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付録 -7 諸外国における品質保証 品質保証に関する各国の考え方は, 規制当局などからの要求, 事業主体の方針など各国の事情や処分計画の進捗状況に応じて異なっている 以下に, カナダ, スイス, スウェーデン, ドイツ, フィンランド, フランス及び米国 (WIPP と YMP) における品質保証の事例を概説する なお, ここでは, QM 及び QA という略語は 品質マネジメント(Quality Management) 及び 品質保証 (Quality Assurance) を指すものとする (1) カナダカナダでは, カナダ規格協会 (Canadian Standard Association:CSA) が品質に関する主要な規格 基準を策定しており, そのうち,CSA-N286.0-92 が原子力発電所の全体的な品質保証計画の要件を規定し (CSA,1998), また N286.1 から N286.7 シリーズによって, カナダ型重水炉 (CANDU), 研究炉及びその他原子力施設すべてのライフサイクルに対応する品質保証計画の要件を規定している そして品質マネジメントシステム (Quality Management System: 以下, QMS という) の要求事項は ISO9001:2000 と整合している カナダにおける原子力利用全体にわたる規制当局であるカナダ原子力安全委員会 (Canadian Nuclear Safety Commission:CNSC) は, 産業界の品質適合性が保証されているかどうかをより厳密に精査するようになってきている これに対し, 産業界も規制及び品質への適合に対し, より積極的に取り組んでいる また,QMS における文書のレビューは, 品質マニュアル, プロジェクト計画, 環境アセスメント, 建設 操業 廃炉にかかわる許認可資料, 設計資料に及んでいる なお, 品質保証にかかわる課題として, 品質保証マニュアル類が多すぎることや責任の所在が曖昧であることなどを挙げ, プロジェクトの遅れや操業許可期間の縮小, コスト増などに繋がることがないよう効率化に向けての検討が現在進められている (Nuttall,2003) (2) スイススイスでは規制側が要求する放射性廃棄物処分に関する品質保証規定はなく, 実施主体である Nagra が処分事業に見合った独自の QMS を構築し, 運用している QMS を規定した文書としては, 品質マネジメントハンドブック (QM Handbook) 及び品質マネジメントガイドライン (QM Guidelines) を策定している これらは ISO 規格を参考にして作成されており, 将来的には利害関係者 ( 国民, 共同研究機関 ) からの要請を想定し,ISO の認証を受けることが予定されている (McKinley, 2003) Nagra 全体の品質保証を管理する組織として, 品質マネジメント室を置き, その長である品質マネージャーが品質保証活動の中心的な役割を担っている また各部門について品質マネジメントを担当する QM コーディネーターを選任し,QM 調整グループを構成している QMS の運営においては, プロジェクトの規模, 期間及び予算等を勘案して,1P-1( 重要なプロジェクト )2P-2( その他のプロジェクト ) の二つに分類し,P-1 プロジェクトについてのみ事前のプロジェクト計画書作成を要求している またリスク管理の観点から, プロジェクト ( サブプロジェクトも含む ) を1 Q-1( リスク : 平均 ~ 高い ),2Q-2( 平均 ~ 低い ) 及び3Q-3( 無視可能 ) の 3 階級に分け, レベル付 -24

別に要求する文書化の品質の程度が異なっている (3) スウェーデンスウェーデンでは, 規制当局であるスウェーデン原子力発電検査局 (Statens kärnkraftinspektion: SKI) が放射性廃棄物処分に対する品質保証を規定している 実施主体である SKB は, 品質保証システムとして ISO9001:1994, 環境の分野で ISO14000 の認証を受けている また SKB では, プロジェクト管理における品質には,1 正しい方法で行う 2 正しいことを行う の二つの側面があると考えている 正しい方法で行う ための方策として, プロジェクトの模範をプロジェクトハンドブック (Project handbook) に規定し, プロジェクトの組織, 決定事項, プロジェクト計画書, 活動計画書, 品質計画書及び監査等の概要を説明している また, 正しいことを行う ために, プロジェクトにかかわる要員の力量や経験, 計画書, 研究開発プログラム及び内部 外部レビュー等を定めている (Andersson,2003) 現在進行中のサイト選定プロセスについて,SKB は, プログラムの策定から, 調査の計画立案と実施, 調査結果に基づく処分場の設計や安全評価までのすべてを品質保証の対象としている これは, 調査で得られたデータや結果がどのように用いられたか, また何に基づいて決定がなされたかについて十分な追跡性を確保することが不可欠であると考え, 文書化と文書管理のための適切な手続きを規定している (SKB,2000b) SKB のデータ管理とデータベース (SICADA) の使用については, いくつかの基本原則が定められている まず品質が保証されたデータのみ SICADA に登録することが可能であり, 登録された情報は SICADA の品質保証手続きに従って保持される また, 判断や解析, 調査サイトのモデリングに用いるデータは SICADA からのデータのみとされている データの取り出しをログファイルに記録することにより, オリジナルのデータソースから最終結果までの一連の処理に関する追跡性を保証することができるとしている (SKB,2000b) (4) ドイツドイツでは, 地層処分にかかわる機関のうち, 実施主体であるドイツ連邦放射線防護庁 (Bundesamt für Strahlenschutz:BfS),BfS との契約により実質的な作業を行うドイツ廃棄物処分施設 運転会社 (Deutsche Gesellschaft zum Bau und Betrieb von Endlagern für Abfallstoffe mbh:dbe) 及び地層処分の地質環境科学を担当するドイツ連邦地質学 資源研究所 (Bundesanstalt für Geowissenschaften und Rohstoffe:BGR)3 機関がQMSを構築し適用している QMSはISO9001 及び規制当局の規格 KTA1401 への適合を要件としている また, 文書体系のうち品質マネジメントマニュアル (QM-Manuals) には 何を, なぜ といった要求を定義し, 品質マネジメント手引き書 (QM-Measures) には いつ, どこで, どのように といった実施方法を規定している QMS の基本原則は,1 顧客の要件に対する高い品質水準の製品実現,2 組織の全部署における過誤防止,3 全職員による品質保証であり, 許認可申請及び許認可権を有する機関とのコミュニケーションのための文書化が最も重要な目的と考えられている なお, 品質マネジメントは, 品質保証の計画 (Quality plan), 手引き (Quality guidance), 評価 (Quality assurance) に区分して実践している (Kühn,2003) 付 -25

(5) フィンランド当初, フィンランドにおける放射性廃棄物処分にかかわる研究開発及び技術的設計 (research, development and technical design:rtd) の品質保証は, 原子力発電事業者であるテオリスーデン ヴォイマ社 (TVO) 等の基準及び要求事項に基づいて実施されてきた その後, 規制当局である STUK から品質保証に関する記述の記載が要求され,1996 年に実施主体である Posiva が設立されたことに併せて,ISO9001 を基本にした QMS の開発が進められた 現在は ISO9001 の 2000 年版への更新を済ませるとともに環境分野の ISO14000 の認証も取得している QMS は Posiva のすべての活動をカバーしており,RTD プロジェクトのマネジメント, 特にサイト調査にかかわる原位置試験の手引き書に重点がおかれている QMS 文書の体系は, 品質方針等を記述した品質保証ハンドブック (QA Handbook), 実践的な手引き書 (Procedures) 及び Posiva 職員による現地調査等のための指導要領 (Instructions) という構造とし,QMS 実践にあたっては, 職員の強力な取組み, 職員の教育 訓練, 早い段階での規制当局との議論, 外部監査の活用, 品質保証に優れた職員の昇給等を重要としている すべての研究成果は, 商取引 契約等にかかわる例外を除き積極的に公開することとしている また, 現在 Posiva は STUK からの要求も踏まえた 適切な安全文化 (A good safety culture) 構築方策の検討にも取り組んでいる(Vira,2003) (6) フランスフランスの処分事業実施主体であるフランス放射性廃棄物管理機関 (Agence nationale pour la gestion des déchets radioactifs: 以下, ANDRA という) は独自の QA システムを 80 年代に精緻化し, 規制への適合を図っている ANDRA は現在 ISO9001:2000 の認証を取得するとともに,1 環境モニタリングに関する規制側の要求への適合,2 環境への取組み姿勢を印象づけるうえでの有益性という 2 点を考慮し,ISO14000 の認証も取得している ANDRA の QA システムの構造は,1 製品実現と2インフラ, 物流資源の 2 種類のプロセスに区分されている 製品実現プロセスには, 廃棄物管理及び施設設計の概念, 公衆の意見聴取とコミュニケーション, データ取得, 安全と環境等が含まれる インフラ, 物流資源プロセスには, 人的資源, 財務 購買管理, 情報システムが含まれる (Faucher,2003) (7) 米国 WIPP WIPP の品質保証は,EPA が定めた連邦基準 40 CFR 194 において,USNRC が原子力施設の安全管理について定めた連邦基準 10 CFR Part 