2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

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税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

平成 22 年 12 月 7 日 資料 ( 資産課税 )

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

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平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

スライド 1

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

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相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

2011年税制改正のポイント

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

参考. 改正前の制度概要 ( 改正対象は太字 ) (1) 税の納税猶予の全体像 ( 概要 ) の要件 会社の代表者であったこと 時には代表権を有していないこと と同族関係者で決議数の 50% 超の株式を保有かつを除いた同族内で筆頭株主であったこと 認定対象会社の要件 の要件 会社の代表者であること

住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

Microsoft Word 役立つ情報_税知識_.doc

問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

平成 22 年 11 月 25 日 資料 ( 資産課税 )

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

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事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

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(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

第 5 章 N

消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置

平成19年12月○日

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

<ライフプランニング>

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(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

法人税 結婚 子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設教育資金贈与の見直し非上場株式等に係る贈与税 相続税の納税猶予制度の見直し法人税率の引き下げについて 個人 (20 歳以上 50 歳未満の者に限る 以下 受贈者 という ) の結婚 子育て資金の支払に充てるためにその直系尊属 ( 以下

平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

4. 平成 27 年度税制改正の概要 (1) 住宅の取得に関わる税制 登録免許税 不動産取得税 改正項目ヘ ーシ 改正内容 所有権保存登記 所有権移転登記 所有権の信託 抵当権設定の登記の軽減措置 税率の軽減措置 宅地評価土地の課税標準の軽減措置 軽減税率の適用期限を平成 27 年 3

Ⅰ ワンルームマンション経営と節税 税務署 確定申告 税金還付 20 万 ~30 万円 ワンルーム家賃収入ローン元利返済サラリーマンマンション A 氏 1 戸所有月 70,000 円月 60,000 円 銀行 年 30,000 円 月 8,000 円 固定資産税 管理会社 1 ワンルームマンション投

( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

平成16年版 真島のわかる社労士

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

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2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

平成23年度税制改正の主要項目

所令要綱

叔父から財産の贈与(1~3) を受けた場合 1/1 12/31 2/1 3/15 相選養続択与子贈時届贈精出縁与算書与 1組課提2 税出3 暦年課税相続時精算課税 養子縁組前の贈与 1については 暦年課税により贈与税額を計算し 養子縁組以後の贈与 2 及び 3は 相続時精算課税により贈与税額を計算し

個人事業者向けの事業承継税制が創設

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

平成21年度税制改正について

である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

(3) 年金所得者公的年金等の収入金額が400 万円以下であり かつ その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20 万円以下である場合には 確定申告の必要はありません また 上記 (2) 又は (3) に該当する方であっても 医療費控除や住宅借入金

有償ストック・オプションの会計処理が確定

の範囲は 築 20 年以内の非耐火建築物及び築 25 年以内の耐火建築物 ((2) については築 25 年以内の既存住宅 ) のほか 建築基準法施行令 ( 昭和二十五年政令第三百三十八号 ) 第三章及び第五章の四の規定又は地震に対する安全上耐震関係規定に準ずるものとして定める基準に適合する一定の既存

第6回税制調査会 総6-3

年金型生命保険の二重課税問題についての論点整理

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

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第2回税制調査会 総2-2

設 拡充又は延長を必要とする理由 関係条文 租税特別措置法第 70 条の 2 第 70 条の 3 同法施行令第 40 条の 4 の 2 第 40 条の 5 同法施行規則第 23 条の 5 の 2 第 23 条の 6 平年度の減収見込額 百万円 ( 制度自体の減収額 ) ( - 百万円 ) 東日本大震

第25回税制調査会 総25-1

日税研メールマガジン vol.143 ( 平成 31 年 2 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 平成 31 年度税制改正大綱の解説 ( 2) 税理士金井恵美子 * 本稿では 前号 ( vol.142) に引き続き 平成 31 年度税制改正の大綱 に示された改正事

Japan Tax Newsletter

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事業承継関連税制について 関東経済産業局 平成 30 年 6 月 中小企業金融課

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

「恒久的施設」(PE)から除外する独立代理人の要件

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

特別障害者一人につき 75 万円を所得から控除することができます 障害者控除は 扶養控除の適用がない16 歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます ⑶ 心身障害者扶養共済掛金の控除 P128 条例の規定により地方公共団体が実施するいわゆる心身障害者扶養共済制度による契約で一定の要件を備えて

1.一般の贈与の場合(暦年課税)編

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時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税され かつ その所得税は相続税の課税価格の計算上被相続人の債務として控除されていることにより 所得税と相続税の負担の調整は済んでいますので この特例の適用は受けられません 2 取得費に加算される金額平成 26 年度の改正前は 相続財産である土地等の一部を譲渡し

