分類保存処理薬剤の種類有効成分特徴水仕上がりは木材色乳化材保存剤 仕上がりは木材色油溶 139 表 1 我が国で汎用されている加圧用木材保存剤の有効成分と処理木材の特徴 溶性化合物系 DDAC アゾール 第四級アンモニウ 第四級アンモニウム化合物系 DDAC 銅 アゾール化合物系 銅 第四級アンモニ

Similar documents
AQお知らせ181225規程改正

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐火性能の評価 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLTによる木造建築物の設計法の開発 ( その 3) ~ 防耐火性能の評価 ~ 建築防火研究グループ上席研究員成瀬友宏 1 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐

強化 LVL 接合板および接合ピンを用いた木質構造フレームの開発 奈良県森林技術センター中田欣作 1. はじめに集成材を用いた木質構造で一般的に用いられている金物の代わりに スギ材単板を積層熱圧した強化 LVL を接合部材として用いる接合方法を開発した この接合方法では 集成材と接合板である強化 L

- 始めに - 近年 スギ ヒノキをはじめとする間伐材を土木構造物に使用する事例が多く見られる 奈良県においても間伐材は各種公共工事に使用されており 治山事業をはじめとする森林土木工事の構造物にも多くの施工実績がある そこで 当センターでは間伐材のさらなる利用推進を目的に 間伐材を土木資材として利用

Ⅰ 異種金属接触腐食 ( 異種金属同士の接触による電食 ) 住宅外装部において めっき鋼板や塗装鋼板と異種金属材料が接触し電食が懸念される部分には 鋼板を取り付ける金具 ( ボルト等 ) 周辺 屋外のドレンやダクトの周辺 雪止め周り 増築屋根や壁の継ぎ目 雨が落ちる部分 ( 避雷針周り 上屋からの落

資料4-3 木酢液の検討状況について

<4D F736F F F696E74202D D A415390BB8DDE956982CC89DB91E8816A E9197BF5B93C782DD8EE682E890EA97705D>

S28-1C1000Technical Information

高性能 AE 減水剤を用いた流動化コンクリート 配合設定の手引き ( 案 ) - 改訂版 - 平成 21 年 6 月 国土交通省四国地方整備局

平成 30 年度版木材標準設計単価表 一般社団法人香川県木材協会 高松市郷東町 TEL FAX 目次 P 1 P 2 P 3 P 4 P 5 P 6

品目 1 四アルキル鉛及びこれを含有する製剤 (1) 酸化隔離法多量の次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解させたのち 消石灰 ソーダ灰等を加えて処理し 沈殿濾過し更にセメントを加えて固化し 溶出試験を行い 溶出量が判定基準以下であることを確認して埋立処分する (2) 燃焼隔離法アフターバーナー及びスクラバ

目次 1. 適用範囲 1 2. 引用規格 1 3. 種類 1 4. 性能 2 5. 構造 2 6. 形状 寸法 3 7. 材料 3 8. 特性 4 9. 試験方法 検査 6 ( 最終ページ :11)

83

国土技術政策総合研究所研究資料

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名宮口克一 論文題目 塩素固定化材を用いた断面修復材と犠牲陽極材を併用した断面修復工法の鉄筋防食性能に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 塩害を受けたコンクリート構造物の対策として一般的な対策のひとつである, 断面修復工法を検討の対象とし, その耐久性をより

ハーフェクトハリア_H1-H4_ _cs2.ai

1.1 テーラードブランクによる性能と歩留りの改善 最適な位置に最適な部材を配置 図 に示すブランク形状の設計において 製品の各 4 面への要求仕様が異なる場合でも 最大公約数的な考えで 1 つの材料からの加工を想定するのが一般的です その結果 ブランク形状の各 4 面の中には板厚や材質

強度のメカニズム コンクリートは 骨材同士をセメントペーストで結合したものです したがって コンクリート強度は セメントペーストの接着力に支配されます セメントペーストの接着力は 水セメント比 (W/C 質量比 ) によって決められます 水セメント比が小さいほど 高濃度のセメントペーストとなり 接着

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

第 15 章コンクリート補修工 15-1 ひび割れ補修工 (1) ひび割れ表面処理工 ( 研磨工 ) 15-1 (2) ひび割れ低圧注入工 15-1 (3) ひび割れ充填工 目地補修工 (1) 成型ゴム挿入工 15-4 (2) 充填工 既設水路断面修復 表面被

