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4 文化財の虫菌害 64 号 ( 2012 年 12 月 ) 文化財にみる有害カビ 有害カビの制御 高鳥浩介 村松芳多子 はじめに文化財にみるカビの特性について, 前号ではカビを知ること, カビの発生条件, 分布生態, 環境での生物活性, 特性をまとめた そのなかで, カビは目視できる微生物であり, 被害が起こった場合に客観的な判断ができること, 被害が拡大した場合, 単なるカビ被害としてではなく, 臭気, 変色, 劣化など様々な素材への悪影響や時にはその環境下での作業従事者に対しても被害を及ぼすことなどに触れてきた さらに, 一般にカビ発生は, 湿気との関係が重視されるが, 一方では湿性環境に限らず広範な施設環境で被害をもたらしていることにも触れ, カビの特性は多様であることに言及した そこで, 今回は文化財のカビ被害に及ぼす有害カビの制御に焦点をあて見直してみる 1. カビの抵抗性と制御概念近年ヒトの生活環境は著しく改善され, 快適な生活ができるようになってきた それにもかかわらず, 構造物やそれに関連する器物でいくつかの重要な問題が提起され, その一つにカビの汚染 被害の制御が挙げられる カビによる環境や基質への汚染は日常的である これは主に目視によりその汚染像を確認できるからであり, 一般には汚れたり, 着色したりした状態がその姿である カビによる汚染は, 高湿な暗所に発生するケースが多く, そのためカビの性質は, 高湿性であるものと認識されている 確かに湿った場所でのカビの発生は多い しかし, カビによる汚染は必ずしも湿った場所ばかりとは限らない 例えば皮革類, 繊維, 書物, ガラス, 合成樹脂類, 金属などさまざまな器物でカビによる被害をみる こうした汚染例は多いとはいえないが, 確実に増加の傾向にある それは, 一つに 環境の変化であり, さらに器物の多様化による結果と考えられる すなわち, 汚染するカビが多様化しているのではなく, 従来から汚染の原因とされてきたカビがその対象となっているにすぎない さて, カビによる汚染は目視により確認できるが, それでは微視的につまり形態的にどのように汚染しているか知ることも, 制御対策するうえで重要となるので考えてみたい カビの基本形態は, 胞子と菌糸で構成される ところがカビ汚染像をみると, 例えば多少湿った環境では, 多くは菌糸像であり ( 図 1), 胞子をみるケースは必ずしも多いとはいえない また菌糸像をよくみると均一な糸状構造ではなく, 不均一な糸状を呈し, さらに複雑な形態像をみることが多い また多少乾燥した器物では, 粉状のカビ発生をみることがある ( 図 2) この場合は菌糸より, 胞子を多量産生した汚染源となる つまりカビによる汚染は, ただ単にカビの発生という現象ではなく, そのミクロでの生物形態像が非常に重要となってくる 特に汚染のメカニズムや抵抗性と関わることから, カビ発生の脅威を感じざる図 1 湿った器物

高鳥浩介 村松芳多子 : 文化財にみる有害カビ 有害カビの制御 5 を得ない カビの抵抗性を試験する場合は, 胞子を用いることでほぼ同傾向の結果をみるが, 自然界では胞子に限らず菌糸もある それも複雑形態像を示すことから, こうした組織や細胞での抵抗性はそれこそ再現性のみられない不確実な結果をみることがある カビの抵抗性は自然界では一概にはいえない そこで, その制御を考えた場合, カビの汚染過程をよく理解しない限り, カビ制御は決して解決されない カビによる制御が困難であるとする意見が多いのは, 生物としてのカビそのものが理解されていないことと, さらに汚染のメカニズム構造が理解されていないことによる カビの制御は, カビの発生をさまざまな手法により抑制することと定義でき, 通常二通りの方法により行われる 一つは化学的対応であり, もう一つは物理的対応である それぞれの項目を表 1 に示した 化学的制御としての代表は防カビ剤であり, さらに消毒殺菌剤である これらはカビに対して制御できる薬剤であるが, その使い方や対象とするカビに対して効果が良好であったり, 逆になったりする また物理的制御として温度, 湿度要因が挙げられ, さらに紫外線, 超音波などによっても十分処理できる 例えば, カビの細胞に温度ショックなどを与えると瞬時に細胞死に至ることは早くから知られていた