2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

平成19年12月○日

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

2 引き続き居住の用に供している場合 とされる場合本人が 転勤などのやむを得ない事情により 配偶者 扶養親族その他一定の親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において その家屋等をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており やむを得ない事情が解消した後は 本人が共にその家屋に居住することに

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

2. 中小企業のための主な優遇制度 注 : 各項目に付記している番号は 関連する参考資料です 番号に対応する資料名などは 5~6 ページに掲載していますのでご参照ください [1] 中小法人等 に適用される主な優遇制度 紙面の都合により ここでは制度の種類と それに関連する参考資料の番号を紹介していま

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1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

(2) 青色申告書を提出する中小企業者等 ( 平成 3 年 4 月 日以後開始する事業年度については 適用除外事業者 ( 注 4) を除く ) が 平成 30 年 4 月 日から平成 33 年 3 月 3 日までの間に開始する各事業年度において 国内雇用者に対して給与等を支給する場合に継続雇用者給与

[2] 道路幅員による容積率制限 ( 基準容積率 ) 敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を 容積率 といい 用途地域ごとに容積率の上限 ( 指定容積率 ) が定められています しかし 前面道路の幅員が 12m 未満の場合 道路幅員に応じて計算される容積率 ( 基準容積率 ) が指定容積率を下回る

(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

第 5 章 N

また 国外財産調書制度は 2013 年 12 月末の国外財産から調書の提出義務が始まりましたので 5,000 万円超の国外財産を保有の方はご留意ください これに関連して 国税庁より 2013 年 11 月 15 日に FAQ が発表されており FAQ は国税庁のホームページで閲覧等できます 資産税ニ

住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

<4D F736F F D208C6F89638FEE95F182A082EA82B182EA E34816A>

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

本稿で取り扱う 家族信託や福祉信託に代表される民事信託は 委託者が健康な間に自分の意思で自分の老後の生活 介護等に必要な資金の管理および給付などのために また 遺言代用信託として残された家族への財産の分配のために その保有する不動産 預貯金等を信託するものです 受益者の利益を保護し 受託者の信託事務

( 参考 ) 相続税の申告の際に提出していただく主な書類 1 相続税の申告書に記載されたマイナンバー ( 個人番号 ) について 税務署で本人確認 (1 番号確認及び 2 身元確認 ) を行うため 次の本人確認書類の写しを添付していただく必要があります なお 各相続人等のうち税務署の窓口で相続税の申

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

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き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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<TAC> 無断複写 複製を禁じます ( 税 18) 相上 (8)C10-1 相続税法 上級 演習 8 テキスト 2 第 8 回 - 解答 点 - 第一問 問 1 持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において 税負担の不当減少を防 止

海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

用語の意義 この FAQ において使用している用語の意義は 次のとおりです 用語 意義 所得税法 ( 所法 ) 所得税法 ( 昭和 40 年法律第 33 号 ) をいいます 所得税法施行令 ( 所令 ) 所得税法施行令 ( 昭和 40 年政令第 96 号 ) をいいます 改正所令 所得税法施行令の一

15 相続税納税マニュアル

Ⅰ 法人関連税制 1 減価償却制度 2 年連続の大改正になった背景 減価償却制度については 平成 19 年度税制改正により 残存価額および償却可能限度額の取扱いが廃止される大改正が行われ 定率法はいわゆる 250% 定率法 と呼ばれる従来にない新しい計算の仕組みが採用されました そして平成 20 年

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

<4D F736F F F696E74202D DC C5817A94F18FE38FEA8A948EAE939982C982C282A282C482CC91A1975E90C A91B190C582CC945B90C C814596C68F9C81698E968BC68FB38C7090C590A7816A82CC82A082E782DC82B520202

第68回税理士試験 消費税法 模範解答(理論)

