コンクリート工学年次論文集 Vol.29

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コンクリート工学年次論文集 Vol.32

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S28-1C1000Technical Information

コンクリート工学年次論文集 Vol.30

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目次 1. はじめに 実施工程

16 コンクリートの配合設計と品質管理コンクリートの順に小さくなっていく よって, 強度が大きいからといってセメントペーストやモルタルで大きい構造物を作ろうとしても, 収縮クラックが発生するために健全な構造物を作ることはできない 骨材は, コンクリートの収縮を低減させ, クラックの少ない構造物を造る

3. 第 1 回コンクリート実験 3.1 概要下記の示方配合から設計した現場配合でコンクリートを練り混ぜ, スランプ試験と空気量試験を行う. その後, 圧縮強度試験用としてφ10 20 cm の円柱供試体を 4 本 ( うち 1 本は予備 ), 割裂引張強度試験用としてφ15 15 cm の円柱供試

強度のメカニズム コンクリートは 骨材同士をセメントペーストで結合したものです したがって コンクリート強度は セメントペーストの接着力に支配されます セメントペーストの接着力は 水セメント比 (W/C 質量比 ) によって決められます 水セメント比が小さいほど 高濃度のセメントペーストとなり 接着

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高性能 AE 減水剤を用いた流動化コンクリート 配合設定の手引き ( 案 ) - 改訂版 - 平成 21 年 6 月 国土交通省四国地方整備局

の基準規制値などを参考に コンクリート構造物の長期的な耐久性を確保するために必要なフレッシュコンクリート中の塩化物量の規制値を主要な場合に対して示したものである 従って ここに示していない構造部材や製品に対する塩化物量規制値についてもここで示した値を参考に別途定めることが望ましい 第 3 測定 1.

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4. 再生資源の利用の促進について 建近技第 385 号 平成 3 年 10 月 25 日 4-1

さらに, 乾燥を受けたコンクリート試験体の水和および中性化の程度を確認するため, 化学分析によって水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの生成量を算出した 2. 実験の概要 2.1 使用材料および調合使用材料は表 -1 に, コンクリートの調合およびフレッシュ性状試験結果を表 -2 に示す 2.2 試

骨材体積比 水セメント比 空気量 表 -2 調合絶対容積単位 (l/m 3 ) 水量 (kg/m 3 セメ ) 骨材ント 増粘剤 消泡剤.3.5 セメント : 普通ポルトランドセメント ( 密度 3.16g/cm 3 ) 骨材 : 硬質砂岩砕砂

しょうゆの食塩分測定方法 ( モール法 ) 手順書 1. 適用範囲 この手順書は 日本農林規格に定めるしょうゆに適用する 2. 測定方法の概要 試料に水を加え 指示薬としてクロム酸カリウム溶液を加え 0.02 mol/l 硝酸銀溶液で滴定し 滴定終点までに消費した硝酸銀溶液の量から塩化ナトリウム含有

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ウスターソース類の食塩分測定方法 ( モール法 ) 手順書 1. 適用範囲 この手順書は 日本農林規格に定めるウスターソース類及びその周辺製品に適用する 2. 測定方法の概要試料に水を加え ろ過した後 指示薬としてクロム酸カリウム溶液を加え 0.1 mol/l 硝酸銀溶液で滴定し 滴定終点までに消費

検証されている 4) しかし, この規定では, 凝結を遅延させたスラリー状モルタルの保存を 24 時間以内とし, 翌日の使用を想定しており, 日内の業務に適用することは適切でない 2. 付着モルタル量 2.1 実験の目的運搬車の洗浄モルタルを使用するためには, ドラム内等に付着しているフレッシュモル

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一例として 樹脂材料についてEN71-3に規定されている溶出試験手順を示す 1 測定試料を 100 mg 以上採取する 2 測定試料をその 50 倍の質量で 温度が (37±2) の 0.07mol/L 塩酸水溶液と混合する 3 混合物には光が当たらないように留意し (37 ±2) で 1 時間 連

