れなくなる 特に 小規模の新規参入事業者にとって このリスクに対応するシステムが設けられていなければならない すなわち 万が一 小売販売事業者が倒産した場合には 送電を担う旧電力会社の責任で電力供給が保証されることになっており そのためには 在来の地域独占の旧電力会社が その発電量を補償する仕組みに

Similar documents
Q 切り替えする手続きが面倒じゃないの? A 新しく契約する電力会社へ申し込みをするだけで 今の電力会社へ連絡はせずに切り替えができます また Web でも簡単に申し込み手続きができるようになります Q 停電が増えたり 電気が不安定になったりしないの? A 新電力と契約した場合でも 電気を送る電線や

緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2

UIプロジェクトX

□120714システム選択(伴さん).ppt

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

エネルギー政策の混迷をもたらしている地球温暖化対策 2013/10/04 オピニオンエネルギー政策温暖化対策 久保田宏 東京工業大学名誉教授 地球温暖化防止に全く機能しない京都議定書方式 20 世紀末の地球大気中の温度上昇が 文明活動の排出する膨大な量の CO 2 などの温暖化効果ガス ( 以下 C

宮下第三章

部分供給については 例えば 以下の3パターンが考えられる ( 別紙 1 参照 ) パターン1: 区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ( 又は他の小売電気事業者 ) が一定量のベース供給を行い 他の小売電気事業者 ( 又は区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ) がを行う供給

電通、「エネルギー自由化に関する生活者意識調査」を実施

御意見の内容 御意見に対する電力 ガス取引監視等委員会事務局の考え方ることは可能です このような訴求は 小売電気事業者が行うことを想定したものですが 消費者においても そのような訴求を行っている小売電気事業者から電気の小売供給を受け 自らが実質的に再生可能エネルギーに由来する電気を消費していることを

Microsoft Word - 報告書.doc

下水道は私たちの安全で快適なくらしを支えています

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

PowerPoint プレゼンテーション

問 19. 自由化後に新規参入のガス小売事業者と契約した場合 その後に引っ越しをすると どうなるのですか 海外への転勤などで契約廃止の手続をするにはどうすれば良いですか 問 20. 持ち家 ( 戸建住宅 マンション又は集合住宅 ) に住んでいるのですが 新規参入のガス小売事業者からガスを買うことはで

電通、エネルギー自由化に関する生活者意識の変化を分析

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法改正に関する意見書

例えば 全国に工場や店舗を持つ企業などは 地域に関係なく電力を調達できるようになるため 工場や店舗で使用する電力を一括して購入することが容易になる その場合 一括購入により 調達コストを削減したり 管理がしやすくなったりというメリットを享受できる あるいは 夜間に集中して電力を使用する企業などは 自

PowerPoint プレゼンテーション

家庭の中で最も多くの電力を消費するのが電気冷蔵庫 (14.2%) で 家庭全体の電力消費量の約 7 分の 1 を占めています 続いて照明 (13.4%) テレビ (8.9%) エアコン (7.4%) といった順番になっており この 5 種類を合わせると全体の約 44% になります ( 図 ) この中

FIT/ 非 FIT 認定設備が併存する場合の逆潮流の扱いに関する検討状況 現在 一需要家内に FIT 認定設備と非 FIT 認定設備が併存する場合には FIT 制度に基づく買取量 ( 逆潮流量 ) を正確に計量するため 非 FIT 認定設備からの逆潮流は禁止されている (FIT 法施行規則第 5

RIETI Highlight Vol.66

東洋インキグループの環境データ(2011〜2017年)

「経済政策論(後期)」運営方法と予定表(1997、三井)

では もし企業が消費者によって異なった価格を提示できるとすれば どのような価格設定を行えば利潤が最大になるでしょうか その答えは 企業が消費者一人一人の留保価格に等しい価格を提示する です 留保価格とは消費者がその財に支払っても良いと考える最も高い価格で それはまさに需要曲線で表されています 再び図

05JPOWER_p1-40PDF.p....

