこのような取組みを行う上記のような人事上の取組を含め 大胆な取組を行い 構造改革を目指す大学等に対しては 評価において重視し 財政的に支援を行う 評価において重視するなどして インセンティブを与えるよう検討すべきである 4. 研究人材が活躍する場を拡大 国は 若手研究者層の養成 拡大等を図り 我が国の研究開発能力を強化するため ポストドクター等 1 万人支援計画 を策定し 平成 12 年度までの達成を目指して支援を充実してきた これによりポスドクの人数は拡大し 平成 18 年度調査では 16,394 人となっている ポスドク自体は研究人材のキャリアパスと位置づけられているが 大学等における若手ポストの不足により 若手研究者にとってポスドク後のキャリアパスが明確に持てない状況となっている これについては 上記のように大学等において若手研究者ポストの確保を図るよう取り組むとともに いわゆるアカデミア以外にもポスドクが活躍できる場を見いだすことも必 - 18 -

要である 前述したリサーチ アドミニストレータなど研究以外でもポスドクがその専門性や経験を発揮できるポストや進路を用意するなど 大学等における職種の構造化を再検討する時期にきていると考える また ポスドク自身もアカデミアの中に閉じこもることなく 産業界への進路に目を向け 産業界もそれに積極的に応えるという構造も必要となっている 国がポスドクと産業界等のマッチィングを積極的に支援することも必要である また ポスドクを雇用する大学等は ポスドクを研究人材として使うだけでなく ポスドク後の進路についても相談に応じ 指導を行うよう配慮すべきである 若手研究者のポストを確保するため 一定の年齢を超えた研究者に対する人事 給与上の対応について述べたが 高齢化が進む我が国において これら高齢の研究者の積極的活用は進められるべきであり 人事 給与上の合理化 効率化とセットで 研究のみならず教育指導分野や研究の支援分野を含め 高齢の研究者や定年後の研究者の活用について取り組む必要がある - 19 -

Ⅳ 国際競争力の強化を目指した拠点の形成 現状および課題 現在 国は基礎研究に係わる次のような拠点形成事業を実施している 大学院 ( 博士課程 ) の専攻等において 国際的に卓越した教育研究拠点を形成し 世界をリードする創造的な人材養成の場を創出するための グローバルCOEプログラム 平成 19 年度より実施し 平成 21 年度までの3カ年で41 大学 140 拠点を採択 支援期間は5 年間で 補助金額は年間 5 千万 ~5 億円程度 世界第一線の研究者が結集する優れた研究環境と高い研究水準を誇る世界トップレベル研究拠点の形成を推進するため 先進的なシステム改革等に取り組む大学等に集中的に支援を行う 世界トップレベル研究拠点プログラム (WPI) 研究拠点のイメージとしては世界トップレベルの主任研究者が10~20 人程度 研究者の総数は200 人程度 研究者のうち30% 程度以上は外国人 平成 19 年度に5 件を選定 支援期間は10~15 年 支援額は1 拠点あたり年間平均で14 億円 我が国の教育研究水準の向上を図るため 上記の拠点形成事業の役割は大きく 期待も高い 一方で 拠点ごとの独立性が高く 拠点間のネットワークが形成されていない 選定された拠点と他の大学 研究機関との差が大きくなってきているとの課題も指摘されている 大学のパフォーマンスに関し 論文数のシェアで大学をグループ分けすると 我が国ではシェアが5% 以上である第 1グループが4 大学 シェアが1%~5% である第 2グループが13 大学である 一方 英国では第 1グループが同じ4 大学であるのに対し 第 2グループは我が国の倍の27 大学となっている また 科学研究費補助金の大学別の獲得状況を見ると 獲得額が1 位の大学を100とすると 10 位の大学はその15% 20 位の大学はその6% と差が大きく 偏っていることがわかる 大学の規模も科研費の獲得額に影響があることから この差がそのまま研究力の差を示しているとは簡単は言えないが 米国の同様の調査では 米国の1 位の大学を100とすると 10 位の大学はその36% 20 位の大学はその26% であり その差は我が国の状況より小さくなっている - 20 -