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品目 1 四アルキル鉛及びこれを含有する製剤 (1) 酸化隔離法多量の次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解させたのち 消石灰 ソーダ灰等を加えて処理し 沈殿濾過し更にセメントを加えて固化し 溶出試験を行い 溶出量が判定基準以下であることを確認して埋立処分する (2) 燃焼隔離法アフターバーナー及びスクラバ

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コンクリート工学年次論文集 Vol.25

コンクリート工学年次論文集 Vol.29

1.2 塩化物量測定方法 a) 試料は フレッシュコンクリート又はそのコンクリートからウェットスクリーニングによって分離したモルタルとし 1~3l 程度で測定対象のコンクリートから代表的な試料を採取するようにする なお 場合によっては付属の加圧ろ過器によってブリーディング水を採取したり フレッシュコ


高 1 化学冬期課題試験 1 月 11 日 ( 水 ) 実施 [1] 以下の問題に答えよ 1)200g 溶液中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 整数 ) 2)200g 溶媒中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 有効数字 2 桁 ) 3) 同じ

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ト (SDS) に示される GHS(Globally Harmonized System) に 1,2) 示される分類に基づき評価した これらのうち, 比較的, 健康面や環境に与える影響が少ないと思われるものは, ポリタングステン酸ナトリウム () と LST 重液である 両者の特徴と相違点は表 -

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3. 使用装置 器具および試薬 3.1 試料調整用装置および器具 (1) 粉砕装置 粗骨材を約 5 mm以下の粒度に粉砕することができるジョークラッシャー (2) 微粉砕装置 5 mm以下の骨材を 300 mm以下の粒度に粉砕することができる円盤型粉砕機又はその他適当な装置 (3) ふるい JIS

コンクリート工学年次論文集 Vol.31

(4) 単位水量 W および細骨材率 s/a の選定 細骨材率 s/a は, 所要のワーカビリティーが得られる範囲内で単位水 量 W が最小となるように, 試験によって定める. 粗大寸法(mm) 骨材の最空気量 AE コンクリート AE 剤を用いる場合 細骨材率 s/a 単位水量 W (kg) AE

W/B (%) 単位粗骨材絶対容積 s/a (%) 表 -1 ベースコンクリートの配合 空気量 (%) 単位量 (kg/m 3 ) VG W (m 3 /m 3 ) 計 C SF S G

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Fr. CO 2 [kg-co 2e ] CO 2 [kg] [L] [kg] CO 2 [kg-co 2e] E E E

品目 1 エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト ( 別名 EPN) 及びこれを含有する製剤エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト (EPN) (1) 燃焼法 ( ア ) 木粉 ( おが屑 ) 等に吸収させてアフターバーナー及びスクラバーを具備した焼却炉で焼却する ( イ )

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を変化させて加速度を調節するための制御盤の 3 点から構成されている 測定の手順としては初めに, 直径が 24cm の試験容器の中でスランプ試験を行い, 振動台にセットして振動をかける その際に試料の上面の沈下量と振動台の加速度, 振動数を記録する コンクリートの締固め性は, コンクリートのコンシス

生コンクリートに関する基本情報 ここでは 生コンクリートの製造 供給態勢 生コンを注文する際に必要となる基礎的知識 コンクリート施工の要点について概説します 白鳥生コン株式会社 記事の無断転載を禁じます Copyright SHIRATORI NAMAKON CORPORATION.

