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検証されている 4) しかし, この規定では, 凝結を遅延させたスラリー状モルタルの保存を 24 時間以内とし, 翌日の使用を想定しており, 日内の業務に適用することは適切でない 2. 付着モルタル量 2.1 実験の目的運搬車の洗浄モルタルを使用するためには, ドラム内等に付着しているフレッシュモル

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0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

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要 旨 コンクリート2 次製品に要求される性能には力学性能と耐久性能とがある 近年インフラの長寿命化が叫ばれる中で 特に耐久性能が高いコンクリート製品が求められている この研究においては 耐久性能の中でも寒冷地で問題になっている凍害に対してスポットをあて コンクリートの耐凍害性能に及ぼす配合と製造方

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改定対照表(標準単価)

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L 型擁壁 (CP-WALL) 構造図 S=1/30 CP-WALL(C タイプ ) H=600~700 断面図 正面 背面図 H T1 T2 T4 T3 T4 H2 H1 100 B1 B2 T5 H 連結穴 M16 背面 水抜孔 φ75 正面 水抜孔 φ90 h1 h2 製品寸法表

Transcription:

論文 X 線 CT 法による硬化コンクリートの特性評価 天明敏行 *1 尾原祐三 *2 堤知明 *3 *4 村上祐治 要旨 :X 線 CT 法を用いて硬化コンクリートの特性評価を行う場合, 骨材, モルタル, 空隙などに分けて, それぞれの比率や密度の情報を把握することが有効な手段となる 特にモルタルの密度に関する情報はコンクリートの特性の指標となる水セメント比や単位セメント量などに関係が深く, コンクリートの配合を推定できる可能性が考えられる 本研究では, 適切なしきい値を設定する材料構成定量化法を用いてコンクリート中のモルタル部分の X 線吸収率を示す CT 値を分析することにより, 水セメント比や単位セメント量の相違が判別可能なことを示し,X 線 CT 法による硬化コンクリートの物性評価の有効性を示した キーワード :X 線 CT 法,CT 値, 材料構成定量化法, 配合推定 1. はじめに X 線 CT(Computer Tomography) 法とは,X 線を用いたコンピュータ断層画像法であり, 非破壊での物体内部の状況観察に有効利用されている X 線 CT 法をコンクリート供試体に適用した場合には, 骨材や空隙, モルタルの占める比率や密度などの定量的な情報が得られることから, これを用いた配合推定などが期待できる 本研究では,X 線 CT 法を用いた硬化コンクリートの特性評価を行う目的で, 試験室内で作製した, 水セメント比や細骨材率の異なるコンクリート供試体について, X 線 CT 法を適用した 2. X 線 CT 法コンクリート円柱供試体の X 線 CT 画像の例を図 -1 に示す 画像の各ピクセルには X 線吸収率を表す CT 値が与えられており,CT 値は以下の式 (1) で定義される て, 材料構成定量化法 1) を提案した 材料構成定量化法では, まず使用する産業用 X 線 CT 装置の分解能を考慮してコンクリートを比較的大きな骨材 ( ここでは骨材と呼ぶ ), 比較的小さな骨材を含むセメントペースト ( ここではモルタルと呼ぶ ), 比較的大きな空隙 ( ここでは空隙と呼ぶ ) に分ける そして, 空隙とモルタルの境界 CT 値については CT 値のヒストグラムから特徴点を見出し, 微分処理を行うことでしきい値を決定し, 骨材とモルタルの境界 CT 値については供試体とともに撮影した標本 ( ファントム ) を用いてしきい値を決定する この方法により, 境界 CT 値を精度よく, かつ客観的に決定することが可能となった 図 -1 の画像に対して, 材料構成定量化法を用いて得られたしきい値を供試体部の CT 値の頻度分布図に示したものを図 -2 に, 空隙と骨材を 2 値化したものを図 -3 にそれぞれ示す μ CT 値 = t μ w μ w K (1) 空隙 ここで,μ t は求める点のX 線吸収係数,μ w は水の吸収係数で-1 である Kは任意に設定できる係数であり, 本研究ではK=1 とした この場合, 空気のX 線吸収係数は であるからCT 値は-1 となる また, 水のCT 値 は となる X 線吸収係数は物体の密度にほぼ比例するため,CT 値も密度に比例した値となる X 線 CT 法によりコンクリートの各材料の構成, すなわち骨材やモルタルの密度や寸法を定量的に検討するには, 撮影された断面画像の画像処理により各材料の境界 CT 値 ( しきい値 ) を適切に設定することが重要である 筆者らは,X 線 CT 法のコンクリートの診断に適用するための研究において, 材料の境界 CT 値を評価する方法とし 骨材 ファントム図 -1 X 線 CT 画像 *1 ( 株 ) 間組土木事業本部技術第三部工博 ( 正会員 ) *2 熊本大学大学院自然科学研究科教授工博 *3 東京電力 ( 株 ) 電力技術研究所工博 ( 正会員 ) *4 ( 株 ) 間組技術環境本部工博 ( 正会員 )

