フレイル対策 2016 年 6 月 2 日に閣議決定されたニッポン一億総活躍プランの中に フレイル対策 はすでに盛り込まれてあるが 今後さらに高齢化が進むなかで このフレイル対策を国全体に普及していく ( すなわち 国家プロジェクトとしての取り組み ) が必要不可欠である 1. フレイル対策 に含ま

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計画の今後の方向性

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このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

フレイルのみかた

2 基本理念と基本目標 本市のまちづくりの指針である 第 2 次柳井市総合計画 は 平成 29 年 3 月に策定 されました この総合計画では すべての市民が健康で安心して暮らせる 人にやさ しいまちづくり を健康 福祉分野の基本目標に掲げ その実現を目指しています これは 高齢者も含めた全ての市民

事業者名称 ( 事業者番号 ): 地域密着型特別養護老人ホームきいと ( ) 提供サービス名 : 地域密着型介護老人福祉施設 TEL 評価年月日 :H30 年 3 月 7 日 評価結果整理表 共通項目 Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織 1 理念 基本方針

区分

下の図は 平成 25 年 8 月 28 日の社会保障審議会介護保険部会資料であるが 平成 27 年度以降 在宅医療連携拠点事業は 介護保険法の中での恒久的な制度として位置づけられる計画である 在宅医療 介護の連携推進についてのイメージでは 介護の中心的機関である地域包括支援センターと医療サイドから医

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

周南市版地域ケア会議 運用マニュアル 1 地域ケア会議の定義 地域ケア会議は 地域包括支援センターまたは市町村が主催し 設置 運営する 行政職員をはじめ 地域の関係者から構成される会議体 と定義されています 地域ケア会議の構成員は 会議の目的に応じ 行政職員 センター職員 介護支援専門員 介護サービ

第 2 章計画の推進及び進行管理 1 計画の推進 県 市町村及び県民が 関係機関等と相互に連携を図りながら 県民の歯 口腔の健康づくりを推進します 県における推進 (1) 全県的な推進 県全域の課題を踏まえた基本的施策や方向性を示すとともに 取組の成果について継続的な評価を行い 県民の生涯を通じた歯

藤沢型地域包括ケアシステムの推進について 平成 30 年 2 月藤沢市議会定例会厚生環境常任委員会資料 1 ⅠⅠ 中長期を見据えた検討体制の見直し 1 これまでの経過等について現在, 国では 地域共生社会 の実現に向け, 様々な改革が進められており, 平成 30 年 4 月に施行される社会福祉法の一

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案 参考資料 1 健康長寿笑顔のまち 京都推進プラン ( 計画期間 : 平成 30 年 ~34 年度 ) 身体活動 運動分野抜粋案 1

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利用者満足の向上センターのチラシの配布など センターのPRのために具体的な取り組みを行っている 苦情対応体制を整備している 特記事項 名刺 サービス情報誌 広報での PR イベントでのパネル設置など実施 相談の際のプライバシーの確保を図っている 公平性 中立性の確保 業務改善への取り組み 相談室の整

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により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

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改定事項 基本報酬 1 入居者の医療ニーズへの対応 2 生活機能向上連携加算の創設 3 機能訓練指導員の確保の促進 4 若年性認知症入居者受入加算の創設 5 口腔衛生管理の充実 6 栄養改善の取組の推進 7 短期利用特定施設入居者生活介護の利用者数の上限の見直し 8 身体的拘束等の適正化 9 運営推

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問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

資料 目 次 事業方針 実施計画 みんなで福祉の風土を広げよう 住民 関係機関 団体のネットワークで身近な福祉活動を進めよう 一人ひとりの安全で安心な暮らしを守ろう Ⅳ 推進基盤の強化 主な年間行事等

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13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

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2018 年度事業計画書 Ⅰ 基本方針 1. 健康関連分野を取り巻く環境と直近の動向 健康医療分野が政府の日本再興戦略の重点分野に位置づけられ 健康 医療戦略が策定されるなど 予防や健康管理 生活支援サービスの充実 医療 介護技術の進化などにより 成長分野としてマーケットは大きく拡大することが期待さ

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資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

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25 周年を迎えたコミ協の新たな取組 について ( 報告 ) 20 周年に向けての見直し検討報告書 に明示された方策等の推進状況を企画総務部会で精査したところ そのほとんどが既に実施もしくは改善されていることがわかった ついては これらの事業は引き続き実施することとし 新たに 地域コミュニティ が抱

看護師のクリニカルラダー ニ ズをとらえる力 ケアする力 協働する力 意思決定を支える力 レベル Ⅰ 定義 : 基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する 到達目標 ; 助言を得てケアの受け手や状況 ( 場 ) のニーズをとらえる 行動目標 情報収集 1 助言を受けながら情報収集の基本