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< イオン 電離練習問題 > No. 1 次のイオンの名称を書きなさい (1) H + ( ) (2) Na + ( ) (3) K + ( ) (4) Mg 2+ ( ) (5) Cu 2+ ( ) (6) Zn 2+ ( ) (7) NH4 + ( ) (8) Cl - ( ) (9) OH -

コンクリート工学年次論文集,Vol.36,No.1,2014 論文内在塩分による塩害と ASR の複合劣化と各種リチウム溶液による電気化学的補修効果 七澤章 *1 櫛田淳二 *2 上田隆雄 *3 *4 塚越雅幸 要旨 :ASR 抑制効果の期待できるリチウムを電気化学的にコンクリートに浸透させる手法を

図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

報道関係者各位 平成 24 年 4 月 13 日 筑波大学 ナノ材料で Cs( セシウム ) イオンを結晶中に捕獲 研究成果のポイント : 放射性セシウム除染の切り札になりうる成果セシウムイオンを効率的にナノ空間 ナノの檻にぴったり収容して捕獲 除去 国立大学法人筑波大学 学長山田信博 ( 以下 筑

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論文再生骨材のアルカリ量の測定方法 鈴木康範 *1 近藤英彦 *2 辻幸和 *3 *4 河野広隆 要旨 : 再生骨材コンクリートのアルカリシリカ反応抑制対策として, アルカリ総量規制もあり得る その際, 再生骨材から出るアルカリ量の把握が必要となる そこで, 有姿の再生骨材を希塩酸によって溶解し, その抽出液のアルカリ金属イオンを測定する方法を検討し, 提案した この方法の精度を検証したところ, 原骨材自体からのアルカリ溶出量が少ない通常の再生骨材では, 測定誤差は実用上支障のない範囲であった 一方, 原骨材自体からのアリカリ溶出量が極めて多い再生骨材では, 設定したアルカリ量に対して高い測定値を与えることが判明した キーワード : 再生骨材, アルカリ量, 測定方法, 付着セメントペースト 1. はじめにコンクリート構造物を解体したコンクリート塊は, 我が国において年間 3500 万 t 近くと膨大な量が発生している その再利用率は 96% を超えている しかし, 用途は舗装用の路盤材および埋戻し材 裏込め材が主なものであり, コンクリート構造物にはほとんど使用されていない そのような観点から, コンクリート塊のコンクリートへのリサイクルを本格的に進めるために, 再生骨材に関するJISが制定されている 1),2),3) JISによれば, アルカリシリカ反応性が無害でない再生骨材 Mを用いる場合は, アルカリ総量規制によってもアルカリシリカ反応の抑制対策が採れる 3) 本論文は, 塩酸によって付着セメントペーストを溶解して抽出したNa 2 OおよびK 2 Oのアルカリ金属イオンを原子吸光光度法によって定量分析する方法 4) を基に, 試料の最大径, アルカリ抽出溶媒液である塩酸の濃度, および試料の質量と塩酸の体積比を検討して, 再生骨材のアルカリ量の測定に適した方法を提案した そしてこの測定方法を, 塩酸による原骨材自体からのア ルカリ溶出量が異なる再生骨材を用いた場合および付着セメントペースト中のアルカリ量が異なる場合についてそれぞれ適用し, その測定精度を検討した 2. 再生骨材のアルカリ量の測定方法の検討手順 2.1 実験概要表 -1 に検討項目と実験条件を示す シリーズ1では, 試製造された再生骨材 5) の最大径, アルカリ抽出溶媒液である塩酸の濃度および再生骨材と塩酸の体積比を変えて, 再生骨材のアルカリ量の測定方法について予備的な検討を行った シリーズ2では, 円柱供試体を粉砕した最大径 0.15mmの再生骨材のアルカリ量を測定するとともに, 原骨材についても同様にアルカリ量を測定し, 原骨材自体から溶出するアルカリ量を補正することを試みた これは, 最大径 0.15mmの試料は測定時の簡便性, 迅速化に優れるので, 骨材自体からのアルカリ量を測定し補正する方法の可否を先ず検討したためである シリーズ3では, 円柱供試体を粉砕した再生骨材を有姿 ( 最大径 5mmまたは 20mm) の *1 住友大阪セメント ( 株 ) セメント コンクリート研究所グループリーダー工博 ( 正会員 ) *2 ( 株 ) 中研コンサルタント関東支店技術部材料調査課 ( 正会員 ) *3 群馬大学工学部建設工学科教授工博 ( 正会員 ) *4 京都大学大学院工学研究科教授工博 ( 正会員 )

