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2.1 発明 に該当しないものの類型 発明 といえるためには 自然法則を利用した技術的思想の創作 である必要がある 以下の (i) から (vi) までの類型に該当するものは 自然法則を利用した技術的思想の創作 ではないから 発明 に該当しない (i) 自然法則自体 (2.1.1 参照 ) (ii)

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Transcription:

コンピュータソフトウエア関連発明に係る審査基準等の 点検 改訂のポイントについて 1. 背景 (1) ソフトウエア関連発明に係る審査基準等を取り巻く状況 第四次産業革命は モノ (things) の提供にとどまらず モノ を利活用した コト の提供というビジネスモデルの転換を伴って進展しつつあり その第四次産業革命の推進力となっている IoT 関連技術 AI 等の新たな技術の研究開発が盛んに行われている これにより 様々な技術分野の モノ の制御や モノ の技術的性質に基づく情報処理に関連するソフトウエア関連発明 及び AIのような情報処理技術が様々な技術分野に適用されたソフトウエア関連発明等が多く創出されている このような背景を踏まえ 平成 29 年 4 月に公表された第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会の報告書では IoTを活用したビジネス分野において 我が国企業がイノベーションの促進に必要な特許を着実に取得し活用することができるよう IoT 関連発明に密接に関連するソフトウエア関連発明に係る審査基準等の明確化のための点検 を平成 2 9 年度中に行い その結果を国内外に発信する等 権利取得 活用に係る情報提供を充実する とされている 1 また 知的財産推進計画 2017でも Io T 関連発明に密接に関連するソフトウエア関連発明に係る審査基準等の明確化のための点検を行い その結果を国内外に発信する とされている 2 (2) 国内外におけるソフトウエア関連発明に係る審査基準等の状況 国内外におけるソフトウエア関連発明に係る審査基準等の状況や日本におけるユーザーの声を把握するため行った調査研究 3 や特許庁で実施している審査官協議の結果によると 世界の主要特許庁の審査基準等には ソフトウエア関連発明の発明該当性等に関して独自の考え方が記載されている ( 参考資料 1-5) 1 同検討会 第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方について ( 平成 29 年 4 月 ) の 12~13 頁を参 照 2 知的財産推進計画 2017 の23 頁を参照 3 平成 29 年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業 各国における近年の判例等を踏まえたコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状に関する調査研究 https://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/toushin/chousa/zaisanken_kouhyou.htm を参照 1

日本では 特許 実用新案審査ハンドブック附属書 B 特許 実用新案審査基準 4 の特定技術分野への適用例第 1 章コンピュータソフトウエア関連発明 ( 以下 ソフトウエア関連発明に係る審査ハンドブック という )( 参考資料 1-3 参考資料 1-4) において ソフトウエアとハードウエアの協働に着目した発明該当性の考え方が記載されている 米国では 2014 年の米国連邦最高裁判所が下したAlice 判決以降 ハードルの高い発明該当性の要件が課されていたところ 近年では判断の明確化が図られようとしている過程にある 欧州では コンピュータやネットワーク等の技術的手段を用いていれば技術的性質を有するとして発明該当性を認めやすい一方で 進歩性判断においては非技術的側面を考慮しない審査実務を採用している アジアでは 韓国は日本に類似する審査基準を有し 中国は技術的課題 技術的手段 技術的効果の技術三要素を全て備えていれば発明に該当すると判断する実務を採用している このように各国が独自の実務を有しており 現状では グローバルな視点から見て調和したソフトウエア関連発明に係る審査基準等の考え方が確立している状況とは言えない (3) ユーザーの声 特許庁が実施したユーザーとの意見交換等においては ソフトウエア関連発明の発明該当性についての基準に関し ソフトウエアとハードウエアの協働に着目した発明該当性の判断等を含んだ日本のソフトウエア関連発明に係る審査基準等は 審査の予見性や判断の合理性から 国内外のユーザーから一定の評価の声 5 が寄せられている 一方で 今後さらにIoT 関連技術やAIに係る発明が多く創出されることが予想されるところ そうしたIoT 関連技術やAIに係る発明の進歩性について 的確な判断を確保するよう求める声が多く上げられている 6 4 本資料の 3. 以降では 単に 審査基準 という 5 国内外のユーザーからの声の例 JPO ではソフトウエア関連発明について明確かつ適正な範囲で審査がなされている (A 社 ) 欧米ではコンピュータソフトウエア及びビジネス関連発明の特許保護が非常に厳しい (B 社 ) 米国の保護適格性の判断は主観的と感じており不満 (C 社 ) 米国の発明該当性の判断は厳しすぎる (D 社 ) 6 ユーザー等からの声の例 IoT の発明は 異分野の技術同士の組み合わせになることがあるが 進歩性の組み合わせの動機付けが厳格になりつつあることに起因して 技術者であればすぐに考えつくようなものが特許になることや 審査官と技術者との間に感覚の違いが生じることを懸念している (E 社 ) AI 関係の特許について 過去の枯れた技術に AI を適用しただけで権利化されていると感じるものがある (F 社 ) AI による機器不具合の予知精度を上げるために センサをある箇所の近傍に持ってきて こういうタイミングで信 2

