アジア健康構想の推進に向けた提言

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JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

資料 5 総務省提出資料 平成 30 年 12 月 21 日 総務省情報流通行政局

新興国市場開拓事業平成 27 年度概算要求額 15.0 億円 (15.0 億円 ) うち優先課題推進枠 15.0 億円 通商政策局国際経済課 商務情報政策局生活文化創造産業課 /1750 事業の内容 事業の概要 目的 急速に拡大する世界市場を獲得するためには 対象となる国 地

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

新たな外国人材受入れ制度の検討経緯及び概要 平成 30 年 7 月 12 日 経済産業省 製造産業局 今年 2 月 20 日の経済財政諮問会議において 総理から以下の指示 安倍政権として いわゆる移民政策をとる考えはありません この点は堅持します 他方で 5 年間のアベノミクスによって 有効求人倍率

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外国人労働者の雇用実態に関するアンケート調査結果 速報版 平成 30 年 12 月 山形県商工労働部 1. 調査目的 県内における外国人労働者の実態等について調査を実施し 今後の外 国人材の活用施策の検討材料とする 2. 調査期間 平成 30 年 10 月中旬 ~11 月中旬 3. 調査対象 方法

二さらに現代社会においては 音楽堂等は 人々の共感と参加を得ることにより 新しい広場 として 地域コミュニティの創造と再生を通じて 地域の発展を支える機能も期待されている また 音楽堂等は 国際化が進む中では 国際文化交流の円滑化を図り 国際社会の発展に寄与する 世界への窓 にもなることが望まれる

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

システムの開発は 国内において 今後の普及拡大を視野に入れた安全性の検証等に係る研究開発が進められている 一方 海外展開については 海外の事業環境等は我が国と異なる場合が多く 相手国のユーザーニーズ 介護 医療事情 法令 規制等に合致したきめ細かい開発や保守 運用までも含めた一体的なサービスの提供が

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

20 21 The Hachijuni Bank, LTD.


⑴ ⑵ ⑶

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件

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40号表1

5. 政治経済学部 ( 政治行政学科 経済経営学科 ) (1) 学部学科の特色政治経済学部は 政治 経済の各分野を広く俯瞰し 各分野における豊かな専門的知識 理論に裏打ちされた実学的 実践的視点を育成する ことを教育の目標としており 政治 経済の各分野を広く見渡す視点 そして 実践につながる知識理論

「諸外国の大学教授職の資格制度に関する実態調査」1

次 Ⅰ. 総論 2 Ⅱ. 重点分野 3 Ⅲ. 人材育成 確保 6 Ⅳ. 情報管理 8 Ⅴ. その他 9 1

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

火山防災対策会議の充実と火山活動が活発化した際の協議会の枠組み等の活用について(報告)【参考資料】

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

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2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設

(3) その他 全日制高校進学率の向上を図るため 更に公私で全体として進学率が向上するよう工夫する そのための基本的な考え方として 定員協議における公私の役割 を次のとおり確認する 公立 の役割: 生徒一人ひとりの希望と適性に応じて 多様な選択ができるよう 幅広い進路先としての役割を担い 県民ニーズ

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

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2015 年度 ~2017 年度中期経営経営計画 14 中計 1. 当社が目指すもの企業理念と Vision E 2.11 中計 中計 (2nd STAGE / 2012~ 年度 ) の成果 - Vision E における 11 中計の位置づけと成果 - 1

東京センチュリー株式会社統合レポート2018

1. はじめに 本格的な地方分権の時代を迎え 市民に最も身近な地方自治体は 市民ニーズに応じた政策を自ら意志決定し それを自己責任の下に実行することがこれまで以上に求められており 地方自治体の果たすべき役割や地方自治体に寄せられる期待は ますます大きくなっています このような市民からの期待に応えるた

平成22 年 11月 15日

第5回 国際的動向を踏まえたオープンサイエンスの推進に関する検討会 資料1-1

学生確保の見通し及び申請者としての取組状況

平成 29 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 ( 我が国のデータ産業を巡る事業環境等に関する調査研究 ) 報告書概要版 平成 30 年 3 月 経済産業省 ( 委託先 : みずほ情報総研株式会社 )