3. 供試体と撮影方法 X 線 CT 撮影を行った供試体の使用材料を表 -1 に, コンクリートの基本配合を表 -2 に示す 粗骨材は 1 種類であるが, 細骨材は A,B,C の 3 種類の異なる細骨材を使用した 基本配合では, 一般的な土木構造物を対象として考慮し, 粗骨材の最大寸法 4mm, 目標スランプ 8cm, 目標空気量 4.5% とした 水セメント比は 55% を標準とし,45%~75% の範囲で設定した 細骨材率は 4% を標準として A 細骨材を使用した場合のみ, 細骨材率を 38% ~44% と変化させた 空気量は混和剤を用いて調整した コンクリート供試体は, 基本配合を用い, 直径 125mm, 表 -1 使用材料 セメント 普通ポルトランドセメント 密度 3.16g/cm 3 水粗骨材 つくば市水道水砂岩砕石 ( 粗骨材最大寸法 4mm) 表乾密度 2.68 g/cm 3, 吸水率 2.68% A: 砂岩砕砂 表乾密度 2.65 g/cm 3, 吸水率 1.47% 実績率 64.7%,F.M.2.63 B: 川砂 ( 大井川産 ) 細骨材 表乾密度 2.62 g/cm 3, 吸水率 1.3% 実績率 7.4%,F.M.2.82 C: 山砂 ( 君津産 ) 混和剤 表乾密度 2.68 g/cm 3, 吸水率 1.17% 実績率 67.8%,F.M.2.39 AE 減水剤 A1, 空気量調整剤 A2 1 1 空隙 モルタル 骨材 頻度 -1 1 3 CT 値 空隙 骨材 図 -2 CT 値の頻度分布 図 -3 2 値化画像 配合 (A~C は細骨材の種類 ) 粗骨材の最大寸法 Gmax スランプ 水セメント比 表 -2 コンクリートの基本配合 目標空気量 細骨材率 単位量 (kg/m 3 ) 粗骨材 目標 実績 水 セメント 細骨材 4-2mm 2-5mm 混和剤 (mm) (cm) (cm) (%) (%) (%) W C S G1 G2 A1 A2 A-1 4 8. 7. 45 4.5 4 178 396 691 524 524.99.49 A-2 4 8. 7.5 55 4.5 38 17 39 692 571 571.77.39 A-3 4 8. 7.1 55 4.5 4 172 313 725 5 5.78.39 A-4 4 8. 7.3 55 4.5 42 176 32 754 527 527.8.4 A-5 4 8. 8.6 55 4.5 44 18 327 783 4 4.82.41 A-6 4 8. 7.5 65 4.5 4 172 265 741 562 562.66.4 A-7 4 8. 8.3 75 4.5 4 177 236 746 565 565.59.41 B-1 4 8. 7.7 45 4.5 4 1 333 733 562 562.83.25 B-2 4 8. 9.2 55 4.5 4 1 273 753 578 578.68.27 B-3 4 8. 9.2 65 4.5 4 152 234 764 586 586.59.23 B-4 4 8. 9.8 75 4.5 4 152 23 774 594 594.51.2 C-2 4 8. 8.1 55 4.5 4 146 265 777 583 583.66.27 C-4 4 8. 7.8 75 4.5 4 146 195 81 61 61.49.19 表 -3 X 線 CT 撮影を行ったコンクリート供試体とモルタル供試体 (Gmax5mm) の一覧 供試体 細骨材率 ( 細骨材の 45 55 65 75 種類 ) (%) Gmax4mm Gmax5mm Gmax4mm Gmax5mm Gmax4mm Gmax5mm Gmax4mm Gmax5mm 38 - - A-2 A-2 - - - - A 4 - A-1 A-3 A-3 - A-6 A-7 A-7 42 - - A-4 A-4 - - - - 44 - - A-5 A-5 - - - - B 4 B-1 B-1 B-2 B-2 B-3 B-3 B-4 B-4 C 4 - - C-2 - - - C-4 C-4

