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( 図 7-A-1) ( 図 7-A-2) 116

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( 問 3) 売却証明書を発行することができるのは どのような市場ですか 売却証明書を発行できるのは 以下の市場において売却した場合です 1 家畜市場家畜取引法 ( 昭和 31 年法律第 123 号 ) 第 2 条第 3 項に規定する家畜市場及び同法第 27 条に規定する臨時市場 2 中央卸売市場

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5 月 南部家畜市場牛セリ市 削蹄をしてないワ 子 子牛は 未削蹄 で牛は 未接牛は 未接 種 で 表示 表示してあります してあ ります 上場予定頭数 仔牛 381 頭成牛 51 頭 ( 妊娠牛 20 頭 ) 合計 432 頭 時間令和元年 5 月 17 日 ( 金 ) 午前 9 時 30 分当日

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市営牧場を核とする小林市畜産振興会連合会の活動 東京農業大学名誉教授新井肇 1. はじめにこの事例は平成 12 年度全国肉用牛経営発表会の組織活動部門において最優秀賞に選ばれ 農林水産大臣賞を受賞した 授賞対象は宮崎県小林市畜産振興会連合会 発表テーマは 肉用牛振興を図る小林市畜産振興会連合会への活動支援並びに市営牧場の役割と成果 で 副題として 組織の活性化を図る行政支援 とある 受賞の主体は市内の畜産関係諸団体を糾合した畜産振興会連合会であるが それを主導するのは市役所畜産課であり また活動の中心は市営牧場の多様な農家支援活動にある その活動の範囲と成果は受賞時よりさらに深化している模様なので 受賞後の実態を追跡調査し その成功要因をさぐってみたい 2. 受賞後の畜産とくに肉牛経営の発展小林市の畜産粗生産額は 166.4 億円で農業粗生産額の 73 % を占め ここは県内でも有数の畜産地帯である 畜産の粗生産額のうち肉牛は肥育 37.7 % 繁殖 22.7 % 計 60.4 % で 肉牛に特化した地域であると言える 以上は平成 18 年の数値であるが 受賞前 ( 平成 10) に比べると畜産への特化 肉牛への特化がさらに進んでいるといえる 肉牛の主力は和牛であり 肥育農家数 56 戸に対し 繁殖 1,053 戸で 繁殖地帯の色合いが濃い ( 生産額では肥育がやや上回るものの 付加価値では繁殖が上回ると推定される) いきおい ここでの農家支援は規模の小さい高齢化した農家をいかににサポートするかが中心となる 肉牛は全国的に飼育農家戸数 頭数ともに減少気味であるが ここでは繁殖成雌牛飼育頭数が増加していることが注目される ( 表 1) これは市役所を軸とする綿密で幅の広い指導体制の存在と切り離して考えることは出来ない 表 1 繁殖牛飼育戸数 頭数の推移 飼育農家数 飼育頭数 1 戸当り頭数 平成 2 1,633 7,349 4.5 6 1,351 7,431 5.5 10 1,179 7,546 6.4 14 1,048 7,939 7.6 18 934 8,097 8.7 ( 注 ) 18 年 3 月に須木村と合併したが 合併分を含まない 3. 組織活動の経過昭和 51 年 市役所が主導して小林市畜産振興会連合会が設立された ( 会長は市長 事務局は市役所畜産課 ) 下部に 9 つの地域別組織と 6 つの畜種別組織を持ち ( 受精等移植推進協議会を入れて 7 つ ) いわば地域集団と機能集団を組合わせた畜産指導の総合的司令塔であり実行部隊となっている 指導の物的手段としては 市営牧場 不受胎牛のリ -1-