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2. 改正の趣旨 背景 国内に住所を有しないことにより相続税 贈与税の課税を免れる租税回避行為を抑制するため 平成 12 年度改正 ( 相続人 受贈者の国籍による納税義務判定の導入 ) 平成 25 年度改正 ( 相続人 受贈者が日本国籍なしの場合の課税強化 ) が行われてきた 平成 29 年度改正で

[2] のれんの発生原因 企業 ( または事業 ) を合併 買収する場合のは 買収される企業 ( または買収される事業 ) のおよびを 時価で評価することが前提となります またやに計上されていない特許権などの法律上の権利や顧客口座などの無形についても その金額が合理的に算定できる場合は 当該無形に配

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

国外転出時課税制度(出国税)の導入

Ⅲ 納付 [Q6] 申告 納付等の期限の延長が認められた場合 延滞税 利子税はどのようになりますか また 加算税は賦課されますか 7 [Q7] 今般の熊本地震災害により被害を受けましたが 納税の猶予はどのような場合に受けることができますか 8 [Q8] 納税の猶予の 相当の損失 とはどの程度の損失を

個人版事業承継税制の創設について 現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討

参考. 改正前の制度概要 ( 改正対象は太字 ) (1) 税の納税猶予の全体像 ( 概要 ) の要件 会社の代表者であったこと 時には代表権を有していないこと と同族関係者で決議数の 50% 超の株式を保有かつを除いた同族内で筆頭株主であったこと 認定対象会社の要件 の要件 会社の代表者であること

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相続税に関するチェックリスト

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相続税の大増税に備える! 不動産による最新節税対策

例えば毎年 子供 2 人に対し110 万円づつ贈与し続けるのであれば 10 年間で2,200 万円の財産を無税で子供に移すことができます 贈与税の基礎控除額を上手く活用する方法だけでも 計画的に行うことがどれだけ大切なのかご理解いただけると思います とにかく財産を所有している人が高齢になればなるほど

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公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

叔父から財産の贈与(1~3) を受けた場合 1/1 12/31 2/1 3/15 相選養続択与子贈時届贈精出縁与算書与 1組課提2 税出3 暦年課税相続時精算課税 養子縁組前の贈与 1については 暦年課税により贈与税額を計算し 養子縁組以後の贈与 2 及び 3は 相続時精算課税により贈与税額を計算し

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

2018年度税制改正大綱 - 資産税関連の主な改正点

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

システムインフォメーション

1 口当たりの基準価額 口数 + 再投資されていない未収分配金 - 再投資されていない未収分配金に係る源泉所得税相当額 ( 注 ) - 信託財産留保額および解約手数料 ( 消費税相当額を含む ) 注 : 特別徴収されるべき都道府県民税の額に相当する金額 および復興特別所得税を含みます ( 以下同 )

( 相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合 ) (6) 相続時精算課税適用者 ( 相続税法第 21 条の9 第 5 項に規定する 相続時精算課税適用者 をいう 以下 (6) において同じ ) の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者 ( 同条第 5 項に規定する 特定贈与者

1 贈与税の納税猶予制度の認定要件 ( 施 規則第 6 条第 1 項第 11 号 ) 贈与税の納税猶予制度の適 を受けるには 以下の要件等を満たすことが必要です 対象会社要件 中 企業者であること 上場会社等 俗営業会社に該当しないこと 資産保有型会社 は資産運 型会社 ( 以下 資産保有型会社等

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

目次 特例措置の概要等... 5 ( 問 1) 非上場株式等についての相続税 贈与税の納税猶予及び免除に係る一般措置と特例措置との違い... 5 ( 問 2) 相続開始後の特例承継計画の提出... 8 ( 問 3) 特例措置の対象となる株式等の種類... 9 ( 問 4) 特例措置における雇用確保要

Q&A 〇税制度 Q1 生産緑地地区の指定を受けると 固定資産税は農地評価と聞いていますが 都市計画税はどうでしょうか A1 固定資産税 都市計画税が農地評価 農地課税となります Q2 主たる従事者の死亡や故障等により 生産緑地地区の指定から 30 年経過せずに指定が解除された場合 固定資産税を遡っ

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納税猶予打切りリスクの緩和 利子税率の引き下げ 承継 5 年超で 5 年分の利子税の免除 債務控除方式の変更 債務控除を株式以外の財産から行うことで 納税猶予の効果を高める < 平成 27 年度税制改正 > 贈与税の納税猶予 免除制度の拡充 1 代目が存命中に 2 代目が 3 代目に納税猶予 免除制

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

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配偶者居住権の相続税評価額について 2018/12/28 田口税理士事務所 平成 30 年の民法改正により 配偶者の居住権を保護するために配偶者居住権が新設されましたが 相続税の評価にどう影響させるかについて 今回の税制改正大綱に記載されています まず 前提となる配偶者居住権について 説明します 1

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

1. はじめに 中小企業経営者の高齢化が進展する中 事業承継の円滑化は喫緊の課題です 平成 30 年度税制改正において 事業承継の際に生ずる相続税 贈与税の負担を軽減する 非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例 ( 以下 事業承継税制 ) が抜本的に改正されました 本改正では

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税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

Q1 法人事業税の負担変動の軽減措置とは どのような制度ですか? A. 平成 27 年度税制改正により導入された 外形標準課税の拡大 ( 所得割の税率引き下げ及び付加価値割 資本割の税率引き上げ ) によって生じる税負担の変動の影響を緩和する措置で 付加価値額が一定以下の法人を対象に税負担の増加につ

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

~ 改正の変遷 ~ (1) 平成 12 年度改正前相続人 受贈者がの場合には 国内財産のみ課税 (2) 平成 12 年度改正後 平成 25 年度改正前平成 12 年度改正 : 相続人 受贈者について国籍主義を導入 H12 年度改正 : 国内財産 国外財産ともに課税 相続人 受贈者 相続人 受贈者 被

2018年度改正 相続税・贈与税外国人納税義務の見直し

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事業承継関連税制について 関東経済産業局 平成 30 年 6 月 中小企業金融課

A は 全ての遺産を社会福祉施設に寄付すると遺言に書き残し死亡した A には 配偶者 B と B との間の子 C と D がある C と D 以外にも A と B との子 E もいたが E は A が死亡する前にすでに死亡しており E の子 F が残されている また A には 内妻 G との子 (

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3 減免の期間及び割合 下表の左欄の期間に終了する事業年度又は課税期間に応じて右欄の減免割合を適用します H27.6.1~H 減免割合 5/6 納付割合 1/6 H28.6.1~H 減免割合 4/6 納付割合 2/6 H29.6.1~H 減免割合 3/6 納

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医業継続に係る相続税 贈与税の納税猶予制度 福田和仁相談部東京相談室 国内の医療法人の多くは 出資持分のある医療法人です 医療法人の出資者に相続が発生したときは出資持分に対して相続税が課税され また 一部の出資者が持分を放棄するなど一定の場合は他の出資者に贈与税が課税されます ただ 医療法人の財政状態によっては納税額が多額に上ることがあり得るなど その負担により医療活動の安定的な継続に影響を与えかねないといった懸念が示されていました 今回は こうした懸念に対応するため 平成 26 年度税制改正により創設された 医業継続に係る相続税 贈与税の納税猶予制度 について解説します 1. 制度創設の背景 国内の医療法人の多くは 出資者による出資割合 ( 持分 ) に応じて所有される 持分の定めのある医療法人 ( 以下 持分あり医療法人 ) です 持分あり医療法人 では 出資者の相続発生時に 医療法人の財政状態によっては多額の相続税の負担が生じることがあり得るなど 課税上の理由から医業の安定的な継続が困難となり 地域医療の確保などに影響を与えかねないといった問題が指摘されていました このような問題に対応するため 平成 18 年 6 月の医療法改正 ( 第 5 次 平成 19 年 4 月施行 ) では 医療法人の新設は 残余財産の帰属先を国または地方公共団体に限定して出資者には分配できない 持分の定めのない医療法人 ( 以下 持分なし医療法人 ) のみに認める一方 既存の 持分あり医療法人 については その存続を認めるものの 持分なし医療法人 への自主的な移行の取り組みを促すこととされました しかしながら 改正法施行後も既存の 持分あり医療法人 による 持分なし医療法人 への移行が進まないことから 平成 26 年 6 月の医療法改正 ( 第 6 次 同年 10 月施行 ) により 持分なし医療法人 への移行を促進するため 厚生労働大臣による移行計画の認定制度が創設されました この制度による税制面での支援措置として 平成 26 年度税制改正により 持分なし医療法人 への移行時に生じる相続税や贈与税について 納税を猶予する制度が創設されました 1