まま, 塩酸によって付着セメントペーストを溶 再生骨材の最大径 (5mm 以下または20mm 以下 ) 解し, アルカリ量を測定する方法を検討した シリーズ4では, 原骨材自体からのアルカリ溶 試料の縮分 採取 105 乾燥 出量が極めて多い骨材によって作製した円柱供 試体からの試料を用いて, 付着セメントペースト中のアルカリ量が異なる場合についてシリー 塩酸溶解アルカリ量および不溶残分の定量 ズ 3 で提案したアルカリ量の測定方法の適用性 NO を検討した 定量したアルカリ量 絶乾状態の 2.2 実験方法シリーズ1では, ロッドミル法によって試製造された再生骨材を 105 で乾燥し, その後ジョークラッシャーを用いて粉砕した最大径 5mm と, 試料質量 0.02% YES アルカリ量の定量終了図 -1 アルカリ量の測定手順 さらに振動ミルを用いて粉砕した最大径 0.15mm を試料とした その試料を用いて 表 -1に示す条件で, 原子吸光光度法でア 表 -1 実験条件 試料の質量ルカリ金属イオンを定量分析するととも試料の最塩酸濃度処理時間シリーズ No. と塩酸の体大径 (mm) (mol/l) * 積比に, 不溶残分を測定した 一方, 原骨材に ついても最大径 0.15mm として同様な試験 を行った (2) 0.15 0.11 1:250(1) 20 分 G1 シリーズ2では, コンクリート供試体を 1 S1 注意深く微粉砕した最大径 0.15mm の試料 を用いた これは, 製造された再生骨材は (5) 5 5.7 1:10(50) 20 分 G1 製造時に発生する微粉分の損失によって約 24 時間 / 回 (1) 5 0.11 1:65(100) 2~3 回再生骨材のアルカリ量が変化するので, そ 3 の影響を避けるためである 以降のシリー約 24 時間 / 回 (3) 20 0.11 1:65(500) 2~3 回ズでも, 最大径以外の要因は同様である 約 24 時間 / 回 すなわち, 円柱供試体 (φ100mm 200mm) 4 (1) 5 0.11 1:65(100) 2~3 回 1 本分のコンクリートを練り上げ, ブリキ * 括弧内は試料の質量 (g) を示す. 製軽量型枠に全量投入して成形し, ポリ塩 化ビニリデンフ 表 -2 使用材料 ィルムによって 種類 物性等 上面を密封し, 軽 密度 :3.17g/cm 3,R 2 O 量 :0.61% ( シリーズ 1) 量型枠ごと 60 普通ポルトランドセメント 密度 :3.15g/cm 3,R 2 O 量 :0.32%( シリーズ 2,3) 恒温槽内で 4 日 密度 :3.15g/cm 3, R 2 O 量 :0.42%( シリーズ 4) 間促進養生した S1, 密度 :2.69g/cm 3, R 2 O 量 :0.09%( シリーズ 1,4) 細骨材その後, 脱型した S2, 密度 :2.58g/cm 3,R 2 O 量 :0.42%( シリーズ 2,3) コンクリートを G1, 密度 :2.70g/cm 3,R 2 O 量 :0.17%( シリーズ 1,4) 粗粉砕し 105 粗骨材 G2, 密度 :2.53g/cm 3,R 2 O 量 :0.05%( シリーズ 2,3) で 48 時間乾燥し, G3, 密度 :2.65g/cm 3,R 2 O 量 :0.23%( シリーズ 2,3) ジョークラッシ AE 減水剤 R 2 O 量 :3.4%( 第 1-4 シリーズ ) 再生骨材中の原骨材の種類 (1) 0.15 0.11 1:250(1) 20 分 G1,S1 原粗骨材 原細骨材 (3) 5 0.11 1:10(50) 20 分 G1,S1 (4) 5 0.11 1:20(25) 20 分 G1,S1 2 (1) 0.15 0.11 1:250(1) 20 分 G2,G3,S2 G2,G3,S2 (2) 5 5.7 1:5(100) 3 時間 G2,G3,S2 G3,S2 G1,S1