2018年度税制改正大綱 - 資産税関連の主な改正点

Transcription:

Legal and Tax Report 2010 年 12 月 30 日全 6 頁 2011 年度税制改正大綱 ( 相続 贈与税 ) 相続税強化 子 孫への生前贈与軽減 資本市場調査部制度調査課吉井一洋 [ 要約 ] 政府税調は 2010 年 12 月 16 日 平成 23(2011) 年度税制改正大綱を公表した ( 同日閣議決定 ) 大綱では 相続税に関しては 課税最低限の引下げ 税率構造の見直し ( 最高税率を 55% に引き上げる ブラケットを見直す等による課税強化 ) 死亡保険金等の非課税措置の対象縮減等の課税強化を行う一方で 未成年者控除や障害者控除は拡充することとしている 贈与税に関しては 最高税率を 55% に引き上げる一方で 高齢者から若年層への早期の生前贈与を促すため 20 歳以上の子 孫等への贈与の際の税率構造見直し ( 課税軽減 ) 相続時精算課税の拡充 - 対象となる受贈者に孫を含める 贈与者の年齢要件を 60 歳以上 ( 現行 65 歳以上 ) に緩和する-を行うこととしている 税制改正の法案は 2011 年の通常国会に提出される 順調に行けば 2011 年 3 月末までに改正法が成立するが 参議院で与党と野党が逆転している現状を考えれば 予断を許さない状況である 1. 相続税に関する改正案 平成 23(2011) 年度税制改正大綱では 死亡者数に対する課税件数の割合が 4% 程度に低下している現状を踏まえ 相続税の再分配機能を強化し格差の固定化を防止するため 相続税の課税を強化することとしている (1) 基礎控除 基礎控除額については 下記のとおり引き下げることとしている 2011 年 4 月 1 日以後の相続 遺贈から適用される 3,000 万円 +600 万円 法定相続人数 現行制度 :5,000 万円 +1,000 万円 法定相続人数 (2) 税率構造 税率構造については 最高税率を 55% に引き上げ さらにブラケットについても 下記のとおり見直すこととしている 最高税率の引上げ及び高課税価格帯のブラケット幅の縮小により 高い遺産額の場合を中心に資産再分配機能の回復を図ることを目的としている 2011 年 4 月 1 日以後の相続 遺贈から適用される 株式会社大和総研丸の内オフィス 100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号グラントウキョウノースタワーこのレポートは 投資の参考となる情報提供を目的としたもので 投資勧誘を意図するものではありません 投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願い申し上げます レポートに記載された内容等は作成時点のものであり 正確性 完全性を保証するものではなく 今後予告なく修正 変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券キャピタル マーケッツ 及び大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 事前の了承なく複製または転送等を行わないようお願いします

2 / 6 図表 1 相続税率新旧比較 改正案各法定相続人の法定相続分相当額 1,000 万円以下 1,000 万円超 3,000 万円以下 3,000 万円超 5,000 万円以下 5,000 万円超 1 億円以下 1 億円超 2 億円以下 2 億円超 3 億円以下 3 億円超 6 億円以下 6 億円超 税率 45% 55% 速算控除額 50 万円 200 万円 700 万円 1,700 万円 2,700 万円 4,200 万円 7,200 万円 現行各法定相続人の法定相続分相当額 1,000 万円以下 1,000 万円超 3,000 万円以下 3,000 万円超 5,000 万円以下 5,000 万円超 1 億円以下 1 億円超 3 億円以下 3 億円超 ( 出所 ) 大和総研制度調査課作成算定式 : 各法定相続人の法定相続分相当額 税率 - 速算控除額 税率 速算控除額 50 万円 200 万円 700 万円 1,700 万円 4,700 万円 ( 出所 ) 政府税制調査会資料に基づき 大和総研制度調査課作成 以下では (1) (2) の改正による影響を試算した 法定相続人を配偶者と子 2 人とし 法定相続分通り ( 配偶者が 1/2 2 人の子が 1/4 ずつ ) に相続した場合の 相続人合計について納付すべき税額を求めた 相続財産の課税価格は 1 億円 3 億円 5 億円 10 億円 20 億円の 5 通りを想定した 図表 2 改正案が実施された場合の相続税額の試算 ( 単位 : 万円 ) 課税価格 現行 改正案 増加額 1 億円 100 315 215 3 億円 2,300 2,860 560 5 億円 5,850 6,555 705 10 億円 16,650 17,810 1,160 20 億円 40,950 43,440 2,490 ( 出所 ) 大和総研制度調査課作成