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への移行計画について 厚生労働大臣の認定を受けた医療法人 ( 以下 認定医療法人 ) は 1 持分あり医療法人 の出資者が出資持分を放棄したことにより 他の出資者の持分の価額が増加することで 贈与を受けたものとみなされて他の出資者に贈与税が課されることとなるときは その納税を移行計画の期間満了まで猶予 2 相続人が 持分あり医療法人 の持分を相続または遺贈により取得した場合は 相続税の納税を移行期間の期限満了まで猶予 とする制度です いずれも 移行期限までに持分を放棄した場合は 猶予税額が免除されます 認定制度の大まかな流れは下図のとおりです なお 基金拠出型医療法人 へ移行するケースで一定の場合も 納税猶予制度が適用されますが ここでは解説を省略します 資料 : 厚生労働省 持分なし医療法人 への移行促進策のご案内 (http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/dl/ikousokushin.pdf) 移行計画の認定制度の実施期間は 平成 26 年 10 月 1 日から平成 29 年 9 月 30 日までの間の3 年間です 持分なし医療法人 への移行を検討する医療法人は この期間内に移行計画を厚生労働省へ申請し 認定を受ける必要があります 移行計画の認定を受けた医療機関は 認定の日から3 年以内に 持分なし医療法人 に移行することになります 3. 移行計画の流れ ( 主な手続き ) 持分あり医療法人 が厚生労働省に移行計画の申請を行い 認定を受けてから 持分なし医療法人 へ移行するまでの手続きは次ページ図のとおりとなります 2

[1] 厚生労働大臣への実施状況報告書の提出義務 ( ) [2] 資料 : 厚生労働省 持分なし医療法人 への移行促進策のご案内 に 筆者一部加筆し作成 [1] 移行計画の認定 1 移行計画の申請について 社員総会で議決を得ます 2 厚生労働大臣宛に移行計画の申請を行います ( 移行計画認定申請書 社員総会議事録などを提出 ) [2] 定款変更 1 移行計画の認定医療法人である旨を記載した定款変更について 社員総会で議決を得ます 2 厚生労働省から移行計画の認定通知書を受理後 速やかに都道府県知事宛に定款変更の申請を行います 3 定款変更の認可後 厚生労働大臣宛に報告を行います ( 実施状況報告 ) [3] 移行計画の認定が取り消しとなるケース ( 猶予税額および利子税の納付義務が発生 ) 1 持分なし医療法人 への移行に向けた取り組みを行っていないとき( 持分の譲渡 払戻など ) 2 移行計画の認定を受けた日から3カ月以内に 移行計画の認定を受けた旨の定款変更の認可を受けなかった場合 3