表 -3 コンクリート配合およびアルカリ量 シリー 単位量 (kg/m 3 ) 原骨材 ズ 水 セメント 細骨材 粗骨材 混和剤 アルカリ量 の種類 1 176 320 839 989 1.28 6.0 G1,S1 2,3 176 320 804 925 1.28 6.0 G2,S2 176 320 804 969 1.28 6.0 G3,S2 4 176 320 838 988 1.28 2.0,4.0,6.0 G1,S1 ャーおよび振動ミルを用いて最大径 0.15mm に微粉砕し分析用試料とした その試料を用いて表 -1に示す条件でアルカリ金属イオンを定量分析するとともに, 不溶残分を測定した 原骨材については, 塩酸濃度を 0.11mol/l または 5.7mol/l として再生骨材から付着セメントペーストを溶解させた上で, 再生骨材と同様な分析を行った シリーズ3では, 図 -1に示す手順によって, 表 -1に示す条件でアルカリ金属イオンを塩酸によって抽出し, 抽出液のアルカリ金属イオン量が絶乾状態の試料質量の 0.02% 以下となるまで繰返し, 定量分析した 抽出の繰返し回数は最大 3 回であり, 試験に要した時間は1 試料について最長 6 日間程度である 試料の最大径は, 細骨材相当として 5mm および粗骨材相当として 20mm の2 種類とした コンクリート供試体の作製方法はシリーズ2と同一であるが, ジョークラッシャーを用いて, 所定の最大径に粉砕した シリーズ4では, アルカリシリカ反応性が極めて高く, 塩酸による骨材自体からのアルカリ溶出量も極端に多い骨材を用いて, 再生骨材コンクリートのアルカリ量を 2.0,4.0,6.0kg/m 3 の 3 水準に変化させてコンクリート供試体を作製した 再生骨材コンクリートのアルカリ量は, 水酸化ナトリウムによって調整した そのコンクリート供試体はシリーズ2と同じ促進養生を行い, 最大径を 5mmとし, シリーズ3で提案した条件でアルカリ金属イオンを定量分析した 促進養生においてアルカリシリカ反応を少しでも進行させるように, 養生期間は 4 日から 7 日へ延長した なお,2.0,4.0,6.0kg/m 3 の原コンクリートのアルカリ量に相当する単位水量中の アルカリ濃度減少量 (mmol/l) 800 700 600 500 400 300 200 100 無害でない 0 1 10 100 1000 溶解シリカ量 (mmol/l) 図 -2 アルカリシリカ反応性 ( 化学法 ) の試験結果 化学法で 無害でない と判定された骨材は, 迅速法の結果も示す アルカリ金属イオン濃度となるように, 調整した水酸化ナトリウム溶液または蒸留水に原骨材を浸漬し, 供試体と同じ促進養生 分析条件によって, 原骨材から溶出するアルカリ金属イオンを定量分析した 2.3 使用材料および配合使用材料を表 -2に示す また, コンクリートの配合およびアルカリ量を表 -3に示す 配 合は水セメント比を 55%, 細骨材率を 46%, 単位水量を 176kg/m 3, 単位セメント量を 320kg/m 3, 空気量を 4.5% に統一した 骨材は細骨材を2 種類, 粗骨材を3 種類用いており, それらのアルカリシリカ反応性を図 -2に示す 3. 実験結果 3.1 シリーズ1 S1,G1( 迅速法 : 無害でない ) G2( 迅速法 : 無害でない ) G3( 迅速法 : 無害 ) S2 無害 図 -3に再生骨材のアルカリ量の測定値に及ぼす諸要因の影響を示す 最大径 0.15mm の試料は, 最大径 5mm の試料と比較して再生骨材のアルカリ量が多くなっている 原骨材自体から溶出するアルカリ量に着目すると, 粗骨材ではそ