年中児スクリーニングの事後支援 年中児スクリーニングの事後支援として 22 市町村が園巡回を実施しているが SST は 5 市町村の実施 ペアレントトレーニングは 7 市町村の実施に止まっており 事後支援を実施する市町村の拡大が課題 園巡回 : 専門職が保育所 幼稚園を巡回し 保育士等に指導 助言

1. はじめに 本格的な地方分権の時代を迎え 市民に最も身近な地方自治体は 市民ニーズに応じた政策を自ら意志決定し それを自己責任の下に実行することがこれまで以上に求められており 地方自治体の果たすべき役割や地方自治体に寄せられる期待は ますます大きくなっています このような市民からの期待に応えるた

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第三者評価結果表 施設名救護施設下関梅花園 評価対象 Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織 評価項目 a b c Na 判断の理由 1 理念 基本方針 (1) 理念 基本方針が確立されている 1 理念が明文化されている 理念は明文化され 法人の中長期計画や事業団ホームページ上にも記 載されており その内

知識の創造を目指した多分野連携によるフォーラム型授業の提案

( 別紙 ) 地域ケア会議 に関する Q&A 問 1 今般 地域ケア会議 を通知に位置づけた背景は何か 団塊の世代が 75 歳以上となる 2025 年へ向けて 高齢者が尊厳を保ちながら 住み慣れた地域で自立した生活をおくることができるよう 国は 医療 介護 予防 住まい及び生活支援サービスが 日常生

< 基本方針 > 一般社団法人移住 交流推進機構 ( 以下 JOIN という ) は 地方に新しい生活や人生の可能性を求めて移住 交流を希望する方々への情報発信や そのニーズに応じた地域サービスを提供するシステムを普及することにより 都市から地方への移住 交流を推進し 人口減少社会における地方の振興

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08_参考資料4_(飯島構成員)★厚労省・有識者会議(提出参考資料)東京大学・飯島勝矢

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~この方法で政策形成能力のレベルアップが図れます~

資料 3 全国精神保健福祉センター長会による自殺予防総合対策センターの業務のあり方に関するアンケート調査の結果全国精神保健福祉センター長会会長田邊等 全国精神保健福祉センター長会は 自殺予防総合対策センターの業務の在り方に関する検討チームにて 参考資料として使用されることを目的として 研修 講演 講

施策の体系 本目標3 地域力と行政の連携がつくる人と地球に優しいまち179

山梨県地域医療再生計画 ( 峡南医療圏 : 救急 在宅医療に重点化 ) 現状 社保鰍沢病院 (158 床 ) 常勤医 9 名 実施後 社保鰍沢病院 峡南病院 (40 床 ) 3 名 市川三郷町立病院 (100 床 ) 7 名 峡南病院 救急の重点化 県下で最も過疎 高齢化が進行 飯富病院 (87 床

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Transcription:

資料 10 一億総活躍国民会議 ニッポン一億総活躍プラン フォローアップ会合 2017 年 5 月 17 日飯島勝矢 ( 東京大学高齢社会総合研究機構教授 ) < 要約 > 1 フレイル対策フレイル対策はすでにニッポン一億総活躍プランの中で示されている 今後 さらに認知度を向上させるため様々な手段を用いて 国民および専門職全てが フレイル対策 を具体的に理解して自らが取り組める環境を構築する フレイルは多面的であり かつ 3 つの要素 ( 食と口腔機能による栄養 運動 社会参加 ) の全てが重要であることを国民に周知する 個々のフレイル対応策の具体的役割の明示 ( 個人ベース 地域 / 社会ベース 医療機関 / 介護施設ベース 等 ) フレイル対策は まちづくり そのものとしてオール産学官民で取り組む フレイル対策を実現するための包括的な高齢者支援 予防概念の適切な切り替え ( メタボリックシンドローム予防とフレイル予防 ) 健康増進 / 予防からエンドオブライフまで見据えたデータ活用と地域へのフィードバック 2 生涯現役促進以前から推し進められている地域での高齢者就労の取り組みを加速させるとともに 人生 100 年時代と考えることも現実的になっている今 高齢者観や人生観をポジティブに見直すべき時に来ている 高齢期における 働き方改革 から 生き方改革 へ 社会の支え手として何らかの 役割 と 機会 を持ち続けられるような社会の仕組みを新たに創造 准高齢者 ( 従来の前期高齢者 ) における生き方 (= 生活モデル ) づくり 高齢者の雇用促進という社会的課題 : 地域が一体となって取り組む 仕組み を創る 3 認知症予防と社会的対策の推進既存の取り組みを加速させながら 今後はまちづくりの一環として 住民 行政 専門職など全ての自治体構成メンバーで支援体制を構築する 医療 介護専門職における正確な知識と的確な評価や介入 国民自身の認知症に対する ( 偏見のない ) 成熟した認識の周知 認知症の人にとって住みよい地域づくりと同時に 認知症の人の家族が気軽に支援を受けられる体制整備 1

