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Transcription:

下げ止まる企業向け銀行貸出の現状と見通し フロー面から見た国内企業部門の資金余剰幅は 21 年度で 3.9 兆円と足許で過去最大にまで拡大しているにもかかわらず 最近の企業向け銀行貸出は下げ止まりに向かっている 一見矛盾するこの動きの背景には 電力会社の社債発行ができなくなったことや 低金利下で預金と借入の両建て保有が増えていること そして円高の環境下で海外向け投資の増加といった動きがある しかし企業部門の大幅な資金余剰の状態は向こう数年変わらない可能性が高いため 銀行貸出には低下圧力がかかり続けると予想する 目先しばらくの間銀行貸出が増えたとしても 一部にとどまるか 一時的な動きで終わる可能性が高い 1. 企業部門の資金余剰幅拡大の一方で下げ止まる銀行貸出 内閣府 国民経済計算確報 のデータから 家計と企業部門における資金過不足額 ( キャッシュフローから固定資産 在庫など実物投資額を差し引いたもの ) を見ると 直近 21 年度は民間非金融法人企業部門が +3.9 兆円と 家計部門の +17. 兆円を上回る最大の貯蓄主体となっている ( 図 1) 35 図 1 家計 企業部門の資金余剰額 家計 3.9 3 民間非金融法人企業 25 2 15 17. 1 5 1 2 3 5 7 8 9 1 ( 年度 ) ( 資料 ) 内閣府 国民経済計算確報 21 年度における企業部門の資金余剰幅は これまでの実績と比較しても過去最 大である フローでこれほどの資金余剰になっていれば 銀行からの借入はかなり のペースで減少していても不自然ではないが 足許の企業向け銀行貸出は逆に下げ 1

止まりつつある 日本銀行 貸出 資金吸収動向等 によると 11 月の銀行貸出残 高は前年同月比で 25 ヵ月ぶりのプラスとなった プラスに転じた要因としては地 方公共団体向けの貸出増が大きいが 企業向け貸出の減少ペースも明らかに小さく なっている ( 図 2) ( 前年同月比 %) 1.5 1..5. -.5-1. -1.5-2. -2.5-3. -3.5 -. 図 2 1 2 3 5 7 8 9 1 11 12 1 2 3 5 7 8 9 1 11 21 211 ( 資料 ) 日本銀行 貸出先別貸出金 貸出先別貸出金の現状 地方公共団体中央政府海外円借款個人法人 ( 含む金融 ) 合計 企業部門がフロー面で大幅な資金余剰であるにもかかわらず銀行の企業向け貸 出が下げ止まりつつあるという 一見矛盾する動きが生じている要因としては 以 下の つの可能性が考えられる それぞれについて検討していく (1) 電力会社向け貸出の増加 (2) 企業が保有する預金の増加 (3) 海外向け投資の増加 () 資金繰り逼迫を避けるための資金確保 (1) 電力会社向け貸出の増加 ( 社債による資金調達から銀行借入へのシフト ) 日本銀行 貸出先別貸出金 によると 211 年 9 月末時点における民間企業向 け貸出の前年同期差は.8 兆円と 最近下げ止まりつつある そして業種別の内 訳を見ると 電力 ガス 水道向け貸出残高の増加幅が同 +2. 兆円と突出してお り この業種を除いた民間企業向け貸出 ( 金融保険除く ) は 3.2 兆円とまだ減少 が続いている ( 表 1) 表 1 銀行貸出残高の推移 ( 前年同期差 兆円 ) 21 211 Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 企業向け貸出 ( 金融保険除く ) 11. 1.3 1. 5.8 3.2.8 電力 ガス 水道業向け..1.1 2. 2.1 2. その他企業向け 11.5 1. 1.8 7.7 5.2 3.2 ( 資料 ) 日本銀行 貸出先別貸出金 2

