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骨盤計測グッドマン マルチウス撮影用 補助具の作成 大塚病院 -1-

テーマ名 大塚病院診療放射線科 骨盤計測グッドマン マルチウス撮影用補助具の作成 サークル名グッドメンズメンバー名 川口克己高橋英二 小林裕右小埜田美能利山崎智子山崎朝雄 1 テーマ選定理由大塚病院では総合周産期母子医療センターとして 母体搬送を積極的に受け入れている 診療放射線科では 母体骨盤の形態 ( 狭骨盤 ) や児頭骨盤不均衡 (cephalopelvic disproportion:cpd) を診断するための骨盤計測撮影として グッドマン法 マルチウス法の撮影を行っている 骨盤計測では児頭と母体骨盤の形態等の関係を診断するため 正確なポジショニングとコントラストの高い画質が求められる これまでグッドマン法では適正な側面像を得ることが難しく 計測用メジャーの入れ方にも違和感があった マルチウス法では半坐位の態勢を保つのが困難だったり 散乱 X 線による画質の低下がみられた これらのことから簡単 正確に撮影ができ 被ばく低減等 患者さんにやさしい撮影補助具を作成した 2 現状と問題点 グッドマン法 ( 立位側面撮影 ) 1 正確な骨盤側面像が必要だが 左右の大腿骨頭をズレなく撮影することが難しい 2 患者自身に 大腿部に計測用メジャー ( 以下 メジャー ) を挟んでもらい撮影するため 患者や撮影を担当する技師が抵抗や違和感を感じている マルチウス法 ( 半座位正面撮影 ) 1 半座位 (50 ~55 ) での撮影は 患者にとって体位の保持が難しい 2 大腿部にメジャーを載せて撮影を行うので 恥骨上縁とメジャーの高さにズレが生じやすく正確な計測が難しい 3 体厚による散乱 X 線で濃度過多となり画像コントラストが低くなる また 患者の被ばくも少なくない 3 改善策 グッドマン法 ( 立位側面撮影 ) 1 患者の体位を正確な側面にするために 左右の足の内側と踵の端を合わせる専用台 ゾロ を作成した 2 メジャーを患者自身で挟んで保持する必要が無いようにメジャー専用保持台を ノンサン 作成した マルチウス法 ( 半座位正面撮影 ) 1 患者が座椅子に座るように寄りかかるだけで 体位を保てるように座椅子 ラクーン を作成した 2 座椅子にメジャーを挿入できる溝を設け 患者ごとにメジャーを適正な高さにできるようにした 3 大腿部にお腹の形に沿った鉛ゴム板を置くことで散乱 X 線を減らし画像コントラストを向上させた それによって撮影条件を低く設定し 被ばくを低減した 4 結果 1 グッドマン法においては メジャーを大腿部に挟まなくなったことにより患者の抵抗や違和感を減らすことができた また 体位の安定が向上して左右のズレの少ない画像を得ることができた 2 マルチウス法においては 半坐位の保持が容易にできるようになり患者に負担を減らすことができた また 画像コントラストの向上により撮影条件を低く設定でき 被ばくを約 20%(mAs 値 ) 低減できた 5 今後の取り組み今回作成した補助具によって 患者の負担を軽減するとともに安定したポジショニングが可能となった 今後はグッドマン法の正確な側面像を確実に得るために改良に取り組んでいきたい -3-

テーマ名 大塚病院診療放射線科 骨盤計測グッドマン マルチウス撮影用補助具の作成 サークル名 グッドメンズ メンバー名 川口克己 高橋英二 小林裕右 小埜田美能利 山崎智子 山崎朝雄 1 テーマ選定理由大塚病院では総合周産期母子医療センターとして 母体搬送を積極的に受け入れている 診療放射線科では 母体骨盤の形態 ( 狭骨盤 ) や児頭骨盤不均衡 (cephalopelvic disproportion:cpd) を診断するための骨盤計測撮影として グッドマン法 マルチウス法の撮影を行っている 骨盤計測では児頭と母体骨盤の形態等の関係を診断するため 正確なポジショニングとコントラストの高い画質が求められる これまでグッドマン法では適正な側面像を得ることが難しく 計測用メジャー ( 以下 メジャー ) の入れ方にも違和感があった マルチウス法では半坐位の態勢を保つのが困難だったり 散乱 X 線による画質の低下がみられた これらのことから簡単 正確に撮影ができ 被ばく低減等 患者さんにやさしい撮影補助具を作成した 2 骨盤計測撮影 -グッドマン法 マルチウス法 診療放射線科では 大塚病院で 産婦人科地域医療連携システム ( 大塚モデル ) が平成 22 年 5 月より 運用開始されてから 骨盤計測用の撮影を行う人数が増加している ( 表.1) ( 表.1) 年度別グッドマン法 マルチウス法の撮影人数 患者数 年度再掲計入院外来時間外救急診療 H24 年度 318 181 137 46 1 H25 年度 358 222 136 67 3 H26 年度 379 227 152 65 1 H27 年度 386 232 154 87 5 H28 年度 (4~9 月 ) 194 128 66 34 0 グッドマン法 ( 立位側面撮影 図.1) 目的 : 骨盤腔の前後の形態 仙骨形態 骨盤開角 産科真結合線 ( 図.2 1) 及び骨盤出口前後径 ( 図.2 2) の計測 撮影体位 : 立位 側面撮影 両下肢を均等に荷重させメジャーを両大腿骨間に挟む 撮影像 : 左右の大腿骨頭が同心円状に重なり 仙骨 尾骨 恥骨が明瞭に描出され 産科真結合線 ( 図.2 1) 及び骨盤出口前後径が計測 ( 図.2 2) できること マルチウス法 ( 半座位正面撮影 図.3) 目的 : 骨盤入口面の最大横径 ( 図.4 1) と最大縦径 ( 図.4 2) の計測 撮影体位 : 半坐位で背中と撮影台のなす角を 50 ~55 として 両手を撮影台について体を支える 骨盤入口面を撮影台と平行にして メジャーを恥骨結合上縁の高さで寝台と平行に配置する 撮影像 : 仙骨岬角 坐骨棘 恥骨結合が明瞭に描出されており 骨盤入口面の最大横径 ( 図.4 1) と最大縦径 ( 図.4 2) の計測ができること -4-