830(USNRC,2001e) と米国機械学会 (American Society of Mechanical Engineers: 以下, ASME という) が原子力発電所建設のために策定した規格 NQA-1 ( 原子力施設のための品質保証要求事項(Quality Assurance Program Requirements for Nuclear Facilities) ;ASME,1989a) 等の要求事項に従うことを規定し, このうち,NQA-1 が基本的な要件とされている これらの要求事項を満足するため DOE は, 主に NQA-1 に基づき品質保証計画解説 (Quality Assurance Program Description) を策定し, 品質保証の実施方法, 手順や文書の位置付け 役割の概要を示している ただし,NQA-1 は最終処分場の設計や建設に対しては適切な規格であるが, サイト選定やサイト評価及び様々な形態の予備的な調査には適していない さらに, 当初 NQA-1 付 -26

には品質保証のソフトウェアやセーフティーケースの一部である超長期の予測解析の考え方に関する定義がなされていなかった ( 現在はコンピュータ ソフトウェアの要求事項として NQA-2a (ASME,1990), 高レベル放射性廃棄物処分におけるサイト評価のための科学 技術情報の収集に関する要求事項として NQA-3(ASME,1989b) が追加され, これらへの適合性も考慮されている ) したがって,DOE を技術的に支援するサンディア国立研究所 (Sandia National Laboratories: 以下, SNL という) は核廃棄物管理プログラム (Nuclear Waste Management Program) の一環として, 適用性を高めたより具体的な品質保証計画 (Quality Assurance Program: 以下, QAP という) を作成し, 実際の品質保証を行ってきた DOE は品質保証計画書 (Quality Assurance Program Document) を提出し,EPA の評価を受けている この計画書は,ISO9000 シリーズの要求事項とも多くの点で整合するとともに, 廃棄体定置 貯蔵 輸送といった操業, 設計管理, 調達, 検査 試験における性能の要求事項, 検査における評価の要求事項, サンプル管理及びソフトウェア等の要求事項を定めている WIPP の品質保証システムは,1970 年代のサイト特性評価段階から, 事業とともに進展した規制に応じて段階的に整備されてきた このシステムでは, T2R3 と呼ばれる1 追跡性 (Traceability), 2 透明性 (Transparency),3 客観性 (Review),4 再現性 (Reproducibility),5 検索の容易性 (Retrievability) の確保を基本としている (8) 米国 YMP YMP に関しては,DOE の民間放射性廃棄物管理局 (Office of Civilian Radioactive Waste Management: 以下, OCRWM という) が ASME の規格 NQA-1 に基づき 品質保証要件と解説 (Quality Assurance Requirement & Description) を作成し, 品質保証の要件を定義している この要件は,1 規制対応文書 (Regulatory documents),2 実施対応文書 (Commitment documents),3 手引き書 (Guidance documents) の三つに分類され, このうち, 規制対応文書では連邦基準 10 CFR Part 50 App.B が最も重要なものとなっている USNRC からの許認可取得に関する要求事項として, 安全解析報告書に, 安全性に重要なすべての構造物, システム, 構成要素及び廃棄物の隔離に重要なバリアシステムの設計 評価に関する品質保証計画を記述するよう規定されている (USNRC,2001f) 実施対応文書の中心は NQA-1 であり,OCRWM によって効果的な QAP の策定と実施を課せられている 手引き書には QAP の策定に資するより具体的な情報が規定されており,ASME の規格 NQA-2 (ASME,1989c) 及び NQA-3 がそれにあたる また,QAP の策定において,YMP のサイト特性調査の QAP に加え,DOE や DOE との契約のもとに業務を実施する組織 (Management and Operating Contractor:M&O) 及び SNL それぞれの QAP が作成され, 多層の品質保証体系が構築されている YMP における品質保証は, 基本的に, 許認可の取得で必要となる情報, データ, 条件, 意思決定等にかかわるすべての記録に対し追跡性を確保することを目的としている 追跡性を有するこれらの記録は, 許認可取得だけでなく, 事業にかかわるすべての利害関係者 ( 規制当局, 関係する州, 地域住民等 ) にも役立つものと考えられている 付 -27