3 / 6 (3) 死亡保険金に係る非課税限度額 現行制度では 500 万円に法定相続人の人数をかけた金額を非課税限度額としているが 大綱では 相続人の生活安定という趣旨や他の金融商品との課税の中立性確保の要請等を踏まえ 適用対象となる法定相続人の範囲を制限することとしている 具体的には 500 万円に 未成年者 障害者 又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者のいずれかである法定相続人の数を乗じた金額を非課税限度額とする 2011 年 4 月 1 日以後の相続 遺贈から適用される (4) 未成年者控除 障害者控除 現行相続税法では 相続人が 20 歳未満の場合は 相続税額から 20 歳に達するまでの年数 6 万円の税額控除を認めている 相続人が障害者の場合には 相続税額から 85 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者は 12 万円 ) の税額控除を認めている 政府税調の 12 月 3 日の資料によれば 現在の 6 万円の控除額は昭和 63(1988) 年の物価等の動向を踏まえたものであることから 大綱では 物価の動向 ( 昭和 63(1988) 年を 100 とすると平成 22(2010) 年は 112.3) や今般の相続税の基礎控除額の見直しの内容を踏まえ 税額控除額を下記のとおり引き上げることとしている 相続人が 20 歳未満の場合は 20 歳に達するまでの年数 10 万円 相続人が障害者の場合には 85 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者は 20 万円 ) 2011 年 4 月 1 日以後の相続 遺贈から適用される (5) 連帯納付義務の見直し 相続税については 同一事案の相続人同士で連帯して納付する義務 ( 連帯納付義務 ) がある 国税当局は 本来の納税義務者の資力が低下したときは 連帯納付義務者に対して督促を行うが 連帯納付義務者が そのときまで全く事情を知らない場合や 相当額の延滞税までもが加わっている場合などがあり 実務家の間では問題視されている そこで 大綱では 相続税の連帯納付義務者が連帯納付義務を履行する場合に負担する延滞税 ( 最初 2 ヶ月は 4.3% 注 1 その後は 14.6%) については 一定の要件の下 ( 政府税調の議事録では 同人の責めに帰すべき事由がある場合を除いて ) 利子税 ( 最高 4.3% 注 1 ) に代える措置を講じる この改正は 2011 年 4 月 1 日以後の期間に対応する延滞税について適用する 注 1 日本銀行の基準割引率が 0.3% の場合 さらに 大綱では 相続税の連帯納付義務について 共同相続人による納付義務の履行の実態や租税の徴収確保の観点を踏まえ そのあり方について幅広く検討を行うこととしている 2. 贈与税に関する改正案 (1) 税率構造 大綱では 高齢者から若年世代への生前贈与を促進し 財産の有効活用の観点から 子 孫などの直系卑属 (20 歳以上 ) への贈与の場合に 子 孫などの直系卑属に対し課される贈与税の税率構造を特別に

4 / 6 緩和することとしている 具体的には 相続時精算課税制度の対象とならない贈与財産に係る贈与税の税率構造について 次のような見直しを行うこととしている 算定式 : 受贈額 (110 万円控除後 ) 税率 - 速算控除額 図表 3 120 歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた贈与財差の贈与税率新旧比較表 ( 子 孫の場合 ) 改正案 受贈額 (110 万円控除後 ) 税率速算控除額 贈与額 (110 万円控除後 ) 税率 速算控除額 200 万円超 300 万円以下 10 万円 300 万円超 400 万円以下 25 万円 400 万円超 600 万円以下 65 万円 600 万円超 1,000 万円以下 125 万円 1,000 万円超 225 万円 200 万円超 400 万円以下 400 万円超 600 万円以下 600 万円超 1,000 万円以下 1,000 万円超 1,500 万円以下 1,500 万円超 3,000 万円以下 3,000 万円超 4,500 万円以下 4,500 万円超 ( 出所 ) 大和総研制度調査課作成 45% 55% 10 万円 30 万円 90 万円 190 万円 265 万円 415 万円 640 万円 現行 図表 4 2 図表 3(1) 以外の贈与財産の贈与税率の新旧比較表 ( 一般 ) 改正案 受贈額 (110 万円控除後 ) 税率速算控除額 贈与額 (110 万円控除後 ) 税率 速算控除額 200 万円超 300 万円以下 300 万円超 400 万円以下 400 万円超 600 万円以下 600 万円超 1,000 万円以下 1,000 万円超 1,500 万円以下 1,500 万円超 3,000 万円以下 3,000 万円超 45% 55% 10 万円 25 万円 65 万円 125 万円 175 万円 250 万円 400 万円 200 万円超 300 万円以下 300 万円超 400 万円以下 400 万円超 600 万円以下 600 万円超 1,000 万円以下 1,000 万円超 10 万円 25 万円 65 万円 125 万円 225 万円 ( 出所 ) 大和総研制度調査課作成 現行 ( 出所 ) 政府税制調査会資料に基づき 大和総研制度調査課作成