また 上記調査研究における国内アンケート及び国内ヒアリング調査においても 発明該当性や進歩性に関する欧米の判断の厳しさや不明確さに言及する声が寄せられる一方 日本では 総じてソフトウエア関連発明を期待どおり権利化できているという一定の評価の声が上げられている ( 参考資料 1-6) 2. ソフトウエア関連発明に係る審査基準等の点検 改訂の方向性 事務局案 審議事項 ソフトウエア関連発明に係る審査基準等の基本的な考え方を変更せずに ソフトウエア関連発明に係る審査基準等を発明該当性や進歩性を中心に明確 化するための点検 改訂をしてはどうか ( 説明 ) 各国が独自の実務を有しており 現状では グローバルな視点から見て調和したソフトウエア関連発明に係る審査基準等の考え方が確立しておらず 日本のソフトウエア関連発明に係る審査基準等が一定の評価を受けている状況下においては 日本のソフトウエア関連発明に係る審査基準等の基本的な考え方を直ちに変更する必要性は認められない 一方 ソフトウエア関連発明に係る審査基準等の基本的な考え方が明確なものとなれば 各国において 日本のソフトウエア関連発明に係る審査基準等が広く理解されるようになるため 今後のグローバルな視点から見たソフトウエア関連発明に係る審査基準等の調和についての議論に資するものといえる また 新たな技術の台頭に伴い ソフトウエア関連発明が多くの技術分野で創出されるようになってきたため これら様々な技術分野の審査官やユーザーが発明該当性や進歩性に関しソフトウエア関連発明に係る審査基準等の示す内容について十分理解したうえで判断を行っていく必要性が高まってきたことから 当該発明該当性や進歩性についての基本的な考え方が明確に理解できるものであることが求められる 号を取得したらうまくいった というような事項でも 特許が取得される可能性が考えられる データの集め方で特許になるのであれば 早い者勝ちの世界になってしまう (G 社 ) (IoT 関連発明について ) 進歩性の判断をきちんと判断していただきたいと思っております 最初が肝心だと思いますし 単なる早い者争いにならないように きちんと判断していただきたいと思っております ( 第 11 回審査基準専門委員会 WG 議事録より ) 自明な AI IoT ビッグデータ要素技術 と 自明な適用分野 を単に組み合わせただけの発明に進歩性が肯定されることを懸念する ( 第 11 回審査基準専門委員会 WG 参考資料 2 より ) IoT AI ビッグデータについて適切な保護体制の確立を期待する (H 社 ) 自社の工作機械の稼働データが機械学習に用いられ 成果物としての学習済みモデルが 他社の工作機械に導入されて性能向上に資することになるのであれば それを阻止する手段へのニーズが生じうる (I 社 ) 3

そこで グローバルな視点 ユーザーの評価及び上記した新たな技術の台頭に伴う状況変化という側面を踏まえ ソフトウエア関連発明に係る審査基準等の基本的な考え方を変更せずに ソフトウエア関連発明に係る審査基準等を発明該当性や進歩性を中心に明確化するための点検 改訂をしてはどうか なお これまでと同様 この点検 改訂を行ったソフトウエア関連発明の審査基準等は国内外に広く発信していくこととする 3. 点検 改訂ポイント 以上の点検 改訂の方向性を踏まえて 点検 改訂ポイントを以下のように設 定した (1) ソフトウエア関連発明の発明該当性に関する明確化 (2) ソフトウエア関連発明の進歩性に関する明確化 (3) 審査基準とソフトウエア関連発明に係る審査ハンドブックの記載の整合性の向上 審査基準については 上記 (1) の点検 改訂のポイントを踏まえて 以下の事務局案を作成した また 審査ハンドブックについては 上記 (1)~(3) の点検のポイントを踏まえて 改訂を行う方針である ( 参考資料 1-1) 事務局案 審議事項 ソフトウエア関連発明に係る審査ハンドブックに記載されているソフトウエア関連発明の発明該当性の考え方を幅広い技術分野の審査官やユーザーが適切に参照及び理解できるように 審査基準に記載されている コンピュータソフトウエアを利用するものの審査に当たっての留意事項 ( 審査基準第 II I 部第 1 章 2.2 参考資料 1-2) の記載について 用語の定義を追加すること ソフトウエアを利用するものという観点 から発明該当性を検討することについてその定義を記載すること 記載の順序と判断の順序を対応させる点で整理すること等から見直してはどうか ( 説明 ) 4