ポリプロピレン繊維の取り扱いについて 2016 年 10 月 7 日改訂 日本化学繊維協会

HP_GBRC-141, page Normalize_3 ( _GBRC-141.indb )

熱処理油カタログ.xls

<4D F736F F D208E9197BF D D88DDE C9F8FD892B28DB882CC8EC08E7B8FF38BB52B2B2E646F63>

Microsoft Word - H No910建設省告示第1452号.doc

ミガキ ( 丸鋼 ) は は自社 は不可 (7/16インチ) (1/2インチ) (9/16インチ) (

4. 加熱食肉製品 ( 乾燥食肉製品 非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品以外の食肉製品をいう 以下同じ ) のうち 容器包装に入れた後加熱殺菌したものは 次の規格に適合するものでなければならない a 大腸菌群陰性でなければならない b クロストリジウム属菌が 検体 1gにつき 1,000 以下でなけ

主な木材製品の出荷額の内訳を図6 に示しました 二〇一六年の出荷額約二 七兆円の内訳を割合で示していますが 一般製材 合板 集成材 木材チップ等は総務省による統計)1 (を パーティクルボード 繊維板等は経済産業省の統計)7 (を利用して 総合的に作成したものです 図3 (二月号

1 監督 検査の意義監督 検査は 会計法 に基づき 契約の適正な履行を確保するための手段です 監督は 通常 製造又は役務の請負契約の履行過程において 必要な立会 工程管理 材料 部品等の審査又は試験 細部設計書の審査 承認等の方法により 検査では確認できない部分について 契約物品に対する要求事項が確

平成22年度事故情報収集調査結果について(概要速報)

Taro-121 工業包装(H17改正)

鋼道路橋防食便覧 目次 A5 判 592 頁本体価格 7,500 円 平成 26 年 3 月 31 日初版第 1 刷発行平成 29 年 5 月 30 日第 3 刷発行 第 Ⅰ 編共通編 第 1 章総則 Ⅰ 総論 Ⅰ 適用の範囲 Ⅰ 用語 Ⅰ-4 第 2 章鋼

一体接合一体接合の工法工法 TRI System~ との一体接合技術 ~ 本技術は 新しい考え方によるとの一体接合技術です 本技術の特徴は への接合膜形成技術とインサート成形技術を用いて 接着剤を使わずにとを一体接合させるところにあります 本技術による一体接合方法の一例をモデル化すると 図のようにな

CDポスター目次.indd

Microsoft Word - H2118Œ{‚Ì doc

POCO 社の EDM グラファイト電極材料は 長年の技術と実績があり成形性や被加工性が良好で その構造ならびに物性の制御が比較的に容易であることから 今後ますます需要が伸びる材料です POCO 社では あらゆる工業製品に対応するため 各種の電極材料を多数用意しました EDM-1 EDM-3 EDM

ポリエーテル系非イオン界面活性剤

<4D F736F F D FB89BBBAC8B8C0B082CC FB964082C982C282A282C45F F2E646F63>

<4D F736F F F696E74202D F955D89BF8AEE8F AEE8F CC8A F E B835794D48D8693FC82E8816A2E >

防炎表紙

KEN0109_施工技術の動向-三.indd

図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

図 2 製材と木質材料の製造工程 ( 林知行 : エンジニアードウッド [2] をもとに作図した ) 用語説明 PSL(Parallel Strand Lumber の略 ): 単板を幅方向に裁断して製造したストランド ( 最小厚さが 6.4mm 以下, かつ平均長は最小厚さの 300 倍以上 )

極厚H形鋼・NSGH®鋼・NS-TWH®鋼

研究報告61通し.indd


Q5. 工事担任者資格が必要な工事とは どのようなものですか A5. 利用者が電気通信サービスを利用するための端末設備等の接続に係る工事であり 具体的には 事業用ネットワークへの接続及びこれに伴う調整並びに屋内配線工事など端末設備等の接続により通信が可能となる一切の工事です この工事には 事業用ネッ