の割合が特に多く, 無視できない 最大 0.50 径 5mm の再生粗骨材の試料について塩 S1のアルカリ量の設計値 ( 水分蒸発有り ) 0.45 S1のアルカリ量の設計値 ( 水分蒸発無し ) 酸の濃度を 0.11mol/l から 5.7mol/lに高め ると, そのアルカリ量は増加するが, 原骨材から溶出するアルカリ量を増加させている可能性がある なお, 試料の質量と塩酸の体積比が再生骨材のアルカリ量に及ぼす影響は比較的小さい 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 G1のアルカリ量の設計値 ( 水分蒸発有り ) G1のアルカリ量の設計値 ( 水分蒸発無し ) 再生骨材の不溶残分, 原骨材の不溶残 0.05 G1 S1 G1 S1 G1 S1 G1 S1 G1 分および設定したセメントペーストの 再生骨材の 0.15mm 原骨材 0.15mm 5mm 5mm 5mm 最大径アルカリ量から, 式 (1) によって再生骨材塩酸濃度 0.11mol/l 0.11mol/l 0.11mol/l 0.11mol/l 5.7mol/l に対するアルカリ量の質量割合 ( 以下, 試料質量と 1:250 塩酸体積の比 1:250 1:10 1:20 1:10 アルカリ量設計値 ) を求めた ここで, 図 -3 再生骨材のアルカリ量測定値に及ぼす実験条件の影響 アルカリ金属イオンはセメントペース ト中にのみ存在すると仮定し, セメント 0.50 0.45 ペーストのアルカリ量は, セメントペー (9.0) スト部分から水分蒸発が無い場合と単 0.35 位水量のうち単位セメント量の 40% に 0.30 (6.3) アルカリ量の設計値 0.25 相当する水分が結合水としてコンクリ (4.8) (5.7) (4.4) (4.4) 0.20 ートに固定され, 残りが全て蒸発した場 0.15 合との2 通りを設定した なお, 再生骨 材の製造時に原粗骨材が破砕され再生 0.05 G2 G3 G2 G3 G2 G3 細骨材に混入すること, および再生粗骨 原骨材洗出し塩酸濃度 0.11mol/l 材には原粗骨材以外にセメントペース原骨材洗出し塩酸濃度 5.7mol/l 補正前補正後補正後 トと共に原細骨材が付着していること 図 -4 シリーズ2の再生骨材のアルカリ量の測定結果 を考慮して, 原骨材の不溶残分は原粗骨 図中の括弧内の数値はアルカリ量の単位量換算値 (kg/m 3 ) 材および原細骨材の不溶残分の平均値 を用いた A ra =(1-I ra /I a ) A p (1) 3.2 シリーズ2 シリーズ2における再生骨材のアルカリ量の ここで,A ra: 再生骨材のアルカリ量設計値 (wt%) I ra : 再生骨材の不溶残分 (wt%) I a : 原骨材の不溶残分 (wt%) A p : 設定したセメントペースト中のアルカリ量 (wt%) 上述のごとく求めた再生骨材のアルカリ量設 測定値と設計値を図 -4に示す ここで示す再生骨材のアルカリ量設計値 (wt%) は, 練混ぜ時において設定したコンクリート供試体のアルカリ量を 105 で乾燥したコンクリート供試体の質量で除したものであり, シリーズ2 以降では同一の定義である なお, アルカリ量を単位 計値は図 -3 中に示したが, 測定値は設計値よりかなり小さくなった これは, 再生骨材のアルカリ量を算定する際の仮定にも問題があるものの, 再生骨材の製造時における微粉分の損失などの影響も大きいと考えられた 量に換算する場合, 練混ぜ時におけるコンクリート供試体の体積で除して求めた アルカリ含有量が少ない原骨材 G2 を用いた再生骨材では, 測定値と設計値がほぼ一致した 一方, アルカリ含有量が多い原骨材 G3 を用いた 再生骨材のアルカリ量 (wt%) 再生骨材のアルカリ量 (w t %)

