2 ALOS/ だいちから観測された霧島山新燃岳噴火 -2 では 陸域観測技術衛星 だいち を使い, 霧島新燃岳の噴火前後における衛星画像判読および SAR 干渉解析などを行った. 主な解析結果は次の通り. SAR 強度画像による判読 ( 図 1 および 2) PALSAR は雲や噴煙を透過することができる. 緊急観測が行われた 2011 年 1 月 27 日以降について判読した. その結果, 火口内に蓄積されていた溶岩は 2 月の後半にはやや凹んでいることがわかった. SAR 干渉解析結果 ( 図 3-1,2,3,4) 噴火前, 前後, 後の各々のペアについて SAR 干渉解析を行った. 噴火前のペアでは衛星に近づく方向の, 噴火前後では衛星から遠ざかる方向の位相差が認められた. 噴火後のペアからはノイズが重畳しているため活動に伴う地殻変動かどうか不明. 圧力源推定 ( 図 4-1,2) 図 3-1-1 および図 3-2-3 の SAR 干渉解析結果を用いた圧力源推定を行った. それぞれ韓国岳の西北西約 5km の深さ約 6km および約 7km にそれぞれ 6.2 10 6 m 3 および -1.2 10 7 m 3 の体積増加および減少を伴う球圧力源が推定された. 偏波を用いた解析 ( 図 5) PALSAR のポラリメトリモードで撮像されたデータを用いて噴火前と噴火後の後方散乱強度について解析した. この結果, 噴火前後で降灰域や火口形状に伴う偏波変化が抽出された. 光学センサを用いた解析 ( 図 6) AVNIR-2 を用いて新燃岳周辺の降灰域の判読を行った.2 月上旬に比べ降灰域は狭くなっているが, 御鉢にかけての範囲では依然多量の降灰が堆積している. 謝辞 本解析で用いた PALSAR データの一部は 火山噴火予知連絡会が中心となって進めている防災利用実証実験 ( 火山 WG) に基づいて JAXA にて観測 提供されたものである また 一部は PIXEL で共有しているものであり JAXA と東京大学地震研究所との共同研究契約により JAXA から提供されたものである PALSAR に関する原初データの所有権は経済産業省および JAXA にある 今回の霧島新燃岳噴火に際しては, 緊急観測および FTP サーバを使った観測データの即時提供など多大なご協力を得ました. 改めて感謝いたします. また PALSAR の解析には JAXA の島田政信氏により開発された SIGMA-SAR を, 光学画像については PG-STEAMER(Ver.4.2) をそれぞれ使用した. ここに記してお礼申し上げます. 提出する資料は次のとおり. 図 1:SAR 強度画像による噴火前後の比較 ( 北行軌道 ) 図 2:SAR 強度画像による噴火前後の比較 ( 南行軌道 ) 図 3: 噴火前 前後 後の SAR 干渉画像図 4: 噴火前および前後の干渉結果を用いた圧力源推定図 5: ポラリメトリ解析結果図 6:AVNIR-2 判読結果 3 ページ
1 2 3 4 22:45UTC 22:53UTC 22:35UTC 22:59UTC 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 2010.11.20(34.3 ) 2011.01.27(43.4 ) 2011.01.29(21.5 ) 2011.02.01(47.8 ) 5 6 7 8 22:42UTC 22:48UTC 22:37UTC 23:00UTC 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 2011.02.03(30.8 ) 2011.02.08(38.8 ) 2011.02.15(25.8 ) 2011.02.18(50.0 ) 9 10 11 12 22:43UTC 22:50UTC 22:51UTC 22:58UTC 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 2011.02.20(34.3 ) 2011.02.25(41.5 ) 2011.03.14(43.4 ) 2011.03.19(47.8 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 図 1.ALOS/PALSAR による SAR 強度画像解析結果 ( 北 軌道 ) 2010 年 11 月以降の霧島山新燃岳周辺における北行軌道の SAR 強度画像を示す ( カッコ内の数字はオフナディア角 * ).27 日には溶岩ドームが形成され (2), その後溶岩の蓄積が進み (3),2 月 1 日に火口内が溶岩でほぼ満たされた (4). その後, 爆発的噴火が数回発生したが, 火口内の溶岩蓄積量や形状に特段の変化は認められない (56および7). その後 2 月 18 日夜の強度画像からは火口内において, わずかではあるが凹んでいるように見え, その表面は粗く ( 凸凹 ) なっているように見える.(89および10). また,3 月 14 日および 16 日の強度画像 (11および12) では火口内の南東部分において凹みが確認できる. なお, 掲載した強度画像はいずれも HH 偏波によるもので, 各々異なる入射角のため見え方の違いの可能性を含む. 図の下の矢印は爆発噴火と SAR 強度画像撮像日との対応関係を示す. 数字は爆発的噴火発生日 ( 通し番号 ), 数字は SAR 強度画像撮像日を示す. * オフナディア角 : レーダ鉛直直下方向と観測方向のなす角. 4 ページ