資バルブの材質 青銅 ( 砲金 ) バルブ 料JIS H 5111 CAC402 (BC2) CAC403 (BC3) CAC406 (BC6) CAC407 (BC7) 銅 (Cu) 錫 (Sn) 化学成分 (%) 機械的性質 亜鉛 (Zn) 鉛 (Pb) その他 引張強さ 伸び (N/mm2)

バリデーション基準 1. 医薬品 医薬部外品 GMP 省令に規定するバリデーションについては 品質リスクを考慮し 以下の バリデーション基準 に基づいて実施すること 2. バリデーション基準 (1) バリデーションの目的バリデーションは 製造所の構造設備並びに手順 工程その他の製造管理及び品質管理の

4 文化財の虫菌害 67 号 ( 2014 年 6 月 ) て, 自分たちが安全に出来る自信が無い薬剤は絶対に使用しないようにしましょう 4. 油断大敵皆さんは, ヒヤリ としたり, ハット して, 事故にならなくてよかった と思ったことはありませんか 誰にでもあるこの経験を ヒヤリ ハット と言い

Microsoft Word - バイオマスプラ・ポジティブリスト作成基準(正)

<4D F736F F F696E74202D D95698EBF B C8B4B8A698E8E8CB181698D828BB4816A44325F D9770>

の差については確認できないが 一般的に定温で流通している弁当の管理方法等についてアンケートにより調査した その結果 大部分の事業者が管理温度の設定理由として JAS 規格と同様に食味等の品質の低下及び微生物の繁殖を抑えることを挙げ 許容差は JAS 規格と同様に ±2 としていた また 温度の測定方

作成 承認 簡単取扱説明書 ( シュミットハンマー :NR 型 ) (1.0)

<4D F736F F D E C982A882AF82E98E E968D8082D682CC91CE899E82C982C282A282C4>

Microsoft Word - basic_15.doc

Description_

018QMR 品質計画書作成規程161101

L型擁壁 宅造認定 H=3 5m ハイ タッチウォール KN0202-石乱積み 透水層 止水コンクリート 敷モルタル 基礎コンクリート 土粒子止めフィルター 直高H3.0m超 最大5.0mの プレキャストL型擁壁 宅造法に基づく国土交通大臣認定取得商品です 社団法人全国宅地擁壁技術協会による工場認

< F2D E7B8D FC90B3816A2E>

食肉製品の高度化基準 一般社団法人日本食肉加工協会 平成 10 年 10 月 7 日作成 平成 26 年 6 月 19 日最終変更 1 製造過程の管理の高度化の目標事業者は 食肉製品の製造過程にコーデックスガイドラインに示された7 原則 12 手順に沿ったHACCPを適用して製造過程の管理の高度化を

Microsoft PowerPoint - 薬学会2009新技術2シラノール基.ppt

Transcription:

138 木材 木質材料の加圧式保存処理方法 蒔田 章 日本木材防腐工業組合 1. はじめに木材に発生する劣化を防ぐ処理には, 表面処理 ( 木材の表面に塗布や吹付と言った簡易な方法で薬液を付着させる処理 ), 加圧注入処理 ( 専用の大型設備で機械的圧力差を利用した高度な保存処理 ) がある どちらの処理方法を採用するかは, 木材をどのような環境で使用し, どの程度の耐用年数を期待するのかによる 本稿は, 木材内部まで保存剤を注入することが出来る加圧注入処理について, 設計者 施工者が保存処理木材を選択するとき, どのような品質のものを選べば良いのか, どのように使えば良いかを判断するときの参考にして頂きたく作成した 2. 木材保存剤木材はそれが使われる使用環境, 例えば接地 ( 木材が水分を受け易い地面 コンクリートと接する環境 ) 暴露( 木材に雨がかかる環境 ), 非接地 ( 木材が水分を受け易い地面 コンクリートと接しない環境 ) 暴露, 非接地 非暴露 ( 木材に雨がかからない環境 ) によって, 劣化外力に大小がある 木材の生物劣化を防ぐには, 木材保存剤の種類, 木材保存剤の木材への注入量 浸潤度を考えて保存処理を行う必要がある 2.1 加圧注入処理用木材保存剤の種類加圧注入処理に用いる木材保存剤は JIS K 1570 ( 木材保存剤 ) 1) に規定されている 2010 年度版に記載されている木材保存剤について, その種類, 処理木材の特徴, 有効成分の概要を表 1に示した 木材保存剤は, 水溶性, 乳化性, 油溶性及び油性木材保存剤に区分されている 水溶性は水に溶かして使用する製剤, 乳化性は非水溶性の成分を乳 化した製剤で水で希釈して使用する 油溶性木材保存剤は有効成分を有機溶媒に溶かして使用する製剤で, 乾式注入処理で使用する クレオソート油に代表される油性木材保存剤は, それ自体が油状の木材保存剤で, 石炭の乾留で得られるコールタールを蒸留して製造される 現在汎用されている主な木材保存剤には, 第四級アンモニウム化合物系 (AAC), 銅 第四級アンモニウム化合物系 (ACQ), 銅 アゾール化合物系 (CUAZ) などがある 2.2 金属等との相互作用保存処理木材と金属等の相互作用について検討した結果, 金属類を含まない AAC 系や AZN 系木材保存剤ではコントロール材と同様に金属腐食性が起こりにくいこと, 銅を含有する ACQ や CUAZ 等の木材保存剤では AAC 系より激しい金属腐食性が見られたこと, 最近開発された防錆処理した接合金物では AAC 系や銅系木材保存剤でも, 金属腐食性が少なかった これらの結果を 長期耐用化住宅のための仕様書 に反映させた 2) 3. 加圧注入法 3.1 前処理としてのインサイジングと乾燥防腐品質の安定した保存処理木材を製造するには, 注入前の素材管理が重要である 注入前の主な前処理には素材のインサイジングと乾燥があり, とりわけインサイジングは製品の品質を左右する重要なポイントである インサイジングは古くから, 品質の安定化を図る目的で枕木の製造で使われてきた技術である インサイジングは, 小さな刃物で材料の表面に傷をつけ, 木材表面から, 木材保存剤の均一な浸潤を確保するための前処理である

分類保存処理薬剤の種類有効成分特徴水仕上がりは木材色乳化材保存剤 仕上がりは木材色油溶 139 表 1 我が国で汎用されている加圧用木材保存剤の有効成分と処理木材の特徴 溶性化合物系 DDAC アゾール 第四級アンモニウ 第四級アンモニウム化合物系 DDAC 銅 アゾール化合物系 銅 第四級アンモニウム化合 酸化銅 物系 BKC ほう素 第四級アンモニウム ホウ酸 ム ネオニコチノイド化合物 系 アゾール 第四級アンモニウム 非エステルピレスロイド化合物系 酸化銅シプロコナゾール シプロコナゾール DDAC イミダクロプリド シプロコナゾール DMPAP エトフェンプロックス 第四級アンモニウム 非エス DMPAP テルピレスロイド化合物系 シラフルオフェン DDAC を主成分とした木材保存剤で, 処理木材は木材色の仕上がり 銅を主成分とし, 銅耐性菌対策としてアゾールを配合した木材保存剤 青緑色に仕上がる 銅と BKC を主成分とした木材保存剤 処理木材は青緑色の仕上がり ホウ酸と DDAC を主成分とした木材保存剤 処理木材は木材色の仕上がり DDAC にアゾールとイミダクロプリドを配合した木材保存剤 処理木材は木材色の仕上がり DMPAP にアゾールとエトフェンプロックスを配合した木材保存剤 仕上がりは木材色 DMPAP にシラフルオフェンを配合した木材保存剤 性ナフテン酸銅系 ナフテン酸銅 処理木材はナフテン臭を有する 仕上がりは緑色 ~ 暗緑色を呈する ナフテン酸亜鉛系 ナフテン酸亜鉛 処理木材はナフテン臭を有する 仕上がりは木材色 バーサチック酸亜鉛 ピレス バーサチック酸亜鉛 脂肪酸金属塩にピレスロイド系殺虫剤を配合した木 ロイド系 ペルメトリン 性ナフテン酸銅系 ナフテン酸銅 ナフテン酸亜鉛系 ナフテン酸亜鉛 アゾール ネオニコチノイドシプロコナゾール乾式注入処理用の木材保存剤で, 化合物系イミダクロプリド仕上がりは木材色油性クレオソート油コールタール蒸留物 処理木材はナフテン臭を有す 仕上がりは木材色 乾式注入処理用 処理木材はナフテン臭を有する 仕上がりは緑 ~ 暗緑色 乾式注入処理用 仕上り褐色, クレオソート臭あり 有害なベンゾピレン類は規制値以下 インサイジングを行う上での留意点としては, 強度低下の問題が懸念されている 製材の日本農林規格 ( 以下 製材 JAS という) ではインサイジングの取り扱いについて インサイジングは欠点と見なさない ただし, 曲げ強度性能の低下率はおおむね10% を超えないこと と規定されている 保存処理木材の製造工場では,10% 以上の強度低下がないことが確認されたインサイジング機を用いてインサイジング作業を行っている 一般的な刃物の形状は幅 10mm 長さ 10~ 15mm 厚さ2~4mm で, インサイジング密度は3,000~4,000 個 /m 2 である インサイジング機 ( 刃物部分 ) を写真 1に, パターンを写真 2に, 浸透性に及ぼすインサイジングの効果を写真 3に示す 注入性改善策としてインサイジング技術は重要 であるが, 樹種によって注入性に難易があることは, よく知られた事実である 森林総合研究所監修 木材工業ハンドブック第 4 版 3) によれば, 写真 1 製材用インサイジング加工機 ( 刃物部分 )

