テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

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税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

コピー又は web からダウンロードしてご使用ください 答案用紙 Chapter1 問題 1 個人とみなされる納税義務者 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 遺贈財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額 2 生前贈与加算される贈与財産の額の計算 ( 単位 :

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

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2011年税制改正のポイント

Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

おき 太郎様 Inheritance Report 相続診断書 税理士法人おき会計 平成 28 年 7 月 20 日作成

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

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2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

ラリーマン 相続税の申告は? 45 相続税の申告はどのようにすればよいのでしょうか 相続が開始したことを知った日 ( 通常は被相続人が死亡した日 ) の翌日から 10 か月以内に 被相続人の住所 地の所轄税務署に申告し 相続税を納付する必要があります 申告書を提出する人が 2 名以上いる場合は 共同

スライド 1

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

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2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

Microsoft Word 常発041号 改正相続税法等の周知について(・

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

特集 相続税の課税方式の改正が検討されています 今までの相続税の常識が 通用しなくなる??? 相続税の課税方式の変更を検討 * 平成 20 年 1 月 11 日 財務省発表の 平成 20 年度税制改正要綱 より ( 前略 ) この新しい事業承継税制の制度化にあわせて 相続税の課税方式をいわゆる 遺産

暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

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相続税 贈与税の基本がよくわかる! 誰が相続人になるの? 税額はどのようにして求めるの? 土地 建物の評価はどうするの? 住宅取得資金の贈与は最大 3,000 万円が非課税に? 教育資金や結婚 子育て資金の贈与は非課税に? 新しくできる配偶者居住権ってどんなもの? etc.

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

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第 5 章 N

cf 遺贈 : 遺言によって財産が移転 遺贈者 贈与税の対象となる贈与 死亡時 遺言 一方的な意思表示 受遺者 相続税 財産を取得した受贈者 ( 個人 ) にかかる税金 贈与者 財産 受贈者 個人 個人 贈与税 法人 個人 所得税 ( 一時所得か給与所得 ) 個人 法人 法人税 2

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

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平成19年12月○日

金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

課税遺産総額 = 各人の課税価格 ( ア ) の合計額 - 遺産に係る基礎控除額ウ相続税の総額の計算 1 課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定し 各人ごとの取得金額を計算する 2 1に税率をかけ 各人の税額を合計する (= 相続税の総額 ) エ各人の相続税額の計算相続税の総

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

一戸建ての自宅を所有している人のデータ 東京都内やその近郊など路線価の高い宅地に一戸建ての自宅を所有し その他に預貯金や有価証券を保有している人の相続税シミュレーションになります 路線価が高いと自宅の敷地の面積が広くなくても その宅地の評価額は高額になりますので この宅地に対して小規模宅地等の特例が

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

叔父から財産の贈与(1~3) を受けた場合 1/1 12/31 2/1 3/15 相選養続択与子贈時届贈精出縁与算書与 1組課提2 税出3 暦年課税相続時精算課税 養子縁組前の贈与 1については 暦年課税により贈与税額を計算し 養子縁組以後の贈与 2 及び 3は 相続時精算課税により贈与税額を計算し

平成 22 年 12 月 7 日 資料 ( 資産課税 )

1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

20年度「応用課程・ビデオ問題」

(2) 課税状況の累年比較 申告状況 課税価格相続税額税額控除被相続人の数相続人の数金額人千円千円千円人 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 8, ,371,256 50,659,924 15,868

(3) 年金所得者公的年金等の収入金額が400 万円以下であり かつ その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20 万円以下である場合には 確定申告の必要はありません また 上記 (2) 又は (3) に該当する方であっても 医療費控除や住宅借入金

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引


相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

配偶者がいる人の一次相続と二次相続のデータ 被相続人に配偶者がいる一次相続と 配偶者がいない二次相続の相続税シミュレーションを行います 配偶者の税額軽減は その節税効果が大きいために一次相続で相続税を大幅に減額することができますが 次の二次相続では想定外の相続税が発生することがあります 配偶者がいる