(2) 熟練技能者等の派遣による若年技能者等に対する実技指導ものづくりマイスター対象職種以外の職種で企業等から実技指導の要請を受けた場合 熟練技能者等を派遣し実施します (3) 学校単位の製作実演のイベント熟練技能者等を小中学校 訓練施設等へ派遣し 製作実演 ものづくり体験等を行う ものづくり体験教

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貿易特化指数を用いた 日本の製造業の 国際競争力の推移

薬-1 長期収載品と後発品

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Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

H28秋_24地方税財源

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1. 実現を目指すサービスのイメージ 高齢者や障害者 ベビーカー利用者など 誰もがストレス無く自由に活動できるユニバーサル社会の構築のため あらゆる人々が自由にかつ自立的に移動できる環境の整備が必要 ICT を活用した歩行者移動支援サービスでは 個人の身体状況やニーズに応じて移動を支援する様々な情報


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Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

⑴ 政策目的本件は, 我が国において開発資金のための国際連帯税 ( 国際貢献税 ) を導入し, 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 等, 国際的な開発目標の達成に対応 貢献するために, 世界の開発需要に対応し得る幅広い開発資金を調達するもの これは, 外務省政策評価, 基本目標 Ⅵ 経済協

規制 制度改革に関する閣議決定事項に係るフォローアップ調査の結果 ( 抜粋 ) 規制 制度改革に係る追加方針 ( 抜粋 ) 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 番号 規制 制度改革に係る追加方針 ( 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 ) における決定内容 規制 制度改革事項 規制 制度

企業と外国人留学生を結び付ける 出会いと理解 推進事業 外国人採用に関するアンケート調査報告書 平成 25 年 6 月 特定非営利活動法人人材育成センター

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平成13年度税制改正(租税特別措置)要望事項(新設・拡充・延長)

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案に対する附帯決議

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資料編 に委託して製造をする場合を含み 他から委託を受けて製 造する場合を含まない ) をし 又は輸入した化粧品を製造 販売のために出荷することをいう 製造販売業者 とは 会社の経営陣 ( 取締役等 ) を指します 薬事法施行規則第 92 条 (4) ロット とは 一の製造期間内に一連の製造工程によ

構成 1 第 1 章 IoT 時代の新たな地域資源 1. IoT 時代の新たな地域資源とその可能性 2. 新たな地域資源の活用に向けた基本的視点 第 2 章地域におけるオープンデータ ビッグデータ利活用の推進 1. 地域におけるオープンデータ利活用の現状と課題 2. 地域におけるビッグデータ利活用の

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表 3 厚生労働省新旧ガイドライン目次比較 は新ガイドラインで追加された項目 コンピュータ使用医薬品等製造所適正管理ガイドライン 第 1 目的 1. 総則 1.1 目的 第 2 適用の範囲 2. 適用の範囲 第 3 開発業務 1. 開発検討段階 (1) 開発段階の責任体制の確立 (2) 開発マニュア

3 4

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主な論点 資料 4 1. ワーク ライフ バランスの推進 生産性向上等の観点から 働き方とともに休み方を見直すことの必要性 重要性 (1) 有給休暇取得状況と長時間労働の国際比較 (2) 休暇取得と生産性との関係 (3) 仕事と仕事以外の生活の充実 2. 秋の連休の大型化等を実現する上での課題 (1

女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

新設 拡充又は延長を必要とする理地方公共団体の実施する一定の地方創生事業に対して企業が寄附を行うことを促すことにより 地方創生に取り組む地方を応援することを目的とする ⑴ 政策目的 ⑵ 施策の必要性 少子高齢化に歯止めをかけ 地域の人口減少と地域経済の縮小を克服するため 国及び地方公共団体は まち

個人情報保護法の3年ごと見直しに向けて

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平成 25 年 12 月 12 日 各位 株式会社みちのく銀行 株式会社民間資金等活用事業推進機構 への出資および 地方公共団体向け PFI セミナー の開催について ~PFI に関する内閣府 日本政策投資銀行との共催セミナーは 県内金融機関で初の取組み ~ みちのく銀行 ( 頭取髙田邦洋 ) は

