今月の経済 金融情勢 ~ わが国をめぐる経済 金融の現状 ~ 2018 年 12 月 25 日 農林中金総合研究所 調査第二部 http://www.nochuri.co.jp/publication/situation/index.html 1
経済 金融情勢資料 2018 年 12 月 米国 中国 日本 金融市場 米国の経済指標をみると 雇用統計 (11 月 ) の非農業部門雇用者数は前月比 15.5 万人増であった 失業率は 11 月から変わらずの 3.7% だった 全般的には堅調さを維持している 一方 物価は 11 月の個人消費デフレーター ( 総合 ) は前年比 1.8% 食品エネルギーを除くコア部分はともに同 1.9% で推移している 中国の経済指標をみると インフラ整備向け投資の大幅な鈍化や個人消費の弱さなどを受けて 18 年 7~9 月期の実質 GDP 成長率は前年比 6.5% と 4~6 月期 ( 同 6.7%) から減速した 日本の経済指標をみると 民間設備投資の先行指標である機械受注 ( 船舶 電力を除く民需 ) の 10 月分は前月比 7.6% と 2 ヶ月ぶりに増加した 10~12 月期見通し ( 内閣府集計 ) では 前期比 3.6% と 5 四半期連続の増加が見込まれている 10 月の鉱工業生産指数 ( 確報 ) は 前月比 2.9% 製造工業生産予測調査によると 11 月は前月比 0.6% 12 月は同 2.2% と いずれも上昇見込み 全般的には世界貿易の拡大ペースが鈍っていることもあり 国内景気は足踏みしている 長期金利 ( 新発 10 年国債利回り ) は 日銀が 7 月の金融政策決定会合で 強力な金融緩和継続のための枠組み強化 と称して長期金利の操作目標の柔軟運用を決定したため 10 月半ばにかけて長期金利は 0.1% 台半ばまで緩やかに上昇した しかし 最近は株価の調整が続くなど 内外景気の先行きに対する不透明感が強まったことから 再び 0% 近くまで低下している 日経平均株価は 10 月上旬には一時は 24,448 円と バブル崩壊後の最高値を再び更新した その直後 上昇を続ける米国長期金利への警戒 米中経済摩擦の悪影響などが意識され 世界的に株価が下落した 年末にかけても世界経済の先行き懸念が漂うなか 国内企業業績も下り坂との思惑も浮上 1 年 3 ヶ月ぶりに 2 万円を割れるなど軟調な地合いが続いている ドル円相場は 4 月以降はリスクオンの流れとなったほか 米国金利の上昇から円安に転じ 5 月中旬には再び 1 ドル =110 円台に乗せた その後も 時折円高に振れる場面もあるものの 趨勢的には緩やかな円安傾向となり 9 月中旬以降は概ね 113 円を挟んだ展開が続いた なお 足元では米国の利上げペースの鈍化を見込み やや円高圧力が高まっている 原油相場 (NY 市場 WTI 期近 ) は 米国発の株価下落によってリスクオフが強まったほか 世界経済の先行き懸念が広がったことで原油価格は反落 12 月下旬には 40 ドル台前半まで下落 2
米国経済 : 堅調さを維持している (%) 2.5 イールドスプレッドと FF レート誘導目標 ( 政策金利 ) の関係 FF レート 10 年国債 -3 ヶ月 TB 10 年国債 -FF レート (%) 3.5 米国雇用統計 非農業部門雇用者数変化 ( 右軸 ) 失業率 ( 左軸 逆目盛 ) ( 万人 ) 35 30 2.0 1.5 4.0 25 20 1.0 0.5 4.5 15 10 5 0.0 5.0 0 '16.11 '17.5 '17.11 '18.5 '18.11 ( 資料 )Bloombergより作成 米国金融政策 :12 月 18~19 日に開催された FOMC では 政策金利の誘導目標を 2.25~2.5% に引き上げた また 17 年 10 月から バランスシート縮小 ( 米国債については 再投資停止額を月額 300 億ドル 住宅担保証券 (MBS) については再投資停止額を月額 200 億ドルとする ) を続けている 米国経済 : 雇用統計 (11 月 ) の非農業部門雇用者数は前月比 15.5 万人増であった 失業率は 11 月から変わらずの 3.7% だった 全般的には堅調さを維持している 一方 物価は 11 月の個人消費デフレーター ( 総合 ) は前年比 1.8% 食品エネルギーを除くコア部分はともに同 1.9% で推移している 3