140 写真 2 写真 3 代表的な製材用インサイジングのパターン * インサイジング密度 :3,500 個 /m 2 インサイジング加工が木材保存剤の浸透性に及ぼす効果左 : ヒノキ ( インサイジングなし ) 右 : ヒノキ ( インサイジングあり ) 国産材樹種では, 注入性がやや良好な樹種として スギ が, 困難な樹種として エゾマツ, トド マツ, ヒノキ が, 極めて困難な樹種として カ ラマツ が記載されている カラマツでは, 所定 の条件で加圧注入処理しても製材 JAS の K3 基 準 (4.1 参照 ) を満足することは難しいことから, 乾燥度合いの調整, 浸透性良好な木材保存剤の選 択, インサイジングの高密度化 (7,000~8,000 個 / m 2 ) 等の対策 4) が必要である その例として, 乾式処理では有機溶媒に有効成分を溶かしている ため, 薬液の浸透性が高く, インサイジング密度 を高密度化することで, カラマツ集成材への保存 処理を実用化している 一般的に加圧注入処理では注入前材料の乾燥管 理は,JAS や AQ に定める保存処理基準を満足 した製品を製造するための重要な前処理である JIS A 9002( 木質材料の加圧式保存処理方法 ) 5) には, 乾燥の目安として含水率 30% 以下にすることが記されており, これを基準にした作業標準を作成, 注入不良を防止している 3.2 加圧注入法加圧注入法の基本的な事項は,JIS A 9002に規定されている 参考までに, 一般的な加圧注入処理装置を写真 4に, 加圧式保存処理木材の製造工 6) 程の概要図を図 1に示す 保存処理木材の製造工程を図 1に示す 木材を注薬缶に搬入し前排気, 所定の圧力と時間, 加圧操作を継続し, 目的とする品質が確保できる圧入量に達したら加圧注入工程を終了する 缶だし後, 注入量等の検査, 定着 養生工程, さらに, 湿式処理では乾燥工程を経て保存処理木材は製造される なお, 乾式注入処理では処理液を排出したのち, 有効成分の溶解に使われた有機溶媒回収操作を行うことで, 乾燥された保存処理製品が製造される このように, 木材の保存処理工程は単純な工程であるが, 均一で安定した防腐品質を確保した保存処理木材を製造するには, 適切な管理が必要である 設計者 施工者等が自身の購入する保存処理木材の品質について知りたいときは, 処理工場が発行する薬剤名, 樹種, 材積, 圧入量等のデータが記載された 防腐 防蟻処理証明書 6) で確認できる 湿式処理 と 乾式処理 の長所 短所など, その特徴を表 2に整理した 乾式処理は今後要望が増大する可能性のある集成材等, エンジニアードウッドの処理には, 注入後の再乾燥等の手間がかからず, 便利な方法であるが, 使用する有機溶媒は比較的高価であり, また処理工場においては, 溶媒の取扱への配慮が必要である 写真 4 一般的な注薬設備の一例 ( 注薬缶 )

