副鼻腔炎 ( 蓄膿症 ) 中耳炎 末梢性顔面神経麻痺 ( ベル麻痺 ) 耳鳴りについて 林明俊 第 1 週目 (8 月 6 日放送分 ) 副鼻腔炎 ( 蓄膿症 ) Q 蓄膿症とはどんな病気ですか A 蓄膿症は正式には副鼻腔炎といいます 副鼻腔とは頭蓋骨の顔の表面近くに空洞がありこの空洞を副鼻腔といいます この副鼻腔に炎症を生じてこの中に膿 ( のう 即ちうみ ) がたまる病気です 副鼻腔炎には 急性と慢性がありますが 急性は風邪をひいた後に青ばなが出たり鼻がつまったり においがわからなくなったり のどに痰が流れてきたり 場合によっては頭痛や眼の周囲が痛んだり 熱が出ることもあります 頭痛の場所として 顔の半分 特に額あたりや頬や目の内側 頬や上の奥歯が痛みます 場合によっては今回のように虫歯と思われ 歯医者さんに最初にかかることもしばしばみられます 副鼻腔炎の原因として風邪からなる場合がほとんどですが 時には虫歯から この病気になる場合もあります この場合には歯科口腔外科を受診して この原因の歯を治療しないと治りません Q 診断と治療はどのようにするのでしょうか 手術は必要でしょうか? A まず耳鼻科の診察を受けた後で 鼻のレントゲン写真をとり これで診断します 時には内科などで頭痛の検査の一環として CT 検査や MR 検査を受けてから 副鼻腔炎と診断されることもあります もし これらの検査で副鼻腔炎と診断されれば 治療として 鼻の中の青鼻などの分泌物をきれいにして 鼻の通りをよくしてから鼻のネブライザー治療 すなわち 薬液を鼻から吸入し 副鼻腔へ薬剤が入るようにし また抗生物質や排膿を促す薬剤などを内服します 症状が強い場合には 鼻の中を表面麻酔し 副鼻腔に長い針を刺し 膿を洗い流す治療をすると 短期間で痛みなどの症状は改善します この疾患はきちっと治しておかないと慢性化し鼻茸ができたり 将来 手術をしなければいけなくなることもありますので 早めに耳鼻科の専門医の診察と治療を受けて治しておいてください
第 2 週目 (8 月 13 日放送分 ) 滲出性中耳炎 Q 小さな子供が 聞きなおしが多く 呼んでも返事をしないことが多いらしく 耳を 痛がることもないという話を聞きました 本当に耳が悪いのでしょうか? A TV や遊びなどに夢中になっていなくても お母さんが呼んでも返事をしないとか 聴きなおすとか最近声が大きくなった感じた時には滲出性中耳炎による難聴となっ ているものと思われます Q 滲出性中耳炎とはどんな病気ですか? A 鼓膜の内側の中耳という場所 本来はここには空気が入っているのですが この場所に滲出液という 水のようなものがたまる病気です 原因は耳管という鼻の奥と中耳をつなぐ管の空気の通りが悪くなり 中耳の気圧が下がり中耳に滲出液がたまります すると鼓膜の動きが悪くなり 音が中耳から内耳に伝わりにくくなり 難聴となります 急性中耳炎から移行するものと 最初から滲出性中耳炎を発症する場合とがあります 最初から滲出性中耳炎になる場合には耳の痛みはなく 本人や時には周りのもの気づかないことがあります 乳児では機嫌が悪い 耳に手を持ってくる 頭を振る 微熱ガ続くなどの症状がみられます 小児に一番多く見られる中耳炎で 0~5 歳頃までが好発年齢です Q 治療はどのようにするのでしょうか A 耳の治療法として 鼻から強制的に空気を送り 耳管を広げて中耳に送り込む通気という治療を行い これでも治らない時には 鼓膜を少し切って滲出液を吸い出す治療をすることもあります これらの治療でも反復したり 治りが悪い場合には鼓膜に換気チューブを入れる手術を行います 風邪を引くたびに反復することも多い疾患ですが 多くは耳管の働きがよくなる頃すなわち小学校に入学する頃には治ることが多いものですが時には慢性化したり 真珠腫性中耳炎に進展することもあります また滲出性中耳炎の小児の多くは 鼻の病気を合併することも多く 耳の治療以外に鼻の治療も行います 鼻の病気を治療しておかないと滲出性中耳炎を反復したり 急性中耳炎に移行することも多くなるからです 鼻の病気とは副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎です また鼻すすりをする癖のある小児にも見られることも多く この場合には鼻すすり禁止し 鼻を片方ずつ かむ癖をつけることが大切になります また場合に
よっては 鼻の奥のアデノイドという 扁桃組織が大きくなり 耳管といって中耳につながる管の入り口を塞いで中耳への換気が悪くなってこの中耳炎を生じることもあり この場合にはアデノイドを切り取る手術を要することもありますので 耳鼻科の先生にかかり 診断と治療をしっかりと受ける事が重要です