再生骨材では, アルカリ量の測定値が設 計値より大きくなった これは, 試料を最大径 0.15mm としたために, 原骨材 0.50 0.45 G3 からアルカリ金属イオンの溶出が増 0. 35 (6.5) (6.9) アルカリ量の加したと考えられる また, 再生骨材か 0.30 (5.8) (5.6) 設計値 ら原骨材を洗い出す際の塩酸濃度は, 原 0.25 (5.7) 0.20 骨材のアルカリ含有量が多い場合アル 0.15 カリ量の測定値を大きくするが, 原骨材 のアルカリ含有量が少ない場合に影響がなかった 0.05 G2 G3 G2 G3 G3 塩酸濃度 0.11mol/l 塩酸濃度 5.7mol/l 塩酸濃度 0.11mol/l 塩酸で洗い出した原骨材を最大径 再生細骨材 再生細骨材 再生粗骨材 0.15mm としてアルカリ溶出量を求め, 図 -5 シリーズ3の再生骨材のアルカリ量の測定結果 図中の括弧内の数値はアルカリ量の単位量換算値 (kg/m 3 ) 再生骨材のアルカリ量を補正しても, 測 定値と設計値との誤差はやや大きい す補正無し 0.35 なわち, 最大径 0.15mm の再生骨材では蒸留水浸漬の値で補正 (6.7) アルカリ溶液浸漬の値で補正アルカリ量の測定精度に問題があり, 原 0.30 骨材を塩酸によってセメントペースト 0.25 (5.2) を取り除いた上でアルカリ溶出量を測 0.20 (5.1) 定し補正しても, 精度は改善できない 0.15 (3.5) (3.6) 3.3 シリーズ3 (2.7) シリーズ3における再生骨材のアル (1.8) 0.05 (1.3) (1.8) カリ量の測定値と設計値を図 -5に示 す 最大径 5mm の試料では, 原骨材の 0.05 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 アルカリ含有量にかかわらず, 測定値は設計値にほぼ近い また, 塩酸濃度が アルカリ量の設計値 (wt%) 図 -6 シリーズ4のアルカリ量の測定結果図中の括弧内の数値はアルカリ量の単位量換算量 (kg/m 3 ) 5.7mol/l より 0.11mol/l と薄いと, 処理時 間がかかるものの原骨材からの溶出が抑制されるので, 測定値は設計値により近くなった 最大径 20mm の試料では, 原骨材のアルカリ含有量が多い再生骨材のみを対象とし塩酸濃度が 0.11mol/l の場合しか測定していないが, 測定値は設計値にほぼ等しかった したがって, 再生骨材のアルカリ量の測定方法として, 絶乾状態の有姿の試料を用いてアルカリ金属イオンを 0.11mol/l の希塩酸によって抽出し, 抽出液のアルカリ金属イオン量が試料質量の 0.02% 以下となるまで繰返し, 定量分析する方法が適切といえる なお, この方法は骨材の有姿の試料を用いるので, 塩酸によって溶出する原骨材中のアルカリ金属イオン量を補正す る必要がない 3.3 シリーズ4 シリーズ4における再生骨材のアルカリ量の測定値と設計値を図 -6に示す 測定値は設計値よりも大きくなっており, 細骨材相当の最大径 5mm の試料を用いても, アルカリ金属イオンが溶出しやすい原骨材の場合にはその影響が現れる 再生骨材のアルカリ量が多い方が設計値との誤差が少なくなっている 再生骨材のアルカリ量が多いと, アルカリシリカ反応が進みアルカリシリカゲルの生成量が多くなるが, 0.11mol/lの希塩酸ではSiO 2 の網目構造中に存在するアルカリ金属イオンの全量が溶出しない 6) したがって, 原骨材からアルカリ金属イオンが 再生骨材のアルカリ量 (wt %) アルカリ量の測定値 (wt%)