フレイル対策 2016 年 6 月 2 日に閣議決定されたニッポン一億総活躍プランの中に フレイル対策 はすでに盛り込まれてあるが 今後さらに高齢化が進むなかで このフレイル対策を国全体に普及していく ( すなわち 国家プロジェクトとしての取り組み ) が必要不可欠である 1. フレイル対策 に含まれる多面的な意味と狙い 1 フレイル対策という言葉の中には すでにフレイル状態に陥ってしまっている方への改善方策と同時に 元気な状態の方もフレイル状態にならないよう予防し健康長寿を実現していくことの両面の意味がある さらには 中年 ~ 壮年期からの意識啓発 ひいてはより若い世代からのフレイル予防に資する意識 行動変容 ( 健康リテラシーの向上 ) も包含される 2 その健康リテラシー向上のために 早期からの教育 をより積極的に導入すべきである なかでも栄養管理 ( 特に摂取カロリーも含め 世代に合わせた適切な食習慣管理 口腔機能維持など ) の重要性 フレイル予防のためには社会参加が必要不可欠であることなど 様々な視点での意識啓発が鍵になる 3 今後に向けて フレイル の認識率の向上 対策可能であることとその具体策の理解を国民全体に対して行う フレイル予防と介護予防の観点から 個人で対応可能なこと 地域や社会で対応すべきこと 医療機関や介護施設で対応すべきことについて役割分担したものを明示して 国民が フレイル対策 を具体的に理解して自らが取り組める状況を推進する 2. フレイル予防 ~ 対策 : アクティブエイジング実現から自立支援ケア型体制構築も 1 フレイルには 機能を戻せる可逆性 という意味も含んでいる 人生 90 年を見据え より早期からの予防対策を実行しながら 高齢期においても少しでも機能を改善させていくという視点が重要である そこには専門職種のさらなる強い連携による質の高い自立支援にこだわったケア体制構築が求められる また アクティブエイジングを実現するための国家プロジェクトが求められ 高齢者医療に携わる専門職能を中心に ダイナミックな政策も必要である 2 さらに フレイルの前段階 ( プレフレイル ) からの予防対策として どんな高齢者でも容易に参加できる 身近な場での住民主体による運動活動や会食その他の多様な社会参加の機会を拡大することが重要であるが 大規模コホート研究による解析結果からしても 1 栄養 ( 食 / 口腔機能 ) 2 運動 / 身体活動 3 社会参加 / 社会貢献 の 3 つの要素全てにおいて 個々の国民の日常活動に取り組まれ その継続性が担保されることが大前提にある その視点を各専門職能および市民サポ 2

ーターなどは十分に掌握した上で より多くの住民への啓発に臨むべきである 3. 全世代を見据えた切れ目のない対応策 : 予防概念の適切な切り替え 1 中年層を中心としてメタボリックシンドロームへの予防意識を高めるべく わが国は保健活動を行ってきた しかし 超高齢社会への突入を目前にした現在 むしろフレイルに対する予防意識を高めることも重要である 言い換えれば 世代が進むにあたり メタボ予防概念からフレイル予防概念への適切な切り替え ( ギアチェンジ ) が求められる 2 この認識の普及に対しては 様々な場面 ( 専門職能による医学的知見に裏付けられた助言 自治体での地域予防活動 住民同士による地域活動など ) での積極的な取り組みが望まれる ( 特に低栄養や低栄養リスクにある高齢期の方々も地域では決して少なくなく 前述したように 高齢期における食の安定性をもっと地域の中で精力的に推し進めるべきである ) 4. フレイル予防はまさに まちづくり そのもの 1 多面的な側面をもつフレイルに対する予防 ~ 対策は 単に医療的アプローチだけでは実現できない むしろ産学官民すべてを巻き込んで まちづくり として取り組む必要がある 2 そこには 専門職種による多職種連携だけではなく 各自治体行政内の庁内連携 専門職 - 住民協働 そして住民主体の活動の推進など 従来の枠組みを超えた新たな発想での取り組みを精力的に取り入れ 実現していくことが求められる 5. フレイル対策を実現するための総合的 包括的な高齢者支援を 1 重複かつ複雑な病態を併せ持つ高齢期の方々に対して 総合的 包括的に高齢者支援 ( 評価 治療 助言 全てを含む ) を全国で展開することは急務である そのために 老年医学 高齢者医療における人材育成 および診療 研究 教育の融合を目指した拠点形成も並行して推し進めるべきである そして 地域と研究施設の連携も加速しながら 高齢者医療に関する住民教育 啓発のさらなる推進も求められる 2 住民目線での相互のフレイルチェックの啓発にとどまらず すべての医療職 特に かかりつけ医 がフレイルの早期発見と対策への誘導を行うことを積極的に推進する 後者は フレイル者への適切な医療の提供と医療費の削減 多職種連携の窓として 持続的な対応の窓として重要である 6. 健康増進 / 予防からエンドオブライフまで見据えたデータ活用 および地域へのフィー ドバック 1 従来の介護予防事業を振り返ると二次予防事業の低い参加率 ( 高齢者の 0.7% に留 3