中国経済 : 下押し圧力は依然強いが 6.5% 前後 の成長は続く 53 52 51 主要経済指数の推移 製造業 PMI( 左目盛 ) 固定資産投資 ( 右目盛 ) ( 年初来累計前年比 %) 50 5 '16.11 '17.5 '17.11 '18.5 '18.11 ( 注 ) 固定資産投資は農村家計を除く値 9.5 9 8.5 8 7.5 7 6.5 6 5.5 中国株価 為替の推移 ( ポイント ) 人民元高上海総合指数 ( 左目盛 ) 中国 人民元 / 米ドル ( 右目盛 ) 3,750 6.2 6.4 3,250 6.6 2,750 6.8 2,250 7 ( 資料 )Bloombergより作成 中国経済 : インフラ整備向け投資の大幅な鈍化や個人消費の弱さなどを受けて 18 年 7~9 月期の実質 GDP 成長率は前年比 6.5% と 4~6 月期 ( 同 6.7%) から減速した 足元の経済指標を確認すると 下振れ圧力は続いているものの 固定資産投資の持ち直しの動きなどから 大幅な成長鈍化には至らないと見込まれる 金融市場 : 中国経済の減速懸念が高まっているほか 米中通商協議 (19 年 3 月 1 日まで ) をめぐる不確実性もあり 上海総合指数は下落基調で推移している 米中首脳会談 (12 月 1 日 ) を受けて人民元安 ドル高が一服したものの 米国の金融政策正常化が進められたほか 中国の緩和気味な金融政策などを受けて 再び人民元安 ドル高に転じた 4
国内経済 : 足踏み ( 千億円 ) 国内 : 機械受注 ( 船舶 電力を除く民需 ) (%) 国内 : 鉱工業生産 製造工業生産予測 (%) 10.0 機械受注受注額 ( 季調済 ) 3 ヶ月移動平均四半期見通し 5.0 前月比 ( 季調済 左軸 ) 前年比 ( 右軸 ) 9 9.5 2.5 6 9.0 8.5 0.0 2.5 3 0 3 8.0 7.5 10~12 月期見通し前期比 3.6% '17.1 '17.4 '17.7 '17.10 '18.1 '18.4 '18.7 '18.10 5.0 7.5 '16.10 '17.4 '17.10 '18.4 '18.10 6 9 ( 資料 )Bloomberg( 内閣府 機械受注統計 ) より作成 ( 資料 )Bloomberg( 経済産業省 鉱工業生産 ) より作成 機械受注 : 民間設備投資の先行指標である機械受注 ( 船舶 電力を除く民需 ) の 10 月分は前月比 7.6% と 2 ヶ月ぶりに増加した 10~12 月期見通し ( 内閣府集計 ) では 前期比 3.6% と 5 四半期連続の増加が見込まれている 鉱工業生産 :10 月の鉱工業生産指数 ( 確報 ) は 前月比 2.9% 製造工業生産予測調査によると 11 月は前月比 0.6% 12 月は同 2.2% と いずれも上昇見込み 全般的には世界貿易の拡大ペースが鈍っていることもあり 国内景気は足踏みしている 5
長期金利 : 再び 0% 近くまで低下 (%) 日米独の長期金利 (%) 0.4 0.2 0.0 0.2 日本新発 10 年国債利回り ( 左軸 ) 米国財務省証券 10 年物国債利回り ( 右軸 ) 独国 10 年国債利回り ( 右軸 ) 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.4 '16.12 '17.3 '17.6 '17.9 '17.12 '18.3 '18.6 '18.9 '18.12 0.0 日銀金融政策 :12 月 19~20 日に開催された開催された日本銀行 金融政策決定会合では 7 月会合で運営手段の柔軟化が施された 長短金利操作付き量的 質的金融緩和 の継続が決定された 長期金利 ( 新発 10 年国債利回り ): 日銀が 7 月の金融政策決定会合で 強力な金融緩和継続のための枠組み強化 と称して長期金利の操作目標の柔軟運用を決定したため 10 月半ばにかけて長期金利は 0.1% 台半ばまで緩やかに上昇した しかし 最近は株価の調整が続くなど 内外景気の先行きに対する不透明感が強まったことから 再び 0% 近くまで低下している 6
株価 : 軟調な地合いが続いている ( 円 ) 日経平均株価指数 26,000 ( ドル ) ニューヨークダウ工業株 30 種平均指数 27,000 24,000 25,000 22,000 23,000 20,000 21,000 18,000 19,000 日本株価 ( 日経平均 ):9 月には米国が中国への新たな追加関税措置を公表したが 市場ではこれを悪材料出尽くしと受け止め 買戻しニーズが強まった その流れで 10 月上旬には一時は 24,448 円と バブル崩壊後の最高値を再び更新した その直後 上昇を続ける米国長期金利への警戒 米中経済摩擦の悪影響などが意識され 世界的に株価が下落した 年末にかけても世界経済の先行き懸念が漂うなか 国内企業業績も下り坂との思惑も浮上 1 年 3 ヶ月ぶりに 2 万円を割れるなど軟調な地合いが続いている 米国株価 (NY ダウ平均 ):10 月に入り急速な金利上昇と貿易摩擦への懸念が再燃したことで 株価は急落した 中国経済への減速懸念や サウジアラビアに関する地政学的リスク 原油価格の急落などが意識され上値の重い展開が続いた 11 月 6 日の中間選挙前後に株価が戻る場面あったものの アップル製品への弱い需要見通しと貿易摩擦懸念を嫌気したハイテクセクターの下げが先導する形で 総じて軟調な展開が続いた 足元では 米中貿易摩擦への警戒感や世界経済の先行き懸念が台頭し 下落基調が続いている 7