溶出したにもかかわらず, アルカリ量の測定値と設計値の差が小さくなったと解釈できる また, 図 -6 中には原骨材からの溶出量を測定して補正した値も示してある 蒸留水に浸漬した後供試体と同じ促進養生を行い, 原骨材からのアルカリ金属イオンの溶出量を測定して補正した場合には, 原コンクリートのアルカリ量が 2.0kg/m 3 では測定値が設計値に近いが, 原コンクリートのアルカリ量が増加するに従い, 測定値は設計値より小さくなる また, 水酸化ナトリウム溶液に浸漬した後供試体と同じ促進養生を行い, 原骨材からのアルカリ金属イオンの溶出量を測定して補正した場合には, 測定値が設計値を大幅に下回る アルカリ溶液は原骨材のアルカリシリカ反応が進行して生成されたアルカリシリカゲルをSi 共々溶解する 6) ので, 原骨材からアルカリ金属イオンを溶出させる しかも, 原骨材の表面がアルカリ溶液に接触する割合は, コンクリート中よりも水酸化ナトリウム溶液中の方が大きい したがって, 原骨材からのアルカリ金属イオンの溶出が一層促進され, アルカリ量の補正量がコンクリート中よりも過大となり, 設計値と補正した測定値の誤差が大きくなったと思われる すなわち, 原骨材からのアルカリ金属イオンの溶出量が極めて多い場合, コンクリート中でのその溶出量を正確に測定することは極めて困難である したがって, 本論で提案したアルカリ量の測定方法を原骨材からのアルカリ金属イオンの溶出量が極めて多い再生骨材に適用すると, 設計値よりやや大きな測定値を与えることを考慮する必要がある ただし, 測定値はアルカリシリカ反応抑制対策上では安全側の誤差を与える 4. まとめ本研究は, 再生骨材コンクリートのアルカリの総量規制を行う上で必要な再生骨材のアルカリ量の測定方法を提案することを目的として行ったものであり, 得られた知見を以下に示す (1) 最大径 0.15mm の試料では, 再生骨材のアル カリ量の測定精度が不十分であり, 原骨材を塩酸によってセメントペーストを取り除いた上でアルカリ溶出量を測定し補正しても, その精度を改善できない (2) 再生骨材のアルカリ量の測定方法として, 絶乾状態の有姿の試料を用いてアルカリ金属イオンを 0.11mol/l の希塩酸によって抽出し, 抽出液のアルカリ金属イオン量が試料質量の 0.02% 以下となるまで繰返し, 定量分析する方法が, 測定精度上適切といえる (3) 提案した測定方法によっても, 原骨材からのアルカリ金属イオンの溶出量が極めて多い再生骨材ではアルカリ量の設計値に対して大きな測定値を与えるので注意が必要である ただし, その測定値はアルカリシリカ反応抑制対策上では安全側の誤差を与える 謝辞本研究は, 経済産業省の委託を受けた ( 社 ) 日本コンクリート工学協会における 再生骨材標準化委員会 ( 委員長 : 町田篤彦埼玉大学教授 ) の活動の一環として行われたものである ここ に付記して深甚の謝意を表する 参考文献 1) JIS A 5021( コンクリート用再生骨材 H): ( 財 ) 日本規格協会,2005.3 2) JIS A 5023( 再生骨材 L を用いたコンクリート ):( 財 ) 日本規格協会,2006.3 3) JIS A 5022( 再生骨材 M を用いたコンクリート ):( 財 ) 日本規格協会,2007.3 4) ( 社 ) セメント協会 : コンクリート専門委員会報告 F-18,pp.356-362,1967.9 5) ( 社 ) 土木学会 : 電力施設解体コンクリートを用いた再生骨材コンクリートの設計施工指針 ( 案 ),pp.101-102,2005.6 6) 横山速一 井上正 : 模擬ガラス固化体によ る高レベルガラス固化体の健全性評価その2, 電力中央研究所報告 282022,pp.1-6, 1982.11