<4D F736F F D208CF68BA48C6F8DCF8A C30342C CFA90B68C6F8DCF8A7782CC8AEE967B92E8979D32288F4390B394C529332E646F63>

2 I. 電力小売自由化後の課題 II. 都市ガス自由化に向けての課題 III.LP ガスの課題 まとめ

Microsoft PowerPoint - 08economics3_2.ppt

Microsoft Word 後藤佑介.doc

Microsoft PowerPoint - 22_容量市場(松久保)

種類以上 再生可能エネルギー 100% のメニューだけでも 5~60 種類あり 新規参入が低調になりやすい家庭部 門においても 豊富な選択肢が確保されている 表 1: 米国の全面自由化実施州における新規参入状況 自由化中断 廃止州 : 7 州 ( カリフォルニア ネバダ アリゾナ ニューメキシコ モ

次世代エネルギーシステムの提言 2011 年 9 月 16 日 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター Copyright (C) 2011 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

水力の導入ポテンシャル発電量の総発電量に対する比率 *6 ; 環境省報告書 ( 文献 1-2) には記載なし この値は 国内の人口林が 100 % 利用されたと仮定し 用材の生産 使用の残り廃棄物の全量を発電に利 用した場合の推算値 ( 文献 1-3 ) FIT 制度の適用を前提とした再エネ可能発電

企業ネットワークによる地球温暖化に関する政策提言についてのアンケート

バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

北杜市新エネルギービジョン

Microsoft PowerPoint _04_槌屋.ppt [互換モード]

番号文書項目現行改定案 ( 仮 ) 1 モニタリン 別表 : 各種係 グ 算定規程 ( 排出削 数 ( 単位発熱量 排出係数 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 -

今回の調査の背景と狙いについて当社では国のエネルギー基本計画の中で ZEH 普及に関する方針が明記された 200 年より 実 邸のエネルギー収支を調査し 結果から見えてくる課題を解決することが ZEH の拡大につなが ると考え PV 搭載住宅のエネルギー収支実邸調査 を実施してきました 205 年


問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

内の他の国を見てみよう 他の国の発電の特徴は何だろうか ロシアでは火力発電が カナダでは水力発電が フランスでは原子力発電が多い それぞれの国の特徴を簡単に説明 いったいどうして日本では火力発電がさかんなのだろうか 水力発電の特徴は何だろうか 水力発電所はどこに位置しているだろうか ダムを作り 水を

別添 4 レファレンスアプローチと部門別アプローチの比較とエネルギー収支 A4.2. CO 2 排出量の差異について 1990~2012 年度における CO 2 排出量の差異の変動幅は -1.92%(2002 年度 )~1.96%(2008 年度 ) となっている なお エネルギーとして利用された廃

産業組織論(企業経済論)

PowerPoint プレゼンテーション

) まとめ シート 複数の電源に共通する条件等を設定します 設定する条件は 以下の 6 つです. 割引率 - 0% % % 5% から選択. 為替レート - 任意の円 / ドルの為替レートを入力. 燃料価格上昇率 ( シナリオ ) - 現行政策シナリオ 新政策シナリオを選択 4. CO 価格見通し

資料3-1 温室効果ガス「見える化」の役割について

これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

PowerPoint プレゼンテーション

海外における電力自由化動向

昨年の値上げは査定による圧縮で 家庭用は全社とも10% 以内であった 電力会社にコスト抑制努力を求めるのは当然であるが 原価の大半を占める燃料費の抑制のため 2017 年 4 月には米国産シェールガスの調達が拡大して現在の6 割程度のコストで調達可能になっているという 将来への期待値 を前提とした査

1. はじめに 1 需要曲線の考え方については 第 8 回検討会 (2/1) 第 9 回検討会 (3/5) において 事務局案を提示してご議論いただいている 本日は これまでの議論を踏まえて 需要曲線の設計に必要となる考え方について整理を行う 具体的には 需要曲線の設計にあたり 目標調達量 目標調達

規制の事前評価の実施に関するガイドライン(素案)

Microsoft PowerPoint - 電力自由化_一般.pptx

<4D F736F F F696E74202D203033A28AC28BAB96E291E882C6B4C8D9B7DEB05F89FC92E894C55F88F38DFC B8CDD8AB B83685D>

Ⅱ 主な改革内容 上記の 3 つの目的からなる電力システム改革につき 以下の 3 つの柱を中心として 大胆な改革を現実的なスケジュールの下で着実に実行する 1. 広域系統運用の拡大 電力需給のひっ迫や出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大に対応するため 国の監督の下に 報告徴収等により系統利用者

新電力のシェアの推移 全販売電力量に占める新電力のシェアは 216 年 4 月の全面自由化直後は約 5% だったが 217 年 5 月に 1% を超え 218 年 1 月時点では約 12% となっている 電圧別では 特別高圧 高圧分野 ( 大口需要家向け ) は時期により変動しつつも 全体的には上昇