IoT 関連技術やAI 等の技術の発展により様々な技術分野で創出されている機器等に対する制御や対象の技術的性質に基づく情報処理に関するソフトウエア関連発明について 発明該当性を適切に判断するためには 機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うものか否かという判断や対象の技術的性質に基づく情報処理を具体的に行うか否かという判断に加えて ソフトウエア ハードウエア協働要件に関する判断が必要となる そこで 従来 ソフトウエア関連発明に係る審査ハンドブックを踏まえる必要性が低かった技術分野の審査官やユーザーであってもソフトウエア関連発明に係る審査ハンドブックに記載されているソフトウエア関連発明の発明該当性の考え方を適切に参照及び理解できるようにするために 審査基準に記載されている コンピュータソフトウエアを利用するものの審査に当たっての留意事項 7 ( 審査基準第 III 部第 1 章 2.2 参考資料 1-2) の記載を見直す 具体的には 現状 上記 留意事項 には 特許法や審査基準で用いられ 7 2.2 コンピュータソフトウエアを利用するものの審査に当たっての留意事項 (1) ビジネスを行う方法 ゲームを行う方法又は数式を演算する方法に関連するものは 物品 器具 装置 システム コンピュータソフトウエア等を利用している部分があっても 全体として自然法則を利用していない場合があるので 自然法則を利用した技術的思想の創作 に該当するか否かを慎重に検討する必要がある 他方 ビジネスを行う方法 ゲームを行う方法又は数式を演算する方法に関連するものであっても ビジネス用コンピュータソフトウエア ゲーム用コンピュータソフトウエア又は数式演算用コンピュータソフトウエアというように 全体としてみると コンピュータソフトウエアを利用するものとして創作されたものは 自然法則を利用した技術的思想の創作 に該当する可能性がある そのようなものについては 審査官は ビジネスを行う方法等といった形式にとらわれることなく コンピュータソフトウエアを利用するものという観点から 自然法則を利用した技術的思想の創作 に該当するか否かを検討する (2) 以下の (i) 又は (ii) のように 全体として自然法則を利用しており コンピュータソフトウエアを利用しているか否かに関係なく 自然法則を利用した技術的思想の創作 と認められるものは コンピュータソフトウエアという観点から検討されるまでもなく 発明 に該当する なお 自然法則を利用した技術的思想の創作 であることから 発明 に該当する方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータソフトウエア又はその方法を実行するコンピュータ若しくはシステムは 通常 全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるため 発明 に該当する (i) 機器等 ( 例 : 炊飯器 洗濯機 エンジン ハードディスク装置 化学反応装置 核酸増幅装置 ) に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの (ii) 対象の物理的性質 化学的性質 生物学的性質 電気的性質等の技術的性質 ( 例 : エンジン回転数 圧延温度 生体の遺伝子配列と形質発現との関係 物質同士の物理的又は化学的な結合関係 ) に基づく情報処理を具体的に行うもの 5

る プログラム プログラムに準ずるもの ソフトウエア データ構造 等の用語の定義が記載されておらず ソフトウエアを利用するものという観点 から発明該当性を検討することについてその定義 ( ソフトウエアによる情報処理が ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている 場合は 発明該当性を有すること ) も記載されていないため 審査基準の記載のみから基本的な考え方を理解するためにはこれらの定義を加えることが好ましい また 上記留意事項には まず ソフトウエアを利用するものという観点 から発明該当性を検討することについて記載されており 次に 機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの 又は対象の技術的性質に基づく情報処理を具体的に行うものは 発明 に該当することが記載されており 記載の順序と判断の順序が対応していない そこで 上記留意事項の記載について用語の定義を追加すること ソフトウエアを利用するものという観点 から発明該当性を検討することについてその定義を記載すること 記載の順序と判断の順序を対応させる点で整理すること等の点から見直しを行う 6