3 認定医療法人が合併以外の理由で解散したときや 他の医療法人と合併し消滅したとき 4 移行計画が 偽りその他の不正行為により作成されたことが判明した場合 5 認定医療法人が移行計画の変更について 厚生労働大臣の認定を受けなかったとき 6 移行計画の実施状況について 厚生労働大臣に報告を怠ったときや虚偽の報告をしたとき 7 移行計画の認定から移行期限 (3 年を上限 ) までに 持分なし医療法人 に移行しなかった場合 厚生労働大臣への実施状況報告書の提出義務 認定医療法人となった以降は 厚生労働大臣に対して以下の実施状況報告が必要となります 移行計画認定となった場合 認定医療法人であることを記載した定款変更について 都道府県知事の認可を受けたこと 認定を受けてから2 年間 認定を受けた日から1 年を経過するごとの移行の進捗状況 放棄 払戻 譲渡 相続 贈与などによる出資持分の処分が生じたこと( 納税猶予の特例適用者が死亡した場合 相続人が権利を承継する場合も該当 ) 持分なし医療法人 への移行の定款変更について 都道府県知事の認可を受けたこと 注 : 移行計画に合併等の変更があった場合は 厚労大臣宛に変更認定申請が必要となります 4. 相続税の納税猶予制度 [1] 制度内容 相続人が 持分あり医療法人 の出資持分を相続または遺贈により取得した場合 その医療法人が相続税の申告期限において認定医療法人であるときは 担保の提供を条件 ( 注 1) に相続人が納付すべき相続税額のうち 出資持分に係る課税価格に対応する納税猶予分の相続税額については 移行計画に記載された期間満了まで納税が猶予されます また 相続人等が有しているすべての持分を放棄するなど一定の場合は 一定の猶予税額が免除 ( 注 2) されます ただし 移行計画の認定が取消となった場合は 相続税の猶予税額と利子税の納付が必要となります 注 1: 相続税の納税猶予を受ける相続人は 相続税の申告期限までに 所定の書類を添付した申告書を提出し 猶予税額と利子税に見合う担保を提供する必要があります ( 出資持分を担保として提供することも可 ) 注 2: 税務署宛に免除届出書と一定の書類を提出し 担保権の解除手続きを行うことで 免除されます [2] 猶予される税額の計算例 ( 相続税の納税猶予のケース ) 設例 医療法人の出資者である被相続人の出資持分 2 億円 その他の財産 1 億円 法定相続人 1 名 合計 3 億円の相続財産のうち 認定医療法人の出資持分である 2 億円をすべて放棄し 移行期限までに 持分なし医療法人 に移行 ( 基礎控除や税率などは 平成 27 年 1 月 1 日以降の相続にかかるものとする ) 4

計算手順 1 通常の相続税額の計算を行い 持分を取得した相続人の相続税額を算出 課税遺産総額 3 億円 -(3,000 万円 + 600 万円 1 名 )= 2 億 6,400 万円税額算出 2 億 6,400 万円 45% - 2,700 万円 = 9,180 万円 (a) 2 認定医療法人の出資持分 (2 億円 ) のみを取得したとして相続税額を算出 課税遺産総額 2 億円 -(3,000 万円 + 600 万円 1 名 )= 1 億 6,400 万円猶予税額算出 1 億 6,400 万円 40% - 1,700 万円 = 4,860 万円 (b) 3 納付税額を算出 (a)9,180 万円 - (b)4,860 万円 = 4,320 万円 5. 贈与税の納税猶予制度 認定医療法人の一部の出資者が持分を放棄すれば 他の出資者の出資持分の価額が増加することで 贈与を受けたものとみなして他の出資者に贈与税が課される場合 贈与税の納税猶予制度の適用を受けられ 移行期限までに全ての出資者が持分を放棄した場合は猶予税額が免除されます 贈与税の納税猶予は 原則として相続税の場合と同様の制度ですが 出資者による持分の放棄時において その医療法人が すでに認定医療法人である必要がある点で異なります 内容は 2015 年 3 月 24 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務等の一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士等 ) にご相談ください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所相談部東京相談室 03-3591-7077 / 大阪相談室 06-6226-1701 http://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5