付録 -8 諸外国における回収可能性に関する規制等の現状 回収可能性に関する各国の考え方は, 法律による規定, 規制当局による要求, 実施主体の方針な ど各国の事情や処分計画の進捗状況に応じて異なっている 以下に, 規制上, 回収可能性に言及しているカナダ, スイス, スウェーデン, フィンランド, フランス及び米国の状況を概説する (1) カナダカナダの規制主体であるカナダ原子力管理委員会 (Atomic Energy Control Board:AECB) は, 実施主体に対し, 性能評価に用いた入力データが処分場システムの環境を十分に表したものであることを閉鎖前に確認すること, 及びこの間の回収可能性について技術的な裏づけを求めている (AECB, 1985) これに対し2002 年に実施主体として設立された核燃料廃棄物管理機関 (Nuclear Waste Management Organization: 以下, NWMO という) は, カナダの処分概念に適用できる回収技術の検討を行っている (NWMO,2002) (2) スイス規制当局であるスイス連邦原子力安全局 (Hauptabteilung für die Sicherheit der Kernanlagen:HSK) は, 廃棄物の回収について, その費用は高額となるものの実現は可能であるとしたうえで, 廃棄物の回収や処分場の監視及び管理 ( 修復 ) を容易にするためにとられる措置が処分場の安全性を損なうことに至ってはならないと規定している (HSK and KSA,1993) また, 第 5 章の 5.4 モニタリングでも述べたように, スイスの EKRA は 長期間監視付地層処分 の概念を提案している EKRA は, この概念において実際に処分を行う前に試験施設やパイロット施設を建設し, 人工バリアとニアフィールドの長期モニタリングと実証試験を行うことに加え, 廃棄物の大部分を処分する主要施設については操業期間にわたり回収可能性を容易とする設計を行うことを勧告している (EKRA, 2000) これに対し Nagra は,EKRA の勧告を受け, 回収可能性の維持を検討するとともに, 長期間監視付地層処分 の概念を考慮した回収方法の検討を行っている (Nagra,2002b) (3) スウェーデン規制当局である SKI 及びスウェーデン放射線防護機構 (Statens strålskyddsinstitut:ssi) は, 各々の規制において, 処分場からの廃棄物回収を容易にするための措置を講じることは可能であるとし, その措置による処分場バリア性能への影響を評価し報告するよう求めている (SKI,2002;SSI,1998) これに対し実施主体である SKB は, 一定期間経過後に廃棄体を何本か取り出して, 処分場のシステム構成要素の性能を確認するため, 本格操業の前に全処分量の約 10% を回収可能な状態で処分する ( 初期操業 ) ことを計画している (SKB,2001) 付 -28

(4) フィンランドフィンランドの 使用済燃料処分の安全性に関する政府決定 (1999) では, 処分場は廃棄体の回収可能性が維持できるように計画されなければならないと規定している 規制当局である STUK は, 詳細安全規則 (STUK,2001) において, 人工バリアが放射性物質を完全に閉じ込めることが要求されている期間, 回収可能であることを規定している 実施主体である Posiva は, 処分場の閉鎖の後でも回収は長期にわたって可能であるとしている (Saanio and Raiko,1999) (5) フランス放射性廃棄物管理研究法 (LOI n o 91-1381 du 30 Décembre 1991 Relative aux Recherche sur la Gestion des Déchets Radioactifs ) において, 地層処分は回収可能であることが条件とされている また, 国家評価委員会 (CNE) は, 回収可能性を確保するためにとられる手段が処分場の安全性を損なわないこと, 回収可能性の維持は明確に規定された時間の枠内で考えるべきであることを求めている (CNE,1998) 実施主体である ANDRA は, 地層処分の可能性について検討を行ううえで, 可逆性 (reversibility) を段階的に取り扱うこととし, このための回収技術の実証試験を 2006 年以降にビュール地下研究所で行うことを計画している (ANDRA,2001a) (6) 米国放射性廃棄物政策法 (Nuclear Waste Policy Act(1987)) では,1 住民の健康, 安全, 環境等にかかわる理由, 又は2 使用済燃料中の経済的に重要な含有物の回収 ( 再処理 ) の理由から, 処分場は, 操業期間中に使用済燃料を回収できるように設計, 建設されなければならないと規定している 規制当局である USNRC が策定した YMP の安全基準 (10 CFR 63) では, 性能確認及び USNRC による審査のために必要な期間として, 廃棄体の定置作業開始から 50 年間は回収が可能となるように処分場を設計することを規定している (USNRC,2001b) 実施主体である DOE は, 閉鎖前の性能確認及びモニタリングの期間を 300 年間まで延長できるものとし, その間の回収可能性を維持することとしている (DOE,2002) 付 -29