141 図 1 加圧式保存処理木材の製造工程 表 2 乾式処理と湿式処理の比較表 項目乾式処理湿式処理 使用薬剤の剤形油溶性 ( 非極性溶媒 ) 水溶性 乳化性 ( 水 極性溶媒 ) 処理後の寸法変化小さい大きい 再乾燥の有無再乾燥は不要再乾燥が必要 防腐 防蟻性能湿式処理と同等乾式処理と同等 その他事項 集成材等の乾燥した材料の処理に最適な処理方法 高価な溶媒を用いるので回収率が製造コストに大きく影響 溶媒による作業環境への影響に配慮が必要 集成材等の乾燥材料の注入後に再乾燥工程が必須 溶媒に水を使用するため薬剤単価は安価 4. 品質基準 4.1 製材の日本農林規格における保存処理基準製材 JAS では, 薬剤と木材の使用環境による性能区分 (K1~K5) ごとに性能基準が規定されている ( 表 3) また, それに対応する優良木質建材等認証 (AQ) 基準も定められている 6) 規定される項目として木材保存剤の種類と性能区分ごとの保存性能, すなわち浸潤度と吸収量が規定されている 一般的に保存処理木材の性能は, 浸潤度と吸収量で決まる 製材 JAS に規定され 6) ている浸潤度基準をイメージ図で表 4に示す これによると, 浸潤度基準は心材の耐久性が大きい D1 樹種と心材の耐久性の比較的小さい D2 樹種に区分し, 注入製品としての防腐 防蟻性能を規定している 4.2 優良木質建材等認証 (AQ) 制度における保存処理基準保存処理集成材等の新しい木質建材が次々に開発され, 日本農林規格 (JAS) だけでは対応が追い付かない状況が続いている 新たに開発された製品の品質性能を認証する制度が AQ 制度である AQ は昭和 49 年から農林大臣の行う制度として運用されてきたが, 昭和 63 年度からは ( 公財 ) 日本住宅 木材技術センターの運営する優良木質建材等認証 (AQ 認証という ) である JAS に保存処理の基準が規定されていない集成材, 単板積層材及び合板などについては, 防腐 防蟻処理として AQ 認証で対応している 主な AQ 認証製品の概要を表 5に示す 防腐 防蟻処理構造用集成材は, ラミナを処理したのち集成化するもの, 完成品を処理するもの, 中断面

142 表 3 製材 JAS における性能区分と対応する AQ 性能区分加圧式保存処理木材の使用状態 AQ K1 K2 K3 K4 K5 AQ の性能区分は JAS 相当 屋内の乾燥した場所に使用する木材に, 乾材害虫 ( ヒラタキクイムシ ) に対する防虫性を付与する処理 ( 防虫処理木材 ) 北海道など気温の低い地域で使用する木材に, 防腐 防蟻性能を付与する処理 建築用など非接地 非暴露で使用 日本全国で使用する木材に, 防腐 防蟻性能を付与する処理 屋外 建築用など非接地 暴露で使用 屋外で風雨に曝される厳しい環境で使用する木材に, 防腐 防蟻性能を付与する処理 屋外など接地 暴露で使用 屋外の風雨に曝される厳しい環境で, 枕木のような土中に埋設, 又は海中で使用する木材に高度の耐久性能を付与する処理 - 3 種 2 種 1 種 - 表 4 製材 JAS に規定されている浸潤度基準 性能区分樹種群浸潤度 ( イメージ図 ) 解説 K2 D1 辺材部分の 80% 以上 材面から 10mm までに存在する心材部分の 20% 以上 K3 D2 全ての樹種 D1 辺材部分の 80% 以上 材面から 10mm までに存在する心材部分の 80% 以上 K4 D2 (90mm 以下 ) D2 (90mm を超えるもの ) 辺材部分の 80% 以上 材面から 15mm までに存在する心材部分の 80% 以上 辺材部分の 80% 以上 材面から 20mm までに存在する心材部分の 80% 以上 心材の耐久性区分樹種群 D1 心材の耐久性区分樹種群 D2 ヒノキ, ヒバ, スギ, カラマツ, ベイヒ, ベイスギ, ベイヒバ, ベイマツ, ダフリカカラマツ, サイプレスパイン D1 以外の樹種 集成材 ( 完成品 ) に仕口加工等を施したのち処理するもの, また, 単板積層材や構造用合板ついても製品 ( 完成品 ) 処理, 単板処理など, 多様な基準が定められている 集成材の浸潤度基準には, 製材 JAS と同様, 材表面から10mm 層の80% 以上を満足する製品, ラミナ注入集成材では材表面基準に加え全断面積の80% 以上の浸潤性能を満足した製品などが規定されているので, 設計者 施工者はその使用目的に合った製品を選択して使うことを勧める また, 使用環境と密接な関係のある吸収量についても, 製材 JAS 基準と整合性が 図られており,AQ2 種 ( 製材 JAS の K3 相当 ), AQ3 種 (JAS の K2 相当 ) の品質が規定されている これらの相互関係は表 3に示した なお, インサイジングしたラミナを用いて作製した集成材の接着力への影響, 集成材の強度性能 7) に及ぼす影響についての検討結果によると, 浸漬はくり試験, 煮沸はくり試験及びブロックせん断試験等の接着力についてはインサイジングの影響は見られなかった 曲げ強度については, 片面インサイジングでは10% 程度の低下率であった また, 曲げヤング係数についてはいずれの条件で