さらに近年除菌処理技術が応用されるようになってきた また除菌は, 目的とす る対象物や環境から, 微生物を除去することであり, 文化財に限らず食品, 医薬品, 化粧品など, 広い分野で応用されてきている この分野の研究開発は著しく進歩してきた カビの細胞は小さくても直径 3ミクロンほどであり, 細菌よりは大きい カビのための除菌技術としては, 非常に有効な手法といえる さてカビの制御としていくつかの専門用語が本書でもとりあげられている 殺菌, 滅菌, 除菌, 静菌, 抗菌, 消毒, 防カビなどの定義を理解することが重要である それを理解したうえで, 微生物としてのカビの制御を考えていく必要がある カビによる汚染の制御を考える場合次のような過程でその対応が著しく異なってくる カビによる制御といった場合, カビ発生後での制御を考えることが一般的である この場合カビが明らかに目視で確認できる状態にある一方, カビの汚染が著しい そのため汚染部分でのカビの不活化は困難を伴うことが多い たとえ汚染部分での制御が可能としても, 時間の経過により再発生する頻度は高い 一方, カビ発生が予測できる環境や器物に先行策としてカビ制御を何らかの形で実行すると, この場合カビ制御は比較的容易に制御できる このようにカビ制御に関してどのように認識しているかにより, その制御が良好な結果をもたらすか, またまったく逆のそれになるか分かれる カビの制御と簡単に言うが, しかし現実にどの 表 1 化学的 物理的制御の種類 化学的制御 物理的制御 防カビ剤 高温処理 消毒, 殺菌剤 低温処理 脱酸素剤 相対湿度 オゾン 電磁波処理 酸化電位水 除菌処理 保存料 包装処理 光触媒 クリーンルーム 図 2 樹脂の粘着部分

6 文化財の虫菌害 64 号 ( 2012 年 12 月 ) 程度の効果をみてカビの制御といえるか単純に評価されるものではない 完全ではなくても, たとえ1% いや0.1% でも効果があればそれを制御できたとするかは, それぞれの環境や器物によって大きく異なるであろう この解釈と評価は本稿全体を理解することで解明できるものと期待している さて, 本稿ではカビ制御手法として応用されるいくつかをとり挙げ, その理論と実践についてまとめる また以下に示す多くのデータは筆者らの結果にもとづくものである アメリカDiamond Shamrock 社により開発された ジヨードメチル p トリスルフォン熱,UVに安定な抗カビ剤である 主に塗料用として応用されている アメリカ Abott 社により開発された 2) フェノール系化合物 p クロロ m キシレノール ( PCMX) 抗カビスペクトルの広い薬剤である ただし, フェノール臭強い防カビ剤であることから用途は多少制限される 一般には皮革, 糊接着剤などに 応用されることが多い 2. 化学的制御文化財施設でのカビ被害を防止する手段として化学的なそれを期待する理由として 1) すでに p クロロ m クレゾール抗カビスペクトルは広い 難水性でフェノール臭強い防カビ剤である カビ被害を受けた器物に対しての対策,2) 施設内でのカビ被害防止対策,3) カビ被害 表 2 2 (4 チアゾリル ) ベンズイミダゾール ( TBZ) の防カビ効果 の二次汚染対策,4) 応急対策,5) カビの カ ビ MIC 値 (μg/ml ) 緊急不活化対策,6) カビの飛散による健康被害対策などがあげられる 接合菌類 Mucor sp. そのため, 器物への影響のない薬剤であ Rhizopus stolonifer 0~200 ること, 安全性の高い薬剤であること, 安定性のある静カビ性薬剤であること, 安定 子のう菌類 Eurotium chevalieri 性の弱い殺カビ性の強い薬剤であることが Chaetomium globosum 1~ 要求される (1) 防カビ剤 不完全菌類 Alternaria alternata 200 防カビ剤は, カビに極めて有効な化合物 Aspergillus flavus 4~ である カビに対する有効性はどちらかと Aspergillus niger 4~ いうと静カビ性が重視される Aspergillus ochraceus 20 木材用, 製紙用, 塗料用, 糊接着剤用, Aspergillus versicolor 皮革用, プラスチック用など用途は広く, Aureobasidium