を超えている (2017 年 7 月現在 ) コンテンツを種別毎に集計すると, 全体の半数以上を紀要論文 (53%) が占めており, その他, 学術雑誌論文 (14%) や学位論文 (5%) など, 大学等で生み出された多様なコンテンツが登録されている 日本の機関リポジトリは, 学術論文のオープンア

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Transcription:

これからどうなる? 図書館とオープンアクセス 基調報告 オープンサイエンスの推進と機関リポジトリ 現状と展望 尾城孝一国立情報学研究所オープンサイエンス基盤研究センターはじめに学術情報のオープン化の流れは, 学術論文のオープンアクセスから, 論文のエビデンスとなった研究データの共有や公開を含むオープンサイエンスへと展開しつつある 本発表では, 機関リポジトリがオープンアクセスの発展に果たした役割について検証しつつ, オープンサイエンス時代の機関リポジトリの新たな役割について展望したい 1. オープンアクセスとはオープンアクセスとは, 一般に, 学術論文等をウェブ上に無料公開することで, 誰もが障壁なくアクセスできるようにする仕組みのことを指す 2002 年, ブダペスト オープンアクセス イニシアティブ (BOAI : Budapest Open Access Initiative) は, オープンアクセスについて, ( 査読された ) 雑誌論文をインターネット上において無料で利用することができ, 全ての利用者に, 閲覧, ダウンロード, コピー, 配布, 印刷, 検索, 全文へのリンク, 索引化のためのクロール, ソフトウェアへの取り込み, その他合法的な目的での利用を ( 中略 ) 財政的, 法的, 技術的な障壁なしに許可すること であると定義している こうしたオープンアクセスを推進する動きが世界的に広まった背景としては, 学術雑誌の危機 ( シリアルズ クライシス ), 電子化とインターネットの普及, 納税者の権利主張などさまざまな要因が考えられる 2. オープンアクセスの実現方式 BOAIは, オープンアクセスを実現するためのモデルとして2つの方式を示している ひとつはグリーンロード, もうひとつはゴールドロードと呼ばれている グリーンロードとは, 論文の著者である研究者自身が, 自らのホームページやリポジトリと呼ばれるインターネット上の電子アーカイブに自著論文を掲載する ( セルフ アーカイブ ) ことにより, オープンアクセスを実現する方式である セルフ アーカイブの受け皿となるリポジトリには, 大学等の研究機関が設置する機関リポジトリ, 分野毎の研究者コミュニティが構築する分野リポジトリ, 政府機関等が設けるセントラルリポジトリなどいくつかの種類がある オープンアクセスリポジトリのディレクトリであるOpenDOAR(The Directory of Open Access Repositories) によれば, 世界で3,000 以上のリポジトリが公開されている (2017 年 8 月 16 日現在 ) 一方, ゴールドロードは, 学術雑誌自体をインターネット経由で誰もが無料で読めるようにすることによりオープンアクセスを実現する方式である オープンアクセスジャーナルのディレクトリである DOAJ(Directory of Open Access Journals) には, 約 10,000の学術雑誌が登録されている (2017 年 8 月 16 日現在 ) オープンアクセスジャーナルは, 読者に無料アクセスを提供するが, もちろん出版のための費用は発生するので, その費用を回収するモデルが必要とされる 学会や大学等の助成金により出版を支えるモデルや論文の著者が費用を負担するモデルなどがある 現状では, 著者が支払う 論文出版加工料 (APC : Article Processing Charge) により, オープンアクセスジャーナルを出版するモデルが主流となっている 3. オープンアクセスと機関リポジトリ日本では 2005 年頃から機関リポジトリの構築と公開が始まり, その後, 順調にその数を伸ばしている 特に,2012 年度から国立情報学研究所 (NII) がクラウド型の機関リポジトリシステム JAIRO Cloud の運営を開始して以来,JAIRO Cloud を利用してリポジトリの公開を進める機関が増加し, 現在では合わせて 800 近い機関がリポジトリを公開している 国立情報学研究所によれば, 国内の機関リポジトリに収録されているコンテンツの総数は,200 万件 - 1 -