産業組織論(企業経済論)

Microsoft Word - intl_finance_09_lecturenote

電気事業分科会資料

電力事情 BOP 実態調査レポート 調査実施日 :2012 年 12 月 調査対象 ヒヤリング : ダッカ電力供給会社 (DESCO) ダッカ農村電化庁 (REB) アンケート : ダッカ ( 都市と農村の中間地にあるサバール地域 ) の 26 名 ( 男性 6 名 女性 20 名 ) バングラデシ

Microsoft PowerPoint - NIES

スライド 1

電力事情 BOP 実態調査レポート 電力の使用状況 ケニアでは 多くのエネルギーが経済発展のために使われているが 主なエネルギー源は電力 なかでも水力発電による電力とされていた しかし エネルギー省が 2011 年に発表した数字では バイオマス燃料がその主流を占めていることが判明した 多くのケニア人

平成 28 年度エネルギー消費統計における製造業 ( 石油等消費動態統計対象事業所を除く ) のエネルギー消費量を部門別にみると 製造部門で消費されるエネルギーは 1,234PJ ( 構成比 90.7%) で 残りの 127PJ( 構成比 9.3%) は管理部門で消費されています 平成 28 年度エ

報告書の主な内容 2012 年度冬季の電力需給の結果分析 2012 年度冬季電力需給の事前想定と実績とを比較 検証 2013 年度夏季の電力需給の見通し 需要面と供給面の精査を行い 各電力会社の需給バランスについて安定供給が可能であるかを検証 電力需給検証小委員会としての要請 2013 年度夏季の電

平成22年3月期 決算概要

スイッチングの状況 (2017 年 3 月時点 ) 本年 3 月末時点での新電力への契約先の切替え ( スイッチング ) 件数は約 4.7%( 約 295 万件 ) 大手電力 ( 旧一般電気事業者 ) の自社内の契約の切替件数 ( 規制 自由 ) は約 4.1% ( 約 258 万件 ) であり 合

資料2-1 課税段階について

<4D F736F F F696E74202D D34966B8BE38F428E735F907B8E52976C C835B83932E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

第1章

7 月 18 日エイモリー ロビンス博士講演ロビンス博士が語る 新しい火の創造 3.11 以降のエネルギー政策の違いがドイツに成功をもたらした 3.11 以降の日本とドイツのエネルギー事情を比べると興味深い事実がわかる 面積当たりに換算した再生可能エネルギーの資源量は 日本はドイツの 9 倍になる

2017(平成29)年度第1四半期 決算説明資料

MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

お知らせ

既設風力発電事業の採算性(事業者)

大阪電力選べる環境づくり協議会

電通、「第3回エネルギー自由化に関する生活者意識調査」を実施

スライド 1

PowerPoint プレゼンテーション

NHK環境報告書2008

( 出所 ) 中国自動車工業協会公表資料等より作成現在 中国で販売されている電気自動車のほとんどは民族系メーカーによる国産車である 15 年に販売された電気自動車のうち 約 6 割が乗用車で 約 4 割弱がバスであった 乗用車の中で 整備重量が1,kg 以下の小型車が9 割近くを占めた 14 年 8

企業経営動向調査0908

参考 :SWITCH モデルの概要 SW ITCH モデル は既存の発電所 系統 需要データを基にして 各地域における将来の自然エネルギーの普及 ( 設備容量 ) をシミュレーションし 発電コストや CO 排出量などを計算するモデルです このモデルでは さらに需要と気象の時間変動データから 自然エネ

産業組織論(企業経済論)

特別企画コンファレンス

目次 要旨 背景と目的 はじめに 電力自由化とは 日本の電力自由化経緯 本研究の目的 分析手法 データの選定 データ分析手法 データ分析結果

「経済政策論(後期)《運営方法と予定表(1997、三井)


<4D F736F F F696E74202D C5817A936497CD8EA BB8CE382CC89CE97CD94AD A8E912E >

スライド 1

調査要領 1. 調査の目的 : 4 月からの電力の小売り全面自由化に対する会員事業所の意識及びその影響を把握し 今後の参考資料とする 2. 調査実施機関 : 甲府商工会議所 3. 調査実施時期 : 平成 28 年 3 月 24 日 ( 木 )~31 日 ( 木 ) 4. 調査対象 : 当所会員 30

