1. 在庫物件の四半期動向 市況変動を捉えやすい在庫データ 本機構の市況レポートでは 主に成約物件や新規登録物件の件数 価格等の動きから市場の動向を説明してきたが 在庫物件の動きに触れることは少なかった 在庫データは月報 Real Time Eyes にも掲載されているが 今回は最新データに基づき在

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Quarterly Market Watch Summary Report 季報 Market Watch サマリーレポート <1 年 7~9 月期 > 中古マンション 首都圏の動き ( 成約物件 ) 件数 7,588 件 ( -9.%) m単価.3 万円 / m ( +5.5%) 価格

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中古マンション概況 首都圏における 213 年 1~3 月の中古マンション成約は 9,663 件 ( 前年同期比 12.2% 増 ) で 6 期連続で前年同期を上回り 増加率は 2 ケタに拡大しています すべての都県 地域で前年同期を上回っています の 1 m2当たり単価は首都圏平均で

中古マンション概況 首都圏における 214 年 1~3 月の中古マンション成約は 9,993 件 ( 前年同期比 3.4% 増 ) で 1 期連続で前年同期を上回っています 都県 地域別に見ると埼玉県および横浜川崎地域を除く各都県 地域で前年同期を上回っています の 1 m2当たり単価は首都圏平均で

中古マンション概況 212 における首都圏中古マンションの成約は 31,397 件 ( 前比 8.7% 増 ) 3 ぶりに前を上回り 過去最高のとなっています 都県 地域別に見ても すべての都県 地域で増加となっています の 1 m2当たり単価は首都圏平均で 万円 ( 前比 1.9% 下

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年 2 月期関西圏 中京圏 福岡県賃貸住宅指標 大阪府 京都府 兵庫県 愛知県 静岡県 福岡県 空室率 TVI( ポイント ) 募集期間 ( ヶ月 ) 更新

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年 4 月期関西圏 中京圏賃貸住宅指標 大阪府京都府兵庫県愛知県静岡県 空室率 TVI( ポイント ) 募集期間 ( ヶ月 ) 更新確率 (%)

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生活衛生関係営業の景気動向等調査 平成17年7~9月期

中古マンションの平均成約価格は 2,661 万円 前比.4 上昇 前年同比は 5 か連続下落 価格指数は で前比.6 ポイント上昇 ( 詳細は 8~12 ページ ) 中古マンションの成約価格 前比 前年同比 成約価格の登録価格比 成約価格 前比 前年同比 登録価格比 東京 23 区 3,

Microsoft Word - 第4回(2015年4月)国際指数_記者発表_final

2011年12月21日

目 次 [Ⅰ] 調査方法 2 [Ⅱ] 地域区分図 3 [Ⅲ] アンケート調査票 4~5 [Ⅳ] 第 2 回不動産市況 DI 調査結果の概要 6 [Ⅴ] 設問ごとの回答内訳 [-1] 設問 2,3( 住宅地価格 ) 7~9 [-2] 設問 2,3( 商業地価格 ) 10~12 [-3] 設問 2,3(

目 次 調査結果について 1 1. 調査実施の概要 3 2. 回答者の属性 3 (1) 主な事業地域 3 (2) 主な事業内容 3 3. 回答内容 4 (1) 地価動向の集計 4 1 岐阜県全域の集計 4 2 地域毎の集計 5 (2) 不動産取引 ( 取引件数 ) の動向 8 1 岐阜県全域の集計

不動産経済 表紙OL


Ⅰ.市場の総括 (1) 首都圏マンション市場 新規供給 数 2,260 件 35,898 前年 (35,772 ) 比 0.4% 増 4 年ぶりに前年を上回る 総販売 数 35,952 前年 (35,043 ) 比 2.6% 増 新規物件の平均初 販売率 68.1% 前年 (68.8%) より0.7

リクルート住宅価格指数マンスリーレポート<2005年2月号>

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1. 中古マンション価格の属性別変化 物件属性別のm2単価の違いを押さえる方法 近畿圏の中古マンション価格は 213 年以来 上昇を続けているが一貫して上昇するエリアがある一方で弱含みのエリアもみられる 物件属性についても同様で 駅からの徒歩分数や築年数 住棟 住戸の規模 階数 方位などによって 価