を超えている (2017 年 7 月現在 ) コンテンツを種別毎に集計すると, 全体の半数以上を紀要論文 (53%) が占めており, その他, 学術雑誌論文 (14%) や学位論文 (5%) など, 大学等で生み出された多様なコンテンツが登録されている 日本の機関リポジトリは, 学術論文のオープンアクセスの実現手段としては, 必ずしも十分な機能を果たしているとはいえないものの, 紀要論文や学位論文等の流通拡大には大きな貢献を果たしている 4. オープンアクセス方針の広まり海外の研究機関や研究助成機関では, オープンアクセスの義務化に関する方針の策定が進んでいる それに対して, 日本ではこれまでオープンアクセスの制度面での議論が遅れていたが,2011 年の第 4 期科学技術基本計画が, 国としてオープンアクセスを進める方向性を示したことを受け, 科学技術 学術審議会は,2012 年にオープンアクセスジャーナルの育成や機関リポジトリの活用など, 様々な取り組みを加速すべきという報告書を公表した また, 2013 年には学位規則が改正され, 博士の学位を授与された者は博士論文を印刷公表することとされているところ, 印刷公表に代えて, インターネットを利用して公表すること が義務となった こうした政府の方針や国内のオープンアクセス思潮の高まりに呼応して, 大学等の研究機関でもオープンアクセス方針の採択が進んでいる 2015 年 4 月に, 京都大学は 京都大学オープンアクセス方針 を発表した これは, 機関リポジトリを通じて京都大学の学術成果をオープンアクセス化することを大学として制度化したものである この方針を皮切りに, 国内の大学や研究機関での方針策定が急速に進み,2017 年 4 月までに合わせて 15 の機関がオープンアクセス方針を採択している 大学のみならず, 研究助成機関も方針の策定を進めている 日本学術振興会は,2017 年 3 月に, 科学研究費助成事業をはじめとする研究資金による研究成果論文のオープンアクセス化について, 実施方針を定めた また, 科学技術振興機構も,2017 年 4 月に, 機構が研究資金を配分し実施する研究プロジェクト等の成果に基づく研究成果論文はオープンアクセス化することを原則とし, それに加えて, 論文のエビデンスとなる研究データの公開も推奨するという基本方針を公表した さらに,2016 年 7 月に発足したオープンアクセ スリポジトリ推進協会 (JPCOAR) も, 国内における研究成果の OA 化を推進するため, 各機関が OA 方針をスムーズに策定し, 実施のための業務体制を整備することを支援するツールの作成に取り組み, 2017 年 2 月に オープンアクセス方針策定ガイド を公表している こうしたオープンアクセス方針の広まりが, 機関リポジトリを通じた学術論文のオープン化の推進にどのような効果をもたらすのか, 今後も注視する必要があろう 5. オープンサイエンスへの展開近年, 情報通信技術 (ICT) の急速な発展によって, 研究成果 ( 論文, 生成された研究データ等 ) の共有が容易になったことで, 新たな研究の進め方や手法であるオープンサイエンスの概念が世界的に急速な広がりをみせている 我が国においても,2013 年に開催された G8 の科学大臣会合において, 研究データのオープン化を確約する共同声明が発表され, それに日本も調印したことを直接の契機として, 内閣府の検討会の報告書 我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について (2015 年 3 月 30 日 ), 第 5 期科学技術基本計画 (2016 年 1 月 22 日閣議決定 ), 科学技術 学術審議会学術分科会学術情報委員会の 学術情報のオープン化の推進について ( 審議まとめ ) (2016 年 2 月 26 日 ) などの政策文書の中で, 