公務員の 戦略的政策形成 講座 これからの政策形成に必要な戦略的思考に基づく手法 10 8 手法 (5) 行政版 : ロジック ツリーで政策課題と政策を検討する 淡路富男 行政経営総合研究所 1. ロジック ツリーとはロジック ツリー : 課題や政策を整理し分かりやすく伝える手法 ロジック ツリー ( 論理ツリー ) は 最上位の目的を実現するための 目的に適した具体的な事項を抽出する手法です 目的によって 最上位に位置づけた課題の要素を把握するWHATツリー 課題の原因を追求するWHYツリー 課題の解決方法を追求するHOWツリーがあります 使用 効果 要点 政策形成過程では 主に政策課題の決定 政策の立案で使用する 前者の政策課題の決定では クロス SWOT 分析内容の整理 体系化で使用する 後者の政策の立案では 政策案の構築で使用する 論理的思考の原則である MECE( ミッシー : 相互にダブリがなく, 全体としてモレがない ) の視点で 対象政策に関する問題の整理 (WHAT ツリー ) 原因の追及 (WHY ツリー ) 解決案の体系化 (HOW ツリー ) を可能にする 思考のプロセスが明瞭であることから多様な意見が反映でき 目的と手段の関係や構成要素の因果関係が明瞭になる 対象の全体を鳥瞰できることからダブリやモレを確認できる 他の人が内容を理解しやすいことから参画が得られ易い - 1/6 -
2. ロジック ツリーの内容 ロジック ツリーの表現形式ロジック ツリーの基本的な表現形式は 結論 その理由 根拠になります ( 下図参照 ) 縦列になる論旨の一貫性と 横列の項目のお互いの整合性を重視する階層構造です 縦列の一貫性は 結論から根拠に至る WhySo?( なぜ そうなるのか / 主にダブリの最小化 ) と 逆にいくつかの理由から結論を推測する SoWhat?( だから どうなるか / 主にモレの最小化 ) で展開します 目的と働き ( 原因 ) の関係になっているかを確認します 横列の整合性は 理由と根拠をMECEの適用で確認します 目的と働き ( 原因 ) の関連から 働きにダブリやモレがないか 内容が同じレベルであるかを確認します メジック ツリーの構成ロジック ツリーの構成は次のようになります トップボックス: 課題 結論 主張を記入する トップボックスには 課題 :~の原因は何か 結論:~が停滞の背景である 主張点 解決する方法は~である といった主語と述語で内容を明記する 複数階層 : 階層 1で理由を階層 2で根拠を記入する 各階層は 1 つ上の階層の具体的な原因や解決策になっている 例えば 階層 1の理由は 結論を明記したトップボックスの理由の関連になる 各階層のレベルを同じにする 各階層はMECEにする 階層 1と2は特に注意する これ以下の階層はできるだけMECEにする 階層が下位になるほど内容は具体的になる ツリーの種類 課題(WHATツリー: 全体像を漏れなくダブりなく把握する 何なの 課題の構成要素はなに ) 原因(WHYツリー: 物事の真因を見つける なぜ ) 対策 手段(HOWツリー: 課題に対しての具体的な解決策を考える どのように 具体的な解決策は ) - 2/6 -
- 3/6-3. ロジック ツリー実例ロジック ツリーは 政策形成で 政策対象の分析する その内容をツリー状に階層化する 分解 展開 整理し全体をダブリやモレがない状態で把握する 政策課題を体系化して優先順位を設定して取り組むべき政策課題を決定する といった過程で使用される有効な方法です 課題に関する要素 原因 方法を考えるロジック ツリ - 下図は 観光事業をどのようにすべきか といった課題に対して 結論 を明らかにしたロジック ツリーです 検討は既知のフレームワークを活用して 上から考えるトップダウンの方法と 課題に関する事項を多面的に検討し その結果をグルーピングしながら結論を考えるボトムアップの方法があります 対象の構造がわかっている場合は トップダウンの方法を採用します どちらの方法でもロジック ツリーが完成したら 両方の方法で見直し 縦の一貫性 横の整合性を確認します コトラーに学ぶ公務員のためのマーケティング教科書 ( 同友館 )P109 参照 プレゼンテーションの場合階層構造のロジック ツリーは 人が考えを深めていくプロセスに適合していることから 下記に留意してブレゼンテーションで活用することで 聞く人が理解しやすい説明になります プレゼンテーションの構成は 結論 理由 根拠とします 地元資源と協働を活かした複合型の観光事業を拡大すべきです地元資源と協働を活かした複合型の観光事業を拡大すべきです観光 + 複合サービスへのニーズが高まる観光 + 複合サービスへのニーズが高まる協働経験のある住民と経営者が多い協働経験のある住民と経営者が多いマーケティングに強い職員の強みが活かせるマーケティングに強い職員の強みが活かせる観光に関連した複合的なニーズを求めている観光に関連した複合的なニーズを求めている観光目的の交流人口が増加している観光目的の交流人口が増加している協働塾の卒業生が企業で活躍している協働塾の卒業生が企業で活躍している地元の観光協会や商工会議所の活用が可能である地元の観光協会や商工会議所の活用が可能である協働に関するリーダーシップが発揮できる協働に関するリーダーシップが発揮できる政策形成へのマーケティング適用ノウハウがある政策形成へのマーケティング適用ノウハウがある潜在資源が豊富でコンセプト力があれば競争力増潜在資源が豊富でコンセプト力があれば競争力増他にない自然と未知の観光資源が多い他にない自然と未知の観光資源が多い地域内に県立芸術館がある地域内に県立芸術館がある市場協働組織競争ロジックツリーによる根拠明示課ロジックツリーを活用した仮説構築での政策課題の決定