1. 各都市の不動産市場トレンド 1-1. オフィス価格指数 対前回変動率 (2016 年 4 月から 2016 年 10 月まで ) 図表 1-1は オフィス価格指数の各都市 対前回変動率 今回 (2016 年 10 月現在 ) 対前回変動率が最も高かったのは 東京 の +3.4% 次いで 大阪

資料1

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中古マンションの平均成約価格は 2,783 万円 前年比 7.3 上昇し 4 年連続でプラス 価格指数は で前年比 9.5 ポイント上昇 ( 詳細は 8~12 ページ ) 中古マンションの成約価格 前年比 成約価格の登録価格比 成約価格 前年比 登録価格比 =( 成約価格 登録価格 -1

2011年12月21日

報道関係者各位 2019 年 1 月 30 日 アットホーム株式会社 市場動向 - 首都圏の新築戸建 中古マンション価格 (12 月 )- 新築戸建の平均成約価格は 3,557 万円 前月比 1.1% 下落 前年同月比は 6 か月連続上昇 価格指数は で前月比 1.1 ポイント低下 (

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売買 売買仲介アンケート調査結果とりまとめ Ⅰ 各社の企業概要 (1) 本社所在都道府県 2

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ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

リクルート住宅価格指数マンスリーレポート9月号

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リクルート住宅価格指数マンスリーレポート2009年01月号

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

報道関係者各位 2019 年 3 月 26 日 アットホーム株式会社 市場動向 - 当社不動産情報ネットワークにおける首都圏の新築戸建 中古マンション価格 (2 月 )- 新築戸建の平均成約価格は 3,478 万円 前月比 0.9% 上昇 前年同月比は 8 か月連続のプラス 東京 23 区は前月比

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リクルート住宅価格指数マンスリーレポート2007年11月号

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表 1) また 従属人口指数 は 生産年齢 (15~64 歳 ) 人口 100 人で 年少者 (0~14 歳 ) と高齢者 (65 歳以上 ) を何名支えているのかを示す指数である 一般的に 従属人口指数 が低下する局面は 全人口に占める生産年齢人口の割合が高まり 人口構造が経済にプラスに作用すると

平成23年11月1日

リクルート住宅価格指数マンスリーレポート2006年5月号(訂正版)

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1. 国土交通省土地 建設産業局関係の施策 不動産流通に関する予算要求が拡大 ここ数年 国の住宅 不動産政策において 不動産流通に関する施策が大幅に拡大している 8 月に公表された国土交通省の 2019 年度予算概算要求概要によると 土地 建設産業局における施策は大きく 4 項目あるが 全体の予算額

経済見通し

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News Release No.214(14-5) 2014 年 ( 平成 26 年 )6 月 13 日 東商記者クラブ 日銀クラブで 資料投函させていただいております 平成 26 年 5 月度貸金情報統計概況 貸金業法の指定信用情報機関シー アイ シー (CIC) は 毎月 貸金情報統計を公表して

第7回DIレポート

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1. 新築戸建登録価格 成約価格 新築戸建の登録価格は首都圏平均で1 戸あたり 3,4 万円 前年同比 1.3 上昇し 14 か連続のプラス 成約価格は同 3,44 万円 同 2.6 上昇し 14 か連続のプラス 平均価格は 3 かぶりに登録価格の平均を上回る 16 年 12 の首都圏の新築戸建登録

21 年 1 月 29 日発行 TVI( タス空室インデックス )( 過去 2 年推移 ) ポイント 1 都 3 県 TVI 推移 ( 過去 2 年間 ) 全域 23 区市部神奈川県埼玉県千葉県 年月 東京都全域 23 区市部 神奈川県 埼玉県 千葉県 28 年

Microsoft Word NO0173

関西経済レポート (2019 年 9 月 ) 令和元年 (2019 年 )9 月 30 日 ~ 輸出減少が継続 インバウンド消費はプラスの伸びを維持 ~ 足元の経済情勢と当面の見通し 関西経済は輸出 生産が斑模様であるが 内需が下支えとなり底堅く推移している 企業部門では 輸出は中国経済の減速等によ

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

直近 13 カ月空室率推移 調査月 千代田区 7.50% 7.01% 6.60% 6.64% 6.48% 6.