高さ 2mm の円柱供試体とした また, コンクリートを 5mm ふるいでウエットスクリーニングしたモルタルについて同じサイズの供試体を作製した ここでは,X 線 CT 法で判別されるモルタル ( 比較的小さな骨材を含むセメントペースト ) と区別するために, モルタル供試体 (Gmax5mm) と表現する 基本配合を用いて実際に X 線 CT 撮影を行ったコンクリート供試体およびモルタル供試体 (Gmax5mm) の一覧を表 -3 に示す X 線 CT 撮影にあたり, 供試体は水分の状態による変化を防止するために, 撮影の前に乾燥炉に入れ,11 の温度で 24 時間乾燥させた その後, 密閉容器に乾燥剤と共に入れて 12 時間自然冷却させた後に,X 線 CT 撮影を行った また, 撮影は各供試体 25mm 間隔で 1 断面を行った 4. 供試体内の鉛直分布 4.1 空隙率各断面の撮影画像に対して材料構成定量化法を適用し, 供試体の面積に対する空隙や骨材の面積の比である空隙率や骨材率およびモルタル平均 CT 値を求めた ここでは, 求めた空隙率を Pr と定義する 図 -4 は,A,B, C の各コンクリートの水セメント比が 55%, 細骨材率が 4% の各供試体 ( 配合 A-3,B-2,C-2) について, 縦軸を撮影位置とし, 横軸に Pr の値を示したものである 縦軸の mm は供試体の最下部,2mm は最上部を表す 同図より, 供試体の空隙は面積率が 2.% から 3.6% の範囲で分布しており, 供試体の鉛直方向には一様に分布していることがわかる 本コンクリート供試体の空気量は 4.5% 程度であり,X 線 CT 法による空隙率はこれより少ないことから, 粒径の大きいエントラップドエアを主として評価していると考えられる 4.2 骨材率次に, 材料構成定量化法で求めた骨材率を Gr と定義する 図 -5 は,A,B,C の各コンクリートの水セメント比が 55%, 細骨材率が 4% の各供試体 (A-3,B-2, C-2) について, 縦軸を撮影位置とし, 横軸に Gr の値を示したものである 供試体の骨材は 27.4% から 46.9% の範囲で分布しており, 供試体上部のほうが下部に比較して若干小さい値となっている 4.3 モルタル平均 CT 値同様に, 材料構成定量化法により求めた空隙と骨材を除くモルタル部分のモルタル平均 CT 値をM CT と定義する 図 -6 は,Bの水セメント比の異なる各コンクリート供試体について, 縦軸を撮影位置とし, 横軸にモルタル平均 CT 値 M CT の値を示したものである 水セメント比が小さい配合ほどM CT が大きく, いずれ 2 1 1 2 4 6 8 1 空隙率 Pr (%) 2 1 1 図 -4 空隙率の鉛直分布 A-3 B-2 C-2 A-3 B-2 C-2 2 4 6 8 1 骨材率 Gr (%) 図 -5 骨材率の鉛直分布 の配合においても供試体の上部ほどM CT が小さい傾向であることがわかる M CT は供試体のモルタル部の密度を示していることから, 水セメント比の小さいコンクリートほどモルタル部の密度大きく, 供試体の上部ほどモルタル部の密度が小さいことを示している X 線 CT 法で評価した空隙率の鉛直分布では, 偏った分布が認められなかったが, 骨材率やモルタル平均 CT 値の鉛直分布の偏りからは, 供試体作製時に材料が分離した可能性や作製後の硬化過程においてブリーディングを生じた可能性が考えられる また, 水セメント比が小さい配合ほど上下のM CT の差は小さく, 水セメント比が大きいと上下のM CT の差は大きい傾向であり, 水セメント比の大きい配合ほど材料としての粘性がなく, 材料分離が顕著であったと推察される なお, 供試体は円柱の型枠にコンクリートを 2 層に分けて詰め, 各層で内部振動機を用いた締固めを行った 一方, ウエットスクリーニングにより作製したモルタル供試体 (Gmax5mm) のM CT の鉛直分布を図 -7 に示す