時価で譲渡したものとみなされ所得税が課税され かつ その所得税は相続税の課税価格の計算上被相続人の債務として控除されていることにより 所得税と相続税の負担の調整は済んでいますので この特例の適用は受けられません 2 取得費に加算される金額平成 26 年度の改正前は 相続財産である土地等の一部を譲渡し

平成23年度税制改正の主要項目

Japan Tax Newsletter

相続税

平成16年版 真島のわかる社労士

である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

Ⅰ ワンルームマンション経営と節税 税務署 確定申告 税金還付 20 万 ~30 万円 ワンルーム家賃収入ローン元利返済サラリーマンマンション A 氏 1 戸所有月 70,000 円月 60,000 円 銀行 年 30,000 円 月 8,000 円 固定資産税 管理会社 1 ワンルームマンション投

相続税に関するチェックリスト

例題 1 下記の事項につき ア ~ エのうち正しいものを 1 つ 選んでください 所得税および住民税の生命保険料控除 地震保険料控除についてア. 平成 23 年 12 月締結契約で 一般生命保険料の年間正味払込保険料が75,000 円の場合 この契約に係る所得税の生命保険料控除額は 38,750 円

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4.住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合編

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

1. 贈与税のながれ はじめに行う作業 1 データの 新規追加 2 税理士登録 3 受贈者登録 4 贈与者登録 贈与税申告書の作成 5 贈与税申告書 の作成 その他の帳票作成 印刷 6 税務代理権限証書 の作成 印刷 2


所令要綱

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

原稿4.xls

服部法律事務所ニュース 遺言書について その4(相続税)

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

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1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

例えば毎年 子供 2 人に対し110 万円づつ贈与し続けるのであれば 10 年間で2,200 万円の財産を無税で子供に移すことができます 贈与税の基礎控除額を上手く活用する方法だけでも 計画的に行うことがどれだけ大切なのかご理解いただけると思います とにかく財産を所有している人が高齢になればなるほど

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自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人のデータ 自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人の 法定相続人の数と相続財産および債務のデータから相続税を試算します 賃貸マンションについては全室が賃貸用かどうか 駐車場については舗装がしてあるかどうかで評価額が違ってくることがあります また

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

2.配偶者控除の特例の適用を受ける場合(暦年課税)編

Transcription:

はじめに 相続税も贈与税も従来は一握りの資産家だけの税金と考えられてきましたが 今日では 一般の人にとっても無関心ではいられない税金になってきました そこで本書は 相続税 贈与税の計算の基本を学んでいただくことを目的に作成しました 本書は 申告実務 財産評価実務の 2 冊で構成されていますが 申告実務では 相続税 贈与税の税額計算の基本を一通り学習することを狙いとしました また 財産評価実務では 相続税 贈与税を計算する上で最も重要な財産の評価について学習することとしています 本書を学習すれば 十分な相続税の計算の基礎知識が身に付くと思います よく 相続対策 ということがいわれますが 正確な知識なくして対策を練ったのでは 十分な対応はできません より効率的な対策のためにも また実際に相続が起きたときにも税務のスペシャリストとして対応できるように 本書で相続税 贈与税の基本をしっかり身につけて下さい 本書に付されている条文番号について 相続税 贈与税の学習をする上で 実際に条文に目を通すことは 大変よい勉強になります そこで 本書では 基本的に重要な条文番号のみタイトルの脇に示しております 実際に条文を引いてみたい方は 市販の相続税法法規集等を購入の上 ご使用下さい 正式な条文名 略 称 相 続 税 法 法 租税特別措置法 措 法 民 法 民 相続税法基本通達 基 通 租税特別措置法通達 措 通 財産評価基本通達 評 通 相続税関係個別通達 個 通

