酵素実験 Ⅰ パート 1 酵素の特徴を理解するための実験 高田教員担当 アシスタント SAI 風間 寺井 大西 杉原 正箱 三野 (TA) 実験上の注意事項 白衣を着用すること 待ち時間は休憩時間ではない 生化学の教科書および酵素利用学のテキスト( 受講者のみ ) を持参すること あらかじめ実験書を熟読し分からないところを調べておくこと 手順をよく読んで よく考えて実験を進めること 冒険心と探究心を持って取り組むこと 教員やアシスタントをうまく活用すること 少人数(1 班 2-3 名 ) で取り組むため互いに協力し合うこと
酵素の性質を見るための最も簡単な実験です 1 酵素の基質特異性と反応特異性を調べるための実験 実験目的 様々な基質を用いて 未知の酵素の種類を調べる 酵素の基質特異性と反応特異性について理解を深める 実験準備 未知の酵素溶液 3 種類 酵素を緩衝液で約 10 倍に希釈してから使用すること 酵素溶液は酵素 1 酵素 2 酵素 3 とする 1% の基質溶液 6 種類の二糖類 基質溶液は A: スクロース B: マルトース C: ラクトース D: ラフィノース E: トレハロース F: セロビオース グルコース試験紙 D- グルコース量を比色法で簡易測定する試験紙である 酵素活性の測定に使用する 50mM リン酸緩衝液 (ph6.0) 酵素溶液を希釈するための緩衝液である 37 の恒温槽 メモ欄
実験手順酵素反応の手順は次のとおりである 1 各酵素(3 種類 ) 各基質 (6 種類 ) についてマイクロチューブを 1 本ずつ用意し 1% 基質溶液 500μL と酵素溶液 50μL をチューブ内で混合し 37 で反応を開始する 2 反応開始直後と約 10 分後 それぞれ酵素反応液にグルコース試験紙を 1 秒浸し余分な水分をキムワイプで取り除く 決められた秒数の後 色度表から反応開始直後と10 分後の D-グルコース量の差異を記録する 実験の結果と考察 表に-から+++までの結果を記入する この結果は酵素活性の強さに該当する D-ク ルコース量 A B C D E F 酵素 1 酵素 2 酵素 3 表の結果より 酵素 1 酵素 2 酵素 3の酵素名を考えなさい 今回用いた酵素の基質特異性と反応特異性について分かることを考察しなさい 以後の実験には Cのスクロースに最も酵素活性が高い酵素を用いること メモ欄
酵素の性質を見るための実験です 少し難易度が高くなります 2 酵素の反応時間 反応温度 反応 ph の影響を調べるための実験 実験目的 酵素反応が一次反応であることを理解する 酵素反応がさまざまな環境要因に影響されることを理解する 実験準備 酵素溶液 必要に応じて適切な緩衝液で適切な濃度に希釈して用いる 1% の基質溶液 グルコーステスト D- グルコース量を比色法で定量的に測定する試薬である 酵素活性の測定に使用する 50mM リン酸緩衝液 (ph6.0) または各種 ph(ph3 から 8 まで ) の緩衝液 反応停止液 (1M 炭酸ナトリウム水溶液 ) 反応時間を正確にするために 反応を停止させるために加える試薬 各温度の恒温槽 (30 から 80 ) メモ欄
実験手順 以下の 3 つの実験を行ってください 反応時間 : 反応時間をかえて酵素反応させ 反応時間と生産物量の関係を調べる 反応温度 : 反応温度をかえて酵素反応させ 反応温度と生産物量の関係を調べる 反応 ph: 反応 ph をかえて酵素反応させ 反応 ph と生産物量の関係を調べる 酵素反応の手順は次のとおりである 1 各条件について試験管を 1 本ずつ用意し 1% 基質溶液 200μL と緩衝液 600μL を試験管内で混合し 恒温槽内で 5 分以上保温する 2 恒温槽内で 希釈した酵素溶液 100μL を添加してよく混合し反応を開始する 3 反応後 反応停止液 100μL を添加して反応を停止する 4 酵素反応液 20μL をマイクロチューブに移す また 空きチューブに それぞれ 水 20μL( ブランク ) 0.1% グルコース溶液 20μL( 標準液 ) も用意しておく 続いてグルコーステスト 1500μL を加えて こぼれないように注意しながら混ぜる 5 37 で 5 分または室温に 15 分置いた後 1ml のセルを用いて 505nm の吸光度を分光光度計で測定する 室温で 1 時間までは退色しないので測定可能です 実験の結果と考察 表に反応条件 測定値からブランクの値を引いた値 0.1%D- グルコース標準液の値に対す る比率から求めた D- グルコースの濃度のそれぞれの結果を記入し グラフを作成する 酵素反応時間の影響反応時間吸光度濃度 0.1%D- グルコース標準液の吸光度はだいたい 0.40 ぐらい