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文化庁平成 27 年度都道府県 市区町村等日本語教育担当者研修 2015 年 7 月 1 日 生活者としての外国人 に対する日本語教育の体制整備に向けた役割分担 日本語教育担当者が地域課題に挑む10のステップ よねせはるこ米勢治子 ( 東海日本語ネットワーク )

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医療費適正化計画の概要について 国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から 医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため 国 都道府県は 医療費適正化計画を定めている 根拠法 : 高齢者の医療の確保に関する法律作成主体 : 国 都道府県計画期間 :5 年 ( 第 1 期 : 平成 20~24

平成 30 年 8 月 31 日 平成 31 年度の財政投融資計画要求書 ( 機関名 : 株式会社日本政策金融公庫 ( 特定事業等促進円滑化業務 )) 1. 平成 31 年度の財政投融資計画要求額 ( 単位 : 億円 %) 平成 31 年度平成 30 年度対前年度比区分要求額当初計画額金額伸率 (1

( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3

スライド 1

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インド 12 3 エビ イカ オーストラリア 13 3 マグロ エビ フィリピン 14 1 マグロ カツオ エビ アイスランド 15 1 その他の魚 ハリバット 魚卵 スペイン 16 1 マグロ タコ マルタ 17 1 モロッコ 18 1 タコ イカ モーリタニア 19 1 タコ ニュージーランド

介護分野における ICT 活用 に関する提言 2013 年 12 月 17 日 社会福祉法人こうほうえん 理事長廣江研

「GMP担当者研修・認定講座」の運用規定(案)

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企画書タイトル - 企画書サブタイトル -

人材育成 に関するご意見 1) 独立行政法人情報通信研究機構富永構成員 1 ページ 2) KDDI 株式会社嶋谷構成員 8 ページ 資料 7-2-1

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併せて 先進事例を統一的なフォーマットでデータベース化する また 意欲ある地域が先進的な取組みを行った人材に 目的に応じて容易に相談できるよう 内閣官房において 各省の人材システムを再点検し 総合的なコンシェルジュ機能を強化する 各種の既存施策に加え 当面 今通常国会に提出を予定している 都市再生法

唐津市農業委員会 農地等の利用の最適化の推進に関する指針 平成 2 9 年 11 月 8 日 唐津市農業委員会 第 1 基本的な考え方農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 といいます ) の改正法が平成 28 年 4 月 1 日に施行され 農業委員会においては 農地

Transcription:

アジア健康構想の推進に向けた提言 平成 29 年 12 月 8 日自由民主党 1. アジア健康構想の現状平成 28 年 5 月 自由民主党は アジア健康構想 Asia Health and Well-being Initiative に関する提言 を発表した 提言を踏まえ 平成 28 年 7 月に政府の健康 医療戦略推進本部において アジア健康構想に向けた基本方針 を決定 本部の下にアジア健康構想推進会議を設置し 本年 2 月には官民連携のプラットフォームとなる国際 アジア健康構想協議会が発足し アジア諸国のオーナーシップを前提とし 活動を開始したところである 2. 現状を踏まえた次の課題本年 11 月の外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 ( 技能実習法 ) の施行とともに 技能実習制度の対象職種に介護職種が追加となる アジア健康構想は 日本で介護を学ぶアジアの人材を増やすとともに 日本の介護事業者のアジアへの展開や相手国自らが介護事業を興すことを支援することにより 日本で学んだ人材が自国等に戻った際の職場を創出し アジア全体での人材育成と産業振興の好循環の形成を目指すものである 日本が このような好循環の柱となるためには アジア各国の医療 介護の中核を担う医療者 高齢者福祉関係者 現地政府関係者が日本の医療 介護の正確な理解と経験を持ちつつ 自国の社会保障制度の充実や社会 文化との融合を図ることのできる高度な能力を持つことが重要である また アジア各国に日本の経験を伝えていく上では 日本のこれまでの経験に止まらず 科学的裏付けに基づく介護に係る検討等 現在の取組を通じて適宜更新した内容も提供していくよう努める必要がある こうした視点から アジア健康構想の一層の推進にあたり 健康 医療戦略推進本部の下 関係府省庁一体となり次のような取組を行うことを提言する 1 日本で介護を学ぶことが魅力あるものとなるよう努力するとともに 日本の介護に関心のあるアジアの人材が 大きな負担を感じることなく 相手国内で 事前に質の高い日本語教育が受けられるようにすること 1