論文だけではなく, 論文のエビデンスとしての研究データも含めてオープン化を進めることにより, オープンサイエンスの振興に寄与するべきであるという方針が相次いで発表されている 6. オープンサイエンスと機関リポジトリこうしたオープンサイエンスの潮流の中で, 機関リポジトリが果たすべき役割も拡大してきた 論文のオープン化の受け皿としての機能だけでなく, 論文の根拠となる研究データの保存と公開のための基盤としても注目されている しかしながら, 現状を見ると, 全国の機関リポジトリに掲載されているデータあるいはデータセットの件数は約 53,000 件に過ぎず, しかもそのほとんどは千葉大学の機関リポジトリに登録されている植物さく葉の画像データが占めている - 2 -

7.JPCOAR の活動 JPCOAR も, 機関リポジトリをオープンサイエンスの推進にとって不可欠なツールとするために, 具体的な活動を進めている まず, 研究データへの対応を意識して, 機関リポジトリのメタデータスキーマの改訂を進めている 新しいスキーマは JPCOAR スキーマと名づけられ, パブリックコメントを踏まえた最終的な確定作業が行われている また,JPCOAR の下に設置された研究データタスクフォースを中心として, 研究データ管理に関する基礎的な知識を習得し, 各機関において研究データ管理サービスを構築するための足掛かりを得るための教材を開発した この教材は全 7 章から構成され, 研究データの生成, 加工, 分析, 保存, 公開, 再利用というライフサイクルを包括的に解説する内容となっている さらに, タスクフォースでは, 学内で構築されたデータベースの多くが, 時が立つにつれて管理者が不在となり, 維持管理が困難となっている問題に着目し, こうした消えつつあるデータベースやデータセットを機関リポジトリで救済するためのデータベースレスキュー計画にも着手した 9. 大学図書館と研究データ宇宙観測データ, 巨大装置を使った実験データ, さまざまなセンサーから集められた多種多様なデータ, あるいは遺伝子解析データなどのビッグデータは, しばしば典型的な研究データとして扱われる しかしながら, こうした膨大なデータを機関リポジトリに蓄積するのは困難であり, また, このようなデータを扱うには高度な専門知識も必要とされる 実は, こうした巨大データに関しては, 既に分野毎にデータの保存や共有のための基盤や組織が構築され, 経験や知見も蓄積されている 機関リポジトリが対象とすべき研究データは, こうしたビッグデータではなく, 未整理のまま学内に散在し, 共有や公開が進んでいないスモールデータなのではないか また, 紀要論文に含まれる表やグラフの元となったエクセルの表データなども貴重な研究データと言える 海外の大学図書館が運営しているデータのリポジトリを見ても, このようなデータが数多く登録されている こうしたデータを論文と関連付けて機関リポジトリに登録し, 公開することもオープンサイエンスに対する貢献のひとつと考えられる 8.NII の活動一方, 国立情報学研究所 (NII) は, 大学や研究機関におけるオープンサイエンス活動を支えるための ICT 基盤の構築と運用を実施するために,2017 年に オープンサイエンス基盤研究センター を新設した センターはこの目的を達成するために, オープンサイエンス推進のための研究データ基盤 の構築に取り掛かっている この基盤は, 管理基盤, 公開基盤, 検索基盤という 3 つの基盤から構成される 管理基盤は, 研究者自身が, 研究を進める過程において, 生成されたデータなどを管理し, 研究プロジェクトの内部で共有するための基盤となる 公開基盤は,NII が既に提供している JAIRO Cloud を拡張することにより, 論文だけでなく, その根拠データも含めて公開できるような機能を備える さらに現行の CiNii を強化することにより, 研究データの横断検索サービスを提供することを計画している これら 3 つの基盤を有機的に繋げることで, オープンサイエンス時代の研究ワークフローを支える研究環境の提供を目指している おわりに学術研究の世界では, 先人が書いた論文に基づいて新たな知見を構築することは, 巨人の肩の上に立つ と比喩的に表現されることも多い 論文のみならず, その裏にあるデータも含めた巨人の肩の上に立つことにより, 研究の進歩はより加速されるだろう 機関リポジトリはそれにどう貢献できるのか 大学図書館が取り組むべき大きなチャレンジのひとつである 報告 初めての人のためのオープンサイエンス入門逸村裕筑波大学図書館情報メディア系教授 1. オープンサイエンスとはオープンサイエンスとはオープンアクセス (OA) とオープンデータを含む概念である 現在, 議論になっている対象は公的研究資金による研究成果として得られた論文や研究データとなっている 情報通信技術の急速な進展に伴い, 論文, 生成さ - 3 -

れた研究データ等の研究成果を分野や国境を越えて活用し, 新たな価値を生み出すための取組が世界的に広まりつつある 研究成果のオープン化は, 研究成果の相互利用を促進し, 知の創出に新たな道を開くことが期待されるが, とりわけ研究データ等をオープン化しデータ駆動型の研究を推進することでイノベーションの創出につなげることを目指した新たな科学の進め方が注目されている すなわち, 研究成果のオープン化に関する議論は, 従来の論文へのアクセスを中心としたオープンアクセスの概念にとどまらず, 研究データを含む研究成果の利活用へと概念が変化し, 研究の進め方の変化や新たな手法が生じつつあることを示している 2.OA とは査読済み論文に対する障壁なきアクセスインターネット上で, 無料で利用でき, すべての利用者に閲覧, ダウンロード, コピー, 配布, 印刷, 検索, リンク, 索引化のためのクロール, ソフトウェアへのデータの取り込み, その他合法的な目的での利用を, 財政的, 法的, 技術的障壁なしに認める (1) OA の背景学術雑誌価格の高騰研究成果流通促進 (2) OA の成り立ち BOAI( ブダペスト オープンアクセス イニシアティヴ ) (3) OA の現状グリーン OA 機関リポジトリゴールド OA オープンアクセス雑誌 飛躍の時代の幕開け~ ( 内閣府 ) 2015.4 わが国におけるデータシェアリングのあり方に関する提言 ( 科学技術振興機構 ) 2016.1 第 5 期科学技術基本計画 (2016.4-2021.3) ( 内閣府 ) 2016.2 戦略的創造研究推進事業におけるデータマネジメント実施方針 ( 科学技術振興機構 ) 2016.2 学術情報のオープン化の推進について( 審議まとめ ) ( 科学技術 学術審議会学術情報委員会 ) 2016.7 オープンイノベーションに資するオープンサイエンスのあり方に関する提言 ( 日本学術会議 ) 2017.4 オープンサイエンス促進に向けた研究成果の取扱いに関する JST の基本方針 ( 科学技術振興機構 ) 研究成果の公開を通じた利活用を促進することにより, 自然科学のみならず, 人文学 社会科学を含め, 分野を越えた新たな知見の創出や効率的な研究の推進等に資するとともに, 研究成果への理解促進や研究成果のさらなる普及につながることが期待される なお, 研究成果の利活用を促進する観点とは異なるが, 研究の透明性を確保することや研究の過度な重複を避けることによって研究費を効率的に活用する観点からもオープン化の取組が求められる また, 公的研究資金による研究成果は, 広く社会に還元すべきものであることに鑑み, そのオープン化推進の必要性はなお一層強い 3. オープンサイエンス (1) オープンサイエンスの背景論文のオープンアクセス論文のエビデンスとしてのデータ公開研究データのオープン化 Research Data Sharing Open Research Data 分野の差異 (2) オープンサイエンスに関わる政策文書 2015.3 我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について~サイエンスの新たな 4. ステークホルダーの役割オープンサイエンスを進めるためにはステークホルダー ( 関与者 ) それぞれが担うべき役割が考えられる (1) 国 (2) 研究資金配分機関 (3) 科学技術振興機構 (JST) 我が国の公的支援による出版プラットフォームであるJ-STAGE について, レビュー誌の発信などを通じて国際的な存在感の向上を図る (4) 国立情報学研究所 (NII) 機関リポジトリ構築の共用プラットフォーム - 4 -