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プレスリリース                        2011年9月27日

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

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地域経済分析システム () の表示内容 ヒートマップでは 表示する種類を指定する で選択している取引価格 ( 取引面積 mあたり ) が高い地域ほど濃い色で表示されます 全国を表示する を選択すると 日本全国の地図が表示されます 都道府県単位で表示する を選択すると 指定地域 で選択している都道府県

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中古マンション ( 近畿二府四県 ) 成約登録 新規登録状況 ( 専有面積 :~35 m2 ) 成約登録 ( 近畿圏全域 ) 成約 推移 推移 2, % 1,8 1,6 1,4 1, % 1, % 1 2

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( 資料 3) 比較検討した住宅 (%) 注文住宅取得世帯分譲戸建住宅取得世帯分譲マンション取得世帯 中古戸建住宅取得世帯 中古マンション取得世帯 ( 資料 4) 住宅の選択理由 (%) 注文住宅取得世帯分譲戸建住宅取得世帯分譲マンション取得世帯 中古戸建住宅取得世帯 中古マンション取得世帯 ( 資

公益社団法人三重県宅地建物取引業協会一般社団法人三重県不動産鑑定士協会 三重県の地価と不動産市場の動向に関するアンケート調査結果 平成 27 年 4 月 1 日を調査時点とし 公益社団法人三重県宅地建物取引業協会の会員に対しアンケート調査を行った結果をお知らせします 本調査 (DI 調査 ) は所定

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Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 30 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 30 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 30 年 1~3 月期 来期平成

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1 2018年5月期 首都圏賃貸住宅指標 東京都 全域 空室率TVI ポイント 23区 神奈川県 市部 埼玉県 更新確率 %

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Transcription:

( 公社 ) 近畿圏不動産流通機構市況レポート 特集 在庫物件を用いた市況分析 既往の月次や四半期ごとの市況レポートでは取り上げることが少なかった在庫物件について 件数や価格の動きを中心に成約 新規登録物件との比較や在庫循環を把握することで リーマンショック以降の長期的な市況変動について捉えることにする 1. 在庫物件の四半期推移 レインズデータの在庫物件は 専属専任など登録が義務付けられている新規登録の動きや 成約 売り止めなど販売活動の結果を反映しており 市況を捉える上で有効な指標となり得る 成約と在庫件数の動きを比べると在庫は市況の変化を捉えやすい 8 年 9 月のリーマンショック以降 足元の在庫指数は最も高く 特に中古マンションは 年以降急速に増加している ( 図表 1) 在庫価格は成約価格の動きをトレースし 中古戸建価格は中古マンションに比べて上昇は緩やかである 中古マンションは成約価格が在庫価格を上回り 高額物件が選好的に購入されている 2. 在庫循環からみた市況動向 在庫件数の変化は新規登録件数とほぼ同時か 1 四半期程度遅れて追随する 新規登録件数を出荷に見立て在庫との循環図を作ると 概ね 1~11 四半期で山から谷に変化する市況サイクルを描く 中古マンション市場は直近時点で最後の 山 から 1 四半期が経過し 谷 に向かう可能性が高い 中古戸建は最後の 谷 から 6 四半期が経過し しばらく市況の改善が続く可能性がある 3. 在庫物件からみた長期トレンド 中古マンションの在庫は 11 年以降リーマンショック時の水準を上回り 直近は約 1. 倍の水準まで拡大 一方 新築マンションの販売在庫は 直近で 4 割弱の水準にとどまっている 用地取得難等による供給減少で調整が進んでいる新築マンション在庫は低水準で推移するとみられる 一方 ストックの増加で選択肢豊富な中古マンションでは 値頃感のある物件や築浅物件に需要が集まる可能性があり 売り物件の増加で今後も在庫は拡大することが考えられる 図表 1 在庫 成約件数の四半期別動向 ( 近畿圏 ) ( 指数 ) 指数 (28 年 7-9 月期 =1) 16 149 3 件数 前年同期比 14 13 12 12 2 1 11 1 9 8 7-1 - 戸建住宅成約 戸建住宅在庫 戸建住宅成約 戸建住宅在庫 中古マンション成約 中古マンション在庫 -2 中古マンション成約 中古マンション在庫 - Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ 四半期 Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ '8 ''9 ''1 ''11 ''12 ''13 ''14 '' ''16 ''17 ''18 年 '8 ''9 ''1 ''11 ''12 ''13 ''14 '' ''16 ''17 ''18 Ⅰ:1~3 月期 Ⅲ:7~9 月期 在庫はⅠ:3 月末 Ⅲ:9 月末 戸建住宅 : 在庫の13 年 6 月までは建物面積 4~2m2の物件 - 218/11 No.71 1