ハビリセンター 受精卵センター バイオマスセンター等の諸施設があり 人的組織としては和牛ヘルパー組合 和牛婦人部などがある 設立以来の主要な活動を挙げると 次のようになる 特長として 1 当初から行政が深く関わり 市役所のリーダーシップで行われてきた 2 農協を含め 全畜種を網羅し 地域全体をまとめる機能を果たしている 3 受賞後 新施設の導入が目立って増加している 事務局では 大臣賞受賞により自信が深まり 活動充実の契機になったと評価している 昭 平 表 2 畜産振興会連合会の活動略歴 48 市営牧場開設 51 畜産振興会連合会設立 1 受精卵移植推進協議会設立 4 ヘルパー組合設立 和牛婦人部設立 5 市営牧場で試験的に和牛繁殖不受胎牛のリハビリ開始 13 受精卵センター建設 15 堆肥センター ( 堆肥処理施設 ) 建設 17 バイオマスプラント建設 指定管理者制度導入 19 和牛生産団地 ( 建設中 ) 4. 市営牧場による繁殖農家支援畜産指導事業の先駆は 48 年に正式に発足した市営牧場 ( 昭 45 に造成開始 ) である 当初は受託放牧育成を行っていたが 平成 5 年から和牛不受胎牛のリハビリ牧場や牛の一時預かり施設として すなわち肉牛農家の支援基地として活用するようになった 入退牧のパターンは次の通りである 不受胎牛 : 入牧後 個体の状況に応じミネラル ビタミン 良質粗給与等で過肥の解消 獣医師による治療を行う 発情微弱牛も発情が顕著になる 牧場から種付適期を農家へ報告し 農家から人工授精師へ連絡する 平均 4.5 ヶ月で退牧 育成牛 : 約 4 ヶ月の在牧期間中に種付けし 受胎確認後退牧 種付け手順は不妊牛と同じ 牧場利用者は高齢者を優先的に受け入れるようにしており 小規模層の利用率が高くなっている 牧場利用戸数の 55 % が 60 歳以上者で占められている ( 平成 11 年当時 ) 高齢者は発情発見の見逃しが多く 不受胎に悩む生産者が多い 入牧した不受胎牛の 93 % ( 平成 18) が受胎して退牧している ( 表 3) 和牛繁殖農家の不受胎対策は高齢化が進む中で とくに大きな意義がある 不受胎牛を入牧させ 短期間で受胎させて返してやることで生産頭数の増加につながるだけでなく 高齢者の経営の持続に貢献している 飼育者がケガや病気で飼育できなかった牛を 一時預かり することも年に 4 5 件あり 事故をきっかけに廃業するケースを減らしている この場合の料金は通常の 3 分の 1 の 130 円と格安にしており 最高 28 頭の牛を預かったことがあるという 育成牛の受託放牧 ( 種付けして返す ) も行っているが 育成牛を牧場に預けることで負担が減り 規模拡大しやすいと言う条件をつくっている -2-

表 3 不妊牛の入退牧頭数と受胎率 平成 9年 10 年 11 年 18 年 備 考 期首頭数 0 27 30 21 8 年度牛舎完成 入牧頭数 88 85 110 70 退牧頭数 61 82 99 73 うち受胎 57 78 92 68 不受胎 4 4 2 3 期末頭数 27 30 41 18 受胎率 (%) 93.4 95.1 97.9 93 ( 注 ) 1. 平成 11年度は退牧牛のうち 5頭は預かりなどで種付けせず 2. 育成牛の初産受胎率は平成 9~ 11年度は 98% 18年度は 100 % 5. ヘルパー組合による支援活動市営牧場が行政による直接的支援であるのに対し 日常的な相互扶助として和牛ヘルパー組合の活動がある ヘルパー要員は組合員 ( 農家 ) で 依頼者は1 60 歳以上の高齢者で後継者のいない者 2 婦女子 3 冠婚葬祭など緊急事態が発生した者で あくまで弱者の援護が目的である 活動の範囲は広く 搬入 搬出 引出等 高齢者では困難な仕事の他 件数は少ないが 緊急時の飼養管理も含まれる 最近では農家を巡回し 予防注射の業務の補助やトレサ法に基づく耳標装着なども行っている ( 表 4) 従来は生産検査とセリ市への子牛の引出作業が多かったが 16 年度から生産検査が集合方式から農家庭先に変更され 検査補助員として活動している このため業務割合が大きく変化している 表 4 生産検査子牛セリ市品評会登録検査飼養管理除角計 ヘルパー組合の活動実績 平成 7年度 平成 10年度 平成 18 年度 件 数 頭 数 件 数 頭 数 件 数 頭 数 152 161 245 338 7 7 144 202 233 325 227 265 15 35 35 35 14 14 19 21 39 27 52 52 1 2 4 19 3 17 51 721 45 206 48 212 382 1,142 601 950 351 567 ( 注 ) 18 年度は生産検査が庭先検査に移行したため利用減少 但し業務量は増加している 6. 堆肥センターーの設立と活動組織的な家畜ふん尿処理は 受賞前の昭和 57 年に設立された任意組合による堆肥センターが始まりであったが 臭気と収支の難問が解決できず 受賞後の平成 14 年に任意組合を解散し ( 有 ) 小林堆肥センターを設立し これを市の指定管理者に指定し 施設を貸与し 独立採算性でで運営を委託した 平成 15 年には市の清掃事業と連携し 市内全域の生ゴミを家畜ふん尿と混合処理し 平成 17 年には補助事業でメタンガス発生装置を -3-