(JAIRO Cloud) により, 大学等における効率的な整備を支援する 国際学術情報流通基盤整備事業 (SPARC Japan) によりセミナーを開催するなど, オープンアクセスに対する理解増進を図る (5) 学協会学協会が共同して質の高いオープンアクセスジャーナルを構築する (6) 研究者 (7) 大学 大学図書館オープンアクセスに係る方針を定め公表する機関リポジトリをグリーンOA の基盤としてさらに拡充する 機関リポジトリの役割について, 情報発信の重要な手段としてのみならず, 次のように位置づけられている a. 大学等の生産する知的情報 資料の集積, 長期保存の場 ( アーカイブ ) b. 学術情報の発信及び流通の基盤 ( 論文, データ, 報告書等の公表及び提供 ) c. 学習 教育のための基盤 ( 教材の電子化, 提供, 保存 ) d. 人材育成 e. 連携これらステークホルダーとの協力連携において大学図書館は重要な位置を占めると考えられる それらの実践についてはすでにオープンアクセスリポジトリ協議会 (JPCOAR) 等で動きが始まっている デジタルな技術 方法を用いてデジタル情報の作成から管理そして保存に至るまでの動きとして Digital Scholarship の動きも始まっている これらに大学図書館として, 当事者意識を持ってオープンサイエンスに関わることが望まれる 報告 図書資料のオープンアクセス天野絵里子京都大学学術研究支援室日本発の学術情報の流通において学術論文のオープンアクセス (OA) の進展に大学図書館が果たした役割は大きい しかし人文 社会科学分野の研究成果として重要な図書の OA については手付かずであり, 議論も深まっていない 本報告では欧米の事例を紹介しながら, 日本で図書の OA を進めるための論点を提供する また, リサーチアドミニストレーターの立場から人文 社会科学分野の成果発信における図書館への期待についても述べる 5. 大学図書館とオープンサイエンス大学図書館としてオープンサイエンスにどう向き合うべきか 一つには学術情報流通の一翼を担うものとしていっそう digital の世界に踏み込むことである 研究データ管理 (RDM: Research Data Management), インターネット情報の情報資源に識別番号を付与するディジタルオブジェクト識別子 ( DOI: Digital Object Identifier), 研究者に一意の番号を付与する ORCID: Open Researcher and Contributor ID といった図書館として長く培ってきた技術の応用はデジタルの世界においても機能できよう 第二にオープンサイエンスの目標である 世界中の誰もが自由にデータを扱える, 人類の知的 文化的な情報資源 遺産としてのデータを管理保存する という点は図書館本来の目的と結びつくということを意識することである 図書館本来の理念とオープンサイエンスの目標を理解すれば自ずと図書館がなすべき行動も明らかになる 報告 JPCOAR の目指すオープンアクセス岡部幸祐筑波大学学術情報部はじめにリポジトリを通じた知の発信システムの構築を推進し, リポジトリコミュニティの強化と我が国のオープンアクセス並びにオープンサイエンスに資することを目的として,2016 年 7 月にオープンアクセスリポジトリ推進協会 (JPCOAR) が設立された 国立情報学研究所との JAIRO Cloud の共同運営やオープンアクセス方針策定の支援など,JPCOAR が進めるさまざまな活動から,JPCOAR が目指すオープンアクセスを紹介する 1.JPCOAR とは 2013 年に大学図書館と国立情報学研究所との連 - 5 -