鉛直分布は, 図 -6 の分布よりも若干滑らかではあるもののコンクリート供試体と同様の傾向であり, 材料構成定量化法によりモルタル部の密度を相対的に精度よく評価できたといえる 2 W/C=45% W/C=55% W/C=65% W/C=75% 5. モルタル平均 CT 値による特性評価 5.1 水セメント比と A,B,Cの各供試体について, 各断面のモルタル平均 CT 値 M CT を平均した値を供試体の と定義する 供試体はφ125mm, 直径 2mm であり,2.5cm 間隔の 1 断面の平均 CT 値 M CT の平均が供試体の となる A,B,Cの各供試体の水セメント比とM CT の関係を図 -8 に示す 粗骨材の最大寸法の影響を確認するために, 各供試体はGmax4mm のコンクリートと Gmax5mmのモルタルに分けてプロットしている A 供試体では, 水セメント比が大きくなると, 供試体のM CT が小さくなる 水セメント比の大きいコンクリートやモルタルは, 密度の小さい水の量, すなわち単位水量が大きいため, 小さくなると考えられる B 供試体およびC 供試体についても同様に, 水セメント比が大きい配合ほどモルタル平均 CT 値が小さくなっている B 供試体では, 水セメント比が 65% の配合 B-3 と 75% の配合 B-4 について,Gmax4mmのコンクリートと Gmax5mmのモルタルで供試体のM CT の評価が若干乖離している この原因は不明であるが, 供試体を代表するモルタル平均 CT 値を精度よく評価するための撮影断面数が十分でなかったことも原因のひとつと考えられる このため, 供試体は一様に作製することや 1 本の供試体を代表するように撮影断面の位置や枚数を適切に設定することに留意する必要がある 1 1 7 7 8 8 9 図 -6 モルタル平均 CT 値の鉛直分布 (Gmax4mm) 2 1 1 W/C=45% W/C=55% W/C=65% W/C=75% 7 7 8 8 9 図 -7 モルタル平均 CT 値の鉛直分布 (Gmax5mm) 84 Gmax4mm 84 Gmax4mm 84 Gmax4mm 82 8 78 76 74 72 4 45 55 6 65 7 75 8 82 8 78 76 B-3 74 B-4 72 4 45 55 6 65 7 75 8 82 8 78 76 74 72 4 45 55 6 65 7 75 8 (a) A 供試体 (b) B 供試体 (c) C 供試体 図 -8 水セメント比と

5. 2 細骨材率と 次に,A 供試体について水セメント比を 55% と一定にし, 細骨材率を 38% から 44% に変化させた配合の各コ 84 Gmax4mm ンクリート供試体における, 細骨材率と供試体のM CT の関係を図 -9 に示す 図中には各細骨材率の配合上の単位水量 Wを示している 同図より, 細骨材率 44% のM CT は若干小さく評価されているが, 細骨材率 38%,4% および 42% のM CT はほとんど差がないことがわかる この原因は以下のように考えられる 骨材中の細骨材率が増加すると, 一定のワーカビリティーを得るために単位水量 Wが増加する すなわち, コンクリート供試体のモルタル部分の密度は骨材の増加により大きくなるとともに, 単位水量の増加により小さくなるため, 細骨材率の変動はモルタル平均 CT 値を大きくする要因にも, 小さくする要因にもなり得る 水セメント比が大きくなるとモルタル平均 CT 値が小さくなる傾向は細骨材の種類や細骨材率が若干異なっても同様であり, 同じ材料を使用すれば水セメント比とモルタルの平均 CT 値は高い相関を示すと考えられる 6. コンクリートの配合推定これまでの検討から, 同じ材料を使用している A,B, C の各供試体のモルタル平均 CT 値は水セメント比と高い相関があることがわかった この傾向は単位セメント量についても同様である可能性が考えられる そこで, 今回試験を実施した細骨材の種類や細骨材率の異なる供試体の全てのデータについて, モルタル平均 CT 値に対する水セメント比, モルタル平均 CT 値と単位セメント量の相関から, 最小二乗法による推定近似式を求めた A,B, Cの全ての供試体のM CT と水セメント比 W/Cの関係を図 -1 に,M CT と単位セメント量 Cの関係を図 -11 に示す それぞれの図において,M CT から水セメント比 W/Cを求める推定近似式を式 (2) に, 単位セメント量 Cを求める推定近似式を式 (3) に示す W/C(%)=-.44(%) M CT +47(%) (2) C(kg/m 3 )=2.18(kg/m 3 ) M CT -144(kg/m 3 ) (3) それぞれの式による相関係数 R は, モルタル平均 CT 値 - 水セメント比の関係で R=.88, モルタル平均 CT 値 - 単位セメント量の関係で R=.83 であった 次に, モルタル平均 CT 値から水セメント比と単位セメント量を線形近似した式 (2) 及び式 (3) を用いて, 水セメント比と単位セメント量を推定値として算出し, 実際の値と比較を行った 推定した水セメント比と実際 単位セメント量 (kg/m 3 ) 82 8 78 76 74 72 36 38 4 42 44 46 細骨材率 (%) 8 7 6 W/C=-.44 M CT +47 相関係数 R=.88 4 7 7 8 8 4 3 17kg/m 3 172kg/m 3 176kg/m 3 18kg/m 3 図 -9 細骨材率とモルタル平均 CT 値 図 -1 モルタル平均 CT 値と水セメント比 C=2.18 M CT -144 相関係数 R=.83 1 7 7 8 8 9 図 -11 モルタル平均 CT 値と単位セメント量 の水セメント比の関係を図 -12 に, 推定した単位セメント量と実際の単位セメント量の関係を図 -13 に示す 配合推定にあたっては, 水セメント比推定の従来法で ある セメント協会法 2) による化学分析手法との比較

