第 4 章 QR コードを利用した在庫管理システムの構築と検証 4.1 この章で述べること第 3 章で述べた事例を安価に導入することが中小零細企業での在庫管理と物流の効率化に寄与することを実証する この実証のため 筆者はプログラミング言語 PHP を利用し 在庫管理システムを構築した また このシステムで必要な QR コードの読み取りには安価な Web カメラとソフトウェアを使用し QR コードの発行には PHP で記述されたフリー素材のプログラムを改造し 本システムに組み込んだ この章では 上述のシステムの仕様を説明すると同時に 倉庫での在庫を管理する方法について 作業を分解し 効率的な商品の配置情報とその利用について実験した結果について述べる 4.2 在庫管理に伴う作業の流れ効率的な物流のためには物流倉庫において商品の情報が効率的に扱われることが重要であることは第 3 章で論じたとおりである このようにデータキャリアによる位置情報の管理によって倉庫内の商品を効率的に管理し 効率的な物流を支えている この方式をできる限り既存の技術やツールを利用することで 安価に効率的な在庫管理システムを構築したい そのため 商品が倉庫に入ってから発送されるまでを作業ごとに分解し 必要な情報と その処理について検証することから考えていく 以下の (1) から (5) は 分解した作業である (1) 商品の仕入れ商品を仕入れると 仕入担当が仕入伝票を起票する 仕入伝票の主な記載情報は商品コード 商品の分類情報 価格である (2) 商品の在庫配置仕入伝票と商品を受け取った倉庫担当者は 商品を空いた棚に配置する その際 仕入伝票に従い Web 画面から商品番号 商品の分類情報 価格とともに 棚の配置記号を入力し 商品在庫データにアクセスし 在庫情報を追加更新する (3) 注文の受付注文受付担当が商品在庫データにアクセスして在庫状況を確認し 注文伝票を作成する (4) 在庫からの商品の集荷作業受け取った注文伝票の商品コードを Web 画面より入力することにより 商品の配置が判明する 情報に従い該当商品を集荷し 発送部署に届ける このとき 商品に貼付された QR コードを読み取ることで 商品在庫データから削除され 発送データとして追記される (5) 商品の発送 本稿では 効率的な物流のための在庫管理が QR コードというデータキャリアの利用によ って成し遂げられることを実証するための提案を行うために (2) および (4) について 安価なシステムを設計および構築し その効果について検証する
4.3 在庫の配置作業と在庫データの追記処理 4.3.1 商品の配置商品の配置が迅速な商品の集荷に繋がり また それを管理することが作業負担の軽減に繋がる そのため 3 章の事例を参考に 筆者は以下のような棚の配置を例として使用する この例では商品倉庫は 8 つの棚で構成されており それぞれにアルファベットの A から E の記号が割り当てられている 図 4.1 商品倉庫の棚の配置図 4.2 各棚の位置情報 ( 正面からの図 ) 次に各々の棚について構造を説明する 棚はそれぞれ 5 段に分けられており 下から上に1~5と番号が振られている さらに各段には A~D の記号が振られている いわば商品の配置は 3 次元座標であらわされると換言できる 図 4.3 の例では A の棚の下から 2 番目の段の C の位置が図示されている この位置は商品在庫データに A2C という座標で記録される もちろん C の位置にはある程度の幅があるため その付近におかれた商品は棚座標が同じである この座標は 1 つの商品を特定するためではなく その商品の置かれているエリアを示すものである ( 注 ) ( 注そのため 商品番号から商品を特定することはできるが 商品の位置からは隣り合った数個の商品が割り出せる しかし この使い方は意味を持たない ) ここに写真があるとよい 棚に複数の商品が並べられており たとえば 人形 ペットボトル 本など いろんな種類の日用品を並べておき その棚板に A3A とか A3B といったシールを貼って置く イメージが必要
4.3.2 商品の配置と在庫データの更新カートに入った商品を梱包し発注用のラベルを印刷して貼付します このときに 商品に貼付されている QR コードを読み取ることで 間違いなく商品を発注することができます 梱包された商品に貼付されている QR コードを読み取ることで 発注処理は完了し 発注 管理データに記録されていた同商品の情報は発注完了データに追記されます これで 商品は運送業者に手渡され 発送が完了します この間のデータの流れは入荷から在庫管理データへ注文依頼により 在庫管理データから発注管理データへ発送により 発注管理データから発送完了データへ 発送完了データには顧客情報や金額などが含まれるため 顧客管理や経理に使用されます 図 4.3 商品情報の入力画面 図 4.4 生成された QR コード