1 2 3 4 10:43UTC 10:39UTC 10:45UTC 10:28UTC 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 2011.01.18(34.3 ) 2011.01.30(38.8 ) 2011.02.04(30.8 ) 2011.02.06(47.8 ) 5 6 7 8 10:51UTC 10:34UTC 10:23UTC 10:30UTC 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 2011.02.09(21.5 ) 2011.02.11(43.4 ) 2011.02.18(50.0 ) 2011.02.23(46.6 ) 9 10 10:42UTC 10:38UTC 200m JAXA/METI 200m JAXA/METI 2011.03.05(34.3 ) 2011.03.17(38.8 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 2 34 56 7 8 9 10 図 2.ALOS/PALSAR による SAR 強度画像解析結果 ( 南 軌道 ) 一連の噴火活動前日 (2011 年 1 月 18 日 ) 以降の霧島山新燃岳周辺における南行軌道の SAR 強度画像を示す ( カッコ内の数字はオフナディア角 * ).30 日には溶岩の蓄積が確認され (2),2 月 4 日には, 火口内がほぼ溶岩で満たされている (3) 状況が確認できる. なお, この間 7 回の爆発的噴火が発生した. その後火口内の状況に大きな変化は見られないが,2 月 23 日朝の画像から, 火口内においてわずかではあるが表面の不均質さが見え始め (8),3 月 5 日の強度画像では火口内の南東部に反射強度の強い部分 ( おそらく火口 ) が確認できる (9および10). なお, 掲載した強度画像はいずれも HH 偏波によるもので, 各々異なる入射角のため見え方の違いの可能性を含む. 図の下の矢印は爆発噴火と SAR 強度画像撮像日との対応関係を示す. 数字は爆発的噴火発生日 ( 通し番号 ), 数字は SAR 強度画像撮像日を示す. * オフナディア角 : レーダ鉛直直下方向と観測方向のなす角. 5 ページ
1 2 図 3-1.ALOS/PALSAR による噴 前における SAR 渉解析結果 ( 上段 : 北 軌道 1 と下段 : 南 軌道 2) 北行軌道 ( パス 424, オフナディア角 34.3 ) および南行軌道 ( パス 73, オフナディア角 34.3 ) において, 韓国岳の西南西約 5km の場所 ( 防災科学技術研究所の GPS 観測点 万膳 付近 ) を中心に最大 4~5cm 程度の衛星に近づく方向の位相差が認められる. なお, 大気によると思われるノイズ除去は行っていない. 6 ページ
3 4 図 3-2.ALOS/PALSAR による噴 前後における SAR 渉解析結果 ( 上段 : 北 軌道 3 と下段 : 南 軌道 4) 北行軌道 ( パス 424, オフナディア角 34.3 ) および南行軌道 ( パス 73, オフナディア角 34.3 ) において, 韓国岳の西南西約 5km の場所 ( 防災科学技術研究所の GPS 観測点 万膳 付近 ) を中心に, それぞれ最大 5~6cm 程度および最大 3cm の衛星から遠ざかる方向の位相差が認められる. なお, 大気によると思われるノイズ除去は行っていない. 7 ページ
5 6 図 3-3.ALOS/PALSAR による噴 後における SAR 渉解析結果 ( 上段 : 北 軌道 5 と下段 : 南 軌道 6) 本格的マグマ噴火となった翌日 (1 月 27 日夜 ) に撮像された北行軌道 ( パス 428, オフナディア角 43.4 ) との干渉解析では, 新燃岳を中心に 3~4cm の衛星に近づく方向の位相差が, また火口の西側 ( 牧園と万膳の間付近 ) では 1~2cm の衛星から遠ざかる方向の位相差がそれぞれ認められるが, 標高に相関した見かけ上の位相変化の可能性を含む. 1 月 30 日昼に撮像された南行軌道 ( パス 71, オフナディア角 38.8 ) の干渉解析では, 新燃岳山頂周辺において 1~2cm 程度の衛星から遠ざかる方向の位相差が認められるが, 8 ページ