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相続分 22 第 3 章相続税の課税原因と課税対象者 1 相続税の課税原因 30 2 相続税の課税対象者 34 3 相続に伴う財産分割 申告納付までの一連の流れ 37 4 具体的な遺産の分割手続と分割方法 37 第 4 章相続税が課税される財産 1 相続税が課税される財産の概略 40 2 本来の相続財産 41 3 みなし相続財産 42 第 5 章相続税の非課税財産 1 非課税財産の概略 60 2 非課税財産の種類 60 第 6 章小規模宅地等の減額 1 小規模宅地等の減額の概要 66 2 特例対象宅地等 67 3 申告要件 70 4 減額割合が 80% となる小規模宅地等 71 5 減額割合が 50% となる小規模宅地等 74 6 減額金額の計算 74 第 7 章債務控除 1 債務控除の概略 88 2 債務控除の適用対象者及び控除される債務等の範囲 88 3 債務 葬式費用の種類 90 第 8 章相続税の計算 (Ⅰ) 各人毎の課税価格の計算 1 相続税の計算の流れ 96 2 課税価格の計算方法 97 3 遺産が未分割の場合の課税価格の計算 102 4 負担付遺贈 105 第 9 章相続税の計算 (Ⅱ) 相続税の総額の計算 1 相続税の総額の計算の概略 107 2 相続税の総額の計算方法 107

第 10 章相続税の計算 (Ⅲ) 各人毎の納付税額の計算 1 各人毎の納付税額の計算の概略 111 2 各財産取得者毎の算出税額の計算 112 3 相続税額の 2 割加算の制度 115 4 税額控除 118 5 非上場株式等の相続税の納税猶予 131 第 11 章相続税の申告と納付 1 相続税の申告手続 141 2 納税地 143 3 納付手続 143 4 申告期限内に申告が行われなかった場合 161 第 12 章贈与税 1 贈与税の課税対象者 166 2 贈与税が課税される財産 167 3 贈与税の非課税財産 171 4 贈与税の計算の流れ ( 暦年課税 ) 174 5 贈与税額の計算 ( 暦年課税 ) 174 6 贈与税の配偶者控除 176 7 非上場株式等の贈与税の納税猶予 181 8 贈与税の申告と納付 186 第 13 章相続時精算課税制度 1 相続時精算課税制度の概要 192 2 適用対象者 192 3 適用手続 193 4 適用対象財産 194 5 贈与税額の計算 194 6 相続税額の計算 196 7 相続時精算課税における相続税の納付義務の承継等 200 8 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例 202 第 14 章直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税 1 内容 207 2 適用要件 207 3 住宅資金非課税限度額 208 第 15 章直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税 1 内容 209 2 適用要件 209 第 16 章直系尊属から結婚 子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税 1 内容 211 2 適用要件 211 記入例編

第 1 章相続税 贈与税とはなにか 本章のねらい 相続税法は所得税法や法人税法とは異なり 相続税法という一つの税法の中に 相続税と贈与税という二つの税目が規定されており 一税法二税目 と呼ばれています このうち 相続税は人の死亡によって残された資産を亡くなった人 ( 被相続人 といいます ) の遺族等が継承した場合に課される税金です これに対し 贈与税は人が生きている間に他の人に財産を贈与した場合に課される税金です それでは 何故相続税 贈与税は課税されるのでしょうか また 相続税と贈与税はどのような関係にあるのでしょうか 1 相続税が課税される理由 私たちは毎年の所得に対して所得税を負担していますが 所得税を納付した後の部分については 一部を消費し 残りの部分については蓄財に回すこととなります 相続税は この蓄積された財産について 人の死亡を機会に課税するものですが 相続税が課される主な理由は以下のとおりとなります 1 所得税の清算説この説は その人の一生の所得税を死亡に際して清算しようとするものです 即ち 特定の人が生前に所得税の非課税制度などの恩典によって蓄えた財産のうち死亡によって遺族等に移転した部分について 課税上の清算を行おうとするものです 2 富の再分配説 この説は 富める人から相続税という税金を徴収することによって 特定の人に集中した富を社会的に還元し 富の再分配を図ろうとするものです 1