携 協力推進会議の下に設置された機関リポジトリ推進委員会が JPCOAR の前身となっている そのため,JPCOAR の活動も基本的には, 機関リポジトリ推進委員会の方針をもとに進められている 機関リポジトリ推進委員会が平成 25 年 12 月 13 日に公表した 大学の知の発信システムの構築に向けて において, オープンアクセス推進の方向性として次の 4 つが示されていた ( https://ir-suishin.repo.nii.ac.jp/?action=reposito ry_uri&item_id=7&file_id=22&file_no=3) (1) オープンアクセス方針の策定と展開 (2) 将来の機関リポジトリ基盤の高度化 (3) コンテンツの充実と活用 (4) 研修 人材養成 JPCOAR の事業としては, 次の 5 つを掲げているが, 具体的な活動は 大学の知の発信システムの構築に向けて に示された方向性を踏まえたものとなっている オープンサイエンスを含む学術情報流通の改善 リポジトリシステム基盤の共同運営と有効活用 リポジトリ公開コンテンツのさらなる充実 担当者の人材育成のための研修活動 国際的な取組みに対する積極的連携具体的な活動としては, オープンアクセス基盤を安定的に運用すること オープンアクセスの先端的機能の開発を進めること オープンアクセスの発展に寄与するために国際連携を進めることこれらを1JAIRO Cloud 運用作業部会,2 研修作業部会,3 広報普及作業部会の 3 つの作業部会と,1 研究データタスクフォース,2 研究者情報連携タスクフォース,3OA 方針成果普及タスクフォース, 4メタデータ普及タスクフォースの 4 つのタスクフォースを設けて行っている オープンアクセス基盤の安定的運用を行うため, ウェブサイトの編集 管理や情報誌 JPCOAR Newsletter : CoCOAR の発行などにより広報 啓発活動の展開及び情報交換の場の創設を行い, JAIRO Cloud を安定的に運用するため JAIRO Cloud コミュニティサイトを通じた利用機関支援や JAIRO Cloud の共同運営, 参加機関の人材育成のための研修を年 5 回開催している また, タスクフォースでは, オープンアクセスの先 端的機能の開発を担当し, 研究データを扱うための諸機能開発, 研究者情報との連携機能開発, オープンアクセス方針策定のための方策の開発と普及, オープンサイエンスも踏まえたメタデータスキーマの開発を行なっている さらに, オープンアクセスの発展に寄与する国際連携を進めるため, 国際的取組において中心的役割を担う COAR への加盟や人材育成を目的とした, 国際的イベント及び海外先進施設等への参加機関職員の派遣活動も行っている 2.JAIRO Cloud の共同運用 JPCOAR の会員機関数は,2017 年 7 月で 500 機関となった ( 表 1) 機関リポジトリを公開しているのは 2017 年 3 月時点で 681 機関であるが, その約 74% が JPCOAR の会員となっている その内, JAIRO Cloud の利用機関は,414 機関であり, 会員機関の 8 割を超えている また, 公開されている機関リポジトリの 6 割程が JAIRO Cloud によるものとなっている 表 1 会員機関数種別機関数 JC 利用機関国立大学 59 28 公立大学 53 45 私立大学 322 279 大学共同利用機関 12 10 短期大学 32 31 高等専門学校 7 7 その他 ( 研究機関等 ) 15 14 合計 500 414 JAIRO Cloud は, 国立情報学研究所で機能のアップデートも行なっており,2017 年度リリースでは, ERDB-JP との自動連携や著者名典拠の管理機能などが追加されている JAIRO Cloud については, 利用機関から, システムの維持に労力がかからず, 全国各地に仲間がいて 簡単で安心 との意見もある JPCOAR は, コミュニティサイトでの支援や移行のための担当者勉強会の開催なども行なっていくとともに, 今後も利用機関の要望を取りまとめ, 機能改善に努めていく - 6 -