pullulans 0.2~2 文化財器物に使われることもあるが, むし Cladosporium cladosporioides 1~ ろ周辺施設の構造などへの応用が多い Cladosporium sphaerospermum ~25 1) ハロゲン系化合物 Curvularia sp. 20~50 α ブロムシンナムアルデヒド ( BCA) Fusarium moniliforme 常温下で微量に気化することで防カビ活 Fusarium oxysporum 4~20 性をしめす 抗カビスペクトルは広い 北 Penicillium citrinum 4~20 里研究所で合成された防カビ剤である Penicillium oxalicum 0.5~5 テトラクロロイソフタロニトリル Pestalotiopsis sp. (TPN) Phoma sp. カビに対する選択性あるが, 多くのカビ Ulocladium atrum 20~40 に対して有効である 安全性では毒性弱い 最小発育阻止濃度

高鳥浩介 村松芳多子 : 文化財にみる有害カビ 有害カビの制御 7 3) イミダゾール系化合物 2 ( 4 チアゾリル ) ベンズイミダゾール ( TBZ) ( 表 2) チアベンダゾールとして知られる 抗カビス 熱や光に安定で耐光性にすぐれている 7) 有機ヒ素化合物 ' オキシビスフェノオキシアルシン抗カビスペクトルはやや広い 毒性低く, 熱安 ペクトルは広くさまざまな環境や器物に応用され 定性である カビに対して効果持続する る 文化財での応用例は多い 耐熱性, 化学的に 安定である 安全性が高く, 塗料, プラスチック, 接着剤など広く応用される 2 ( カルボメトキシアミノ ) ベンズイミダゾール抗カビスペクトルはやや広い 木材, 塗料, プラスチック, 皮革などにも用いられる 4) チアゾール系化合物 2 ( 4 チオシアノメチルチオ ) ベンゾチアゾール (TCMTB) 抗カビスペクトルは広い 無臭で熱安定な防カビ剤である 塗料, 皮革用, スライムコントロー (2) 消毒, 殺菌剤消毒, 殺菌剤は微生物を短時間で死滅させる効力がある 器物や環境対策として汎用される薬剤が多い そのため薬剤は, 生体に対し安全性の高いことが重要である ここでは, カビに対して有効な主な消毒, 殺菌剤をとり挙げる 1) アルコール系化合物 エチルアルコール安全性の高いアルコールであり, 通常 70% 濃度が用いられる 殺カビ性は極めて強く ( 表 3), アルコールとカビの接触後僅か ~ 秒でその ル用として用いられる 2 メトル 4 イソチアゾリン 表 3 エタノールの殺カビ効果 3 オン殺カビに要した曝露時間 ( 秒 ) カビ抗カビスペクトルはやや広 35 % エタノール 70 % エタノール い 防腐 防カビ剤では酸性域でその活性は強い特徴がある ただし, 熱に不安定である 5) グアニジン系化合物 ドデシルグアニジン塩酸塩抗カビスペクトルはやや広い 繊維製品, 紙, パルプなどに用いる 弱いながらアルコール臭あり 6) ピリジン系化合物 ジンク 2 ピリジンチオール 1 オキシド抗カビスペクトルはやや広い 防腐防カビ剤であり亜鉛の錯塩である カビ以外にも有効である 2,3,5,6 テトラクロロ 4 ( メチルスルフォニル ) ピリジン 絶対好湿性 Trichoderma sp. Rhizopus stolonifer Rhodotorula sp. 好湿性 Cladosporium cladosporioides Cladosporium sphaerospermum Fusarium graminearum Chaetomium globosum 耐乾性 Aspergillus niger Aspergillus ochraceus Aspergillus versicolor Penicillium expansum Paecilomyces lilacinus 好稠性 Aspergillus restrictus Eurotium repens Wallemia sebi 180 0 以上 180 120 120 120 180 120 180 抗カビスペクトルはやや広い カビや藻類に有効である,,,120,180,0 秒間隔で曝露した時の殺カビに要した時間 0 秒曝露時間では死滅せず