第 3 週目 (8 月 20 日放送分 ) 末梢性顔面神経麻痺 ( ベル麻痺 ) Q こんな話を聞きました ある朝目が覚めたら 顔の半分が曲がっていました 特に顔の痛みもなく 歯を磨こうとしたら 水が左の口からこぼれました また左の顔の感覚が鈍いことにきづき 急いでマッサージに行きましたが 医者に観てもらうように言われ とりあえず近くの内科の先生に診てもらったらところ 耳鼻科に診てもらうように言われたそうですが どんな病気でしょうか? A 一つ伺いますが 鏡を見ながら目だけで 上のほうを見 額にしわを作ってみてく ださい その時にに左の額 ( おでこ ) には皺が寄りますか? また左の耳たぶや耳の中 が痛かったり これらの部分に水疱やかさぶたはありませんか? Q しわも寄りません 左の耳の痛みや 水疱 ( 水ぶくれ ) やかさぶたはありません A これは末梢性の顔面神経麻痺という病気です 原因が不明のことが多く この原因 不明の末梢性顔面麻痺をベル麻痺とよんでいます Q 原因不明なら治療法はないのですか A 最近になって この麻痺の原因はほとんどが単純ヘルペスというウィルス感染によるものであることがわかってきました 発病間もない時で かつ麻痺が比較的強い場合には 抗ウィルス剤の内服や点滴を数日行います また 神経の麻痺を改善するのに有効と考えられる薬を内服したり点滴治療をします この治療で顔面神経の回復が非常に悪い場合には 顔面神経減荷術という手術を行うこともあります 神経麻痺の原因として耳の近くの骨の中を通る顔面神経がこのウィルスの炎症でむくみ 狭い骨の管の中で圧迫を受けて血液の流れが悪くなり 神経への十分な血液や流れなくなり神経の働きが傷害されて神経麻痺を生じています 顔面神経減荷術とは この神経のむくみ ( 圧迫 ) をとるために骨を削り 神経の通り道を広げる手術です 神経の浮腫を除くことを目的として 副腎皮質ホルモン剤すなわちステロイド薬を投与することがすすめられています 投与期間は比較的短く副作用もほとんど生じません 顔面神経麻痺以外に涙の分泌が低下することもあり また閉眼が不十分な場合に対しては角膜を保護する点眼薬を用います 発病間もない時で麻痺が軽ければ 特に抗ウィルス剤の点滴や内服はしなくても 比較的早く直ります ベル麻痺は比較的治りやすい病気で 麻痺が軽度であれば 1~3カ月ほどで完全に治りますが 中には麻痺が高度で 麻痺が完全に回復しなかったり 他の後遺症を残すこともありますので 早めの治療が大切です
第 4 週目 (8 月 27 日放送分 ) 耳鳴 Q 友人が 数日前から右の耳鳴りがするそうです 治療法は? A まず耳の診察を受けます 耳垢があれば耳垢を取り除き 鼓膜を診て鼓膜の異常の有無を調べます 鼓膜に穴があいていないかどうかや みみだれの有無などを調べ ついで聴力検査を行います 耳鳴りを訴える方の多くは難聴を認めることが多いからです 特に 急に起こった耳鳴りの時には 難聴も急におこって これに伴う耳鳴りのことが多いものです なかには自分で難聴が生じていることに気づいていない方もおられます 耳鳴りは自覚的なもので 他人には分からないことがほとんどです よって耳鼻科医にとり 耳鳴りの検査として聴力検査をして 難聴をともなっているかどうかを調べます 耳鳴りの音により低音にの難聴を生じている場合と 高音に難聴を生じていることが多くみられます ところで耳鳴りのしているほうの耳が 聞こえにくいとか 耳がふさがった感じがするとは言ってませんでしたか? Q そういえば最近 音がこもってきこえたり 子供の泣き声が響いたりするそうです A 耳垢が詰ったり みみだれがみられずに 鼓膜も正常であれば 難聴があり これにともなう耳鳴りと推測されます 音がこもって聞こえたり 子供の泣き声が響く時は難聴を生じている時のひとつの現象です 難聴には伝音性難聴と感音性難聴と この両方を合併した混合性難聴に分類されます 一般的には感音性難聴には耳鳴りをともなうことが多いです 感音性難聴とは中耳より奥の音を感じる器官の異常で生じる難聴です 伝音性難聴とは 外耳や中耳に問題があって生じる難聴で 例えば鼓膜に穴があく慢性中耳炎がその例です. 話の内容から 感音性難聴に伴う耳鳴りと考えられます 一般に耳鳴りは難聴の 90% くらいの患者さんに認められ 難聴のない場合の耳鳴りは少ないものです よって耳鳴りの治療としては難聴があれば この難聴を治療します 難聴が改善すると耳鳴りも改善することが多いからです 感音性難聴とは 音を伝える鼓膜や中耳に異常を認めず 音を感じる内耳に異常を生じて難聴が生じているタイプの難聴で 急性のものと徐々に難聴が進行する慢性のタイプとあり 慢性のタイプは 治療が難しいことが多いです 急性の感音性難聴には突発性難聴 メニエル病 低音障害型感音性難聴 まれには聴神経腫瘍などがあります これらの中には早く治療することによっては難聴や耳鳴りも改善します 治療が遅れ難聴が改善しないと後遺症として耳鳴りが続いたり 強くなったりしますので早く耳鼻科の専門医を受診して検査や治療を受けることをお勧めします