検知レベル限界であり, ノイズの可能性を含む. 7 図 3-4.ALOS/PALSAR による噴 後における SAR 渉解析結果 ( 北 軌道 7) 2 月 1 日夜に撮像された北行軌道 ( パス 431, オフナディア角 47.8 ) の干渉解析では, 前述の 2 ペアと比べても位相差は認められず, 火山活動に伴う地殻変動はほとんど認められない. 9 ページ
地 ) えびの 防 ) 万膳 新燃山頂 防 ) 夷守台 高原 地 ) 野尻 期間 : 2008.2.12-2010.11.20 地 ) 牧園 地 ) 都城 2 御池高千穂高千穂峰高千穂河原 圧力源推定結果 Lat:31.9319 Lon:130.8358 Dep:6.1km V:6.2 10 6 m 3 御池 図 4-1. 球状圧 源を仮定した霧島 新燃岳噴 前における圧 源推定 ( 噴 前のペアにより推定された圧 源から期待される 渉縞パターン ) 2008 年 2 月から 2010 年 11 月の北行軌道 ( 図 3-1 の 1) のデータを使い,MaGCAP-V( 福井ほか,2010) を用いた圧力源推定を行った. 球状圧力源 (Mogi,1958) を仮定し計算した結果, 韓国岳の西北西約 5km の深さ約 6km に 6.2 10 6 m 3 の体積増加量で位相変化を説明できることがわかった. 10 ページ
地 ) えびの 防 ) 万膳 新燃山頂 防 ) 夷守台 高原 地 ) 野尻 期間 : 2010.11.20-2011.2.20 地 ) 牧園 地 ) 都城 2 御池高千穂高千穂峰高千穂河原 圧力源推定結果 Lat:31.9271 Lon:130.8388 Dep:7.2km V:-1.2 10 7 m 3 御池 図 4-2. 球状圧 源を仮定した霧島 新燃岳噴 前後における圧 源推定 ( 噴 前後のペアにより推定された圧 源から期待される 渉縞パターン ) 2010 年 11 月から 2011 年 2 月の北行軌道 ( 図 3-2 の 3) のデータを使い,MaGCAP-V( 福井ほか,2010) を用いた圧力源推定を行った. 球状圧力源 (Mogi,1958) を仮定し計算した結果, 韓国岳の西北西約 5km の深さ約 7km に 1.2 10 7 m 3 の体積減少量で位相変化を説明できることがわかった. 11 ページ
2009.06.10 2011.03.16 *1 R:G:B=2 回散乱 : 体積散乱 :1 回散乱 R:G:B=VV:(HV+VH)/2:HH *2 図 5.ALOS/PALSAR のポラリメトリモードによる噴 前後における判読結果 ( 上段 : 噴 前, 下段 : 噴 後, 左図 :Pauli カラー合成, 右図 :Sinclair 合成 ) 左図 赤, 緑. 青色は対象点における散乱の違いによる強さを示している. ほとんどの場所で体積散乱が優勢であるが, 噴火前後で新燃岳火口内は表面散乱から溶岩蓄積により体積散乱に変化している. また, 火口から南東方向にかけての降灰域では体積散乱から表面散乱に変化していることがわかる. 右図 偏波による後方散乱パターンの強度を示す. 黒色は後方散乱が弱い箇所を示す. 噴火前の火口内は VV が強いが, 噴火後は HV や VH が強くなっている. また, ほとんどの場所で HV,VH( 植生域 ) が優勢であることがわかる. *1 一般的に 1 回散乱は池や川, 田んぼ,2 回散乱は人工構造物, 体積散乱は森林などが該当する. *2 一般的に H は水平偏波,V は垂直偏波を示し, 記号の順番は受信 送信の順を示す. 12 ページ
2011.02.07(11:08) 2011.02.19(11:04) 新燃岳 新燃岳 2km 御鉢 2011.02.26(10:53) 御鉢 2km JAXA JAXA 2011.03.08(11:05) 新燃岳 新燃岳 御鉢 御鉢 2km 2011.03.10(10:48) JAXA 2km JAXA 図 6.ALOS/AVNIR-2 による噴 後における新燃岳周辺の判読フォールスカラー * 表 による (R:G:B=4:3:2) 新燃岳防災利用実証実験 衛星解析グループの枠組みで緊急観測された中で, 新燃岳火口周辺において雲が無かったデータの掲載した. これによれば, 新燃岳火口から御鉢 高千穂に御鉢かけての降灰域に大きな変化はないが,2 月 7 日に比べて, 新燃岳山頂火口の東側領域に 2km おいて植生域が広がっているのが判読でき JAXA る. また,3 月 8 日と 10 日の画像からは火口縁 3か所から噴煙が上がっているのが判読できる (2 月 19 日の画像のみ同時撮像された PRISM データを使ったパンシャープン処理を適用し, 地上分解能 2.5m の疑似カラー画像であるが, その他は AVNIR-2 のみによるため, 地上分解能は 10m である.). * フォールスカラー : 植生域が赤く表示される. 13 ページ