1. 在庫物件の四半期動向 市況変動を捉えやすい在庫データ 本機構の市況レポートでは 主に成約物件や新規登録物件の件数 価格等の動きから市場の動向を説明してきたが 在庫物件の動きに触れることは少なかった 在庫データは月報 Real Time Eyes にも掲載されているが 今回は最新データに基づき在庫の内容を改めて整理し 成約や新規登録物件と比較しながら多面的に分析することで 長期的な市況の推移や今後の方向性を探ることにする レインズデータの在庫物件は 毎月末時点で集計される 前月までの登録残と当月に登録された新規登録件数から その月の成約件数と売り止め等による削除分を除いたものが在庫件数となる レインズの特性上 在庫物件は 専属専任 専任媒介の登録が義務付けられている新規登録物件や 成約 売り止めなど販売活動の結果として現れる動きを反映しており 市場の変化を捕捉する上で有効な指標と考えられる 近畿圏の成約件数と在庫件数の四半期別の動きをみると 成約に比べて在庫データは市況の変化を捉えやすい リーマンショックをはさんだ 28 年 7~9 月期の在庫件数を 1 とした場合 最も在庫指数が高いのは中古マンション 戸建とも足元の 18 年 7~9 月期で 特に中古マンションは 年以降 急速に増加している ( P 1 図表 1 ) 前年同期比の増減率をみると市況の変動はより分かりやすく リーマンショック後の 9 年 1~12 月期まで大幅な調整が進んだ 景況感の悪化から売却を見合わせる動きや価格調整で割安な物件が増加し 取引されやすくなったことで在庫が減少したとみられる その後は 市況の回復ととともに在庫指数は増加に転じたが 13 年 4~6 月期に再び底打ちした この時点では大規模な金融緩和が開始され成約件数が大幅に伸びたことで 結果として在庫件数は減少した 13 年以降は堅調な取引が続き 在庫指数は比較的低水準で推移したが 年以降は中古マンションを中心に在庫の拡大が目立つ ここ数年は成約の伸びが頭打ちとなるなか マンション市場では宅建業者による買取再販物件などを含めた売り圧力が強まり 在庫が拡大したとみられる 一方 中古戸建の在庫件数は大幅な伸びには至っていない 京阪神のマンション在庫が拡大 府県別にみると 在庫ボリュームが大きい京阪神が近畿圏全体の動きを左右している 13 年以降 中古マンションでは大阪府 兵庫県 京都府の在庫件数が概ね増加しており 特に在庫件数が全体の過半数を占める大阪府は 年以降増加基調にある 中古戸建は全体の約 4 218/11 No.71 2