143 表 5 加圧注入処理による主な保存処理木質材料の AQ 認証 木質材料の名称記号対象建材の範囲性能基準 ( 浸潤度 ) 防腐 防蟻処理集成材 防腐 防蟻処理合板等 C-1 C-2 C-3 C-5 D-2 加圧処理法により防腐 防蟻処理を施したラミナを使って製造した製品 ラミナにインサイジングを施した製品は土台に限る 製品の強度性能はインサイジング後のラミナの強度性能による構造用集成材 ( 完成品 ) に加圧処理法により, 防腐 防蟻処理 ( 評価基準を定めた薬剤は油溶性木材保存剤のみ ) を施した製品構造用集成材 ( 完成品 ) に加圧処理法により, 防腐 防蟻処理 ( インサイジングは可 ) を施した製品中断面の構造用集成材 ( 完成品 ) に加工を施したのち防腐 防蟻処理を施した製品 合板等 ( 単板積層材含む ) を加圧処理法又は単板処理することで防腐 防蟻処理を施した製品 全断面積の 80% 以上, かつ, 材面からの深さ 10mm までの部分の 80% 以上 全断面積の 80% 以上, かつ, 材面からの深さ 10mm までの部分の 80% 以上 製材の JAS の K2(3 種 ),K3(2 種 ) と同じ 製材の JAS の K2(3 種 ),K3(2 種 ) と同じ 各層の単板に薬剤が確認できること LVL は, 全断面積の 60% 以上, かつ, 材面からの深さ 10mm までの部分の 80 % 以上 も低下率は10% 以内であった 木材保存剤が接着力に及ぼす影響については, AAC 系及び銅系木材保存剤で検討され 8), いずれも問題ないことが示されている 写真 5に浸透性の良好なラジアータパインとオウシュウアカマツのインサイジングラミナを使った防腐防蟻処理集成材, 製品インサイジング集成材の薬剤浸潤状況を示したので, 使用場面に合わせた製品を選択する時の参考にしてほしい これらの JAS や AQ に定められた性能基準は, 使用環境において長期耐久性が期待できるものとして定められた基準で, 各防腐工場では基準に 100% 合格する品質の保存処理木材を製造するた め, 適正な品質管理を行っている 4.3 木材保存剤の認定システム新規の木材保存剤が開発された場合の実用化プロセスについて簡単に説明する 新規木材保存剤が開発されると, 木材保存剤等審査事務局を経由し,( 公財 ) 日本住宅 木材技術センターに設置された専門家委員会に於いて, 木材保存性能は勿論, 人畜や環境に対する安全性など広範囲にわたる性能について審査され, 優良木材保存剤と判断された木材保存剤は,( 公社 ) 日本木材保存協会の実施する優良木材保存剤等の認定制度により認定を取得, 実際の防腐工場で使われる その後の使用実績等を考慮して JIS K 1570( 木材保存剤 ) 写真 5 保存処理集成材の樹種 処理による薬剤浸潤状況の比較左 : 製品注入 ( オウシュウアカマツ ): インサイジングあり中 : ラミナ処理 ( オウシュウアカマツ ): インサイジングあり右 : ラミナ処理 ( ラジアータパイン ): インサイジングなし

