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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

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( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

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民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

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認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

Transcription:

米国情報 担当 : 外国情報部杉本渉 2007-1441, -1463 TECHNOLOGY LICENSING CORPORATION (TLC) v. VIDEOTEK, INC., and GENNUM CORPORATION 2008 年 10 月 10 日判決 1. 事件の概要 TLC はテレビジョンにより受信されたビデオ信号から同期信号を分離する装置や方法に関する米国特許 5,486,869( 以下 869 特許 ) 及び米国特許 5,754,250( 以下 250 特許 ) を Videotek が侵害するとして提訴し Videotek は同期信号分離チップの供給業者である Gennum による補償を求めて提訴し Gennum は TLC の特許無効の確認を求めて提訴したのに対し TLC は Gennum における侵害の法的責任について反訴した TLC と Videotek との事件は決着したが TLC と Gennum との事件はカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所での事実審 (trial court) として争われた 事実審では基本的に Gennum の主張 ( 特許無効 ) が認められた TLC は上訴し Gennum も交差上訴した CAFC は 主に (a) 先行出願日の利益について争いがあるときに特許権者と被疑侵害者との間で立証責任はどう割り振られるのか (b) 先行出願の記載は後の出願のクレームに記載された技術をサポートするのかを争点とし その結果 事実審の判決を支持した 2. 背景 (1) 特許技術一般にテレビジョンが受信するビデオ信号には画面上に1ライン毎に画像が再生されるよう各ラインの最初であることを示す同期信号が含まれており ビデオ信号から同期信号を分離する回路が必要となる 同期信号は所定電圧のフロントポーチとバックポーチとの間で低電圧になるパルスから成り ビデオ信号と電圧閾値との比較により同期信号は分離される TLC の特許は 原出願 (1992 年 2 月出願 ) と継続出願 (1993 年 12 月出願,869 特許 ) と一部継続出願 (1995 年 6 月出願 ) と更なる一部継続出願 (1995 年 12 月出願, 250 特許 ) との4つの出願に基づくものであり これらのうち 継続出願による 869 特許は様々なビデオ信号から同期信号を分離するものに関し 一部継続出願による 250 特許は単一のパルスによる同期信号を分離するものに関する ( 訳者注 : 特に争いの対象となった 250 特許のクレーム 33 と原出願の Fig.3 と一部継続出願 (250 特許 ) の

Fig.16 とを添付する ) (2) 争点 Gennum は Elantec 製の EL4581C チップ (1993 年 5 月にデータシート公表 ) と EL4583C チップ (1993 年 11 月にデータシート公表 ) とを先行技術として提示したのに対し TLC は Elantec 製の両チップが 250 特許クレームの特徴事項を全て満たす点については反論しなかったため 事実審での争点は 主に (a)elantec 製の両チップが 250 特許クレームの先行技術になるか即ち 250 特許の有効な出願日 ( 優先日 ) は原出願の出願日か ( 訳者注 : この争点が立証責任の割り振りの争点につながる ) (b) 原出願の記載が争いのあるクレームを十分にサポートしているかとなった 3. 考察米国特許法 120 条は 112 条第 1 段落の規定による態様によって先の特許出願において開示された後の出願に係る発明は先の出願日の利益を享受できる旨を規定している したがって こうした態様によって 250 特許クレームが原出願によりサポートされている場合には 250 特許の有効な出願日は 1992 年となり Elantec 製チップの 1993 年公表のデータシートは先行技術とならない 事実審では Elantic 製のチップは 250 特許クレームの先行技術になると判断されたが 本訴において TLC は 250 特許クレームの特徴事項が原出願に記載されていることの立証責任が TLC にあるとした点および250 特許クレームが原出願によっては十分にサポートされていないとした点は共に誤りである と主張した (1) 立証責任について立証責任には 一般に 説得責任 (burden of persuasion) と 証拠提出責任 (burden of going forward with evidence (burden of production)) との異なる二つの考え方が含まれる まず 説得責任は 何かを証明しようとする者に割り振られた最終的な責任であり 合理的な疑いを超える程度の立証を必要とするが これに対し 民法では証拠の優越による立証基準 (preponderance of evidence) が存在し 特許法の判例法では明白かつ確信を抱くに足る証明による立証基準 (clear and convincing evidence) が存在する 本件では 原告である特許権者 TLC には 最終的に 民法における証拠の優越による立証基準に従って被疑侵害者 Gennum による侵害を説得する責任がある TLC の訴えに対して Gennum は先行技術による特許無効を積極的に抗弁した この場合 Gennum には 判例法における明白かつ確信を抱くに足る証明による立証基準に従って特許の無効性を説得する責任がある さらに 説得責任は究極的には相手側に移ることになるため 何かを証明しようとする命題の提案者は明確な判断ができない

場合のリスクを抱えることになる ( 即ち 説得責任の観点からみると 本件のように Gennum により十分な証拠をもって抗弁がなされたにも拘わらず TLC がその抗弁に対して直接反論しない場合における特許無効と判断されるリスクを TLC は抱えることになる ) 次に 証拠提出責任は 新たな証拠を提示することや新たな証拠又は既存の証拠から説得力のある主張を行なうことを意味する 本件では 最初に TLC が侵害の証明を伴って議論を先に進める責任を有し 続いて Gennum が先行技術の提示により特許の無効性の証明を伴って議論を先に進める責任を有し 次に TLC が提示された技術は特許クレームの特徴事項を有しないことを証明するか又は有効な出願日は提示された技術の公表よりも前であることを証明して議論を先に進める責任を有する したがって TLC は 後者 ( 有効な出願日についての証明 ) を主張するのであれば 原出願の記載が 250 特許クレームを十分にサポートする十分な証拠を提示しなければならない ( 即ち 証拠提出責任の観点からみても 本件のように TLC が Gennum の抗弁に対して直接反証しない場合は 特許無効と判断される蓋然性が高くなる ) (2) 原出願の記載について原出願の Fig.3 の記載が 250 特許クレーム 33 のステップ (a) の other circuit を十分にサポートしていないという事実審の判断が正しかったのか否かを検証する 記載要件が満たされるには クレームに係る発明を発明者がその出願日に発明していたことを当業者が明確に結論付けられる程度に記載されていなくてはならない などの判例が存在する TLC は 原出願 Fig.3 の抵抗器 R21,R26 が 250 特許クレーム 33 ステップ (a) の other circuit を十分にサポートしていると主張する しかし 一部継続出願 (250 特許 ) には Fig.16 の抵抗器 1604,1605 が level shifting circuit の一部であるとの記載があるものの Fig.3 の抵抗器 R21,R26 については原出願における対応する記載がない もとより 原出願の Fig.3 と一部継続出願 (250 特許 ) の Fig.16 とを比較したときに原出願それ自身をもって 250 特許クレーム 33 について十分な記載があるとは認められない ( 訳者注 : 原出願の Fig.3 のように機能の説明なく単に R21,R26 が示されているのみでは R21,R26 が交流信号や直流信号の入力を考慮した上で特許クレーム 33 の a capacitor に代えられる other circuit に相当するとまでは当業者でも理解できない と判断されたと考えられます ) したがって 原出願には十分な記載がないことの明白で説得力のある証拠 (clear and convincing evidence) がないという事実審の判断には誤りがある との TLC の主張には説得力がない 4. 結論

250 特許クレーム 33 は原出願の 1992 年の出願日の利益を享受することはできず Elantec 製チップの 1993 年公表のデータシートは先行技術となる よって 250 特許は無効であるとの事実審の判決を支持する 添付 1:250 特許のクレーム 33 33. The method of recovering sync from a video type signal including the steps of: (a) coupling said video type signal through a capacitor or other circui thereby establishing a level shifted signal having a sync portion; (b) comparing said level shifted signal to a first known reference to provide a compared signal; (c) selectively adding a current to said level shifted signal wherein the amount and/or polarity of said current is responsive to said compared signal and the D.C. level of said level shifted signal is changed in response to said current; (d) comparing said level shifted signal to a second known reference to provide a second compared signal, which second compared signal is a logic level representation of said sync portion. 添付 2: 原出願の Fig.3 添付 3: 一部継続出願 (250 特許 ) の Fig.16

参考 URL:http://www.cafc.uscourts.gov/opinions/07-1441.pdf 米国情報