( 図.1) グッドマン法の体位 ( 立位側面撮影 ) ( 図.2) グッドマン法の主な基準点 ( 側面 ) ( 図.3) マルチウス法の体位 ( 半座位正面撮影 ) ( 図.4) マルチウス法の主な基準点 ( 軸面 ) 3 現状と問題点 グッドマン法 ( 立位側面撮影 図.1) 1 正確な骨盤側面像が必要だが 左右の大腿骨頭をズレなく撮影することが難しい 2 患者自身に 大腿部にメジャーを挟んでもらい撮影するため 患者や撮影を担当する技師が抵抗や違和感を感じている マルチウス法 ( 半座位正面撮影 図.3) 1 半座位 (50 ~55 ) での撮影は 患者にとって体位の保持が難しい 2 大腿部にメジャーを載せて撮影を行うので 恥骨上縁とメジャーの高さにズレが生じやすく 正確な計測が難しい 3 体厚による散乱 X 線で濃度過多となり画像コントラストが低くなる また 患者の被ばくも少なくない -5-

4 改善策 グッドマン法 ( 立位側面撮影 ) 1 グッドマン法では 今まで立ち位置の目安となるものがなく 左右の足がズレてしまうことが多々あった ( 写真.1) 患者の体位を正確な側面にするために 左右の足の内側と踵の端を合わせる専用台 ゾロ を作成した ( 写真.2) 硬質発泡スチロールで作成した ゾロ を使用することで 左右の足を揃えて立てるようになった ( 写真.3) ( 写真.1) 改善前の足部 ( 写真.2) ゾロ ( 写真.3) ゾロ 使用時の足部 2 これまでは患者自身に大腿部にメジャーを挟んでもらっていたが ( 写真.4) メジャーを挟んで保持する必要が無いようにメジャー専用保持台 ノンサン を作成した ( 写真.5) 上記の ゾロ で揃えた両足の中間点にメジャーを入れて固定できるようにした ( 写真.6) ( 写真.4) 改善前のメジャー位置 ( 写真.5) ノンサン ( 写真.6) ノンサン 使用時 -6-

マルチウス法 ( 半座位正面撮影 ) 1 これまでは患者が半坐位の状態で両手を後ろについて体位の保持をしていたが ( 写真.7) 患者が座椅子に座るように寄りかかるだけで 適正な角度 (50 ~55 ) で体位を保てるように座椅子 ラクーン を作成した ( 写真.8 写真.9) ( 写真.7) 改善前の半坐位 ( 写真.8) ラクーン ( 写真.9) ラクーン 使用時 2 座椅子にメジャーを挿入できる溝を設け 患者ごとにメジャーを恥骨結合上縁の高さにできるように調整した ( 写真.10 写真.11) ( 写真.10) メジャー挿入用の溝 ( 写真.11) メジャー挿入時 3 大腿部に ひざ掛けのように置くお腹の形に沿った遮蔽用の鉛ゴム板を作成した ( 写真.12 写真 13) 散乱 X 線を減らし画像コントラストを向上させた それによって撮影条件を低く設定し 被ばくを低減した ( 写真.12) 遮蔽用の鉛ゴム板 ( 写真.13) 遮蔽用の鉛ゴム板の使用時 -7-

5 結果 1 グッドマン法においては 大腿部にメジャーを挟む必要がなくなったことにより 患者や撮影を担当する技師の 抵抗や違和感を減少させることができた また 体位の安定が向上し 容易に左右の足を揃えて立つことが可能となり 大腿骨頭のズレが少ない画像を得ることができた ( 画像.1) 2 マルチウス法においては 容易に半坐位が保持できるようになり 患者の負担を大きく減らすことができた また 鉛ゴム板を使用することによって散乱 X 線を減らし 画像コントラストが向上させることができた ( 画像.2) このことにより 撮影条件を低く設定でき 被ばくを約 20%(mAs 値 ) 低減することができた ( 画像.1) グッドマン法 X 線撮影像 ( 画像.2) マルチウス法 X 線撮影像 6 今後の取り組み今回作成した補助具によって グッドマン法 マルチウス法ともに 患者の負担を軽減するだけではなく 安定したポジショニングが可能となった また 画質の向上及び被ばくの低減が実現した 今後は グッドマン法の正確な側面像を確実に得るための改良に取り組んでいきたい -8-