8 文化財の虫菌害 64 号 ( 2012 年 12 月 ) 表 4 次亜塩素酸ナトリウムの殺カビ効果 カ ビ 殺カビに要した曝露時間 ( 分 ) 有効塩素濃度 ( %) 0.1 0. 5 1. 0 2. 0 5. 0 Chaetomium globosum 180 以上 180 以上 180 以上 180 以上.0 Cladosporium cladosporioides 180 以上 180 以上 120 0.5 Cladosporium sphaerospermum 180 以上 180 以上 120 60 0.5 Aspergillus niger 180 以上 180 以上 180 0.5 Eurorium chevalieri 180 以上 180 以上 180 以上 0.5 Fusarium oxysporum 180 以上 180 以上 180 0.5 Paecilomyces variotii 180 以上 180 以上 120 0.5 Penicillium aurantiogriseum 180 以上 180 以上 180 60 0.5 0.5,1,1.5,2,3,4,5,,,,60,,120,180 分間隔で曝露した時の殺カビに要した時間 効果を認める エタノールとして 40 % 以上で殺カビ効果が得られる 手指, 皮膚の消毒, 室内環境, 器材などに使用される イソプロピルアルコール毒性, 刺激性はエチルアルコールより強い 殺カビ性は強い ~ 50 % として用いられる 手指, 皮膚の消毒, 医療具の消毒に使われる 2) ハロゲン系化合物 次亜塩素酸ナトリウム (NaOCl) 殺カビ性強い消毒, 殺菌剤である ( 表 4) 強い漂白, 脱臭作用もある 刺激臭のため眼, 粘膜には注意を払う 極めて不安定であり, 光や熱などで容易に失活しやすい 金属腐食性強いので使用後は十分な水洗いをする また, 有機物存在下では効果著しく弱い トリクロロイソシアネート加水分解により次亜塩素酸を生成する 殺カビ性は酸性側でより強い 毒性は低い 金属腐食性がある 保存安定性は良いが, 水への溶解度が大きいので湿気を避ける 3) アルデヒド系化合物 ホルムアルデヒド ( HCHO) ガス状物質で水に ~ 40 % 溶ける ホルマリンはホルムアルデヒドを 37 % 含有した水溶液である 還元作用により細胞質を破壊し, タンパク凝固により殺カビ性あり, ガス消毒として環境に応用される 刺激性強いので眼, 粘膜との接触を避ける グルタールアルデヒド活性アルデヒド基を 2つ有し, 無色特異臭のある液体である 短時間で殺カビ性を示す 使用時は一般に緩衝剤を添加し,pH7.5 ~ 8.5で2% 濃度とする 4) 界面活性剤 塩化ベンザルコニウム ( 逆性石ケン ) カチオン系界面活性剤である 加熱にも安定であり長期有効である 手指, 皮膚の消毒, 器材や環境の消毒に用いられるが, 金属腐食性がある カビに対してかなり有効である ( 表 5) アルキルジ ( アミノエチル ) グリシン塩酸塩 表 5 塩化ベンザルコニウムの防カビ効果 カ ビ MIC 値 (μg/ml ) 接合菌類 Rhizopus stolonifer 0 子のう菌 不完全菌類 Alternaria sp. Aspergillus fumigatus Aspergillus niger 0 Aspergillus restrictus 50 Cladosporium cladosporioides Eurotium herbariorum 50 Fusarium solani Geotrichum candidum 5 Penicillium citrinum 0 最小発育阻止濃度

高鳥浩介 村松芳多子 : 文化財にみる有害カビ 有害カビの制御 9 両性界面活性剤であり, アニオン界面活性は洗浄力, カチオン界面活性は殺カビ性を示す 低毒性であり広く応用される 5) グアニジン系化合物 クロルヘキシジン低毒性で殺カビ性がある 有機物の影響をうけること少なく, 安定した効果が得られる 金属腐食性少ない 主に医療用途である 石けん, アニオン系界面活性剤, 次亜塩素酸ナトリウムとは配合禁忌である ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩無色無臭の液体である カビに対しては有効であるが効果弱い 機器, 環境の消毒に用いる 