まり 目標の 5% に到達できず ) など 様々な課題が存在する その原因として 事業内容の筋力トレーニングなどへの偏り 虚弱高齢者の不十分な把握 継続性にしっかりとこだわった事業終了時の出口対策の不足など 複数の原因が積み重なり 費用対効果も含めて方向転換を余儀なくされた経緯もある 2 個々の事業に対する効果判定の見える化 同時にそれらのデータベース構築も必要である さらに 行政等が保有する全国的に入手可能なデータ群 ( 例えば 健診データ 医療レセプト 介護レセプト 日常生活圏域ニーズ調査 要介護認定調査など ) を活用して ビッグデータ化からの多面的なエビデンス蓄積も目指すべきである そこに予防活動に関するデータ集 ( フレイルをスクリーニング / アセスメントなど ) も一緒に連結させ 個人単位や地域単位 活動の効果判定や医療経済的視点も解析し 地域で実施されている事業や活動へフィードバックできる基盤を構築していくべきである 生涯現役促進 生涯現役 促進を見据え 以前から推し進められている地域での高齢者就労の取り組みに対して 実装 拡充 広域展開をさらに実現するべく推進していく その中でも 異なる組織 団体間での協働も推進されるべきであり そこにはあり方 ( ルール等 ) の整備も求められる それ以外に 改めて下記の視点も重要と思われる 働き方改革 から 生き方改革 へ 1. 日本老年学会 日本老年医学会からの 高齢者の定義と区分の見直し ( 提言 :2017 年 1 月 ) に伴い 准高齢者(65~74 歳 ) 高齢者(75 歳以上 ) 超高齢者(90 歳以上 ) の 生活モデルを確立する ことも社会 ( 地域コミュニティ ) として必要である 人生 100 年時代と考えることも現実的になっている今 それを生きる上で 高齢者観や人生観をポジティブに見直すべき時に来ている 基本の生活モデルとして 誰もが就業を含めた地域活動に必ず参加する ( できる ) こと を提唱し 社会の支え手として何らかの 役割 と 機会 を持ち続ける ( 続けられる ) ような社会の仕組みを創造していくことが必要不可欠である 2. 身体機能も若返っている科学的知見があるなか その中でもリタイア後もまだ十分な身体的機能を維持できている可能性の高い准高齢者 ( 従来の前期高齢者 ) における生き方 (=すなわち生活モデル) づくりは非常に重要であり 一億総活躍社会を実現する意味でも必要不可欠な視点である 特に この 65~74 歳の 10 年間をいかに生きていくか この准高齢者 ( 期 ) のあり方も含めて 大きな課題である 4

3. 生涯現役促進地域連携事業の狙いは 高齢者の雇用促進という重要な社会的課題に対して 地域が一体となって取り組む 仕組み を創ることである まさに まちづくり の一環であることは間違いなく これまでハローワークやシルバー人材センターだけに高齢者の雇用促進の役割を委ねていたものを 地域における多様な機関が連携して協働していくことを進めようとしているのである 認知症予防と社会的対策の推進 1. 従来の様々な取り組みに加え 認知症の人にやさしいまちづくり や 認知症を知り地域をつくるキャンペーン などの取り組みが進められているなか 医療専門職や介護専門職における認知症に対する正確な知識と的確な評価や介入 地域と医療機関との連携 見守りなどを軸とした地域での生活支援の底上げ そして国民自身の認知症に対する ( 偏見のない ) 成熟した認識などが改めて求められる 2. 認知症の人にとって住みよい地域づくりを目指すと同時に 認知症の人の家族が介護を抱え込まず 支援を受けやすいと感じることができる体制も作る 5