RFID 読本 061-07-01-01
もくじ 1.RFIDとは (1) 用語 (2)RFIDの動作原理 (3) 身近にあるRFID (4)RFIDの特長 (5)RFID 導入の注意点 (6)RFタグの周波数帯別特徴比較 (7)RFIDと国際規格 2. 活用事例 3.RFIDシステム導入前に検討すべきこと
1.RFIDとは Radio Frequency Identification 誘導電磁界又は電波によって非接触で半導体メモリのデータを読み出し 書込みのために近距離通信を行うものの総称 (JIS X0500 2002 年より ) リーダ ライタ装置 アンテナ RFID RF タグ エネルギー コマンド レスポンス 1948 年 HarryStockman の研究論文によって RFID 技術の利用が示唆されました RFID の最初の利用は 第二次世界大戦初期に開発された 航空機の敵機と味方機の識別システム (IFF:Identification of Friend Or Foe system) といわれています
(1) 用語 RF タグ 電波 ( 電磁波 ) を用いて 内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体 電波タグ 電子タグ IC タグ 無線タグ RFID タグ等 様々な呼び方をされていますが JIS( 日本工業規格 ) では RF タグ で定義されています RF タグは 以下のような特徴で分類されます通信周波数帯電池内臓 ( アクティブ型 )/ なし ( パッシブ型 )/ 両方の機能を兼ね合わせたセミアクティブ型リードオンリー / リードライト可能 インレイ ( インレット ) PET フィルムなどの上に IC チップとアンテナを配置したアンテナ付 IC チップ 通常 インレイをプラスチックカードやラベルに封入 合紙した媒体を RF タグとして利用しますが インレイの状態で RF タグとして利用する場合もあります
RFID チップ (HF 帯 ) ISO15693 チップ名 メーカー UID ユーザー メモリ 特徴 I-CODE SLIX NXP 64bit 112バイト メモリ保持期間 50 年 読取距離 :I-CODE SLIに対して20%UP I-CODE SLIX2 NXP 64bit 316バイト オリジナル署名 ユーザーエリアのリードライト保護機 能 デストロイコマンド プライバシーコマンド 16bitカ ウンタ Persistent Quietモード Tag-It HF-I Standard Tag-It Pro Tag-It Plus HF-I HF-I TI 64bit 32 バイト TI 64bit 32 バイトパスワードによる書込み保護機能 kill 機能 TI 64bit 256 バイト
RFID チップ (HF 帯 ) ISO14443 Type A チップ名 メーカー UID ユーザー メモリ 特徴 MIFARE Standard 1k NXP 4 バイト EV1:7 バイト 752 バイト Infinenion 社に互換品あり MIFARE Standard 4k NXP 4 バイト EV1:7 バイト 3440 バイト MIFARE UltraLight MIFARE UltraLight C NXP 7 バイト 48 バイト NFC Forum Type 2 Tag NXP 7バイト 144バイト NFC Forum Type 2 Tag 3DES 暗号化 NTAG213 NXP 7 バイト 144 バイト NFC Forum Type 2 Tag NTAG215 NXP 7 バイト 504 バイト NFC Forum Type 2 Tag NTAG216 NXP 7 バイト 888 バイト NFC Forum Type 2 Tag
RFID チップ (UHF 帯 ) Impinj チップ名 EPCメモリ TIDメモリ ユーザー メモリ 特徴 Monza4D 128bit 48bit 32bit Monza4E 496bit 128bit Monza4QT 128bit 48bit 512bit Monza5 - MonzaR6 96bit 48bit - MonzaR6-P 128bit 64bit
RFID チップ (UHF 帯 ) NXP チップ名 EPCメモリ TIDメモリ ユーザー メモリ UCODE G2XM 240bit 64bit 512bit 特徴 UCODE G2XL - UCODE G2iM 256bit 96bit 512bit UCODE G2iM+ 448bit ユーザー TID: 112bit 640bit タグ不正変更アラーム UCODE G2iL 128bit 64bit - UCODE G2iL+ - タグ不正変更アラーム UCODE 7 128bit 96bit - EPC GEN2 V2 96bit UCODE 7m 32bit EPC GEN2 V2 UCODE 7xm 448bit 96bit 1024bit UCODE 7xm+ 2048bit
RFID チップ (UHF 帯 ) Alien チップ名 EPCメモリ TIDメモリ ユーザー メモリ 特徴 Higgs3 96bit 480bit 64bit 512bit Higgs4 128bit 64bit 128bit Higgs EC 128bit 80bit 128bit 書き換え回数 20 万回 誤り訂正機能
(2)RFID の動作原理 1. リーダ / ライタのアンテナから 情報を電波又は磁界に乗せて送信します 2.RF タグのアンテナがリーダ / ライタからの電波又は磁界を受信します 3. 整流 ( 電波の場合 ) または共振 ( 磁界の場合 ) により RF タグのアンテナに電力が発生します 4. 発生した電力により 制御回路 メモリを動作させ 必要な処理を行います 5.RF タグ内のデータを 電波または磁界に乗せて RF タグのアンテナから返信します 6. リーダ / ライタのアンテナで RF タグからの電波又は磁界を受信します 7. リーダ / ライタの制御部で 電波または磁界から情報を取り出します
(3) 身近にある RFID IC 乗車券 : Suica ICOCA PASMOなど 電子マネー : Edy おサイフ携帯など アクセス管理 : 社員証 入退出カード イモビライザーなど 身分証明書 : パスポート 免許証など 施設入場者管理 : スーパー銭湯など 図書貸し出しシステム 回転寿司単品管理 玩具 : カードゲーム フィギュアなど
(4)RFID の特長 様々な情報を記憶 製造年月日 商品属性 配送情報などを記憶できます 情報の追記 流通経路上など情報の書き込みや追加が可能です 複数同時に読み取り 複数の RF タグを同時に認識することができます 離れた場所から読み取り可能 最大数メートル離れた場所から読み取ることができます ( 周波数帯により読み取り距離は変わります ) 耐環境性 ( 耐水 耐熱 耐薬等 ) 耐水 耐熱 耐薬など 使用環境に合わせた対策が可能です 梱包内でも認識 隠蔽物の影響を受け難く 梱包された中でも認識可能です 複製が困難 ユニーク ID を利用して全ての RF タグを区別可能です
(5)RFID 導入の注意点 RF タグは金属の影響を大きく受けます タグやリーダライタのアンテナの近くに金属類があると 読取りできなかったり 読取り性能が大きく損なわれます 高出力なほど 影響が大きく現れます タグ面とリーダライタのアンテナ面の位置関係タグ面とリーダライタのアンテナの位置関係が垂直だと アンテナの出力がタグに伝わらず 読取れなくなる場合があります ( タグと垂直でも読取りできるアンテナ製品もあります ) 複数の RF タグとの位置関係 複数のタグが重なっていると 相互の干渉で読取れない場合があります ( 重なり合った場合でも読み取れる積層タグという製品もあります ) タグのサイズとアンテナのサイズ 一般的に 小さいタグには小さいアンテナが向いています また 小さいタグで読取り性能を確保したい場合は より高出力なリーダライタが必要となります
(5)RFID 導入の注意点 アンテナ間の距離 複数のアンテナが近接すると 相互干渉により読取り性能が悪化します 一定の間隔をとって アンテナを設置する必要があります 周波数の違いにより 特徴も変わります 長波帯 (LF 帯 ) 短波帯 (HF 帯 ) 極超短波帯 (UHF 帯 ) マイクロ波帯など 各周波数の違いで 通信距離 金属影響 水の影響 タグの形状に差があります 予め特徴をつかんでおく必要があります 100% の読み取り保証はできません 複数のタグを一括して読取る場合に 100% 読取る保証はできません 100% 読取れない場合に 利用者に分かる仕組みを提供して運用する必要があります
(5)RFID 導入の注意点 RFID 機器の海外利用には注意が必要です 国内で使用しているRFID 機器 ( ハンディターミナル リーダライタ プリンタ等 ) を海外で使用する場合は 型式認定取得などその国の電波法に適合させる必要があります また UHF 帯に関しては 使用される周波数帯が地域によって異なるため特に注意が必要です 医療機器への影響 米国 902-928MHz : 26MHz 欧州 856-868MHz : 3MHz ( 検討中 915-921MHz : 6MHz) 韓国 917-923.5MHz : 6.5MHz 中国 920.5-924.5MHz : 4MHz 豪州 918-926MHz : 8MHz 日本 915-928MHz : 13MHz 総務省にて平成 27 年度 RFID 機器などから発射される電波が医療機器 ( 1) へ及ぼす影響に関する調査が実施されました 上記に対応して JAISA の運用ガイドラインが改定されました ( 2) 運用ガイドラインは RFID 機器の設計 製造を行う 設計 製造業者 および販売 施行 運用 保守を行う 専門業者 に対し 医療機器等への影響に関する対応策をわかりやすく かつ 具体的に説明するためのものです 1 医療機器 : 植込み型医療機器 ( 心臓ペースメーカおよび除細動器 ) 2 Doc. No.JAISA-RF140020 Rev.B 検討中 915 928
(6)RF タグの周波数帯別特徴比較 タグサイズ タグ厚さ LF 帯 135kHz 小 薄 HF 帯 13.56MHz 水や金属の影響を受けにくいが 通信距離は短い バランスがよく幅広い用途での使用が可能 製造難易度 易 長 通信距離 マイクロ波帯 2.45GHz UHF 帯 タグの小型化が可能だが 環境から受ける影響が大きい 通信距離が長いが タグサイズは大きめ 少 少 干渉 水 金属の影響
(7)RFID と国際規格
2. 活用事例 エアー緩衝材用フィルム管理 エア緩衝材製造機 : 装置本体に フィルムをセットして エアバッグタイプの緩衝材をその場で製造する装置 HF 帯ラベルプリンター エアー緩衝材製造機 HF 帯アンテナ組込み 製造された緩衝材 フィルムの紙管に 弊社プリンタで発行された RFID ラベルが貼付されている 装置本体には RFID の送受信アンテナとリーダライタが組み込まれている RFID の ID に紐づいて ユーザー固有情報 販売店仕向名 生産量などが認識される RFID で管理することにより 不正なフィルムの流出を防止し 販売店価格の保護にも貢献することが出来るため 販売店 ( 商社 代理店 OEM 元 ) は 安心して販売することが出来る RFID を活用して顧客管理をする緩衝製造機は 日本国内初
2. 活用事例 ギター製造工程進捗管理 HF 帯リライトプリンター 消去 ボディ組み立て時 ボディのシリアル番号と裏板裏面に貼付された RHM 表面に印字されたシリアル番号の目視によるマッチング確認を行う 人為ミス防止 ボディ背面に HF 帯ハンディスキャナをかざすだけ リアルタイムで工程の進捗を管理 棚卸し時間の短縮 運用 印字 RHM: リライタブルハイブリッドメディアの略
2. 活用事例 UHF 帯アパレルタグによる管理 UHF 帯アパレルタグプリンター 店舗業務の大幅な効率化が図られた センターからの入荷検品作業 棚卸作業下げ札が見えなくも検品 棚卸が可能閉店後 2 人で 4 日の作業 1 人で 1 日に短縮! 会計業務商品をアンテナ上のレジカウンタにのせるだけ
2. 活用事例 ピッキング指示兼物流かんばんシステム コンテナに差込む 仕分け RHM かんばん発行 デジタルピッキング 誤配率 0.04% 0.005% 以下 完全ペーパーレス化年間 740 万枚 ( 約 30トン ) 削減 当日出荷受付時間の延長午後 4 時 午後 6 時 在庫量の削減平均 28 日 25 日
2. 活用事例 メッキ治具管理 メッキ工程投入時に治具に取り付けた UHF 帯 RF タグを読んでメッキ治具の使用回数を管理する 耐溶剤性のある UHF 帯 RF タグ ( メッキ治具には 結束バンドで取付 ) BlueTooth 通信 UHF 帯ハンディ AT-880 UHF PC メッキ治具 ( 約 4,000 本 ) 管理ソフト メッキ治具の劣化を使用回数で管理することにより 劣化の目安となる使用回数に達した時点で新しい治具に入れ替え メッキ品質が安定した メッキ治具の棚卸も楽になった
2. 活用事例 作業実績管理 タグ発行 Web サーバー 発行データ実績データ 無線 LAN 通信 タグ回収 現品カード発行 ( リライト NFC タグ ) 行 基幹サーバー 製品 A 現品票カードに端末をかざす 開始カードに端末をかざす 各工程 終了カードに端末をかざす NFC 利用でシステム導入コストを抑えることができた (1) 安価なAndroid 端末 (2) 端末側のアプリ不要 かざすだけの操作なので 運用の負荷なく作業実績を収集することができた 端末側にソフトが不要なWebアプリケーションシステムなので システムのアップデートが楽になった
3.RFID システム導入前に検討すべきこと RFID システムを採用する必要があるか? 課題抽出および導入目的と期待する導入効果の明確化 作業精度の向上 作業時間の短縮 / 作業の効率化 トータルコストの削減 セキュリティレベルの向上等 業務分析 運用設計 業務 対象物 利用環境に適したハードウェア選定 タグの選定 リーダライタの選定 その他の機器選定 場所 地域 フィージビリティ スタディの実施 実環境での事前検証 選定したハードウェアで期待した導入効果を得られるか 期待する導入効果を見込めるかの総合的判断
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