< F2D916688C481698A A E6A>

Microsoft Word - â•»FIXâ•»190527_FIX_ㅋㅬㅳㅛ緑ç€flWEBPR5朋.docx

(1) 住民は有料化をどう考えているか 循環型社会の形成に関する世論調査 ( 内閣府平成 13 年 ) ごみ問題にどの程度関心があるか 非常に関心がある (32) ある程度関心がある (58) あまり関心がない (8) まったく関心がない わからない (2) ごみの有料化 に対してどのように思うか

2007年12月10日 初稿

2018年度第1四半期 決算説明資料

Transcription:

電力の小売りの自由化 ; 何のために? 誰のために? 脱原発のための消費者の原発電力不買運動を推進するために 東京工業大学名誉教授久保田宏 1. 電力の小売り自由化の目的と目標は? ( 発送電分離が電力小売り自由化の前提になっている ) 先ず この 4 月から実施される電力の小売り自由化の目的と意義について考えてみる 今までの 一般電気事業者 ( 電力会社位 ) に独占されていた電力の生産 販売事業への自由な参入を広く認める理由としては 政府が 今までの電力会社が 事業の独占によって 必ずしも適正とは言えない電力料金を消費者に押し付けてきたことを暗黙に認めた上で 自由化 という市場経済原理を導入することで この体制を改めることだと考えることができる であれば 小売り自由化後の電力生産 販売事業への新規参入事業者が 在来の電力会社より安い電力料金を消費者に提示して 電力の販売契約を結ぶことで 国内電力販売量のなかで一定のシェアが得られるようにならなければならない そこで問題になるのは 新規事業者にとって 現状では 送電線が 在来の電力会社の独占所有物となっていることである したがって 電力の小売り自由化後の新規参入事業者が新しく電力販売事業を行うためには この旧電力会社の送電線を使わなければならない 政府は この旧電力会社から送電部門を分離したうえで この送電線を使用した場合の託送料金を新規参入者 および送電部門を分離した旧電力会社から徴収する仕組みをつくっている ( 送電事業が今までの電力会社の責任で保証されている ) 電力小売り自由化の前提となっている発送電の分離によって 電力販売事業での電力小売り販売料金は 単位電力量 (kwh) 当たり次式で決められると考えられる ( 電力小売販売料金 )=( 電力生産コスト )+( 送電コスト = 託送料金 ) +( 販売事業コスト )+( 販売事業利潤 ) ( 1 ) このなかで ( 送電コスト ) は 主として 既設の送電設備の維持管理費となると考えられるが 自由化前の電力会社の独占地域ごとに政府によって ( 託送料金 ) として決められている ( 電力小売販売料金 ) は 事業者が一定の ( 販売事業利潤 ) が得られるように決められると考えられるが これを主として支配するのは ( 電力生産コスト ) であるから この ( 電力生産コスト ) が変動した場合 契約販売価格が固定されたままでは ( 事業利潤 ) が得ら 1

れなくなる 特に 小規模の新規参入事業者にとって このリスクに対応するシステムが設けられていなければならない すなわち 万が一 小売販売事業者が倒産した場合には 送電を担う旧電力会社の責任で電力供給が保証されることになっており そのためには 在来の地域独占の旧電力会社が その発電量を補償する仕組みになっている 結局は 発電と送電を一括して 地域独占で 需要と供給をバランスさせて 電力の安定供給の役割を担ってきたこれまでの電力の生産と販売の事業形態は 余り変わらないで残ることになる ( 自由化に伴う電力料金の決め方は エネルギー政策に求められている省エネの目的に逆行する?) 自由化に備えて新規参入者も旧電力会社も いま 消費者への提示電力料金の値下げ競争に入った感がある その主体は 電力以外の商品 例えば携帯電話などとのセット料金と もう一つは 消費量の多い消費者への料金割引がある しかし これらの電力料金の決め方は 経済成長を煽ることで いま エネルギー政策に求められている省エネの要請と逆行するものである 2. 電力小売り自由化は いま 混迷しているエネルギー政策を正す役割を担っている ( 国民に世界一高い電気料金を押し付けてきた原発電力の導入 ) はっきり言って 今までの日本のエネルギー政策は 政治主導で 余りにも科学技術の常識を無視して進められてきたし また これからも進められようとしている その筆頭が 放射能漏れに伴うリスクを安全神話で打ち消すことで 国民の利益を無視して進められてきた原発電力の導入である 3.11 原発事故の現状を見ると 地震国日本では 脱原発こそが エネルギー供給の安全保障対策での最優先課題でなければならない いま 政治主導で進められている原発再稼働の是非を巡る裁判では 原発の稼働時の安全性が問われている しかし 最も安全な対策は原発を持たないこと すなわち 脱原発であるとの科学技術の常識が無視されている 3.11 以後 原発電力ゼロでも電力は足りているが その代償として 化石燃料の輸入金額が増えている しかし それは 高価な石油や LNG が 発電に使われているからである 同じ化石燃料の使用でも 石炭火力の比率が高ければ原発代替の化石燃料の輸入金額の増加は ずっと少なかった これが私が主張する 石炭があれば原発は要らなかったし いまも要らない と訴える理由である (FIT 制度の適用による再エネの利用が 国民にとっての電力料金をさらに押し上げている ) 次いで エネルギー政策のなかに闖入したのが 地球温暖化対策のための CO2 の排出削 2

