2. 資源量調査 1 沖縄海域伊是名海穴及び伊豆 小笠原海域ベヨネース海丘の鉱床周辺や深部に対する掘削を行い 鉱床の全体像を捉え 平成 27 年度までに当該鉱床の詳細資源量 ( 有害元素の含有量を含む ) を把握する 2 日本周辺海域の資源ポテンシャル把握のため 上記以外の有望海域で広域調査を実施し

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することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ

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行政改革推進会議による 秋のレビュー 平成 26 年 11 月 14 日実施 評価者 上村敏之関西学院大学経済学部教授 上山直樹弁護士 ( ポールヘイスティングス法律事務所 外国法共同事業 ) 太田康広慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授 水上貴央弁護士 ( 早稲田リーガルコモンズ法律事務所 ) 吉

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平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

る 連合会は 管理運用の方針の策定及び変更等退職等年金給付調整積立金の管理及び運用に係る専門的事項を検討する場合には 資金運用委員会の専門的知見を活用する 3 退職等年金給付調整積立金の管理及び運用におけるリスク管理連合会は 連合会を除く管理運用機関 ( 組合 市町村連合会及び連合会をいう 以下同じ

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間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

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資料 3-1 1. はじめに 海底熱水鉱床開発に向けた今後の在り方について ( 案 ) 1 平成 29 年 2 月 24 日資源エネルギー庁鉱物資源課 陸域の鉱物資源に乏しい我が国は その需要量のほぼすべてを海外からの輸入に頼っており 領海 排他的経済水域 (EEZ) 及び大陸棚に賦存する海洋鉱物資源は 他国の政策に影響を受けにくい安定的な資源供給源を持つ観点から開発に向けた取組が進められてきた 平成 20 年 3 月に閣議決定された海洋基本計画においては エネルギー 鉱物資源の開発は 民間企業にとりリスクが高く 技術的な困難も伴うため 基礎調査や技術開発等について 国が先導的な役割を担う とされた これを受け 海底熱水鉱床については 平成 21 年 3 月に策定した 海洋エネルギー 鉱物資源開発計画 の中で 平成 30 年度までの中長期計画を定め 取組を進めてきた また 平成 25 年 4 月に閣議決定された新たな海洋基本計画において 海底熱水鉱床は 平成 30 年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう 既知鉱床の資源量評価 新鉱床の発見と概略資源量の把握 実海域試験を含めた採鉱 揚鉱に係る機器の技術開発 環境影響評価手法の開発等を推進するとともに その成果が民間企業による商業化に資するよう 官民連携の下 推進する と位置づけられた これを踏まえ 平成 25 年 12 月に策定した新たな 海洋エネルギー 鉱物資源開発計画 では 第 2 期となる平成 25 年度 ~30 年度の計画を定め これに基づく取組を進めてきた この間 計画に基づく取組は概ね順調に実施されてきた一方で 陸上を含む鉱山の開発は 事業の経済性を見込めることが必須であり そのためには 十分な資源量や低コストで開発可能な技術に加え 長期的な資源価格が事業を可能とするレベルで安定的に推移することも求められる この点 資源価格については 現在 計画策定当時と比べて低位に推移してきているため 現時点では陸上鉱山の開発においても開発意欲が減退していることに留意が必要である 一方で 中長期的には 途上国や新興国の経済発展 価格低迷による新規鉱山開発の停滞 資源国の政策の影響等により 供給不足となる可能性も一部指摘されているため 将来の安定的供給の観点からは海洋鉱物資源の開発も視野に入れた対応が必要である 更には 近年の外国船による我が国の同意を得ない海洋の科学的調査の事案の発生が増加しており 我が国の安全保障上の観点から注視する必要がある 海底熱水鉱床の開発に向けた平成 30 年度以降の計画の策定に当たっては こうした国際情勢を踏まえつつ これまでの計画の進捗を確認し 今後の在り方について検討しなければならない