商品情報入力フォーム.php 商品検索プログラム.php 商品在庫データ ( 商品番号 棚座標など ) goodslist.csv 図 4.5 商品在庫データの更新と QR コード生成のデータフロー 仕入部門が作成した伝票と商品を受け取り 伝票の内容を Web 画面から入力すると 商品在庫データが追記され QR コードが作成される 商品をカートに入れて 空いた棚を見つけるために移動しながら行う 空いた棚が見つかった時点で 商品コードなどとともに 商品の棚の位置を入力する この処理を実現するためにひつようなソフトウェアは Web ブラウザと QR コード作成プログラムであるが 干そう法ともにフリーウェアまたはフリー素材である 特に QR コード作成プログラムは PHP で記述されたフリー素材であり これを改造し データ入力フォームを作ることで 商品在庫データが生成され追記される仕組みです この処理の利点は 伝票どおりの属性の入力ができれば 商品属性にもとづいた棚の配 置を考えることがないため 経験の浅いアルバイトスタッフであっても可能な作業だとい うことです
4.3.3 プログラムの説明 図 4.X 商品情報入力フォームのプログラム
図 4.X QR コードの元になる画像データ
4.4 在庫からの集荷作業と発送データ作成処理 4.4.1 発注処理の流れ発注伝票に基づき 商品コードを Web 画面に入力します この画面はインターネットエクスプローラに代表されるすべての Web ブラウザに対応しますから 導入費用は生じません 図 4.6 商品コードの入力例 商品コードを入力し 送信ボタンをクリックすることで 商品コードが次のプログラムに送られ 商品在庫データから在庫の照合を行います データの特徴として 同一商品であっても商品コードは異なります これは 商品の特定を商品の種別ではなく 位置情報で管理するためです ただし 改良の余地として商品種別コードを別途導入することで 同一商品や同等品の検索をより行いやすくすることができます ( 本論では割愛します ) 商品検索プログラム 商品在庫データ ( 商品番号 棚座標など ) goodslist.csv.php 図 4.7 商品コードの検索 DFD その結果 図 12 のように商品が検索され 表示されます 表示された商品の棚番号にしたがって 直接商品をとりに行きます 商品を発見次第 商品に貼付されている QR コードを Web カメラで読み取ります 読み取った QR コードが 該当商品と一致している場合 在庫管理データから対象データが削除されるとともに 同一データ (1 レコード ) が発注管理データに追記されます この繰り返しによって カートに集荷された商品の情報が発注管理データに蓄積され そのデータが発注処理担当者が利用できます 発注担当者の仕事
4.4.2 プログラムの説明
インターネット プログラムの説明 仕入伝票から棚への配置に関するプログラム 注文伝票から商品の集荷に関するプログラム Web カメラを手に持って QR コードに向けて いる写真がほしい 実際に読み取っているという実験の様子は必要 4.5 実験の結果と検証 QR コードの読み取り速度安価なソフトウェアであるが 読み取り速度は速く ストレスはない また 読み間違いも皆無であった 以下のプログラムはフリーソフトです だから これも導入にはコストはかかりません このソフトを Web サーバーに設置するだけで QR コードを自動的に生成できます このプログラムは http://www.swetake.com/qr/qr_cgi.html にフリーで配布されています 生成された QR コードを印刷し 商品に貼付することで 在庫管理に役立てることができます 印刷には ラベル印刷用のシートを使えばよく プリンタも小型のものがあります 専用の機械を購入する必要はありません たとえば ワゴンに商品と ノートパソコン 小型のプリンタを載せ ワゴンを押しながら倉庫を移動し 棚に隙間があれば その隙間に商品を置く前に パソコンに必要なデータを入力します 入力するデータは商品番号と 商品名 棚の座標です このデータか
ら QR コードが作成されるとともに パソコンの在庫管理データに追記されます 商品の発注があったときには パソコンに商品番号を入力すると棚座標が表示されるので その棚の位置に行き 商品をカートに入れます わーとがいっぱいになったところで 集配カウンターに行き 商品の QR コードを読むと データがパソコン画面上に呼び出されますので 処理済 の記入をデータに施します これで 倉庫から商品は消えたことになります QR コードを読み データを処理する場合 安価で操作が簡単なソフトがありますので これを利用します http://www.softadvance.co.jp/qr/ このサイトで販売されている読取装置は Web カメラを転用したものです 専用ソフトと組み合わせても 3 万円以下で導入できます 筆者が調べたところ 他のメーカーでは バーコードリーダーは 10 万円前後しますし そのほかに専用ソフトなども必要になってきます 筆者が提案するフリーソフトとの組み合わせは非常に安価で また 自社の都合に合わせてカスタマイズできますので 中小企業での利用に向いていると考えられます PHP によるデータ入力 プログラム データ 記録 商品在庫データ ( 商品番号 棚座標など ) データ 読む QR コード読み込みソフトエクセル画面でのデータ処理 QR コード 発行 QR コード 読み込み
データ入力プログラムの仕様 以下のような入力画面を作成します この画面は非常に単純な HTML のフォームを使用し ます 入力されたデータはプログラムに転送されます そのプログラムでデータは QR コードに変換されるとともに 在庫データに追記されます 在庫データの構造も非常に単純で カンマ区切りされたデータが単純に追記されるだけです このデータはエクセルで簡単に読むことができます 4.6 この章のまとめ