酵素の反応温度の影響反応温度吸光度濃度 酵素の反応 phの影響反応 ph 吸光度濃度 表とグラフの結果より 酵素反応が一次反応であることを証明しなさい 酵素の最適反応温度と反応 phを答えなさい 今回用いた酵素がどのように温度の影響とpHの影響を受けたかについて分かることを考察しなさい メモ欄
酵素の触媒能力を見るための実験です 難易度が最も高くなります 3 酵素の反応速度と加速度を調べるための実験 実験目的 ミカエリスメンテン式の意味と反応速度パラメーターを理解する 酵素反応の加速度効果を理解する 実験準備 酵素溶液 : インベルターゼ ソモジネルソン法は非常に感度が高いため 基質により 酵素を 500-2500 倍に希釈して使用します 100mM 基質溶液 (2 種類 ): スクロースとラフィノース 基質は 希釈して用いる スクロースは必須 ラフィノースは興味のある人だけでよい ソモジ液 ネルソン液 還元性のある糖を比色法で定量的に測定する試薬である 酵素活性の測定に使用する 最適緩衝液 40 の恒温槽 メモ欄
実験手順 反応速度 : 基質の濃度をかえて酵素反応させ 基質濃度と生産物量の関係を調べる 酵素反応の手順は次のとおりである 1 各基質 各濃度について試験管を 1 本ずつ用意し 基質溶液 30μL と緩衝液 240μ L を試験管内で混合し 40 の恒温槽内で 5 分以上保温する 2 40 の恒温槽内で 希釈した酵素溶液 30μL を添加してよく混合し反応を開始する 3 反応後 ソモジ液 300μL を添加して反応を停止する 4 別にブランク用 スタンダード用の試験管を 1 本ずつ用意する ブランク用には緩衝液 300μL ソモジ液 300μL を試験管内で混合 スタンダード用には 0.004% グルコース溶液 300μL とソモジ液 300μL を試験管内で混合しておく 5 すべての試料を 10 分間沸騰水中におく その後水において冷やす 次に ネルソン液 300μL を加えて混合したのち 水 2.1ml を加えてよく混合する その後 660nm の吸光度を分光光度計で測定する 実験の結果と考察表に基質濃度 ( 終濃度 ) 同逆数 測定値からブランクを引いた値 同逆数のそれぞれの結果を記入し X 軸に 1/[S] Y 軸に 1/ 吸光度をとり Line-Weaver Burk プロットを作成する 酵素の反応速度基質名 : スクロース [S] 1/[S] 吸光度 1/ 吸光度
酵素の反応速度基質名 : ラフィノース ; 実施した人のみ [S] 1/[S] 吸光度 1/ 吸光度 グラフからミカエリスメンテン定数 (Km) 最大反応速度(Vmax) 触媒回転数(kcat) 触媒効率 (kcat/km) の各反応速度パラメーターを求める ただし 最大反応速度は吸光度ではなく 反応速度 (μmol/min mg) に換算すること kcat は 1/s で求めること 基質名 Km Vmax kcat kcat/km 計算に必要な情報分子量酵素濃度 ( 原液 ) 270,000 1.0g/ml D-グルコースの分子量は 180 で計算する つぎに 昨年度の水素イオンを触媒に用いたスクロースの加水分解反応速度定数 (k) と今回 の結果 (kcat) を比較し 酵素反応の加速度倍率を計算する (40 で比較する ) 反応速度定数 (1/s) 加速度倍率 水素イオン触媒 5.2 10-4 1 酵素触媒
表の結果より 基質の違いによる基質親和性(Km) と触媒効率 (kcat/km) を比較し考察しなさい ( ラフィノースで実験を行った人のみ ) 酵素反応における各反応速度パラメーターの意味と重要性を説明しなさい 酵素反応の加速度効果について 分かることを考察しなさい メモ欄
酵素実験 Ⅰ パート 2 遺伝子解析技術で食品検査を行う実験