為替 : やや円高圧力が高まっている ( 円 / ドル ) 122 118 114 110 106 102 円の対ドル及び対ユーロ相場 円 / ドル ( 左軸 ) 円 / ユーロ ( 右軸 ) 円安円高 ( 円 / ユーロ ) 98 ( 資料 )Bloombergより作成 140 135 130 125 120 115 110 ( ドル / ユーロ ) 1.27 1.25 1.23 1.21 1.19 1.17 1.15 1.13 1.11 1.09 1.07 1.05 1.03 ドル安 ユーロ高 ドルの対ユーロ相場 ドル高 ユーロ安 ドル円相場 :4 月以降はリスクオンの流れとなったほか 米国金利の上昇から円安に転じ 5 月中旬には再び 1 ドル =110 円台に乗せた その後も 時折円高に振れる場面もあるものの 趨勢的には緩やかな円安傾向となり 9 月中旬以降は概ね 113 円を挟んだ展開が続いた なお 足元では米国の利上げペースの鈍化を見込み やや円高圧力が高まっている ユーロ円相場 :9 月中旬にはドラギ ECB 総裁の楽観的な経済 物価展望等が好感されてユーロ高が進行 一時 1 ユーロ =133 円台までユーロ高が進んだ 一方 10 月以降は伊予算案や独バイエルン州議会選での与党大敗などを受けてユーロ安となり 直近に至るまで概ね 120 円台後半で推移している 8
原油 :1 バレル =40 ドル台前半まで下落 ( 百万バレル ) 石油需給 (3 ヶ月移動平均 ) 2 需給差 ( 需要 - 供給 ) 石油需要前年比 ( 右軸 ) (%) 3 ( ドル / バレル ) 国際原油市況 90 NY 原油先物 WTI 期近 OPEC 原油バスケット価格 1 2 80 70 0 1 60 50 供給超過 1 0 '16.11 '17.5 '17.11 '18.5 '18.11 40 原油先物 ( ニューヨーク市場 WTI 期近 ): 石油輸出国機構 (OPEC) など主産油国による原油協調減産の一部が 18 年 6 月に緩和されたが 中東情勢の緊張が続いていること さらに米国によるイラン制裁再開に伴う同国産原油の禁輸要請等を背景とした供給懸念から 10 月初めには WTI 先物 ( 期近物 ) は一時 1 バレル =76.9 ドルと 4 年ぶりの高値水準まで上昇した 協調減産 19 年 1~6 月にかけても継続が決まったが その後の米国発の株価下落によってリスクオフが強まったほか 世界経済の先行き懸念が広がったことで原油価格は反落 12 月下旬には 40 ドル台前半まで下落 米エネルギー情報局 (EIA):11 月のエネルギー見通しでは 18 年の原油先物 (WTI 期近 ) の平均価格は1バレル =65.18ドル 19 年は1バレル =54.19ドルとしている 9
政府 日銀の景気判断 : 据え置き 1 月景気は 緩やかに回復している わが国の景気は 緩やかに拡大している 2 月景気は 緩やかに回復している 3 月景気は 緩やかに回復している わが国の景気は 緩やかに拡大している 4 月景気は 緩やかに回復している わが国の景気は 緩やかに拡大している 5 月景気は 緩やかに回復している 2018 年 6 月景気は 緩やかに回復している わが国の景気は 緩やかに拡大している 7 月景気は 緩やかに回復している わが国の景気は 緩やかに拡大している 8 月景気は 緩やかに回復している 9 月景気は 緩やかに回復している わが国の景気は 緩やかに拡大している 10 月景気は 緩やかに回復している わが国の景気は 緩やかに拡大している 11 月景気は 緩やかに回復している 12 月景気は 緩やかに回復している わが国の景気は 緩やかに拡大している ( 資料 ) 内閣府 月例経済報告 日銀 金融経済月報 経済 物価情勢の展望 会合終了後の声明文より農中総研作成 ( 注 ) 矢印は景気判断の方向を示す 政府 :12 月の景気判断は 据え置かれた 日銀 :12 月の景気判断は 据え置かれた 10
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