2 現在の介護福祉士養成施設を卒業した外国人留学生に対する在留資格 介護 に加えて 介護分野における技能実習や留学中の資格外活動による三年以上の実務経験を積み 実務者研修を受講し 介護福祉士の国家試験に合格した外国人に在留資格 ( 介護 ) を認めるとともに アジアにおいて 医療 介護の中核的役割を担うことが期待される有望な人材が日本で医療 介護の教育 研修を受けることや 日本の医療人材がアジアの国々で実践的な臨床修練を積めるようなアジアでの人材の往来の創出に貢献すること 3 自立支援に資する ICT やロボットといった新しい技術も活用した高度で質の高いサービスをアジア地域で提供できるよう JICA の海外投融資 フィージビリティスタディ支援 官民ファンドによる出資 ( 株 ) 国際協力銀行 (JBIC) による融資等の積極的な活用を含め 事業者等を支援していくこと 3. アジアの医薬品産業振興の重要性アジア健康構想のベースとなる考え方は SDGs の目標 3 でもあるユニバーサル ヘルス カバレッジ (UHC) である UHC の達成には 医療 介護の技術の普及 保険等の制度整備 人材育成等に加え 医薬品へのアクセスも重要である 一つの国で必要な医薬品の自給自足を図ることは不可能であり アジアの国々が一定の市場アクセスを認め合いつつ 各々の国で可能な医薬品の製造等に取組むことが現実的である その際 日本を含めたアジアで 相互互恵的な発展を見据えたアジアの医薬品の研究開発 製造 流通 安全規制 適正使用等の将来像を描き 共有することが重要である 具体的には 日本国内での医薬品産業振興の重要性とその推進にも十分配慮を行った上で アジアの医療ニーズ 医療の供給力 医薬品の技術動向を見極め 医薬品の研究開発 製造 流通 安全規制 適正使用等のテーマ毎にどの国が何を担い 何をするのか等をアジアの中で議論しつつ 国際的な事業活動に 挑戦 する日本の企業を応援する取組を始め 国内の医薬品産業振興に資することも確認しながら随時見直していくべきである 現在 世界の医薬品市場の 9 割を占める日米欧における上位売上はバイオ医薬品である しかしながら アジアを含む多くの新興国では 主に経済面から医療における新薬 バイオ医薬品の使用は限定的である 一方 日本では 効果の高い新薬 バイオ医薬品の開発はもとより 高度な技術 ノウハウが求められるバイオ医薬品の製造技術の維持向上が重要な課題となっている 本年 6 月 政府が公表した 経済財政運営と改革の基本方針 2017( 骨太方針 ) では 2

バイオ医薬品及びバイオシミラーの研究開発支援方策等を拡充しつつ バイオシミラーの医療費適正化効果額 金額シェアを公表するとともに 平成 32 年度末までにバイオシミラーの品目数倍増 ( 成分数ベース ) を目指す とされている そのため 相互互恵的なアジアの連携の姿として 例えば 1 日本企業による自発的な技術移転も念頭に 現地でジェネリック医薬品の国際水準での製造に取組み 安全性 品質が担保されたジェネリック医薬品を日本にも輸入することで より低コストでの日本国内での供給を実現し 財政的な余力を新薬の開発促進に振り向ける 2 アジアの新興国がバイオ医薬品を使用できるよう 日本が次世代に求められるバイオシミラーの開発 製造を担うためには 製薬企業が開発コストの高いバイオシミラーの製造意欲を創出するための環境整備が必要である そのため まずは国内のバイオシミラー市場を拡充し 製薬企業の開発意欲を促進させることで 日本自身のバイオ医薬品及びバイオシミラーの開発 製造 流通に係る能力を高め 国内市場のアジアにおける比較優位性を確立しつつ アジア市場への提供を目指す 3 例えば医薬品の承認に使われるデータのアジア諸国での相互運用性の確保等 アジアでの薬事承認 安全規制がより効果的 合理的なものとなるよう調和を推進し 日本とアジアのドラッグラグを解消する等が考えられ こうした将来像を具体的に描きつつ アジアでの自律的な医薬品の供給体制を構築し アジアの中で 日本の医薬品企業は各々の強みを発揮しながら 日本国内では医薬品の安定的な供給の責務を果たすという 従来の日米欧マーケット中心の取組からパラダイムシフトを実現すべきである 4. 具体的な提言健康 医療戦略推進本部において このようなアジアとの共生を視野に入れた新しい将来像 医薬品産業の在り方を明確にしつつ 具体的な取組に着手すべきである こうした取組には アジアにおける国際水準でのジェネリック医薬品の製造支援 バイオシミラーの国内市場の拡充による普及促進とともに 日本がアジア市場に供給するために必要な国内開発のパイプライン及び生産設備の早急な整備 薬事承認 安全規制の調和の推進 例えば 多剤耐性菌制御のための抗菌薬の適正使用といった 日本が有する医薬品の適正使用の知識 経験のアジアへの共有 3