導入 全体をバイオマスセンターと改名し 前期の有限会社に管理を一括委託している 堆肥処理には生ゴミの他 メタンガスプラントから出る消化液を同時処理している 生ゴミを堆肥化することで 市民のリサイクル意識を高め 市の行政に横の連携が出来るなど 単なるふん尿処理に留まらない成果を上げている センターの利用料金は 豚ふん 2,000 円 / t 牛ふん 1,000 /t 鶏ふん 1,500 円 /t 生ゴミ 6,000 円 /t( 清掃部署負担 ) であるが 利用者は養豚 ラクの各 10 戸 生ゴミは巡航 4 万人分を処理している 堆肥の販売先は農協 70 % ホームセンター 30 % で 価格はバラ 4,000 円 /t 袋 ( 15kg) 350 円 / 袋で 目下の所 販路には困っていない 7. 受精卵センター市内の受精卵移植事業は受賞前から行われていたが その頭数は年間 100 頭を超えることはなかった 目的は入牧乳牛に和牛受精卵を移植して和牛の生産拡大を図り 合わせて厳しい情勢下にある酪農家を支援することにある 平成 13 年に市営牧場内に受精卵センターを設置し 18 年にはさらに施設の改修整備を行って 運営も市直営から受精卵移植推進協議会の自主運営に移管し 現在ドナー牛 10 頭を所有するようになった 平成 18 年度は 38 頭から 728 卵 ( 1 頭平均 19 個 ) を採卵し 263 頭に移植し 受胎率 51.7 % を達成している 平成 11 年度の移植頭数 90 頭 受胎率 40.0 % に比べて大きく前進している 受精卵産子の市場での評価は高く その平均セリ価格は 市場平均価格に比べて平成 10 年度 ( 11 頭 ) 145 % 平成 11 年度 ( 20 頭 ) 114% で 平成 18 年度 ( 86 頭 ) はこれより下回っているが 110 % となっている 最近は近隣市町村のドナー牛に対しても施設使用料を徴収して採卵を実施し 地域全体の事業として取り組んでいる 8. 成功の要因と課題以上 最近の活動状況を調査した結果 授賞当時より活動範囲が拡大し 施設も拡充され 高齢者への経営支援が功を奏して飼育頭数が増加すると言った成果が確認できた 農家経済 地域産業に与えた効果は極めて大きいと言わなければならない こうした成果をもたらした要因を考えてみると 次のようになる 1 市役所を中心に地域ぐるみの支援組織である畜産振興会連合会を組織し これが意思決定と実践を分担して行う強力な主体となったこと 2 生産者が困っていることをカバーするという 農家支援 を一貫して追及してきたこと 3 補助事業を有効に活用し 活動の拠点となる施設を建設してきたこと 4それら施設を市直営から市の指定管理者へ順次運営を移管し 独立採算性の自主運営に切り替えたこと 5 中核の市役所畜産部署には配置された技術職が専門職として長く勤務し ベテラン職員となって重要な役割を果たしたこと -4-

小林市市営牧場 手前が受精卵センター 市営牧場内の不妊牛リハビリセンター バイオマスセンター 旧堆肥センター バイオマスセンターのメタン発生装置 5