図表 2 在庫件数の四半期別増減率 ( 前年同期比 /2 府 4 県 ) 中古マンション 4 3 大阪府京都府奈良県 兵庫県滋賀県和歌山県 4 3 戸建住宅 大阪府京都府奈良県 兵庫県滋賀県和歌山県 2 2 1 1-1 -1-2 -2-3 -3-4 9 12 3 '13 '14 ' '16 '17 '18 6 9-4 月年 9 12 3 '13 '14 ' '16 '17 戸建住宅 : 在庫の 13 年 6 月までは建物面積 4~2 m2の物件 '18 6 9 割を占める大阪府を中心に 16 年以降は中古マンションのような大幅な在庫の伸びはみられないが 直近 1 年では京都府の増加が目立つ ( 図表 2) 在庫価格は成約価格の動きに追随 在庫価格の推移をみると 中古マンション 戸建住宅ともに概ね成約価格の動きをトレースしているようにみえる 中古マンションでは 年 4~6 月期以降 在庫価格が上昇しており 16 年 7~9 月期には 2 ケタの伸びを示した この時期は前述のように業者売主の物件が市場で増加し 相対的に高額な物件が在庫として残った可能性が指摘される 一方 中古戸建の在庫価格は中古マンションほど大幅な上昇はみられず 成約価格と同様に緩やかな動きとなっている ( 図表 3) 図表 3 在庫 成約物件の四半期別価格と変動率 ( 近畿圏 ) ( 万円 ) 2,7 2, 2, 2, 1,7 1, 1, Ⅲ Ⅰ '8 ''9 中古戸建成約中古マンション成約 価格 戸建在庫中古マンション在庫 Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ ''1 ''11 ''12 ''13 ''14 '' ''16 ''17 ''18 16 14 12 1 8 6 4 2-2 -4-6 -8-1 四半期 Ⅲ Ⅰ 年 '8 ''9 中古戸建成約中古マンション成約 価格 前年同期比 戸建在庫中古マンション在庫 Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ ''1 ''11 ''12 ''13 ''14 '' ''16 ''17 ''18 Ⅰ:1~3 月期 Ⅲ:7~9 月期 在庫は Ⅰ:3 月末 Ⅲ:9 月末 戸建住宅 : 在庫の 13 年 6 月までは建物面積 4~2 m2の物件 218/11 No.71 3

図表 4 在庫価格の四半期別変動率 ( 前年同期比 /2 府 4 県 ) 中古マンション 3 大阪府 京都府奈良県 2 兵庫県滋賀県和歌山県 3 2 戸建住宅 大阪府京都府奈良県 兵庫県滋賀県和歌山県 1 1 - - -1-1 - 9 12 3 6 9 '13 '14 ' '16 '17 '18 - 月 9 年 '13 12 3 6 9 '14 ' '16 '17 '18 戸建住宅 : 在庫の 13 年 6 月までは建物面積 4~2 m2の物件 在庫価格は 成約価格を意識しながらやや高めに値付けされる新規登録価格と 成約に至らない残物件 ( 調整が遅れた ) 価格双方の要素を含んでいる このため 基本的に成約価格より高くなる傾向にあったが 中古マンションでは 14 年 7~9 月期から在庫価格を成約価格が上回り 流通市場の中で相対的に高額な物件が選好的に購入されている様子がうかがえる 府県別の価格をみると やはり大阪府 兵庫県 京都府の動きが近畿圏全体に反映されている 中古マンションでは ~16 年にかけて大阪府の在庫価格が大幅に上昇したが 半年から 1 年程度遅れて京都府も上昇している 京都府では中古戸建の在庫価格も 16 年以降上昇が続いており 成約価格の上昇が在庫価格にも影響を与えているとみられる ( 図表 4) 2. 在庫循環からみた市況動向 在庫と新規件数で捉える市況パターン 次に 在庫の動きに大きな影響を与えているとみられる新規登録物件との比較により 市況変動のパターンを捉えることにする 在庫件数と新規登録件数の四半期別の前年同期比みると 中古マンションでは前述のようにリーマンショック直後の 8 年 1~12 月期から増加率は急速に低下 1 年 1~3 月期まで 6 四半期に渡って調整期間が続き 戸建住宅はやや短いが 9 年を通して市場における物件供給が抑えられた 中古マンション 戸建住宅ともに その後も在庫件数は新規登録件数とほぼ同時か 1 四半期程度遅れて追随している 中古マン 218/11 No.71 4