2. 資源量調査 1 沖縄海域伊是名海穴及び伊豆 小笠原海域ベヨネース海丘の鉱床周辺や深部に対する掘削を行い 鉱床の全体像を捉え 平成 27 年度までに当該鉱床の詳細資源量 ( 有害元素の含有量を含む ) を把握する 2 日本周辺海域の資源ポテンシャル把握のため 上記以外の有望海域で広域調査を実施し 伊是名海穴と同程度 又はそれ以上の有望鉱床を発見し その資源量把握に努める 1 資源量の把握については 昨年 5 月 沖縄海域伊是名海穴 Hakurei サイトの資源量を 740 万トン 伊豆 小笠原海域ベヨネース海丘の資源量を 10 万トンと確認した 2 新たな鉱床については 平成 26 年度に 伊平屋小海嶺周辺 野甫 ( のほ ) サイト 及び久米島沖 ごんどうサイト を発見 公表した 更に 平成 2 7 年度には 伊平屋島北西沖 田名 ( だな ) サイト 久米島北西沖 比嘉 ( ひが ) サイト の 2 つの鉱床の発見を公表した < 論点 課題 > 1 既知鉱床の資源量評価及び新たな有望鉱床の発見については計画どおりに進められているものの 事業者が参入の判断ができるレベルの十分な資源量の把握には至っていない 平成 30 年度以降の計画においても 発見した鉱床の資源量の把握や新たな鉱床の発見が優先すべき課題となる 2 十分な資源量の確認については これまで明確な目標が示されたことはないが 5 千万トンは必要 との声が一部産業界から聞こえている 3 内閣府が中心となり経済産業省を含む関係省庁で実施する SIP( 戦略的イノベーション創造戦略 ) 次世代海洋資源調査技術 ( 海のジパング計画 ) においては 平成 30 年度までに潜頭性の熱水鉱床 ( 鉱体の全部が海底面に露出していない熱水活動が終了した鉱床 ) の調査手法を策定することを目指しており このプロトコルが確立できれば 現在の探査技術では発見が困難な鉱床の発見が期待できるほか 活動的な熱水鉱床の周辺に存在する潜頭性の鉱体が発見できるようになる 4 民間企業においても 船上掘削装置を含む新たな調査機器の導入が行われており 民間の調査能力の向上が期待できるようになってきている 5 外国船による我が国の同意を得ない海洋の科学的調査が行われている現状に鑑み 我が国の領海 EEZ 及び大陸棚に賦存する鉱物資源の把握は 鉱物資源の安全保障上の観点からも更に進めていかなければならない 1 資源量の把握については 概略資源量合計 5 千万トンレベル ( 注 ) の確認を 2

目標とする これに向け 次の計画期間終了までに 4 つの既知鉱床の概略資源量の把握を行う なお 新たな有望鉱床が発見され 開発優先度が高いと見込まれる場合には これらに先んじて当該鉱床の概略資源量の把握を行う ( 注 ) 現在発見されている鉱床の平均金属含有率等に基づき 企業の陸上鉱山への投資対象と考えられる 2 兆円規模の金属価値を有し 採掘年数 ( マインライフ ) 15 年以上となる概略資源量を算定 なお 今後明らかになる鉱床に存在する鉱種やその金属含有量 市況等により目標資源量は今後変動する可能性がある 2 安全保障上の観点も踏まえ 我が国領海 EEZ 及び大陸棚における資源の賦存場所の早期把握のため 新たな有望鉱床の発見に努める 3 SIP 次世代海洋資源調査技術の成果や民間の調査能力を新鉱床の発見や資源量の把握に活用する 3. 採鉱 揚鉱技術 1 深部ボーリング等による解析結果から鉱床全体の地山モデル ( 鉱床 岩盤物性モデル ) を構築するとともに 詳細資源量に基づく経済性評価をベースとして採鉱基礎条件を設定する 2 海域でのパイロット試験等を通じて 平成 29 年度までに採鉱 揚鉱分野の要素技術を確立する 1 地山モデルの構築は平成 26 年度までに終了し 伊是名海穴のマウンドは全体的に礫状の鉱石が積もったものであることが判明した これに基づく採鉱基礎条件の設定は平成 30 年度の経済性評価の際に行う 2 採掘 集鉱試験機の実海域での試験を実施し 走行性 視認性 掘削効率の向上等の改良を行った また 24 時間連続運転については 平成 26 年度に達成した 3 揚鉱システムについては ポンプ性能試験やループ摩耗試験を行い 平成 2 8 年度に試験用ポンプの製造 試験を行った 4 平成 29 年度に沖縄海域において採鉱 揚鉱パイロット試験を行うべく準備を行った < 論点 課題 > 1 主たる要素技術の個別の検討はこれまで実施済みであるが 世界初の試みという困難性も十分認識しつつ 平成 29 年度のパイロット試験を通じて システムとしての基礎技術確立を目指すべきである 2 一方 パイロット試験では揚鉱水処理を陸上で行うこと等としており 商業化の際に必要とされる全てのシステムを構築しているわけでないことには留意が必要である 今後は 商業化の際に必要とされるもののまだ検討が行われていない 高い掘削効率が期待されるドラムカッターヘッド型採掘機に 3

