平成 26 年春季セミナー大会 日本の証券市場の活性化について 1 2 日本大学経済学部証券研究会 A 班 30
1. 日本の証券市場の現状 図表 1 日本の家計資産保有率 出典 : 資金循環の日米欧比較 より引用 この図から欧米諸国と比べ預貯金の割合が高く有価証券の割合が低いといえ る 14 年 1 月には NISA( 少額投資非課税制度 ) が開始され 家計の 貯蓄か ら投資 への促進が現在行われている しかし NISA 口座開設者の内訳を見て みると 既存投資家が 9 割であり 株式 投信を保有していない投資未経験者 は 1 割に留まっている また企業による証券の発行が大幅に増加していないという点が挙げられる これにより日本の証券市場は企業の資金需要を十分にみたせていない考えられる 以上のことから日本の証券市場は家計の資金が投資ではなく貯蓄に回ってい 1 ることにより 企業の資金調達の妨げになっていると考えられる ではなぜ家 計の資産が貯蓄に向いてしまうのか 考えられる理由として投資に伴うリスク に対しての知識が欠如してしまっている点である 1
図表 2 金融に対しての知識水準 63.7 金融商品について 31.2 4.7 71.8 証券投資について 22.9 4.9 0 30 40 0 60 70 80 ほとんど知識がないと思うどちらとも言えない十分知識があると思う 出典 : 金融広報中央委員会 H P より筆者作成 2. 活性化 を達成するための具体的な方策 1 NISA の対象拡大と利用促進 以上の問題への解決策の一つとして我々は問題点の改善による利用促進と対 象拡大を考える NISA とは平成 26 年 1 月から開始された少額非課税制度のこ とで自助努力に基づく家計の資産形成の支援 促進を目的に開始された制度である 毎年 0 万円を上限として NISA 講座で購入したファンドの売買益や分配金等が最長 年間非課税となる制度であり その対象は上場株式や投資信託等様々で非常に魅力的な制度といえる 1 図表 3 から現在の NISA に対しての認知度が向上していることがわかる 内容に関しても理解が少しずつ進んでおり 今後も認知度が向上していくと考えられるが 現在の口座開設者は既存投資家が 9 割であり 新規投資者は 1 割にとどまっている 1
図表 3 NISA に対する認知度の推移 出展 : 野村アセットマネジメント NISA に対する意識調査 より引用 図表 4 従業員持株会加入率の推移 出典 : 野村総合研究所 個人資産の運用分析を通じた世界的な視野での産業 金融の枠組みに係る検討 より引用 この図表から 02 年をピークに従業員持株会の加入率が低下し続けており 12 年までにはおよそ % 低下していることがわかる サラリーマンにとって 2
自分の勤務先である企業の株式の保有はもっとも始めやすい株式投資の一つと して考えられるがそれを促進するための従業員持株会の加入率の低下から 現 役世代の投資家層の減少が読み取れる そこで我々は新規投資者の利用促進のため次のことを提案する 初めて投資を行う者や投資知識の浅い人に対し 中長期投資や分散投資の効 果等の説明など基礎的な情報の提供 投資資金がない人へ定期積立投資に関する情報の提供 NISA の対象として従業員持株会 社債を利用可能にする 以上のことを通して投資のリスクに対する不安軽減と投資の有益性に関する情 報を提供することにより新規投資者の増加を図る 1 また利用していく中で不便と考えられることとして次の点が挙げられる 同一勘定期間内は NISA 口座を開設する金融機関を変更できない NISA 口座を廃止した場合 同一勘定設定期間中は再開設できない 申し込みに住民票が必要など手間がかかる このように利用者にとっては不便に感じる点が多く 改善が望まれる 改善の内容としては口座を開設する金融機関に関しては一年ごとに変更可能にし 廃止した場合の再開設は翌年からに変更 住民票ではなく社会保障 税番号制度を導入することで利便性の向上図る 2 以上のことより投資のリスクに対する意識の改善と NISA を通した投資環境の 改善により新規投資家の増加が見込める 30 3