2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 1 相続税の課税最低限相続税は 所得税の清算 富の再分配を目的として課される税金です 従って 遺産が少額であれば相続税が課税されることはありません それでは どれくらいの遺産額があれば 相続税が課税されるのでしょうか 相続税には 課税最低限が定められており 遺産が次の算式で計算した額 ( 遺産に係る基礎控除額 ) 以下である場合には 相続税は課税されないこととなっています すなわち 相続税は被相続人の遺産総額が 遺産に係る基礎控除額を超える場合において その超える部分について課税されるということです 遺産に係る基礎控除額 =30,000 千円 +6,000 千円 法定相続人の数 ( 参考 ) 平成 26 年 12 月 31 日以前の相続 遺産に係る基礎控除額 =50,000 千円 +10,000 千円 法定相続人の数 法定相続人の意味は後述しますが ここでは一般的な相続のケースとして 配偶者と子が相続した場合の課税最低限について見ていきます 相続人の構成 配偶者 ( 子 ) のみ 子 1 人 子 2 人 子 3 人 子 4 人 子 5 人 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 6 人 遺産に係る基礎控除額 36,000 千円 42,000 千円 48,000 千円 54,000 千円 60,000 千円 66,000 千円 2 相続税の税額遺産の額が 遺産に係る基礎控除額 を超える場合は 相続税が課税されることとなります 相続税の税率は超過累進税率が採用されており 遺産の額が大きくなればなるほど高い税率による税金が課される仕組みとなっています 詳細は 第 9 章相続税の計算 (Ⅱ) 第 1 0 章相続税の計算 (Ⅲ) で学習します 2

3 贈与税が課税される理由 人の死亡によって遺産が移転するときに相続税が課税されますが この負担をできるだけ軽減しようとして 生前に配偶者や子に財産を贈与することが考えられます このような方法が認められれば 相続財産をゼロにしたりあるいは少額に押さえることができ 相続税の課税を回避することが可能となります しかし このような方法を認めますと相続税は事実上意味のないものとなってしまいます そこで 贈与という行為に対し 贈与税を課税することとなるわけです この意味で贈与税は相続税の 補完税 という役割を果たすこととなります 3

4 相続税と贈与税の関係 相続税と贈与税を比較した場合 贈与税の方が基礎控除にしても 税率にしても重いものとなっています これは仮に相続税よりも贈与税の方が税負担率が軽いとすれば 贈与による財産の移転が促進され 結果的に贈与税が相続税の 補完税 という機能を果たせないこととなるためです 次に相続税と贈与税 ( 暦年課税 ) の基礎控除 税率の比較表を示します 相続税贈与税 基礎控除 税率 全員分として 30,000 千円 +6,000 千円 法定相続人の数 最低 10%(1,000 万円以下 ) 最高 55%(6 億円超 ) 受贈者 1 人につき年間 1,100 千円 最低 10%(200 万円以下 ) 最高 55%( 3,000 万円超 ) 特例税率適用の場合は 4,500 万円超 相続税に比べ 贈与税では基礎控除が大幅に少ない金額となっています また 税率も下限や上限となる税率自体は同じものの 贈与税の方がより低い金額から税率が高くなる ( 累進する ) ように設定されています この比較表から解かることは 一般的に相続人等に財産を取得させるには 相続の方が有利であるということです しかし 資産家の場合には 相続税自体が高い税率で課税されるため 贈与を活用し 対策を練ることが有効な場合があります つまり 相続の場合は人の死亡に伴って一時点で課税されることとなりますが 贈与税は一年ごとの課税 ( 暦年単位課税 1 月 1 日から 12 月 31 日までが一つの計算期間 ) ですから 贈与する財産額を吟味し税負担を調整すれば 時間をかけて 比較的低い税率により 財産を移転することが可能となります なお 平成 25 年の税制改正により 平成 27 年 1 月 1 日以後の相続 贈与について 上記の基礎控除及び税率となっています より詳細な税率速算表や従前 ( 平成 26 年以前 ) の税率速算表につきましては P213の参考をご確認下さい 4