6) その他の殺カビ化合物 過酸化水素強い酸化漂白作用がある 殺カビ性はあるが弱い 刺激強いことから取り扱いに注意する エチレンオキシドガス状殺カビ剤である 他の微生物にも有効である エチレンを酸素で気相酸化させて生成する 刺激性強く, 高濃度では毒性強いことから取り扱いは注意する 引火性, 爆発性があり同様に注意を払う (3) 脱酸素剤脱酸素剤とは, 酸素を化学的に吸収する素材であり, カビの発育抑制にすぐれた効果を示す 素材として無機系の鉄粉, 有機系のアスコルビン酸, カテコールなどが用いられる 毒性などの観点から, 脱酸素材の多くは鉄を主剤とする 鉄が錆びる時に酸素を必要とすることを利用したものである カビは好気性であり, 酸素濃度低下するにつれ発育が弱くなる パンのカビ発生と酸素濃度をみると, 明らかにその濃度が低下するに従ってカビの発生が遅くなる さらに脱酸素下でカビが抑制されるばかりでなく死滅するともいわれる (4) オゾンオゾンは大気中に約 0. 05 ppm 存在する 極めて強い酸化作用があり, 金属腐食性のある不安定な気体である 殺カビ性はあるが安定性から気相 より, 液相処理されることが多い 特有の臭気があり, 呼吸器系, 眼などへの刺激毒性も強い 低濃度の 0.6ppmでも長時間曝露により有害な障害をおよぼす 空中でのオゾンは作業環境基準 ( 勧告許容限界 ) として, 日本では 0.1ppmとされる 作用は, 菌体蛋白酵素などの酸化分解である (5) 酸化電位水電気的に塩化ナトリウム溶液を反応させることにより生成される酸化電位水 ( 酸性水 ) は, 強力な殺カビ活性を有す 酸化電位水の殺カビ活性は, 反応時に生成された活性型塩素によるものである 安全性高いことからさまざまな分野で応用されつつある (6) 保存料主に防腐保存料として用いられる 食品添加物として許可されている保存料として, ソルビン酸 ( 塩 ), 安息香酸 ( 塩 ), プロピオン酸 ( 塩 ), デヒドロ酢酸 ( 塩 ), パラオキシ安息香酸エステル類があり, さらに防黴剤としてオルトフェニルフェノール ( 塩 ), チアベンダゾール, ジフェニールがある ここでは保存料についてふれる 1) ソルビン酸塩ソルビン酸あるいはソルビン酸カリウムは比較的安定な化合物である その保存料としての抗カビ活性は phに依存し, 酸性側で効果が大きい 2) 安息香酸塩酸型保存料のソルビン酸に比べ pka 値が低い そのため, より酸性下にすることで抗カビ効果が期待される 3) プロピオン酸塩保存料としてカビに対する効果は大きく,pH に依存することなく微量で抗カビ活性が得られる プロピオン酸はナトリウム塩, カルシウム塩として利用される 4) デヒドロ酢酸塩デヒドロ酢酸のpKa 値は高くほぼ5.1である そのため全般に酸性側で抗カビ活性が強い 5) パラオキシ安息香酸エステル塩 n ブチル,n プロピル, エチル, イソプロピル, イソブチルの 5 種のエステルが許可されてお

文化財の虫菌害 64 号 ( 2012 年 12 月 ) り, 抗カビ活性はアルキル基が増えるほど強い 3. 物理的抑制 (1) 高温処理 カビの多くは中温性であり, 細菌に比べ熱感受 性が強い 高温加熱処理として湿熱, 乾熱がある 湿熱殺菌は, 熱水や蒸気で加熱することにより 処理 ( 約 80 ) についてカビの活性をみると, それぞれでの生残性に明らかな差がみられる 通常カビの発生を抑える低温は, 冷蔵状態を意識するが, この低温温度域であっても日数の経過とともにカビの発生をみる つまり冷蔵状態でのカビの発生は, 全く抑制できるとはいえず, 単に発生までに日数を要するものと解釈した方がよ 微生物を死滅させる方法である この方法では, さらに熱湯と高圧蒸気, 常圧蒸気による方法があ い 冷凍処理では, カビの発生をみることはない る 熱湯は 0 まで, また高圧蒸気は0 より上昇させるため加圧する カビの多くは, ほぼ0 で 表 6 湿熱による殺カビ効果 死滅するので高圧蒸気とすることは殺カビに要した曝露時間 ( 分 ) カビないが, 細菌では, 芽胞形成菌はこ湿熱 50 湿熱 60 の方法によらないと死滅させること Alternaria sp. 60 5 ができない Aspergillus niger 240 以上 5 カビについて湿熱 50,60 付近での殺カビ性をみると ( 