電力会社では震災後原子力から火力へのシフトによる燃料費用増加でキャッシュフローが減少していることに加えて 社債発行が難しくなった 1 ために 銀行からの借入を増やす必要が生じている 電力業という一部業態に限ってみると 金融市場において社債から銀行貸出へのシフトが起きていることが銀行貸出下げ止まりの一因になっているものと整理できる この先の電力債は 215 年前後まで年間 1.5 兆円前後の償還が続く ( 図 3) 電力会社の社債発行環境が整わなければ 社債からの調達手段シフトが銀行貸出を押し上げ続けることになる 図 3 電力 9 社の普通社債償還額 2.5 2. 1.5 1..5. 27 28 29 21 211 212 213 21 215 ( 資料 )Bloomberg ( 注 ) それぞれの時点において 向こう 1 年間に迎える償還額の合計を示したもの 一方 電力会社以外の企業が発行した社債の償還額は 今年から 212 年にかけて増加していき その償還額はリーマン ショック前後の時期を上回る年間 兆円近くに達する ( 図 ) 図 一般事業会社 ( 電力 9 社除く ) の普通社債償還額 5 3 27 28 29 21 211 212 213 21 215 ( 資料 )Bloomberg ( 注 ) それぞれの時点において 向こう 1 年間に迎える社債償還額の合計を示したもの 1 211 年度における電力会社の社債発行額は 沖縄電力による 1 億円のみにとどまっている 3

この償還資金需要が銀行貸出増加の要因になる可能性はゼロではなく もし金融市場の機能低下によって電力業以外でも社債発行が難しくなった場合には 償還額が多いだけに銀行貸出への需要は急激に高まる しかし今のところ 電力会社が入っていないBBB 格の社債利回りと国債利回りとの格差は落ち着いた動きを示している この状態が変化しない限り 電力会社以外で社債から銀行貸出へのシフトが本格化する可能性は低いと考えられる ( 図 5) 図 5 (% ポイント ) 3.5 格付別の社債利回りと国債利回りの格差 (JCR 5 年 ) 3. 2.5 2. 1.5 1. AAA AA A BBB.5. 28 29 21 211 212 ( 資料 )Bloomberg (2) 企業が保有する預金の増加 ( 金利低下による資金保有コストの低下 ) 最近 企業が保有する預金残高は流動預金を中心に増加しており 現在過去最高水準にある ( 図 7) これが企業のバランスシートを拡大させるとともに 企業の借入減少に歯止めをかけている可能性が指摘できる 22 図 民間非金融法人企業の現預金残高 図 7 民間非金融法人企業の現預金増減 ( 前年差 兆円 ) 1 21 2 19 18 17 179 18 18 192 192 195 191 188 193 197 21 12 1 8 2-2 - Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 外貨預金譲渡性預金定期性預金現金 流動預金現預金合計 1 1 2 3 5 7 8 9 1 ( 資料 ) 日本銀行 資金循環統計 ( 年度 ) 21 211 ( 資料 ) 日本銀行 資金循環統計

通常 企業が余剰資金を抱えた場合 その分を負債の返済に充当して支払利子を減らすのが合理的な行動である しかし 日銀による実質ゼロ金利政策によって借入金利水準が非常に低く抑えられており かつこの状態が当分続くとの予想が強いために 企業が預金と貸出の両建て保有を容認する傾向が強くなっており 銀行貸出の減少を抑える要因となっている これは 2 年から 27 年にかけて日銀が量的緩和政策を解除し 利上げに踏み切った時に預金が減少したのと逆の動きである 日銀が現在の実質ゼロ金利政策を解除する条件は 生鮮食品除く消費者物価上昇率の+1% への到達が展望できるようになること であるため 超低金利が長期化することはほぼ確実である 従って 預金残高の高止まりが貸出減少にブレーキをかける状態はかなりの長期間続くと見られる (3) 海外向け投資の増加 日本銀行 資金循環統計 によると 民間非金融企業の資産の中で 預金と並ん で増えているのが対外直接投資と対外証券投資の二項目であり 両項目を合わせる と この 1 年間で 12.2 兆円の資金が投入されている ( 図 8) 円高が進む中 戦略 的に海外企業買収を行う動きが広がっていると見られ このための資金需要が企業 の借入減少に歯止めをかけている可能性が指摘できる 1 12 1 8 2-2 図 8 国内民間企業部門によるネットの対外投資額 ( 対外直接投資 + 対外証券投資 ) 95 9 97 98 99 1 2 3 5 7 8 9 1 11 ( 資料 ) 日本銀行 資金循環統計 ( 注 )211 年度は 21 年 1 月 ~211 年 9 月までのデータ () 資金繰り逼迫を避けるための資金確保 ( 年度 ) 金融市場の緊迫度合いが高まると 金融機関の貸出態度が厳しくなることもあっ て 企業は流動性枯渇を避けるため資金確保に動く 実際に 1997 年前後の国内金 融危機 および 28 年のリーマン ショック後にはこの動きが見られた この観 点から現状を見ると 銀行貸出態度判断 DI( 緩い - 厳しい ) は最近では全体的に 改善しており中小企業でもプラスになっていることから 念のための資金確保の動 5