も行い, 水セメント比が 45% の配合 A-1 および水セメント比が 65% の配合 A-6 のコンクリート供試体について実施した セメント協会法による配合推定法は, 通常の化学分析で使用する設備を使用できるので, 設備上の制約は少ないものの, 骨材に酸化カルシウムが含まれる場合などには不適とされている 図 -12,13 には セメント協会法 推定した水セメント比と単位セメント量を白抜きの点で示した 図 -12 には 5% 乖離した線を 2 本の点線で示している 大部分のプロットが 5% の誤差の範囲内にあり, 精度よく評価できたといえる セメント協会法による評価でも W/C=45% の供試体で 5% の乖離,W/C=65% の供試体で 6% の乖離であり, 同程度以上の精度があることがわかる 図 -13 には kg/m 3 乖離した線を 2 本の点線で示している ほとんどのプロットが kg/m 3 の誤差の範囲内にあり, 精度よく評価されていることがわかる セメント協会法による評価でもW/C=45% の供試体で 18kg/m 3 の乖離,W/C=65% の供試体で kg/m 3 の乖離であり, 同程度の精度であるといえる 7. まとめ水セメント比や細骨材率を変えたコンクリート供試体に X 線 CT 法を適用し, モルタル平均 CT 値に対する水セメント比や単位セメント量との相関を検討した 今回作製したコンクリート供試体の材料や配合の範囲内ではこれらの相関は高く, 得られた相関関係を用いて水セメント比や単位セメント量など, 配合を推定できる可能性のあることを明らかにした また, 本方法で評価された水セメント比や単位セメント量は, 従来の配合推定方法である セメント協会法 と呼ばれる方法と同程度以上の精度を有することが明らかとなった 従来の化学法と比較すると,X 線 CT 法には可視化というメリットがあり, 目視による骨材や空隙の状況観察を含めて供試体の状況を総合的に評価することができるため, 信頼性を得やすいという特徴があると思われる 今後は, 生コン工場で製造されたコンクリートの標準供試体や, さらには材料が未知なコンクリートを用いて硬化コンクリートの特性評価を行うなど, 対象とするコンクリートの範囲を拡大した試験を実施し,X 線 CT 法を用いた硬化コンクリートの特性評価に関する研究を継続していく予定である 推定 推定単位セメント量 (kg/m 3 ) 9 8 7 6 4 5% セメント協会法による推定値 3 3 4 6 7 8 9 4 4 3 3 2 実際の 図 -12 水セメント比の推定結果 kg/m 3 セメント協会法による推定値 1 1 2 3 3 4 4 実際の単位セメント量 (kg/m 3 ) 図 -13 単位セメント量の推定結果 参考文献 1) 天明敏行, 伊藤剛, 濱崎大志, 尾原祐三 :X 線 CT 法を用いたコンクリートの材料構成定量化法の提案, コンクリート工学年次論文集, 日本コンクリート工学協会,Vol.3,No.2,pp.739-744,8.6 2) 社団法人セメント協会 : 硬化コンクリートの配合推定に関する共同試験結果, コンクリート専門委員会報告 F-18,1967