2 投資信託の利用投資信託とは 複数の投資者から資金を集めて大きな基金をつくり 投資の専門機関が株式株式や債券など様々な資産で運用し その収益を投資額に応じて投資者に分配する仕組みの商品である 小口の資金でも間接的に様々な資産 市場に参加できるだけでなく 他の投資家の資金と合わせて運用されために規 模の経済活動 ( コストの低減 ) 効率的分散投資 ( リスク分散 ) 専門家の運用による情報や投資手法の優位性等を享受できるメリットがある 収益は運用成績により変動するため元本は保証されないが 運用対象や運用方法の違いで預貯金に近い商品性のものから リスクをとって大きな収益を狙う派生商品的 なものまで様々な種類がある 投資信託のメリット 少ない金額から購入できる 株式投資や債券投資だとある程度の金額が必要 1 となるが 投資信託は 1 万円程度から利用できる 株式や債券などに分散投資できる 個人で分散投資を行うには 多くの資産が必要となるが 投資信託は小口のお金を集めてひとつの大きな資金として運用するため様々な資産に分散投資でき リスクを低減できる 高い透明性がある 毎日 取引価格である基準価格が公表されているため資 産価値や値動きが分かりやすく金融商品である 決算ごとに監査法人の監査を 受けているため 透明性は高い 投信ラップ口座 ラップ口座とは 顧客が預けた資産残高に対する年間フィーだけ ( 売買のとも 2 なう手数料はなし ) で 証券会社が資産配分の決定 リバランス 組入れ銘柄 の選択 入替え 運用実績報告など一連の資産運用サービスを一括して提供す る仕組みの商品である 投信ラップ口座は 投を対象として資産運用を行うも のである 30 4
図表 投信ラップ口座のサービスの流れ 出典 : 図説日本の証券市場 14 年度版 より引用 以上のメリットが公募株式投資信託にはあるため NISA の利用を通じて促進し ていくことが望ましい 3 社債の利用 資金調達を行う発行者がお金を借りた証拠として元本の返済および利息の支 払いを約束した証書のことを債券といい 企業が発行する債券のことを社債と いう 社債を株式と比較した時 次のような特徴がある 返済期限がある 1 経営に参加する権利を持たない 株式の利回りより社債の利率が少ない 株式は一般的に値動きが激しくハイリスク ハイリターンと言われる 国債は 利子率が低いためローリスク ローリターン それに対し社債は国債よりも利 子率が高く 株式ほどリスクが高くないミドルリスク ミドルリターンである
ある程度の安定を求める個人投資家にとっては魅力的な投資対象になり 企業 側は資金調達のリスクを分散させることができる 図表 6 社債保有者の内訳 出典 : 日本経済研究センター H P より筆者作成 この図から米国に比べ日本の家計の社債保有率が低いことがわかる 理由と しては現在個人が社債を発行市場で購入することが困難であることである な ぜなら現在発行されている社債の多くは機関投資家に向けたものであり 個人 投資家が社債を購入できる環境が整っていないためである 以上のことより我々は社債投資プラットフォームの導入を提案する 社債投資プラットフォームとはウェブサイト上で個人投資家向けに運営されている取引のシステムのことである 毎週月曜日に その週に起債される銘柄 1 の利率や償還日 格付けなどの発行条件をウェブサイトに掲示される この制 度の導入により 個人投資家が発行市場から社債を発行することができるよう になる 6
3. 終わりにこれまで我々は証券市場の活性化のために有効と考えられる N I S A 制度の促進とそれを通じた投資信託と社債のさらなる利用促進について述べた このようなリスクの低い金融商品が提供されることで新規投資家の増加が見込まれ 証券市場の活性化が進むのではないかと考えられる 今後投資信託や社債など が中長期的な運用により 家計の資産形成の手段として普及していくことに期 待したい 1 2 30 7
参考文献 書籍 岡田正樹 (14) NISAde 投資信託 金融リテラシー研究所 竹川美奈子 (13) 株 投信を買うなら必見! 税金がタダになる おトクな NISA 活用入門 ダイヤモンド社 日本証券経済研究所 (14) 図説日本の証券市場 14 年版 公共財団法人 みずほ証券マーケット研究会 (08) デリバティブ 証券化商品入門 東洋経済新聞社 インターネット 最終閲覧日 14 年 月 31 日 金融庁 http://www.fsa.go.jp/ 金融広報中央委員会 1 http://www.shiruporuto.jp/ 日興アセットマネジメント http://www.nikkoam.com/ 日本銀行 http://www.boj.or.jp/ 日本経済研究センター http://www.jcer.or.jp/ 野村アセットマネジメント http://www.nomura-am.co.jp/nisa/ 野村総合研究所 2 http://www.nri.com/jp/ 野村資本市場研究所 http://www.nicmr.com/nicmr/ 東京証券取引所 http://www.tse.or.jp/ 30 投資信託協会 8
http://www.toushin.or.jp/ 三井住友アセットマネジメント http://www.smam-jp.com/ 大和総研 http://www.dir.co.jp/ 欧米で拡がる個人向け投資プラットホーム www.nicmr.com/nicmr/report/repo/04/04sum12.pdf 9