きは全体としてまだ弱く 少なくとも今のところは銀行貸出下げ止まりの大きな要 因にはなっていないと判断できる ( 図 9) (DI 緩い- 厳しい ) 図 9 金融機関の貸出態度判断 DI 大企業 3 中堅企業 中小企業 2 1-1 -2-3 1995 1997 1999 21 23 25 27 29 211 ( 資料 ) 日銀短観 以上より 企業部門がフロー面で大幅な資金余剰にある中で 企業向け銀行貸出 が下げ止まっている背景には 1 電力会社における社債から銀行借入へのシフト 2 低金利の長期化による預金と借入両建て保有の容認 3 円高下での海外投資増加 - があると判断できる 2. 今後の企業向け貸出動向の見通し しかしこの先の企業向け銀行貸出は 伸びにくい環境が続くと見る その理由は 企業部門の大幅な資金余剰が当面大きくは変化しないと見込まれるためである 企業部門のキャッシュフローと実物投資の推移は 図 1 の通りである ( 両者の差が前掲図 1の資金余剰幅に一致する ) 21 年度のキャッシュフローは 91.9 兆円であり 実物投資額 5. 兆円の 1. 倍になる 1 8 2 図 1 キャッシュフロー 企業のキャッシュフローと投資の推移 実物投資 5 7 8 9 1 11 12 13 1 ( 資料 ) 内閣府 国民経済計算確報 ( 年度 ) 資金余剰幅3.8 試算値 33.2 29.1 2. 試算の前提 ( 前年比 %) 営業固定資産余剰投資 9( 実 ) + 5. 1. 1( 実 ) + 1. + 2.3 11( 予 ) 5. 1.1 12( 予 ) + 3. +. 13( 予 ) +. + 3.8 1( 予 ) +. + 5.2

両者の比率の差がこれほどまでに拡大すると 実物投資がかなり高い伸び率を数 年に亘って維持しない限り キャッシュフローには追い付かない この結果 大幅 な資金余剰が続くことになる 現時点における経済見通しを踏まえて先行きの資金 過不足額を試算すると 向こう数年間は 2 兆円を上回る資金余剰が続くという結 果となった 海外企業買収などの資本投資はこの試算における投資には含まれないため 資金 余剰額がゼロにならなければ貸出が増えないというわけではない 実際に 過去に おいては資金余剰額が 1 兆円前半まで縮小した段階で貸出が増加した年もある ( 図 11) しかし 前掲図 1 に示された現状と先行きの試算値を見る限り 向こう 2~ 3 年以内に企業部門の資金余剰額が 1 兆円近くまで減少する可能性も低いと考え られる 前節で見たような 足許の銀行貸出を押し上げる要因がしばらく残ったと しても 貸出増加は電力など一部のセクターに留まるか あるいは全体の貸出が増 加しても一時的な動きで終わる可能性が高いと見ている 図 11 企業部門の資金余剰額と有利子負債増減 (199~21 年度までの実績 ) ( 有利子負債残高前年差 兆円 ) 3 2 1 1 年度 -1-2 -3 - -5 - -3-2 -1 1 2 3 5 ( 企業部門資金余剰 兆円 ) ( 資料 ) 内閣府 国民経済計算確報 日銀 資金循環統計 逆にこの先 国内金融市場が不安定化した場合 あるいは景気が後退局面に入る など 経済金融情勢がネガティブな方向に進んだ場合は 金融市場の機能低下に伴 う社債発行減少による銀行借入へのシフトや 中小企業中心に資金繰り破たんを避 けるための資金を確保する動きが強まることで 銀行貸出への需要が高まるだろう しかしこれさえも 景気が回復局面に入って金融市場が落ち着きを取り戻せば 反 動減に晒される一時的な需要に過ぎない 多少の振れはあっても この先の銀行貸 出に対しては減少圧力がかかり続けると見るべきだろう ( 花田普 :hanadah@sumitomotrust.co.jp) 本資料は作成時点で入手可能なデータに基づき経済 金融情報を提供するものであり 投資勧誘を目的としたものではありません 7