29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

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1 / 5 発表日 :2019 年 6 月 18 日 ( 火 ) テーマ : 貯蓄額から見たシニアの平均生活可能年数 ~ 平均値や中央値で見れば 今のシニアは人生 100 年時代に十分な貯蓄を保有 ~ 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部首席エコノミスト永濱利廣 ( : )

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1. 電子マネー 1 の保有状況等の推移二人以上の世帯について 電子マネーを持っている世帯員がいる世帯の割合をみると 電子マネーの調査を開始した平成 2 年以降 毎年上昇しています また 電子マネーを利用した世帯員がいる世帯の割合も上昇しており 平成 2 年には約 2 割でしたが 23 年には3 割

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鳩山政権の経済政策の効果

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2 / 5 エルニーニョ現象とは 南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で 海面水温が平年より1~5 度高くなる状況が1 年から1 年半続く現象である エルニーニョ現象が発生すると 地球全体の大気の流れが変わり 世界的に異常気象になる傾向がある 近年では 2015 夏から 2016 年春に

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握の問題 執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する 複数税率の導入について 財源の問題 対象範囲の限定 中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する 施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として 簡素な給付措置を実施する つまり 低所得者対策として 給付付き税額

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

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質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

【別添3】道内住宅ローン市場動向調査結果(概要版)[1]

平成19年度分から

図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

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Microsoft Word - 消費税2

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

2018 年 2 月 15 日 長野経済研究所プレスリリース~ 消費動向調査結果 (2018 年 10~12 月調査 )~ 消費税増税時のポイント還元もあり キャッシュレス決済の利用意向は半数を超える 本調査は 県内の消費動向や消費意識に関わるテーマに対する考え方を分析するため 県内 1,000 世

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2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

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質問 1 企業 団体にお勤めの方への質問 あなたの職場では定年は何歳ですか?( 回答者数 :3,741 名 ) 定年は 60 歳 と回答した方が 63.9% と最も多かった 従業員数の少ない職場ほど 定年は 65 歳 70 歳 と回答した方の割合が多く シニア活用 が進んでいる 定年の年齢 < 従業


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税・社会保障等を通じた受益と負担について

 95年度の日本経済は、年前半の円高や公共投資の息切れ、米国経済の減速から景気回復の足取りに途中やや足踏みが見られました。しかし、その後の円高修正、政府の経済対策、金融緩和の効果から、年度後半は再び緩やかな回復基調に戻りました。

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2. 改正の趣旨 背景の等控除は 給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく 年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど 高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている また に係る税制について諸外国は 基本的に 拠出段階 給付段階のいずれかで課

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国税 地方税 保険料 社会保障給付 社会保障基金 というもうひとつの財布政府が財政目標のメルクマールとしているのは 国内の経済活動を包括するSNA( 国民経済計算 ) 統計における 中央政府 ( 国 ) と 地方政府 の財政だ この基礎的財政収支を 2020 年度に黒字化することを目標としている し

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エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

Summer 13 第 17 回厚生政策セミナー : 地域の多様性と社会保障の持続可能性 49 ます 単位は万円です 横軸が地域ブロックになっています ここで分かるのは 金融資産の額は関東地方で非常に高いということです また北陸地方も高く 両者で大体 それぞれ2,200 万円弱になっています 逆に

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

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本資料は 様々な世帯類型ごとに公的サービスによる受益と一定の負担の関係について その傾向を概括的に見るために 試行的に簡易に計算した結果である 例えば 下記の通り 負担 に含まれていない税等もある こうしたことから ここでの計算結果から得られる ネット受益 ( 受益 - 負担 ) の数値については

タイトル

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

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2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

2005 年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要 2005 年 5 月 31 日 目次 調査方法...2 ファイル交換ソフトの利用者数の実態 ファイル交換ソフトの利用率とその変化 ファイル交換ソフトの利用者数とその変化...5 ファイル交換の実態 利用されてい

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「生活意識に関するアンケート調査」(第6回)の結果

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

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減税のメリットが生じる 一方定額減税の場合は年収 600 万円を超える所得階級については ほぼ同じ減税のメリットを生じることになる 年収 600 万円に満たない所得階級については 現行制度のもとで 所得税をほとんど負担していないために 定額減税でもほとんど減税の恩恵は生じない 一方 定額給付金は 現

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TERG

政策課題分析シリーズ16(付注)

年収階層別に増税前後の消費動向をみると 低所得者ほど回復の動きが弱い 高所得者層 ( 第 5 分位 ) では 1997 年時を上回る駆け込み需要が生じたが 増税直後の落ち込みは小さく その後は緩やかに持ち直している ( 前頁図表 2) 一方 低所得者層( 第 1 分位 第 2 分位 ) については

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1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