よる掘削試験 海底で鉱石を水中ポンプに安定的に送り出すスラリー ( 鉱石と水の混合 ) 濃度調整技術 揚鉱後のスラリーの分離処理技術といったシステムや生産コスト削減に資する技術開発を行うべきであろう なお パイロット試験の結果判明した課題がある場合には克服に向けて対応する必要がある 1 次の計画期間に 高い掘削効率が期待されるドラムカッターヘッド型での掘削 海底で鉱石を水中ポンプに安定的に送り出すスラリー濃度調整 揚鉱後のスラリー分離処理に関する技術開発を行い 安定操業可能な効率的でコスト負担の少ない開発技術について検討を行う 2 平成 29 年度のパイロット試験の結果判明した課題を含む 商業機にスケールアップするために必要な技術について検討を行う 4. 選鉱 製錬 1 沖縄海域及び伊豆 小笠原海域から採取された多様な特性の鉱石について 高効率な選鉱フローを研究するとともに 平成 29~30 年度に選鉱 製錬プラントの連動試験を実施し 有害元素処理や貴金属の回収等の課題解決を含め 最適なプロセスを確立する 1 選鉱連続試験プラントは これまでの選鉱フローの研究成果を踏まえて構築済み 2 選鉱技術については 当初陸上の黒鉱鉱山の選鉱技術の適用で可能と考えられていたが 形成されてまだ十分な歳月が経過していない海底熱水鉱床は 陸上に露出するまでに起こると想定されている濃集作用が起きておらず 金属鉱物が微少で硫化物の結晶化が十分進んでいない複雑な構成となっており また 同じ鉱体であっても産出する場所によって全く鉱物の組合せが異なることが判明した しかし 選鉱方法や試薬の検討により 実験室ベースでは 精鉱の鉛 亜鉛品位を 50% 亜鉛実収率を 70% に引き上げることができた 3 貴金属については 既存のプロセスである塩化揮発法で回収可能であることを確認した < 論点 課題 > 1 陸上の選鉱手法とは異なるフローが必要であり 伊是名海穴試料の鉛 亜鉛品位や亜鉛実収率について 実験室ベースで目標を達成したものの 連続試験装置ではまだ達成できておらず 平成 30 年度の試験で確認予定 2 試料中の有害元素については 選鉱の段階で十分に除去できていないが 一部の製錬所から 他の精鉱等とともに処理するため海底熱水鉱床由来の精鉱 4

の受入れは可能との回答を得ている 3 プロセスについてはある程度の見通しを得ているものの 更なる回収率の向上を目指し 経済性を向上させる必要がある 1 これまでの選鉱に係る検討結果を踏まえて 様々な鉱床に適用可能な選鉱フローを検討する 2 平成 29~30 年度の選鉱連続試験及び当該試験で得られた精鉱の既存製錬所への導入試験 ( 選鉱 製錬連動試験 ) によって得られた課題について 金属の回収率向上や有害元素処理を含め 次の計画期間終了までの克服を目指す 5. 環境影響評価 1 環境基礎調査の調査項目や環境影響調査方法等の妥当性の検証や改良に取り組み 平成 29 年度までに環境影響評価手法を確立する 1 平成 24 年度より 採鉱 揚鉱パイロット試験予定海域での環境モニタリング調査 環境影響予測モデルの開発 環境保全策として試験予定海域内外の深海生物の遺伝子交流の確認を行い 28 年度内に環境影響評価手法の開発を行う予定 < 課題 論点 > 1 平成 29 年度の採鉱 揚鉱パイロット試験に向けて 環境影響評価手法の開発及び評価のとりまとめを行ったが 平成 28 年度に実施したかく乱試験後の生態系等の回復過程を検証するためには 3~5 年間のモニタリングが必要であり こうした試験結果も踏まえ 更なる評価手法の高度化が必要 また パイロット試験予定海域以外の海底熱水鉱床開発にも適用可能か検証が必要 2 国際海底機構 (ISA) 国家管権外区域の生物多様性 (BBNJ) 廃棄物等の投棄による海洋汚染防止条約 ( ロンドン条約 ) 等において海底鉱物資源開発における環境保全に関する国際的な議論が開始されているため 国際整合性の観点から 国際ルールが整備されなければ 国内制度への反映ができない 1 採鉱 揚鉱パイロット試験やかく乱試験の際のモニタリング その後 3~5 年間のモニタリング等の結果も踏まえ パイロット試験海域以外の海底熱水鉱床開発への適用を始めとした環境影響評価手法の更なる高度化に取り組む また これまでに得られた成果を踏まえ 他省庁や関係機関等との協力 5