提言 1. 卓越した大学院拠点の形成を目指して 基礎研究の推進にあたって 我が国では大学院の果たす役割が極めて大きく 基礎研究の国際競争力を高めるためには 大学院の世界的規模での競争力強化を図ることが不可欠である この点に関し 第 3 期の科学技術基本計画では 我が国の大学において 研究活動に関する各種評価指標により 世界トップクラスと位置づけられる研究拠点 例えば 分野別の論文被引用数 20 位以内の拠点が 結果として30 拠点程度形成されることを目指す とされている これに対して 科学技術政策研究所が トムソン社のデータベース収録論文について 22の分野ごとに再分類して 分野別に論文被引用総数 20 位以内の我が国大学拠点数を算出した合計数では 2004-2007 年では25 拠点となっている このように拠点数としては目標に近づいていると言えるが この25 拠点は組織としては6 大学 2 研究機関という状況である また 前述したように 我が国の大学院については英国と比較すると第 2グループの層が薄い現状にある 基礎研究における国際競争力を高めるため 世界の第一線の研究者が結集する世界トップレベルの拠点形成を目指しシステム改革に取り組むWPIについて 引き続きその拡充に努めることが必要である また 基礎研究は 多種 多様な取組みにより成果が創出されるものであり 一握りの大学における研究だけでなく 幅広い学問分野を範囲とする層の厚い研究があってこそ 大きな成果がもたらされるものである 現在 上記のような拠点形成事業をはじめ大学院に対する支援が行われるとともに 競争的資金も拡充されてきている 基礎研究の国際競争力を高める観点から 支援を受けている大学院や研究者においては 科学技術基本計画に定めるこの点 教育振興基本計画 ( 平成 20 年 7 月 1 日閣議決定 ) においても 平成 2 3 年度までに 世界最高水準の卓越した教育研究拠点の形成を目指し150 拠点程度を重点的に支援する とされ 現在文部科学省においては これを踏まえて グローバルCOE プログラム を推進している このため 基礎研究の国際競争力を高める観点から 幅広い学問分野において 国は拠点形成への支援に取り組むとともに 支援を受けるすべての拠点においては 世界トッ - 21 -

プクラスと位置づけられる研究拠点 を目指してさらに努力をし 卓越した拠点として広く認められる成果をあげることを強く期待する なお 拠点の 研究力 を評価する際には 拠点における論文総数や論文被引用総数が 拠点の規模に依存することから 研究者数の少ない中規模の拠点の評価指標には必ずしも適切ではない 論文総数や論文被引用総数だけでなく 個々の論文に視点を当てて 研究分野毎の被引用数のランキングで 全体のトップ10% に入る論文が当該拠点にはどの程度あったという数値も指標とする工夫が必要であり 各拠点においてもそのように世界的に認められることを目指してほしい 2. 特色を持った 多様な拠点 形成 基礎研究における国際競争力を高めるためには 世界の第一線の研究者が結集する世界トップレベルの拠点形成を目指しシステム改革に取り組むWPIについて 引き続きその拡充に努めることが必要である これと併せて 幅広い学問分野を対象として教育研究拠点の形成を図っていくためには 限られた数の大規模大学等だけでなく 地域や分野ごとのバランスをとりながら 拠点の多様化を図り 中堅大学や単科大学もそれぞれの強みを生かして 拠点となりうるような仕組みが必要である 大規模でなくても 得意とする分野に特化したキラリと光るような拠点が 全国的に数多く形成されれば 全国から優れた研究者等が集結し その拠点における教育研究の水準がさらに向上するとともに 拠点を有する大学等の全体の活性化にもつながる また このように拠点の多様化を図ることは 若手研究者人材をはじめとした研究人材の流動化にも資することとなる 国際的に卓越した教育研究拠点の形成を目指し 150 拠点程度を重点的に支援するにあたっては このような拠点の多様性にも十分に配慮すべきである これからの拠点整備に当たっては 上記の観点に立って 拠点形成事業の研究面 教育面からの役割分担を踏まえながら明確にした上で 多様な拠点が形成されるように支援していくことが重要である - 22 -

3. 拠点における システム改革 への取組み 拠点の形成は 優れた研究者を集め そこで優れた研究活動が行われることが目的であるが そのためには 研究の推進を後押しするような システム改革 があってこそ 研究水準の向上も可能となるものである 上記のように 世界トップレベル研究拠点プログラム (WPI) は システム改革 に取り組むことを目的としているが 具体的には 拠点長によるトップダウンマネジメントが可能な組織制度 学内の通常の給与水準と異なる能力に見合う給与システムの導入 研究者が研究に専念できるよう種々の管理事務をサポートするためのスタッフ機能の充実 英語の公用語化など これまで当報告書で掲げた提言の内容などに取り組んでいる 同時に WPIでは 外国人研究者を含めた作業部会による現地調査とフォローアップ会合により毎年度 拠点長によるマネージメントを含めて 活動状況の厳格な進捗管理を行っている これ以外にも 例えば これらに加えて 若手研究者の自立支援 優れた外国人研究者の登用 研究機器の共用制度 各研究拠点間のネットワーク構築 さらには新たな組織改革の取組など これらの システム改革 は国内外の優れた研究者や学生を拠点に集結させ 円滑に研究を進めるために不可欠である WPI をはじめとして上記の各種拠点においては 優れた研究の実施のため このような システム改革 に一層積極的に取り組むとともに 今後 新たな拠点形成事業が実施される際には システム改革 に取り組むことを要件とするような制度設計を検討することが望まれる - 23 -