図表 在庫 新規登録件数の前年同期比の推移 ( 近畿圏 ) 中古マンション 4 3 新規登録件数在庫件数 戸建住宅 2 新規登録件数在庫件数 2 1 1 - -1-1 - -2 Ⅲ Ⅰ '8 ''9 Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ ''1 ''11 ''12 ''13 ''14 '' ''16 ''17 ''18-2 Ⅲ Ⅰ '8 ''9 Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ ''1 ''11 ''12 ''13 ''14 '' ''16 ''17 ''18 Ⅰ:1~3 月期 Ⅲ:7~9 月期 在庫は Ⅰ:3 月末 Ⅲ:9 月末 戸建住宅 : 在庫の 13 年 6 月までは建物面積 4~2 m2の物件 ションは 9 年末と 13 年当初の 2 つを底に 中古戸建は 9 年末と 13 年初 17 年初の 3 つを底に 山と谷を繰り返す波形を描いている ( 図表 ) 中古市場でも認められる在庫循環 一般に景気変動を理解する指標として在庫循環の考え方が広く用いられる ここでは新規登録件数を生産活動における出荷 ( 供給 ) に見立て在庫件数との関係を循環図に示し 中古住宅市場の変動サイクルの把握を試みることにする ( 図表 6) 下図をみると 中古マンションでは 13 年 7~9 月期を市況の 谷 16 年 1~3 月期を 山 と捉えると 1 四半期で半周していることがわかる 一方 中古戸建 図表 6 在庫 新規登録件数の前年同期比による在庫循環図 ( 近畿圏 ) 中古マンション 山 戸建住宅 12 2 在庫積み上がり局面 1 在庫積み上がり局面 '18Ⅲ '16Ⅰ 8 '14Ⅱ 6 '18Ⅲ 1 在在在在庫在 4 在庫庫 庫庫積 2 庫積件件 '13Ⅲ 調み調み数 数 整増 整増 % - 局し % -2 局 '17Ⅰ し -1 面局 -4 面局面面 '13Ⅲ -6 - -8-2 谷 意図せざる在庫減局面 -1 谷 意図せざる在庫減局面 - -12 - -2 - -1-1 2-12 -1-8 -6-4 -2 2 4 6 8 1 12 新規登録件数 % 新規登録件数 % Ⅰ:1~3 月期 Ⅲ:7~9 月期 在庫はⅠ:3 月末 Ⅲ:9 月末 戸建住宅 : 在庫の13 年 9 月までは建物面積 4~2m2の物件 山 218/11 No.71

は 14 年 4~6 月期を 山 17 年 1~3 月期を 谷 と捉えると 11 四半期で市況が変化していると考えられる この図では 1~11 四半期 ( 約 3~33 ヶ月程度 ) で市況の 山 と 谷 が出現することが示されている 中古マンション市場では 18 年 7~9 月期時点で 最後の市況の 山 から既に 1 四半期が経過しており 市況の 谷 に向かう可能性が高まっている 一方 中古戸建市場は最後の市況の 谷 から 6 四半期が経過しており しばらくは市況の改善が続く可能性がある 中古マンション市場では 買取再販や区分投資用など個人間の相対取引 ( 実需 ) 以外の取引が含まれることが多く 中古戸建に比べて市況変化の振れ幅が大きい 中古マンションで 山 を迎えた後も続く拡大基調は こうした面を反映していると考えられるが 来年度は海外経済の悪化や消費増税など景気後退の懸念も強まっており 谷 に向かう変化に備えておく必要がありそうだ 在庫循環は こうした景気変動のサイクルや現状のポジションを捉えるのに役立つと考えられるが 中古住宅市場の動きをみる上で留意すべき点もある 企業活動では 在庫切れによる販売機会の喪失を避けるため意図的に在庫を積み増すことがあり 需給に対応した在庫管理が行われる 一方 中古住宅市場で個人間売買が中心で 転勤や子供の成長といったライフイベントが売却の契機となることが多く 市場の循環的要素が強く意識される訳ではない点に注意が必要だ ただ 売却を有利に進めるため 相場の動きや金利 税制上の優遇措置 景気動向を睨みながら売却時期を決定する動きはある 市場の売り物件が不足すると 仲介業者による物件確保が活発になり 結果として受託物件が増える動きもある 一部に投資用を含む中古マンション市場のように 外部要因の影響が観察されるケースがある一方 実需が中心の中古戸建の動きが中古住宅市場本来の姿を捉えている可能性も考えられる 今後は 在庫物件データの整備 蓄積を進め 市況のサイクルをいち早く捉えるような指標づくりが必要である 3. 在庫物件からみた近畿圏の長期トレンド マンション在庫は中古が拡大 新築は縮小 最後に 新築マンション市場との比較も踏まえながら 長期的な市場の動きについて捉えることにする 8 年 7~9 月期から過去 1 年間に渡る近畿圏マンション市場における件数を指数化したグラフをみると 1 年以降中古マンションと新築マンションの動きに違いがあることがわかる 各時点の需給状況 218/11 No.71 6