利上げを躊躇させる英国家計債務の増大

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

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別紙2

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電気事業分科会資料

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1 / 5 テーマ : 携帯料金 4 割引き下げの家計への影響 発表日 :218 年 8 月 24 日 ( 金 ) ~ 家計全体では 2.6 兆円と消費増税負担を上回る負担減 ~ 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部首席エコノミスト永濱利廣 ( :3-5221-4531) ( 要旨 ) 総務省の統計によれば 携帯通信料の価格は低下傾向にあるものの 携帯通信料が家計支出に占める割合が拡大している 消費支出に占める移動通信通話使用料の割合は世帯主の年齢階層が若いほど高く 18 歳未満人員比率の比較的高い年収 45~1 万円世帯で移動通信通話料金割合がを上回る 移動通信通話料金が引き下げられれば 若年層や子育て世帯への恩恵がより大きくなるが 移動通信端末の利用率が低い高齢者層への恩恵が少ない 仮に移動通信通話料金が4 割安くなると 国民一人当たり2 万円強の負担軽減につながるため 家計全体では 2.6 兆円程度の負担軽減になることが示唆される 世帯主の年齢階層別の負担軽減額は 世帯主の年齢が 5 代以下の世帯では6 を上回るも 世帯主が 6 代以上世帯になるとその額が5 万円を大きく下回る 同様に 世帯主の年収階層別では 年収が 65 万円以上の世帯では6 以上となるも 年収 2 万円未満ではその額が2 万円を下回ることになる 一方 次回の消費税率 2 引き上げは家計全体で 2.2 兆円程度の負担にとどまると試算されている そこで 世帯主の年齢階層別の消費増税負担額と携帯 4 割負担軽減額を比較すると 世帯主の年齢が 5 代以下の世帯では携帯 4 割負担軽減額が消費増税負担を上回るも 世帯主が 6 代以上になると消費増税負担額が上回る また世帯の年収階層別では 年収が 35 万円以上 ~125 万円未満の世帯では携帯 4 割負担軽減額が消費増税負担を上回るも 年収 35 万円未満と 125 万円以上世帯では消費増税負担額が上回ることになる しかし 一律的な値下げとなると 家計部門への直接的な恩恵はあるが 通信会社の売り上げは値下げ分減少することが想定される 携帯料金引き下げ策は 家計支援策として議論を進めるというよりも 移動通信事業者の競争環境の整備を通じて いかに料金引き下げを図るかという観点で議論を進めるべきものと考えられる はじめに 8 月 21 日に札幌市内で開かれた講演で 菅官房長官が日本の大手携帯事業者には競争が働いていないと指摘し 携帯電話の料金は今より4 割程度下げる余地があると述べた 実際 総務省の統計によれば 携帯通信料の価格は低下傾向にあるものの 携帯通信料が家計支出に占める割合が拡大していることがわかる そこで本稿では 携帯通信料の引き下げが家計にどのような影響を及ぼすかについて分析する

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度 217 年度 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度 217 年度 21 年 =1 2 / 5 12 1 8 携帯電話通信料 4 3.5 3 2.5 消費支出に占める携帯電話料金 6 2 4 2 消費者物価 1.5 1 家計調査 ( 出所 ) 総務省 ( 出所 ) 総務省 若年層や子育て世帯には恩恵大 まず 移動通信端末は生活必需性が高まっているため これが引き下げられれば低所得世帯により 恩恵が及ぶ可能性がある また一方で 移動通信端末は若年層の使用頻度が高いことが予想されるた め 相対的に若年層の負担軽減効果が高い可能性がある 実際 総務省の家計調査を用いて 二人以上の世帯主の年齢階層別と年収階層別に分け 217 年の 消費支出に占める移動通信通話使用料の割合を算出した 結果は当然のことながら 世帯主の年齢階 層が若いほど移動電話通信料の割合が高く 料金引き下げの恩恵を受けやすいということになる ま た 年収階層別でみると 18 歳未満人員割合の比較的高い年収 45~1 万円で移動通信通話料金割 合がを上回る なお 地域別に比較すると 特に地域の違いによって大きな差は見受けられなか った 従って 移動通信通話料金が引き下げられれば 全国まんべんなく若年層や子育て世帯への恩恵が より大きくなる可能性が高い しかし 移動通信通話引き下げだと 移動通信端末の利用率が低い高齢者層への恩恵が少ないとい う特徴もある 実際に 世帯主の年齢階層別の移動通信通話料金比率をみると 7 代の利用率は 2 代 の三分の一以下となり おそらく年収階層別の年収 3 万円未満の利用率が低くなっているのも 労 働市場から退出して年金収入を頼りに生活している高齢層世帯が含まれていることが影響しているも のと推察される 3.6 世帯主の年齢階層別移動電話通信料 / 消費支出 5.4 4.8 4.5 1.8 4.5 3.5 2.5 1.5 世帯主の年収階層別移動電話通信料 / 消費支出 3.8 4.1 4.2 4.3 4.2 4.1 3.9 3.6 3.6 3.8 3.6 3.2 3.4 2.7 2.7 2.7 2.8 2.7 ( 出所 ) 総務省家計調査 217 年より作成 ( 出所 ) 総務省家計調査 217 年より作成