新興国における医薬品の適切なデリバリーを通じ日本の製薬企業の国際的な信頼度を高めるための支援等が含まれるべきである 将来像を共有し 実現を図るためには アジアとの対話 事業を通じた協力について 政府 民間 医療界等が相互に対話をしながら取り組む必要がある そのためには まず 日本の関係者の一体的取組を可能とする産官学 医療連携のプラットフォームとなる組織体が必要である また アジアにおいては 感染症のみならず 非感染症領域にも脅威が拡がりつつある現状を踏まえ それに対応した活動が可能な体制とすべきである アジア等 新興国における日本企業の活動が 日本政府はもとより 医療機関 介護事業者等とも連携し 当該国やアジアの医療 介護の持続的な発展を考える 友人 としての活動であることを明確にし 具体的な活動を可能にする組織の組成を考えるべきである こうしたアジアの共生の繋がりは次世代における日本自身の医療の発展の基盤ともなる 上記提言を踏まえ 健康 医療戦略推進本部において関係省庁が一体となり アジアにおける医薬品産業の在り方 その中での日本の医薬品産業の役割と将来像を描きつつ 具体的な政策を進めるアジアとの医薬品パートナーシップを構築することを提言する 4

参考 アジアでの医薬品産業の状況 現在 アジアで日米欧の市場に継続的に新薬を創出している企業はなく 新薬は欧米企業による輸入販売が主 ジェネリック薬はインド企業が中心 医薬品の原料は 日本も含め 中国及びインドの原料生産企業から購入 例えば 各国での状況は以下である 1 ベトナム : ⑴ 医薬品輸出額が 0.9 億 US$ 輸入額は 21.4 億 US$ で大幅な輸入超 輸入元は欧州 (45%) インド (13%) ⑵ 売上上位 50 品目に関して 欧州企業が 60% 米国企業が 16% の売り上げシェア ベトナム産のシェアは 6%( ジェネリック薬のみ ) ベトナムに存在する製薬企業のうち WHO の示す基準 2 を満たして製造している企業は約 44% ⑶ 医薬品の原料は 90% が輸入 うち 輸入元は中国が 52% インドが 16% タイ : 医薬品輸出額が 3.2 億 US$ 輸入額は 17.7 億 US$ で大幅な輸入超 輸入元はアメリカ (12%) ドイツ スイス フランス ( 各約 10%) フィリピン : 医薬品輸出額が 0.6 億 US$ 輸入額は 9.2 億 US$ で大幅な輸入超 輸入元はドイツ アメリカ フランス及びインド ( 後発品 )( 各約 10%) 医薬品市場の約 70% が海外の医薬品となっており 医薬品企業の売上トップ 20 のうち 4 分の 3 を海外企業が占める インドネシア : 医薬品の原材料は輸入が 90% で 主な輸入元は中国 1 経済産業省 : 医療国際展開カントリーレポート (2016 年 3 月 ) 日本貿易振興機構 : ベトナム医薬品制度調査 (2014 年 3 月 ) みずほ情報総研 : 各国の医療の国際展開戦略 海外の医薬品 医療機器企業による国外市場進出状況等調査 (2015 年 3 月 ) 2 医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準 (GMP) 5