図表 7 近畿圏のマンション市場の長期トレンド ( 指数 :28 年 7~9 月期 =1) ( 指数 ) 18 新築マンション販売在庫数 左目盛 中古マンション成約件数右目盛 中古マンション新規登録件数右目盛 中古マンション在庫件数右目盛 ( 指数 ) 18 16 16 14 14 12 12 1 1 8 8 6 6 4 4 2 2 Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 四半期 '8 '9 '1 '11 '12 '13 '14 ' '16 '17 '18 年 資料 :( 社 ) 近畿圏不動産流通機構 不動産経済研究所 Ⅰ:1~3 月期 Ⅱ:4~6 月期 Ⅲ:7~9 月期 Ⅳ:1~12 月期 を結果的に反映している在庫件数は 先に見たように中古マンションでは 9 年にかけて落ち込んだが その後は回復し 11 年以降はリーマンショック時の水準を上回り 直近の 18 年 7~9 月期は約 1. 倍の水準まで増加している 一方 新築マンションの販売在庫は 9 年 7 ~9 月期から減少し始め 13 年 4~6 月期には約 3 割の水準まで低下し 18 年 7~9 月期も 4 割弱の水準にとどまっている ( 図表 7) 各数値の動きは 前年同期比をみるとより明確になる ( 図表 8) 新築マンション在庫件数は 14 年 1~3 月期まで減少し続け その後 図表 8 近畿圏のマンション市場の長期トレンド ( 前年同期比 ) 4 3 3 2 1 - -1 - -2 - -3-3 -4 Ⅲ Ⅳ Ⅰ '1 '11 新築マンション販売在庫数 左目盛 '12 資料 :( 社 ) 近畿圏不動産流通機構 不動産経済研究所 '13 中古マンション成約件数右目盛 '14 中古マンション新規登録件数右目盛 ' 中古マンション在庫件数右目盛 3-3 Ⅱ Ⅲ四半期 '16 '17 '18 年 Ⅰ:1~3 月期 Ⅱ:4~6 月期 Ⅲ:7~9 月期 Ⅳ:1~12 月期 2 1 - -1 - -2-218/11 No.71 7

も増加と減少を繰り返している これに対し 中古マンションの在庫件数は 1 年 1~12 月期から増加に転じ 13 年にかけて一時減少したが 年以降は増勢傾向にある 新築マンションは 用地取得難や建築費の高騰 中堅デベロッパーによる供給の減少などもあり 供給会社による在庫調整が進んでいる 採算性の低下などから一部の大規模開発を除いて新築供給の大幅な拡大は考えにくく 新築在庫は低水準で推移することが考えられる 一方 マンションストックの増加により選択肢が豊富となった中古マンション市場では値頃感のある物件に一層注目が集まるとみられる 新築供給が途絶えたエリアでは 築浅物件に需要が集まる可能性もあり 旺盛な需要に対応する形で新規の売り出し物件が増えることで 在庫も拡大することが考えられる 以上のように 在庫物件の件数 価格について成約や新規登録物件との比較を通じて 市況の循環的な動きが把握できる 特に 在庫件数は新規登録件数と合わせ見ることで市況のサイクルや変化のシグナルを見出すことができると考えられる 在庫価格は成約価格に影響を受けるとみられ エリアごとのトレンドの差異も少ないことから 成約事例が少ないエリアで市場価格の動向を見る際の代替指標となり得る 今後は 在庫データベースの整備により 中古マンションのm2単価や戸建住宅での新築 中古物件の捕捉など 市況のトレンド把握に有効な指標の検討を進める必要がある 218/11 No.71 8