の下 国際的なルールづくりに貢献する 6. 法制度関連 1 海洋における鉱物資源開発に関連する法制度等を総合的に検証し 商業化に向けて必要な整備を行う 1 平成 27 年度に パイロット試験時及び商業化の際に適用される法令について総合的な整理を行った 2 平成 28 年度に 法制度上商業化の障壁になり得る事項について整理を行うとともに 当該整理を踏まえて本年 1 月に海底熱水鉱床開発に向けた有識者による法制度勉強会を開催し 国内法制度の整備に当たっては国際条約等との整合性を図る必要があり 国際海底機構 (ISA) 等のルールづくりに我が国として貢献していくべきとされた < 課題 論点 > 1 揚鉱水の処理 閉山後管理 環境影響評価の在り方について 引き続き議論が必要 2 国際海底機構 (ISA) 国家管権外区域の生物多様性 (BBNJ) 廃棄物等の投棄による海洋汚染防止条約 ( ロンドン条約 ) 等において海底鉱物資源開発における環境保全に関する国際的な議論が開始されているため 国際整合性の観点から 国際ルールが整備されなければ 国内制度への反映ができない < 再掲 > 1 海洋における鉱物資源開発の法制度について 商業化に資する規制等の在り方について検討を継続する また これまでに得られた成果を踏まえ 他省庁や関係機関等との協力の下 国際的なルールづくりに貢献する 7. 経済性評価 1 資源量評価 採鉱 揚鉱技術 選鉱 製錬技術及び環境影響評価分野の調査 開発成果を踏まえ 第 2 期最終評価として 平成 29~30 年度に経済性の評価を行う 2 同時に 民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトの開始に向けて 技術 コスト等の課題を抽出し 次段階においてその解決に取り組む ( 未実施 ) 6

< 課題 論点 > 1 平成 30 年度に行う第 2 期最終評価は 経済性評価に留まらず 今後克服すべき技術的課題に加え 国際ルールの策定や市況性を始めとする外的要因も考慮に入れた評価を行い 商業化実現のための課題について整理を行うことが必要 2 次期計画期間 ( 第 3 期 ) では これらの課題の克服を図るための検討を実施することが必要 1 平成 30 年度に 経済性評価に加え 商業化に向けた技術や法制度 及び市況性等の外的要因の課題の整理を含めた第 2 期最終評価を行う 2 次期計画期間においてこれらの課題の克服に取り組み 次の計画期間終了時の第 3 期評価において この取組結果の評価を行う 8. まとめ 海底熱水鉱床商業化に向けた取組は これまで順調に推移してきているものと言える 平成 29 年度の採鉱 揚鉱パイロット試験に成功すれば 基礎的な要素技術の確立が図られることとなる しかしながら 資源量については 資源開発企業等が関心を持つためには 5000 万トンレベルの資源量の把握が必要であり 民間企業とも協力しながら これに積極的に取り組む必要がある また 技術開発についても 深海という特性から様々な困難があり 将来の商業化システムをイメージしつつ 残された課題に取り組み 次の 5 年では技術面で一定の目処をつける必要がある さらに 国際整合性の観点から 国際ルールが整備されなければ 国内制度への反映もできず 民間企業の商業化を判断するための法制度が未確定のままとなる 国際交渉によるためルールの策定時期は不明確であるものの パイロット試験を含めたこれまでの我が国の経験を活用し 他省庁 機関等とも連携しながら これらの国際的なルール策定作業に貢献していく必要がある 加えて 経済性を評価する際に不可欠な金属価格といった 政府の取組が影響を及ぼさない外的要因についても考慮しなければならない 以上のとおり 次の計画期間では 国際情勢をにらみつつ 平成 30 年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう 既知鉱床の概略資源量の把握 新鉱床の発見 生産コスト削減等に資する採鉱 揚鉱及び選鉱 製錬に係る技術開発 環境影響評価手法の高度化等を推進するとともに 市況性等の外的要因を検討しつつ その成果が着実に民間企業による商業化に資するよう 官民連携の下 推進すべきである 7