5 / 6 改正後の税率は 原則として 2011 年 1 月 1 日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税に対して適用される ( 改正税法成立後 2011 年 1 月 1 日に遡及して適用される ) なお 非課税限度額は 年 110 万円で変わらない 1 年間に贈与を受けた財産の価額を合計し 合計額から 110 万円を控除した額に対して税率が適用される (2) 相続時精算課税 相続時精算課税制度は 生前贈与促進のため 2003 年度税制改正で導入された制度である 2,500 万円の特別控除額を超えない限り何回でも複数年にわたって非課税で贈与を行うことができ 特別控除額を超えた部分については一律 で課税される その後 相続時において贈与を受けた財産を贈与時の時価で相続財産に加算して相続税を計算し 贈与時に支払った贈与税額 ( 一律 を適用された税額 ) を相続税額から控除する 現行制度では 相続時精算課税の適用を受けることができる受贈者は 20 歳以上の推定相続人 ( 子 ) に限定されている 大綱では 対象となる受贈者に 20 歳以上である孫を加えることとしている 一方 贈与者についても 現行制度では 65 歳以上という年齢要件があるが 大綱ではこれを 60 歳以上に引き下げることとしている これらの改正も 原則として 2011 年 1 月 1 日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税に対して適用される ( 改正税法成立後 2011 年 1 月 1 日に遡及して適用される ) (3) 住宅取得資金の非課税措置等 2009 年 1 月 1 日から 2011 年 12 月 31 日までに 直系尊属から直系卑属に住宅取得資金として金銭の贈与を行った場合 受贈者が贈与年の翌年の 3 月 15 日までに入居することを条件に 最大 1,500 万円 (2009 年は 500 万円 2010 年は 1,500 万円 2011 年は 1,000 万円 ) までが非課税となる 受贈者は 受贈年の 1 月 1 日において 20 歳以上で贈与を受けた年の合計所得金額が 2,000 万円以下でないと当該非課税措置の適用を受けられない (2010 年 12 月 31 日までの贈与の場合は 合計所得金額が 2,000 万円超でも 500 万円の非課税枠の利用が可能 ) 大綱では 適用対象となる住宅取得等資金の範囲に 住宅の新築等 ( 住宅取得等資金の贈与を受けた翌年の 3 月 15 日までに行われるものに限る ) に先行してその敷地用の土地等を取得する場合における当該土地等の取得のための資金を追加することとしている この改正は 2011 年 1 月 1 日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に対して適用される ( 改正税法成立後 2011 年 1 月 1 日に遡及して適用される ) この特例の適用期限は延長されていないので 改正後の内容は 2011 年に限り適用され 非課税枠も 1,000 万円となる 3. 事業承継関連 非上場株式等に係る相続税 贈与税の納税猶予制度については 今回の大綱では 抜本的な見直しは先送りされている 大綱では その適用の基礎となる 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 に基づく認定等の運用状況や政策目的等を踏まえ 制度の活用を促進するための方策や課税の一層の適正化を図る措置について引き続き検討することとしている

6 / 6 大綱では 2011 年度税制改正では 次の改正を行うこととしている 1 対象となる会社 ( 非上場の中小企業者 ) のみならず その特別関係会社が風俗営業会社等に該当した場合は 納税猶予制度の適用を受けられない 大綱では この風俗営業会社等に該当してはならないこととされる特別関係会社の範囲について 特別関係会社のうち下記の者により株式等を直接又は間接に保有される会社とすることとしている ( イ ) 認定会社 ( ロ )( イ ) の代表権を有する者 ( ハ )( ロ ) と生計を一にする親族 ( ニ )( ロ ) と特別の関係がある者 2 対象となる会社 ( 非上場の中小企業者 ) が資産保有型会社 資産運用型会社に該当する場合は 納税猶予制度の適用を受けられない 大綱では 資産保有型会社 資産運用型会社の判定の基礎となる特定資産の範囲に 一定の外国会社に対する貸付金等を追加することとしている 3 大綱では その他所要の見直しを行うこととしている 非上場株式等に係る相続税 贈与税の納税猶予制度に関しては下記を参照されたい Legal and Tax Report 非上場株式等に係る相続税納税猶予制度の創設 (2009.4.8 鳥毛拓馬 ) ダイワの税金読本シリーズ 1 税金読本 2010 年度版 285~292 ページ