減のための FIT 制度の適用による再エネ電力の利用の拡大である しかし 地球温暖化の問題は地球の問題である いま 世界の CO2 の排出量の 4 % 弱しか占めていない日本が 国民の経済的な負担で 再エネ電力の利用を増やして見てもどうしようもない これも私の提案だが 世界各国が協力して 今世紀末までの平均の一人当たりの化石燃料の年間消費量の値を現在 (2012 年 ) の値に抑えることができれば IPCC の訴えるような温暖化の脅威は起こらない これを 世界に向って訴えることこそが 技術立国日本の義務でなければならない なお 世界の化石燃料の消費量 (=CO2 の排出両 ) の半分以上は 電力以外のエネルギー消費のための使用である 本来 再エネ電力の利用は 化石燃料の枯渇後のその代替である それが いま 地球温暖化対策のために さらには 原発電力の代替としての今すぐの再エネの利用になっている しかし 今すぐの再エネ電力の利用では 電力料金の値上げにつながる不条理な FIT 制度を使っても原発電力を代替できない 原発電力の代替であっても 地球温暖化対策としての CO2 の排出削減であっても 再エネ電力の導入は FIT 制度の適用なしの市場経済原理に基づく導入でなければならない 3. 電力自由化に際してのエネルギー供給事業のあるべき姿 ( 電力自由化が要求されなければならないもう一つの理由 ) 4 月から始まる自由化に備えて 電力の小売販売事業に 190 社を超す企業が参加登録を済ませている しかし これらの企業の多くが 現在 電力の生産を行っていない この場合 販売する電力はどうやって調達するのであろうか? 結局 多くの新規参入企業は この自由化をビジネスチャンスとして捉え 電力小売り販売事業に乗り遅れまいとして とにかく登録だけはしておこうとしているのではなかろうか? 電力自由化が 電力生産 販売事業への新規参入を促すためであるとすれば いままで 化石燃料資源量で表される一次エネルギーとして 半分以上を占める化石燃料の電力以外のエネルギーへの利用 販売を事業としてきた都市ガス販売企業や石油元売り会社にとっては この電力自由化が 化石燃料の枯渇 ( ここで 枯渇とは その資源量が減少し その市場価格が上昇して使えたくとも使えなくなることを指す ) 後の新しいエネルギー供給事業の展開に途を拓くものと考えることができる それは これらの事業者は いま 化石燃料の枯渇を前に 新しい事業展開を必要とせざるを得ない経営上の大きな分岐点にさしかかっているからである 具体的には これら電力以外のエネルギー供給事業者に 将来的には 化石燃料の代替の再エネ電力の生産事業を担って貰う必要があると考えるが 再エネ電力の生産コストが割高で FIT 制度の適用なしでは実用化が困難な現状から 当面は 安価な石炭火力による電力を供給して貰い やがて 再エネ電力の利用が安くなれば 再エネ電力の利用へと切り替えて貰えばよい また この新規事業のなかには 再エネ電力の利用に伴って 将来 3

必然的に要求される電気自動車の実用化を含む輸送機関の電化のための社会インフラの整備事業の役割も含まれるべきである ( 契約消費者の希望する電力の種類をどうやって供給できるのであろうか?) 電力自由化の目的は 消費者にとって 単に安い電力だけでなく 多少高くても 好みの電力の種類を選ぶことができることにもあるとされている しかし 今回の発送電分離を前提とする自由化では 各種の電力が 地域を支配する送電会社の送電網を使って 消費者の要求量に応じて混合して供給されるために 消費者が必要とする電力の種類を選別して利用することは困難と言うより不可能である では どうなるのであろうか? 例えば いま 要望の多いとされる再エネ電力について考えてみる この場合 消費者は 自分の要望する再エネ電力を生産 販売する新規事業者との契約電力量を増やす この場合 再エネ電力の利用を希望する消費者は 直接 再エネのみを利用できないが 国内の総発電量のなかの再エネ電力の比率が高まることで 間接的に 消費者の希望が満たされることになる ( 再エネ電力の利用 普及のために設けられた FIT 制度は 自由化の目的に完全矛盾する ); ところで 現状では再エネ電力は FIT 制度の適用なしには導入できない したがって 政府は 自由化後も 再エネ電力の導入に FIT 制度の適用を考えているようである であれば 再エネ電力の導入による電力料金の値上げは 再エネ電力の購入を希望する消費者だけの電力の値上げとすべきである しかし もし そのようなことをしたら 再エネ電力の契約消費者の電力料金は 大幅に上昇して 再エネ電力の購入希望者でも そこまで高い料金で再エネ電力を購入したいとは思わなくなるであろう そこで 政府は いま 再エネ電力に対する FIT 制度の適用による電力料金の値上げを 全ての消費者に均一に割り振ることにしているようである これでは 明らかに 消費者が 安い電力を自由に選ぶことができるとする自由化本来の目的に反する詐欺的な行為と言わざるを得ない このような ごまかしをやってみても 自由化後も この FIT 制度の適用によって再エネ電力の利用が拡大されるとは考えられない それは 現在 再エネ電力の主体として 最も高い買取価格で その利用の拡大を図ろうとしている太陽光発電で それを買取らされている電力会社の要望で 買取価格を下げざるを得なくなり 新規の再エネ電力の生産が収益事業として成立しなくなってきているからである もともと再エネ電力の利用は 化石燃料の代替としての利用である 自由化の目的が消費者にとっての安い電力を利用できるようにすることであれば 現状の火力発電主体の電力料金の値上げにつながる FIT 制度の適用による再エネ電力の利用はあり得ない すなわち 再エネ電力は 化石燃料枯渇後の FIT 制度の適用無での利用でなければならない ( 脱源発を訴える国民の声を政治に反映させるための原発電力不買運動を推進するために ) 4

もう一つ 自由化に伴う電力の種類の選択の課題として いま 原発の再稼働阻止のためとして話題になっている原発電力の不買運動がある この原発電力の不買運動とは 消費者が 新規参入事業者との間で原発を含まない電力の買電契約量を増やすことである しかし この新規参入事業者が 消費者の要望を満たすだけの電力生産能力をもたなければ その事業者は 他の余裕のある事業者からの電力の供給を受けなければならないが この電力供給に最終責任を負うのが 上記したように在来の電力会社である したがって その地域に 原発の再稼働を行わない電力会社があればよいが そうでなければ 結局は 消費者は 原発電力の入った電力を買わざるを得なくなる もちろん このような場合でも この原発不買運動が大きく広がれば 電力会社の原発再稼働停止に一定の圧力を加えることにはなるであろう したがって 当面は この圧力を少しでも増加させるためにも 脱原発を願う消費者にとっての新規契約先は 現状で すでに一定の電力生産能力を持っていて 原発を含まない電力を供給できる事業者 具体的には上記したように 都市ガス製造企業や 石油の精製 販売会社等が選択されることが望ましいと考える ただし 4 月からの自由化への移行に際し 現在 電力会社から電力の供給を受けている全ての消費者は 黙っていれば 4 月以降も 自動的に この電力会社との間の買電契約が続けられる仕組みになっている したがって この電力会社以外との新規契約を希望する消費者には 新規契約のための積極的な行動が求められなければならない これに対して 今回自由化の主な対象になっている一般家庭用の供給電力量は 旧電力会社の発電量の 4 割近くを占めている したがって 電力会社の原発再稼働停止に圧力をかけるには 少なくとも 国内の世帯数 5,600 万の中の 1/3 程度が この原発電力の不買運動に参加して貰うことが望ましい すなわち この原発電力不買運動を実効のあるものにするには 難しい現実的な課題が残っている 脱原発のための息長い 粘り強い運動が求められる 5