1 食品に存在する微生物から染色体 DNA を抽出する実験 実験目的 微生物から染色体 DNA を抽出する方法を知る 実験準備 食品試料 任意の 1 種類について 保存前 保存後の試料を各自で用意 DNA 抽出試薬 AP1 AP2 AP3/E AW AE の各溶液 細胞破砕スピンカラム QIAshredder Mini Spin Column ( 紫色 ) DNA 結合スピンカラム DNeasy Mini Spin Column メモ欄
実験手順 1. それぞれの試料約 100mg に AP1 200µl を加え ボルテックスで強く混ぜる 65 で 10 分間 ( 途中に 2,3 回ほど転倒混和 ) 保温する 2.AP2 65µl を加え 転倒混和後 氷中で 5 分間保温する 遠心 (14000rpm 5 分間 ) し 上清を QIAshredder Mini Spin Column ( 紫色 ) にのせる 3. 遠心 (14000rpm 2 分間 ) し 下のチューブに回収した液を新しいマイクロチューブに移す ( 底の沈殿には触れないように ) 4.1.5 倍のバッファー AP3/E を加えまぜる DNeasy Mini Spin Column にのせる 5. 遠心 (8000rpm 1 分間 ) し 回収液を捨てる カラムを新しいマイクロチューブにのせ AW 250µl を加える 6. 遠心 (8000rpm 1 分間 ) し 回収液を捨てる さらに遠心 (14000rpm 2 分間 ) し 新しいマイクロチューブにカラムを乗せる 7.AE 100µl を加え 5 分間おく 遠心 (8000rpm 1 分間 ) し DNA 溶液を回収する 8. 抽出した染色体 DNA の濃度と純度を測定する 実験の結果と考察 染色体 DNA の濃度と純度を記録する 保存前の食品 保存後の食品 280nm の吸光度 260nm の吸光度二本鎖 DNA の濃度 (µg/ml) 純度 (280nm/260nm) 表の結果より DNA 量を 260nm で測定し 280nm との比率で純度を知ることができる理由 DNA 量だけではなぜ微生物検査として不十分なのかを考察しなさい
2 食品に存在する微生物の遺伝子を検出する実験 実験目的 リアルタイム PCR 法を用いた微生物の遺伝子を定量的に検出する方法を知る ( 検出した遺伝子の配列を読むことで食中毒菌や病原菌を同定することもできる ) 実験準備 抽出した染色体 DNA 測定した DNA 濃度をもとに 50ng 程度を使用する 原核微生物の 16srDNA を増幅するためのプライマーセット フォワード リバースのプライマーを各 8pmol ずつ使用する リアルタイム PCR 用の試薬ミックス SYBR Green I を含む PCR 反応液および上記プライマーのミックスで PCR チューブに分注済み PCR チューブ 0.2ml 容量の PCR 用チューブ キャップに文字を書かないこと キャップをきれいに拭くこと メモ欄
実験手順 1. 各試料の DNA 濃度が 4-8µg/mL になるように滅菌水で希釈した DNA 溶液を調製す る 2. リアルタイム PCR 用の試薬ミックス (2 倍濃度 ) の入った PCR チューブに希釈した DNA 溶液 10µL を加え 手でこついて軽く混ぜる キャップには何も書かず 横に油性ペ ンで試料名を記入すること キャップをきれいに拭いておくこと 3. 次のような条件でリアルタイム PCR を行い 増幅曲線と融解曲線の結果を得る 95 30 秒 1 サイクル 変性のステップ 95 5 秒 40 サイクル qpcr( 増幅曲線 ) のステップ 60 30 秒 95 15 秒 1 サイクル Tm( 融解曲線 ) のステップ 60 60 秒 95 15 秒 実験の結果と考察 試料の CT 値 ( 閾値サイクル ) と Tm 値を記録する 保存前の食品 保存後の食品 CT 値 ( サイクル ) Tm 値 ( ) 表の結果より CT 値から遺伝子の量が調べられる理由を考察しなさい Tm 値から遺伝子の数 つまり微生物の数を推定できる理由を考察しなさい
実験全体の標準的なスケジュール 4 月 8 日 実験講義 準備 難易度 4 月 11 日 酵素実験 : 基質 反応特異性 1 4 月 12 日 酵素実験 : 酵素の諸性質 3-4 4 月 13 日 酵素実験 : 酵素の反応速度 高田は 講義で 4 コマ目不在です 5 4 月 15 日 遺伝子実験 :DNAの抽出 3 4 月 18 日 遺伝子実験 : 微生物の検出 2