1. 結論 (Conclusion): この政策は住民生活の向上に貢献できます 2. 理由 (Reason) : その理由は3つあります 最初の理由は~ 2つめの理由は~ 3つめの理由は~ 2. 根拠 (Fact) : この3つの理由を裏づけるものとして それぞれに以下のような事実や実績があります 最初の理由の政策については~ 2つめの理由の住民コストについては~ 3つめの理由の住民協働については~と なっています 以上の理由とその裏付けからこの政策は住民生活の向上に貢献します ( 最後に結論を繰り返す ) 4. 政策形成でのロジック ツリーの活用現場で使用する際には 下記の活用ポイントに留意します 活用ポイント (1): 理由を記載する階層 1の編成は3~5にする他の人に説明する場合は トップボックスに記入した結論の理由は 3つ程度 多くても5つ以内にまとめて階層 1とします 結論に関する理由が多くなると 理由に関する階層 2になる根拠に関連した情報量が多くなり 結論に対する理解が散漫になります 理由が5つ以上になる場合には グループ化して3~5にまとめます 理由に関する根拠の数も3つ以内します ただ チーム内で課題解決の為に原因を把握する場合は この限りではありません 活用ポイント (2): 階層 2 の根拠は事実と数値を活用する 理由の根拠については 実例や具体的な数値を活用した情報を使用します 理由の 正確度と説得力が向上します 活用ポイント (3):MECE( ミッシー ) の完成度を余り気にしないロジック ツリーの策定では ダブリやモレを少なくすることが大切です しかし MECEの完成度に過度に固執しないことも必要です ここで大事なのは MECE を意識して 可能な範囲でモレとダブリをなくすことです - 4/6 -
動画掲載 - 本講座の動画版が完成 - 本講座の動画版 :YouTube への掲載も開始しました 第 1 回 政策形成を戦略的にする 第 2 回 政策形成に必要な戦略的思考の本質とは 第 3 回 政策形成に不可欠な3つの戦略的視点 第 4 回 マクロの環境分析手法であるPEST 分析の使用法 第 5 回 4C 分析がマクロ環境を把握する 第 6 回 価値連鎖分析で強み弱みを把握する 第 7 回 クロスSWOT 分析で政策課題と政策を検討する 本誌の掲載と並行して進めます 下記にアクセスしてご活用下さい https://www.youtube.com/channel/uckmn1mlrcopausx7tnngova 参考資料 本講座は 市長と職員が行政経営改革に続いて 行政マーケティングを活用して 地方の再生 創生を実践することを描いた コトラーに学ぶ公務員のためのマーケティング教科書 ( 同友館 ) を参考にして作成しています 本講座の学習とあわせてご活用下さい また フェイスブックや YouTube にも行政経営や行政マーケティングに関連した動画や資料を掲載しています これも学習の参考にして下さい https://www.facebook.com/tomio.awaji https://www.youtube.com/channel/uckmn1mlrcopausx7tnngova - 5/6 -
- 著者紹介 - 淡路富男 ( あわじとみお ) 行政経営総合研究所代表営業力開発研究所代表民間企業を勤務後 民間大手コンサルティング会社シニアコンサルタント ( 財 ) 日本生産性本部主席経営コンサルタント 同自治体マネジメントセンター 主席コンサルタントを経て 現在は行政経営総合研究所代表 兼職 各自治体長期総合計画審議学識委員 各自治体行政改革推進学識委員 各自治体職員研修所自治体経営研修講師 管理職向けマネジメント研修講師 各シンクタンクのコンサルティングと研修講師 専門領域 : 総合計画 行政経営改革 マネジメント 公共マーケティング 主な著書 : コトラーに学ぶ公務員のためのマーケティング教科書 ( 同友館 ) ドラッカーに学ぶ公務員のためのマネジメント教科書 ( 同友館 ) 突破する職員になる ( 公職研 ) 共著 三鷹がひらく自治体の未来 ( ぎょうせい ) 自治体マーケティング戦略 ( 学陽書房 ) 民間を超える行政経営 ( ぎょうせい ) コンサルティング 研修 講演のお問い合わせは下記に MAIL URL awaji@jcom.home.ne.jp http://awaji333.jimdo.com/ - 6/6 -