表 6),50 では数時間でも生存できるのに比べ, 60 ではほとんど 分前後で死滅す Aspergillus versicolor Cladosporium cladosporioides Fusarium sp. Geotrichum candidum 5 60 0.5 0.5 0.5 60 る 60 以上ではより早い時間で死 Paecilomyces variotii 240 以上 60 滅することが考えられる 乾熱殺菌は, 熱風による殺菌方 Penicillium citrinum Trichoderma sp. 180 1 法であるが, 空気は比熱小さく熱伝 0.5,1,1.5,2,3,5,,,20,60,,120,180,240 分間隔で曝露した時の殺カビに要した時間導性が悪いため, 伝熱媒体としては 240 分曝露時間では測定できなかった 劣っている そのため, 殺カビ効果 は湿熱処理より劣る 乾熱として 表 7 乾熱による殺カビ効果 80 および0 でカビ胞子の死滅殺カビに要した曝露時間 ( 分 ) 時間をみると ( 表 7),80,60 分カビ乾熱 60 乾熱 0 でも多くの胞子の活性がみられるが, 0 ではA. fumigatusを除いたカビが 分前後で死滅する 通常微生物に対する乾熱滅菌条件は,160,1 時間または180, 分とされ, この条件下では全ての微生物が死滅する Rhizopus stolonifer Alternaria alternata Aspergillus fumigatus Aureobasidium pullulans Chaetomium globosum Cladosporium cladosporioides Cladosporium sphaerospermum Eurotium chevalieri 以上 以上 以上 以上 以上 以上 (2) 低温処理低温によるカビの抑制は, 殺カビ性としてより静カビ性を意味する Fusarium oxysorum Penicillium citrinum Trichoderma sp. 低温の場合, 冷蔵処理 (4 ~ 6 ), 冷凍処理 ( 20 ~ ), 超低温,,60, 分間隔で曝露した時の殺カビに要した時間 分曝露時間では測定できなかった

高鳥浩介 村松芳多子 : 文化財にみる有害カビ 有害カビの制御 11 細胞の障害をうけやすい傾向にあり, 次第と死滅する 超低温処理では, 冷蔵処理同様にカビの発生を抑制できる その抑制で, 冷蔵処理と異なる点は, 超低温下になるに従って細胞の活性は安定化し, 死滅することなく長期にわたって生残する に到達し殺菌性を示すとされる 遠赤外線による熱伝導は, 表面的であり厚みのない場合に限り効果が得られる ガンマ線やエックス線などの放射線殺菌は, DNA 鎖切断することにより起こる 放射線は, 細胞内に通過できる そのため内部まで十分に到 達し, 殺菌効果が得られる (3) 相対湿度 カビの発育は相対湿度 (Relative Humidity: RH%) と深く関わっている カビの発育に影響をおよぼす重要な因子として湿度, 温度, 栄養, 酸素が挙げられる その中で温度, 酸素について (5) 除菌処理微生物の大きさは, 細菌で約 1ミクロン, カビ酵母で 3ミクロン以上である カビは特に形態的特徴があり, 大きい細胞では 0ミクロン以上に はまとめてきたので, ここでは相対湿度のカビの抑制についてみると, 多くのカビは 表 8 UV による殺カビ効果 % 前後で発生したり制御され, さらに死滅率 ( 99. 9 %) カビ低い85% になるとかなりのカビが制御さ照射量 ( mw sec/cm 2 ) れる より低い RHとなる 80 % 以下で発育できるカビは著しく限られるようになる 絶対好湿性 Rhizopus stolonifer 60 カビの種によって RH% に依存することが Aureobasidium pullulans 72 あり, このRH% とカビの関係を前号で詳 Trichoderma sp. 42 細に述べているのでそれを参照していただ Rhodotorula sp. 48 きたい 好湿性 Chaetomium globosum 120 (4) 電磁波処理 Arthrinium sp. 420 電磁波による殺カビ技術が著しく進んで Alternaria alternata 