3. オープンアクセス方針の策定支援 オープンアクセスの促進には, 各機関においてオ ープンアクセスの環境を作ることが必要となる OA 方針成果普及タスクフォースは 2017 年 2 月に オ ープンアクセス方針策定ガイド を公開し, 環境作 りを支援している ( https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/?action=repository_ uri&item_id=32) これは, オープンアクセス方針 (OA 方針 ) の策定を支援するツールとして作成さ れ, 第 1 章では,OA 方針を策定 実施するために 必要な事柄を実際の手順に沿って解説している 第 2 章では,OA 方針に盛り込むべき構成要素を記入 例もとに示している 付録として, 実施計画例, OA 方針雛形 と, 学内で検討, 提案する際の参 考資料となるように オープンアクセスとは を用 意している このガイドでは OA 方針の策定から実 施までを表 2 のように 5 つのフェーズに分けている 表 2 OA 方針の策定 実施 フェーズ 1 計画 フェーズ 2 方針案作 成 策定 フェーズ 3 プロモーシ ョン 認知 向上 フェーズ 4 実施 フェーズ 5 フォローア ップ 検討プロジェクト立ち上げ 他機関の OA 方針の研究 運用体制の確認 ( 人員 & 技術面 ) 策定 実施計画の作成 方針案, 説明文書の作成 図書館委員会, キーパーソンへ の説明 教員のコメント受付 方針の承認 複数媒体による学内周知 教員向け説明会の開催 プレスリリースの発行 ROARMAP への登録 方針の実施 実施要領の作成, 学内周知 教員向けの FAQ や登録サポー ト 利用統計の作成 対象論文の捕捉と登録の呼びか け モニタリング, 上層部への情報 提供 1 ~ 2 か月 1 ~ 3 か月 1 ~ 3 か月 1 ~ 3 か月 継続 ( オープンアクセス方針策定ガイド 第 1 章より The OpenAIRE guide for research institutions を 元に作成 ) OA 方針は, 定めればそれで終わるものではない 学内への周知を行い, 教員の認知度を高め, 登録のサポートを行うなど, 継続的な努力があって初めて, 実効性のあるものとなっていく OA 方針案に盛り込むべき構成要素については, 第 2 章にその項目及び内容を示しているが ( 表 3), 機関として OA を義務とするのか推奨するのか, また, 免除規定など検討が難しい内容もある 既に策定を済ませている機関での状況を参考にして検討を行うことになるだろう 表 3 構成要素 OA 方針の構成要素第 1 条趣旨 趣旨 第 2 条対象者 研究成果の公開 対象コンテンツ公開先第 3 条免除規定 適用の例外 第 4 条対象期間 適用の不遡及 第 5 条登録するタイミング リポジトリへの登録 登録する版 第 6 条その他 その他 ( オープンアクセス方針策定ガイド 第 2 章から抜粋 ) 4. これからの活動 JPCOAR では, 今後も JAIRO Cloud の共同運用を進めるとともに, 機関リポジトリコミュニティの強化に努めていくが, 同時にオープンアクセス, オープンサイエンスの促進に向けてのタスクフォースでの活動も進めていく OA 方針成果普及タスクフォースでは,OA 方針策定済機関へのアンケート調査の実施 (2017 年秋 ),OA 方針策定ガイドの拡充 (2018 年冬 ) を予定し, メタデータ普及タスクフォースでは,JPCOAR スキーマの確定 (2017 年秋 ), JPCOAR スキーマ説明会の実施 (2017 年 10 月 10 日 ), 各種ガイドラインの整備などを予定している 他にも, 研究データタスクフォースでは, リサーチデータマネジメントトレーニングツールを開発し, - 7 -

2017 年 6 月にパワーポイント教材を公開した それを元に国立情報学研究所が JMOOC でのコース開設を計画している 研究者情報連携タスクフォースでは, 研究者の識別 ID を提供する ORCID(Open Researcher and Contributor ID, オーキッド ) と機関リポジトリの連携の可能性について検討を進めている JPCOAR は, 大学図書館界全体として活動する場となる機関リポジトリの新しいコミュニティである その運営は会員機関からの会費と人的支援によるものである 日本の機関リポジトリ, オープンアクセス, オープンサイエンスを進めていくためにもさらなるご支援, ご協力をお願いしたい 第 103 回全国図書館大会ホームページ掲載原稿 作成 2017 年 8 月 29 日 更新 2017 年 9 月 14 日 - 8 -