144 に, さらに,JAS には木材保存剤として追加さ れる なお, 加圧注入製品は ( 公財 ) 日本住宅 木材技術センターの実施する優良木質建材等 (AQ) 認証の対象製品になる 5. 保存処理木材 木質材料の使用上の留意点 製材 JAS 基準 ( 表 4) では, 材料への木材保 存剤の浸潤は, 中央部分において材表面から 10mm 層の 80% 以上を求めている 言い換えると 材料の中心部分には木材保存剤が注入されていな くてもよいことになる このような材料を使用す る場合, そのままの形状で使えば問題は起こらな いが, 切断や仕口の加工など, 二次加工を行うこ とで, 薬剤の未浸潤な部分 ( 写真 6) が露出し, 耐久性確保の面からは弱点になる その場合には, ( 公社 ) 日本木材保存協会 (JWPA) 等が認定す る表面処理用木材保存剤を充分に塗付処理するこ とで対応している 塗布処理では, 無処理に比べ 3~5 倍程度の耐用年数が延長される 3) なお, JWPA 認定の表面処理用木材保存剤は油溶性剤 や水ベースの可溶化剤など種々あるので, 用途に 適した製剤を選択して使うよう心掛けることが肝 要である 長期耐用を目的に保存処理木材の作り方 使い 方については, 日本木材防腐工業組合の纏めた小 冊子 加圧式保存処理木材の手引き 6) に記載さ れているので, 以下に留意すべき事項を整理して 紹介する 材料選択時の留意点として, 加圧式保存処理木 写真 6 保存処理木材の仕口加工と木材保存剤の浸潤状況 ( 薬剤の未浸潤の部分に仕様に則り充分な量を処理する ) 材には使用環境に応じた性能基準が決められてい るので, 使用される環境と期待する耐用年数に応 じた品質の材料を選択することや, 湿度や水分の 滞留し難い設計時の構造上の配慮も必要である 保存処理を行う時の留意点としては, インサイ ジング, 素材の乾燥など注入処理前作業の徹底と, 加圧注入後の材料の加工は薬剤の未浸潤部が露出 し耐久性の低下につながるので, 前もって加工し た後, 加圧注入処理を行うことを推奨する やむ を得ず, 保存処理木材を現場で加工した場合には, その部分に ( 公社 ) 日本木材保存協会の認定品で ある優良木材保存剤を未浸潤な部分に十分, 表面 塗布処理を行うなどの配慮が必要である 6. 新しい耐久性付与の方法 木材保存剤を使用せず木材の耐久性を確保し, 都市の木質化や外構部材等に活用する方法がいく つか開発されている 高温熱処理木材 9), 低分子 フェノール樹脂処理木材 10), フェノール樹脂含浸 積層材 (LVL), 化学修飾木材が該当する 参考文献 1) 日本工業規格 (JIS)K 1570( 木材保存剤 ). 2 ) 日本木材防腐工業組合 : 長寿命化住宅仕様書作成委員会報告書,2010 年 3 月 31 日. 3 ) 森林総合研究所監修 : 木材工業ハンドブック改訂 4 版 p.808,p.829 平成 16 年 3 月 30 日発行. 4 ) 日本木材保存協会 : タナリス CY 研究会 ( 追加樹種カラマツへの加圧注入処理 ) 平成 15 年 2 月. 5 ) 日本工業規格 (JIS)A 9002( 木質材料の加圧式保存処理方法 ). 6 ) 日本木材防腐工業組合 : 加圧式保存処理木材の手引き, 平成 27 年 1 月. 7 ) 日本住宅 木材技術センター : 防腐 防蟻処理構造用集成材 ( ラミナ処理 ) インサイジング加工強度試験研究報告書 ( 建設省委託事業 ), 平成 8 年 2 月. 8 ) 公益社団法人日本木材保存協会 : 日本農林規格 ( 集成材 ) の保存性能 JAS 基準化に関する研究 ( 事業完了報告書 ), 平成 25 年 3 月 14 日. 9 ) 森田珠生, 荘保伸一, 山口秋生, 今村祐嗣, 桃原郁夫 : 熱処理木材の耐久性, 耐蟻性について, 日本木材保存協会第 25 回年次大会研究発表論文集,2009,pp.2-7. 10 ) 内倉清隆 : エコアコールウッド ( 低分子フェノール樹脂処理木材 ) について, 木材保存,35 (2),66-70(2009).