1680 きた 例えば, 紫外線照射, 遠赤外線, ガ Botrytis cinerea 48 ンマ線, エックス線マイクロ波など効果の Cladosporium sphaerospermum 240 あることが知られている Fusarium graminearum 36 紫外線では200 ~ 0 nm 波長のうち Geotrichum candidum 12 265nmが最も殺カビ性が強い この波長 Stachybotrys sp. 1200 は, 細胞にある核酸の最大吸収帯と同じで Phoma sp. 60 あり直接作用するものである 紫外線は, 透過力が弱いため表面のみに有効である 耐乾性 Aspergillus niger 72 ( 表 8) 従って, 環境や器材での効果は直 Aspergillus ochraceus 36 接暴露できる部分のみ有効であり, 内部で Aspergillus versicolor 96 は全く効果をみることはない この照射量 Paecilomyces lilacinus 96 は細菌や酵母に比較して大きい マイクロ波は日本では2450 MHzのマ 好乾性 Eurotium amstelodami 60 イクロ波加熱が利用される 波長 0. 75 ~ Eurotium repens 120 00μm 範囲が赤外線であり, 遠赤外線 Aspergillus restrictus 48 は2.5μ m 以上域にある 特に 2. 5 ~ 20 Wallemia sebi 48 μmの遠赤外線が発熱し, 直接物体や菌体 99.9% 死滅するのに要したUV 照射量

12 文化財の虫菌害 64 号 ( 2012 年 12 月 ) なるものもある こうした細胞を物理的に除去するには, ろ過法が一般的である すなわち, ろ過するためのフィルターの口径が, 微生物径より小さいことで除去できる この方法を利用したメンブランフィルターや大気中の微生物の除去を目的とした施設でのヘパフィルターが除菌用として応用されている 除菌処理で応用されている機器としてフィルター式空気清浄器がある 空気清浄器は室内のダストやアレルゲンとして重視されるダニおよびその排泄物, さらにカビにも焦点をあてられ, カビの場合の除去効果をみると明らかに使用後での大気中カビ数は減少する (6) 包装処理包装技術の導入は単なる汚染防止, ダスト対策に加えて微生物汚染防止などとしてとり入れられた 速やかに包装することにより, 品質保持, カビの発生防止といった利点が得られる その意味からも, 包装技術の進歩で微生物事故を防止する有力な物理的対策といえる しかし, 注意しなければならないのは, 包装することで全てカビ発生防止できるとは限らない 包装材料自体の汚染, 作業環境の良し悪しによる結果として, 包装後でもカビによる事故はいくらでも発生し得る 包装によるカビ防止はあくまでも一時的対応にすぎないので, 包装のみに限らずさらにカビ防止の付加因子をとり入れることが重要ともいえる (7) クリーンルーム環境中でのコンタミネーションコントロール を考慮する場合, クリーンルームによる物理的除去方法が用いられる クリーンルームは, 除菌と原理的に同じであり, 空気中に浮遊する微生物などをある一定の清浄度に保つ物理的処理として有用な方法といえる 用いるフィルターは, 微生物をほぼ除去できるので, 作業中でのカビ浮遊は起こりえない 清浄度の基準は,NASA 基準や JIS b 9920に従って設けられている 参考文献 1) 高鳥浩介監修 : かび検査マニュアルカラー図譜, テクノシステム ( 2002) 2) 山本茂貴監修 : 微生物殺菌実用データ集, サイエンスフォーラム ( 2005) 3) 芝崎勲監修 : 有害微生物管理技術第 1 巻, フジテクノシステム ( 2003) 4) 芝崎勲監修 : 有害微生物管理技術第 2 巻, フジテクノシステム ( 2003) 5) 弓削治監修 : 抗菌のすべて, 繊維社 (1997) 6) 芝崎勲著 : 殺菌除菌応用ハンドブック, サイエンスフォーラム ( 1985) 7) 石井泰三監修 : 微生物制御実用事典, フジテクノシステム ( 1993) 8) 芝崎勲 : 微生物制御用語辞典, 文教出版 (1985) ( たかとり こうすけ NPO 法人カビ相談センター理事長 ) ( むらまつ かなこ新潟県立大学人間生活学部 )