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以上 2 万円未満 2 万円以 全国 北海道 東北 関東 北陸 東海 近畿 中国 四国 九州 沖縄 人 / 世帯 3 / 5 1.9.8.7.6.4.3.1.6.1.3 世帯主の年収階層別 18 歳未満人員.7.7.8.8.9.8.8.8.8.6.6 5.6 5.5 5.4 4.8 4.7 地域別移動通信通話料一人当たり利用額 (217 年度 ) 5.5 ( 出所 ) 総務省家計調査 217 年 ( 出所 ) 総務省家計消費状況調査 料金 4 割引き下げで国民一人当たり2 万円以上の負担軽減だが 一方 217 年度の家計消費状況調査を用いた試算では 移動通信端末を使用していない人も含めると 一人当たり年 52,371 円を移動通信通話料に費やしていることになる これは 仮に移動通信通話料金が4 割安くなると国民一人当たり 2,948 円の負担軽減につながるため 家計全体では 2.6 兆円以上の負担軽減になることを示唆している また 217 年の総務省家計調査を用いて世帯主の年齢階層別の負担軽減額を算出すると 世帯主の年齢が 5 代以下の世帯では6 を上回るも 世帯主が 6 代以降になるとその額が5 万円を大きく下回る 同様に 世帯主の年収階層別では 年収が 65 万円以上の世帯では6 を上回るものの 年収 2 万円未満ではその額が2 万円を下回ることになる 8. 7. 世帯主の年齢階層別負担軽減額 7.2 7.4 6.4 4.2 8. 7. 世帯主の年収階層別負担軽減額 5.6 5.9 6.1 6.3 6.9 6.9 7. 7.3 7.1 5.9 4.6 4.3 3.6 2.5 2.6 2.9 1.8 ( 出所 ) 総務省家計調査 217 年を元に試算 ( 出所 ) 総務省家計調査 217 年を元に試算 負担軽減額自体は次回の消費増税負担額を上回る一方 今回の菅官房長官の発言内容については 219 年 1 月の消費増税を前に家計の負担を減らすことができる分野としてモバイル料金がターゲットになったと指摘する向きもある そこで 次回の消費増税の負担額を試算すると 前回の四分の一程度になると試算される 参考のために 97 年度と 214 年度 それから次回 219 年 1 月に2 ポイント引き上げた場合のそれぞれについてマクロの負担額を見ると 97 年度は消費税率の引上げ幅自体は2 で 負担増は5 兆円程度と

4 / 5 限定的であった しかし 特別減税の廃止や年金医療保険改革等の負担が重なり 結果的には8 兆円以上の大きな負担となった 更に 景気対策がない中で同年 6 月にアジア通貨危機が起こり 同年 11 月に金融システム不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回の消費税率 3 引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった 次回の消費増税の負担額は 日銀の試算によれば 219 年 1 月から軽減税率を導入せずに消費税率が 1 に引き上げられると 最終的に税収が 5.6 兆円増えることになる これは 一方で酒類 外食を除く食料を軽減税率の対象品目とした場合の必要な財源が1 兆円 教育無償化に伴う必要な財源が 1.4 兆円となることなどから 家計全体では 2.2 兆円程度の負担にとどまることを示唆している つまり 単純に携帯電話の料金が4 割下がれば 次回の消費税率引き上げの負担を相殺して余りある負担軽減と試算される 年代別に異なる恩恵また 217 年の総務省 家計調査 を用いて 具体的に次回消費税率引き上げが的家計に及ぼす負担額を試算すれば 年間約 4.4 万円の負担増となる そこで 世帯主の年齢階層別の消費税率負担増と携帯 4 割値下げの軽減額を比較すると 世帯主の年齢が 2~5 代の二人以上世帯では携帯料金の負担軽減が消費税率負担増額を上回るも 世帯主が 6 代以上の二人以上世帯になると 消費税率の負担額が携帯の負担軽減額を上回る 同様に 世帯の年収階層別では 年収が 35 万円未満と 125 万円以上の二人以上世帯では消費増税負担額が携帯 4 割負担軽減額を上回るも 年収 35 万円以上 125 万円未満の二人以上世帯ではその携帯 4 割の負担軽減額が消費増税負担額を上回ることになる しかし 一律的な値下げとなると 家計部門への直接的な恩恵はあるが 通信会社の売り上げは値下げ分減少することが想定されるので その分の悪影響も考慮しなければならない

5 / 5 携帯料金引き下げ策は 家計支援策として議論を進めるというよりも 移動通信事業者の競争環境 の整備を通じて いかに料金引き下げを図るかという観点で議論を進めるべきものと考えられる 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり 投資勧誘を目的としたものではありません 作成時点で 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが その正確性 完全性に対する責任は負いません 見通しは予告なく変更されることがあります また 記載された内容は 第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません