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鋼床版構造の耐久性向上に関する研究 研究予算 : 運営費交付金 ( 一般勘定 ) 研究期間 : 平 24~ 平 27 担当チーム : 構造物研究グループ研究担当者 : 村越潤, 平野秀一, 原田英明 要旨 道路橋では平成 24 年に道路橋示方書で疲労設計が導入され, 同時に 鋼道路橋の疲労設計指針 が発刊された. 鋼道路橋のうち, 鋼床版に関しては構造計算による応力照査が困難なため, 疲労指針では, 疲労耐久性が確保できる構造詳細を規定している. これらの規定は過去の疲労試験等による知見が反映されてきている. 一方で, 疲労指針以降, 既設橋において疲労損傷事例が顕在化しており, その中には鋼床版で発生した損傷箇所の構造詳細が, 疲労指針の構造詳細と類似している事例も見られている. 本研究では, このような鋼床版の構造詳細を対象として, 疲労試験 数値解析による疲労耐久性の評価と構造詳細の検討を行うものである. 平成 26 年度は, 前年度に続き,FEM 解析により,U リブと横リブの交差部に設けられるスリット溶接部, 及びデッキプレートと主桁垂直補剛材の上端溶接部について, 構造詳細が溶接部の応力性状に及ぼす影響と改善構造の検討を行った. キーワード : 鋼道路橋, 疲労き裂, 鋼床版,U リブ, 横リブ, 垂直補剛材 1. はじめに道路橋では平成 24 年に道路橋示方書 1) ( 以下, 道示 ) で疲労設計が導入されるとともに, 同時に 鋼道路橋の疲労設計指針 2) ( 以下, 疲労指針 ) を発刊している. 鋼道路橋のうち, 鋼床版に関しては構造計算による応力照査が困難なため, 疲労指針では, 疲労耐久性が確保できる構造詳細を規定している. これらの規定は過去の疲労試験等による知見が反映されてきている. 一方で, 疲労指針以降, 既設橋において発見されている損傷事例 3) の中には, その構造詳細が, 疲労指針の構造詳細と類似の事例も見られている. 本研究では, このような鋼床版の構造詳細を対象として, 疲労試験 数値解析による疲労耐久性の評価と構造詳細の検討を行うものである. 検討部位は,U リブと横リブの交差部に設けられるスリット溶接部とデッキプレート ( 以下, デッキ ) と主桁の垂直補剛材の上端溶接部であり, これらの部位の構造詳細が溶接部の応力性状に及ぼす影響と改善構造の検討を行った. 応力性状の把握を行うとともに, 現行のスリット形状と比較して局部応力の低減が可能なスリット形状を提案した. 本年度は, 前年度に示したスリット形状の改善構造に対し, 製作性の観点も踏まえ,FEM 解析により, 更なる形状改良の可能性の検討を行った. 1.2 垂直補剛材上端溶接部垂直補剛材上端溶接部の疲労耐久性の向上方法としては, 垂直補剛材上端部を切除した構造や半円に切欠いた構造などが提案されている. しかし, これらの構造は, 耐荷性能への影響や疲労強度改善効果については定量的かつ体系的に評価されているわけではなく, 抜本的な対策に至っていない. 本年度は, 現状の上端溶接構造とこれまでに提案されている疲労強度改善方法の中で比較的施工性の良いとされる上端カットの構造に着目し, 構造諸元, 荷重載荷位置等をパラメータとした FEM 解析により, 同部位の局部応力に対する応力の低減効果の検討を行った. 1.1 スリット溶接部平成 24~25 年度では, 試設計を実施した鋼床版橋を基本モデルとし,U リブと横方向部材との交差部を対象として,U リブ支間, 横リブ剛性, デッキ厚,U リブ厚, 密閉ダイアフラムの有無等をパラメータとした FEM 解析を実施し, スリットまわし溶接部周辺の 2. スリット溶接部を対象とした FEM 解析 2.1 解析モデルと検討方法 2.1.1 基本モデル図 -1 に, 解析に用いた橋梁全体モデルを示す. スリット溶接部については, 局部的な変形により応力が集中するとされており, 同溶接部に着目した部分的なモ - 1 -

5m 6m 支間中央部 5m : 支承部 ( ピン支持, 回転自由 ) (a) 解析モデルの概要 詳細図 (b) 着目溶接部 U6 U5 U4 U1 32 1,8mm 着目溶接部 1,4mm R2 24 2,mm 1,7mm R66 2 (mm) (c) 着目交差部の要素分割図 図 -1 解析モデル (d) 現行スリット形状 デルによる局部変形を再現した FEM 解析が行われている. 本研究では橋梁全体系も含めた鋼床版の各種構造諸元の応力性状への影響を検討するために, 標準的な支間構成の 3 径間連続鋼床版箱桁橋 (2 車線 ) を対象とした試設計により断面寸法を決定し, 橋梁全体を 4 節点線形シェル要素でモデル化している. Uリブは日本鋼構造協会規格 U-32 24 6-4 とし, 交差部のスリット形状は疲労指針に示された形状とした. 解析モデルでは, デッキ厚 12mm,U リブ厚 6mm, 横リブ間隔 2,mm, 横桁ウェブ高さ 1,4mm, 横リブウェブ高さ 7mm としたものを基本モデルと称し, 解析は基本モデルの鋼床版諸元を変えて行う. なお, 鋼床版諸元の変更に伴う主桁や横桁の断面寸法, 板厚の見直しは行っていない. また, 今回の解析では, 舗装による荷重分布を考慮しないこととし, 舗装のモデル化は行っていない. 解析における材料定数は道路橋示方書を参考に, 鋼材の弾性係数を 2. 1 5 N/mm 2, ポアソン比を.3 とした. 解析は汎用有限要素解析コード NX.Nastran により行った. 橋軸方向の着目位置は, 中央径間の支間中央の横方向部材 ( 横桁 ) との交差部であり, 橋軸直角方向の着目位置は, 桁間中央の U リブ (U1) である. 本年度は, 基本モデルを基に, 横リブ間隔を 2,5mm とした場合のモデルに対し, 横桁 1 本とその前後の中間横リブ 2 本を含めた合計 U リブ支間 4 径間を 6 節点線形ソリッド要素もしくは 8 節点線形ソリッド要素とし R1 R2 R2 R6 195 13 X B 13,95 65 15 35 図 -2 当初提案形状た詳細解析を行った. なお, シェル要素には 4 節点線形シェル要素を用いた. 着目交差部の溶接部の形状は, 6mm の等脚とし, 止端には 1mm の曲率半径を設けている. ソリッド要素の最小寸法は, スリットまわし溶接部近傍で.1mm.1mm であり, ソリッド要素とシェル要素との接合は, 接合部のソリッド要素の板厚中心に同板厚のシェル要素を 4mm 挿入することで行った. 解析全体の要素数は約 482,, 節点数は約 516, である. なお, 事前解析より, 溶接部の未溶着が溶接止端へ及ぼす影響が小さいことを確認しているため, ここでは未溶着をモデル化していない解析結果を示す. 2.1.2 スリット形状モデル図 -2 に, 前年度に提案した, 応力の低減効果を有す L D 2

R3 R125 R2 表 -1 各スリット形状の概要 スリット形状 擦付け部形状 概要 < 上方まわし形状 > 参照箇所 :2.1.2 b) < 形状構造の考え方 > 溶接長 Lを短くする 製作時のまわし部の変形を考慮し,Bを設定 L せん断力の伝達可能範囲で擦付け部は短くする R1 切欠き半径 R1で擦付け部の長さを調整 B < 当初提案形状に対する変更点 > 溶接長 Lを変化させ, まわし部を上方へ移動 擦付け長さを設けず,R1 円孔切欠きを設ける 146,6 2 < 斜めカット形状 > 参照箇所 :2.1.2 c) 25 18,35 B2 X2 < 形状構造の考え方 > 擦付け部を平行部と斜めカットの組合せとする まわし部の製作時の変形を考慮し,B1 と X1 を設定 擦付け部の製作時の変形を考慮し,B2 と X2 を設定 45 2 15 35 X1 < 当初提案形状に対する変更点 > 擦付け幅 B2 を広くする R6 B1 R25 < 逆斜めカット形状 > 参照箇所 :2.1.2 d) 135 15 6 195 R1 B2 X < 形状構造の考え方 > 擦付け幅を大きく, 円孔切欠き近傍で小さく (B1>B2) 製作時のまわし部の変形を考慮し, B1 を設定 製作時の切欠き部の変形を考慮し,B2 を設定 施工性を考慮し,B2 の設定は R1 で調整 溶接長の確保 R6 25 35 B1 < 当初提案形状に対する変更点 > 擦付け幅 B1 を広くする 表 -2 課題への対応の事前評価 対応案 入熱時入熱時応力擦付け部変形まわし部溶け落ち低減効果 当初提案形状 上方まわし形状 斜めカット形状 逆斜めカット形状 るスリット形状 ( 以下, 当初提案形状 ) を示す. スリット溶接部において, 横方向部材による U リブの面外曲げ変形の拘束を緩和し,U リブ側と横方向部材側の両者の溶接止端の応力低減を図るとともに, 周囲に新たな疲労の弱点を生じさせないことに配慮した. 本年度は, 実橋に適用するうえで, 更なる製作性の向上を目的に以下の課題に着目して検討を行った. 1 入熱による擦付け部の変形スリット形状の製作時の切断 ( ガス切断, レーザー切断, プラズマ切断 ) による入熱量は大きく, 擦付け幅 B が短い場合には, 母板の変形 ( 切断時, 組立 ( 落とし込み ) 時 ) が生じることが懸念される. 特に支点上ダイアフラムなどのウェブが厚い場合には, 切断方法 ( レーザー切断, プラズマ切断 ) や切断時の入熱量 表 -3 FEM 解析を実施するスリット形状の寸法 検討形状 擦付け長さ 寸法 (mm) 擦付け幅 円孔切欠き半径 R1 下部円孔半径 R2 溶接長 L 平行部 X,X1 斜め部 X,X2 まわし部 B,B1 円孔近傍 B2 当初提案 195 65-15 2 6 17.5 当初提案 2 ( 改良 ) 195 65-22.5 25 2 6 上方まわし 146.6 - - 15 2 3 125 斜めカット 195 2 45 15 25 2 6 が変わるが, 擦付け部で入熱による変形が生じない程度の剛性 ( 幅等 ) を確保する必要がある. ウェブ板厚にもよるが, 擦付け幅 B を 15mm とした場合, 擦付け部の変形を抑えるには擦付け長さXを2mm~3mm 程度と短くするのが望ましいと考えられる. 2 入熱による擦付け部の溶け落ち擦付け幅が小さい場合あるいは横方向部材ウェブ厚が厚い場合には, 切断時における入熱量が大きくなり, 母板の溶け落ちが懸念される. また, 溶接時に U リブ 横リブ間の材片の密着度の確保が難しい場合, 横方向部材ウェブで開先を設ける等の処置が必要とな 3

mm S2 S4 S3 S1 16 16 16 S4 S1 S2 S3 6 *U1,U4 の載荷位置は主桁ウェブで対称 U6-L U5-L U5-R U4-L U4-R U1-L U6, U5 U4, U1 L 側 R 側 L 側着目時の R 側着目時の 載荷ケース名称 載荷ケース名称 (a) 橋軸直角方向の載荷位置 U リブ側応力範囲 (N/mm 2 ) 4 2 載荷位置 S3 S2 S1 S4-35 -125-25 25 125 35 (mm) 着目交差部 U リブ支間長 :2,5mm (b) 橋軸方向の載荷位置図 -3 輪荷重の載荷位置と載荷方法り, ウェブの板厚が薄い場合には, 溶接時の母材の溶け落ちが懸念される. 当初提案形状では, 上記 12の課題を解決出来ない可能性があることから, 当初提案形状の考え方を踏襲したスリット形状 寸法 ( 表 -1) についても検討し, 現行形状との比較分析を行った. 表 -1~ 表 -3 に新しいスリット形状の考え方と, スリット形状の課題への対応の事前評価,FEM 解析により検討したスリット形状の寸法を示す. これらのスリット形状の検討概要を以下に示す. a) 当初提案形状入熱による変形や溶け落ちを防ぐため, 擦付け部の剛性を高める. 擦付け幅 B を 15mm から 25mm まで 2.5mm ずつ変化させた検討を行う. スリットの寸法は, 前年度の溶接長 Lと切上げ高さ Xを変えた場合の解析結果を考慮し, 溶接長 L を 195mm, 切上げ高さ X を 65mm とする. b) 上方まわし形状まわし部を上方に移動させることにより,U リブ変形に対する横方向部材の拘束を緩和させるものである. 既往の検討において, 現行形状に対する局部応力の低減効果が確認されている. 擦付け幅 B は, 切断時のまわし部の溶け落ちを考慮して,15mm あるいは 2mm とする. c) 斜めカット形状擦付け部について, 平行部と斜めカット部を設けることで, 製作時の溶け落ちと, 切断時の擦付け部の変形を極力防ぐようにするものである. スリット溶接部近傍の擦付け幅 B1 を 15mm, 円孔切欠き部近傍の幅 U6 U5 U4 U1 図 -4 シェル要素を用いた U リブ側応力範囲に対する幅員方向位置の影響 B2 を 25mm とする. d) 逆斜めカット形状まわし部の擦付け幅を大きくすることにより, 切断時の溶け落ちを極力防ぐとともに, 円孔切欠き近傍の擦付け幅を小さくすることで, 当初提案の局部応力低減の考え方を極力踏襲するものである. しかし, 円孔切欠き近傍の幅 B が小さいことから, 製作時の擦付け部の局部変形が懸念される. また, 横方向部材ウェブ板厚が厚くなる場合に切断し難いといった課題もあるため, 以下の検討では除外する. 2.1.3 まわし溶接部の着目要素と応力図 -1(b) に, スリット溶接部における着目要素を示す. 着目要素は,U リブ側止端における, 各載荷位置で主応力が最大となる要素とし, 各載荷位置により, 要素位置は異なる. 2.1.4 荷重ケースと U リブ位置図 -3 に, 本年度検討した載荷ケースを示す. 載荷荷重はシングルタイヤを想定し,5kN の荷重を mm mm の載荷範囲に等分布荷重として与えた. 着目する U リブは図 -1(c) に示す主桁間中央 (U1) とし, 着目する U リブに対する荷重載荷位置は示す U リブウェブ直上 (S2) である. 橋軸方向の載荷位置は, 着目する横桁交差部から橋軸方向両側に mm( 交差部直上 ),25mm( 交差部近傍載荷 ),1,25mm(U リブ支間中央載荷 ),3,5mm( 隣接 U リブ支間載荷 ) とし, 載荷位置を移動させた. 図 -4 に, 前年度のシェル要素を用いた解析により得られた橋軸方向への載荷移動した際の着目要素における溶接線方向の応力範囲を示す. なお, 解析は,U リ 4

表 -4 各スリット形状の交差部の変形図及びミーゼス応力のコンター図 (S2 載荷,1,25mm 位置 ) 解析結果現行形状当初提案形状 B15 当初提案形状 B25 上方まわし形状斜めカット形状 交差部変形図変形量 4 倍 擦付け部変形図変形量 4 倍 2 4 6 8 1 (N/mm 2 ) ミーゼス応力 ブ支間長を 2,mm とし, 荷重を橋軸方向に mm ずつ移動させて行っている. 偏芯載荷とした場合で応力範囲が大きくなっていること, 各 U リブでその差が小さいことが確認できる. そのため, ここでは U1 リブの偏芯載荷時 (S2 載荷 ) を対象とした. 2.2 解析結果 2.2.1 各スリット形状の交差部の変形表 -4 に,U リブ直上載荷 (S2 載荷 ) 時で, 交差部から 1,25mm に位置する際の各スリット形状における交差部の変形図, 擦付け部の変形図, ミーゼス応力のコンター図を示す. なお, 当初提案形状に関しては, B=15mm と B=25mm の場合, 上方まわし形状では B=15 mm の場合の解析結果を示している. 当初提案形状 (B=15mm) では, 擦付け部が U リブの変形に追従しており, 擦付け部先端の低減効果に寄与しているものと考えられる. 一方, 当初提案形状 (B=25mm), 上方まわし形状, 斜めカット形状の場合の擦付け部の変形は, 当初提案形状 (B=15mm) とした場合より小さく, 擦付け部先端での応力集中は大きい. 図 -5 に, 着目要素における U リブ側溶接止端の最大主応力と最小主応力の最大値を示す. 現行形状とした場合, 最小主応力の絶対値は最大主応力の絶対値の 29.7% と値が大きくなっているものの, 改善構造とした場合には, 最小主応力の絶対値が小さくなっている. U リブ側止端の主応力の最大値 (N/mm 2 ) 15 1 5-5 -1 現行形状 当初提案形状 B15 当初提案形状 B17,5 当初提案形状 B2 当初提案形状 B22,5 当初提案形状 B25 最大主応力最小主応力 上方まわし形状 B15 上方まわし形状 B2 図 -5 各スリット形状の主応力 斜めカット形状 B15 当初提案形状 (B=15mm) での最大主応力の最大値は, 他のスリット形状に比べて小さく, 擦付け部で変形させることによる擦付け部先端の応力の低減効果が認められる. 以降, 現行スリットに対する応力の低減効果は, 現行形状の最大主応力の最大値に対する比率として評価する. 5

現行スリットに対する最大主応力の比率 1.2 1..8 y =.31x +.28.6 ( 最小二乗法による近似曲線 ).4.2 比率 = 各スリット最大主応力現行形状の最大主応力. 1 15 2 25 3 擦付け幅 B(mm) 図 -6 当初提案形状の擦付け部幅 B の影響 2.2.2 当初提案形状における擦付け幅 B の影響図 -6 に, 当初提案形状における溶接部の最大主応力の最大値に着目し, 現行のスリット形状の場合に対する比率と擦付け幅 B の関係を示す. 比率は, 擦付け幅 B が大きくなるに従い,.73(B=15mm)~1.3(B=25mm) となり, 応力の低減効果が小さくなることがわかる. これは, 表 -4 で示したように, 擦付け部が U リブの変形に追従し難くなることによる影響と考えられる. 以上のように, 擦付け部の形状 寸法は, 擦付け部先端 ( まわし溶接部 ) の局部応力に対して敏感に影響しており, 組立精度等に配慮して, 評価を行う必要がある. 例えば,B=2mm で製作誤差として ±2.5mm を考慮した場合, 最大主応力の比率は現行スリットに対して.82(B=17.5mm)~.97(B= 22.5mm) となり, 低減効果に 2 割程度の差がみられる結果となる. 2.2.3 各スリット形状の低減効果図 -7 に, 各スリット形状における溶接部の最大主応力の最大値に着目し, 現行のスリット形状の場合に対する比率と擦付け幅 B の関係を示す. 各スリット形状の現行スリットに対する比率は, 当初提案形状 (B= 15mm) では.73 倍と低減効果が認められるが, 上方まわし形状 (B=15,2mm) 及び斜めカット (B=15mm) では, 両者に差がなく最大主応力の比率は現行スリットに対して.95 倍となる. 当初提案形状の擦付け幅 B を 15mm としたモデルでの低減効果が大きく, 本年度に新たに検討したスリット形状では, 低減効果は小さかった. なお, 当初提案形状と上方まわし形状については, 応力状態の厳しくなる 現行スリットに対する最大主応力の比率 1.2 1..8.6.4.2. 現行形状当初提案形状 B15 当初提案形状 B17,5 当初提案形状 B2 当初提案形状 B22,5 当初提案形状 B25 上方まわし形状 B15 上方まわし形状 B2 斜めカット形状 B15 図 -7 各スリット形状の現行形状に対する比率載荷条件 (U リブ内に密閉ダイアフラムを設置し, ダブルタイヤ相当の載荷した場合 ) についても解析を実施しており, 当初提案形状では, 現行形状に対して.6 倍, 上方まわし形状で.95 倍という結果を得ており, 比率としては図 -7 の結果とほぼ同じである. 上方まわし形状では, 局部応力の低減効果は小さいが, 製作性は向上するものと考えられる. ここでは, 擦付け幅 B を 15mm,2mm とした検討結果であり, 幅 B を 1mm と小さくした場合には, ある程度の低減効果が得られる可能性がある. 3. 垂直補剛材上端溶接部を対象とした FEM 解析 3.1 解析モデル図 -8 に, 解析対象を示す. 垂直補剛材サイズと主桁ウェブ厚の組み合わせについては, 平成 12 年以降に建設された 47 橋を調査した結果, 最も多くの橋梁で適用されていたものである. 上端カットの構造については, 鋼道路橋の疲労設計指針 2) で横リブ又は横桁の垂直補剛材の標準として示されているギャップ間隔 (35mm) とした. 解析は MSC NASTRAN 212.2. を用いた線形弾性解析である. 鋼材の弾性係数は 2. 1 5 N/mm 2, ポアソン比は.3, アスファルト舗装は夏場を想定し, 弾性係数を 5N/mm 2, ポアソン比を.35 としている. 使用した要素は 6 節点あるいは 8 節点線形ソリッド要素で着目部近傍の要素サイズは 1mm とした. 6

アスファルト舗装 b=25 8 td 連続条件 R35 6 連続条件 U32 24 6 td=12,16 41 t=12 64 単位 :mm (a) 上端溶接モデル ( 現行構造 ) アスファルト舗装 35 41 14 15 b=25 15 45 14 15 6 t=12 図 -8 解析対象 64 8 16 U32 24 6 (b) 上端カットモデル 1 (a) 載荷荷重 2@1 112,5 LOAD1 単位 :mm 2@312.5 LOAD7 単位 :mm CASE12 CASE11 CASE1 CASE9 CASE8 CASE7 CASE6 CASE5 ウェブ下端固定 CASE4 CASE3 CASE2 CASE1 (a) 全体図 27 2,5 2,5 2,5 着目支間 27 2,1 4,2 4,2 2,1 箱内 箱外着目ウェブ 箱内 (b) 断面図図 -9 解析モデル ( 基本モデル ) 箱外 1,5 荷重主桁ウェブ中心ケースからの距離 (mm) 備 考 CASE1 5 CASE2 4 左輪端部が垂直補剛材端部近傍 CASE3 3 左輪中心が垂直補剛材端部近傍 CASE4 CASE5 15 左輪中心が主桁ウェブ中心 CASE6 1 CASE7 ダブルタイヤ中心が主桁ウェブ中心 CASE8-1 CASE9-15 右輪中心が主桁ウェブ中心 CASE1 - CASE11-3 CASE12-4 125 125 (b) 橋軸方向荷重ケース 図 -1 荷重条件 (c) 橋軸直角方向荷重ケース 図 -9 と図 -1 に, 解析モデル ( 基本モデル ) と荷重条件を示す. 基本モデルでは, 橋軸方向は U リブ支間 2,5mm の鋼床版パネルの 3 パネル分をモデル化しており, 橋軸直角方向は主桁ウェブ間隔 4,2mm の箱桁が 4,2mm の間隔で連続している構造とした. 垂直補剛材は U リブ支間中央に配置した. また, 主桁ウェブ 1,5mm の高さまでをモデル化し下端を完全拘束している. なお, このようなモデル化により, 着目部近傍の解析結果に対して, 境界条件やウェブ高さ等のパラメータを変えた場合の影響が小さいことは別途確認している. 荷重は発生応力の大きくなるダブルタイヤとし, 橋軸方向には 7 ケース (LOAD1~7), 橋軸直角方向には 12 ケース (CASE1~12), 合計 84 ケースを基本とした. 3.2 解析パラメータ表 -5 に, 解析パラメータの一覧を示す. 前節に示したデッキ厚に加え, 基本モデルに対して主桁ウェブから第 1 U リブウェブまでの距離 ( 図 -9(b)),U リブ支間, 吊金具の有無をパラメータとした. なお, 吊金具に関しては, 上端カット構造では背面に吊金具があると発生応力が大きくなると指摘されている. ここでは, デッキとの接合を有していない構造 ( 図 -11) を対象とし, 吊金具の有無の影響を確認した. 3.3 解析結果 3.3.1 基本モデルの解析結果図 -12 に, 基本モデルの解析結果の一例を示す. 図 (a),(b) はデッキ厚 12mm の上端溶接モデルのデッキ 7

表 -5 解析パラメータ一覧 解析モデルデッキ厚 (mm) b(mm) 縦リブ支間 (mm) 吊金具上端溶接 12,16,25,3, 25, 3 有無上端カット 12 橋軸直角方向応力 (N/mm 2 ) 3 1 1 3 4 5 CASE1 CASE5 CASE9 CASE2 CASE6 CASE1 CASE3 CASE7 CASE11 CASE4 CASE8 CASE12 6 125 125 支間中央からの橋軸方向荷重位置 (mm) (a) 上端溶接 : デッキ側止端 鉛直方向応力 (N/mm 2 ) 3 1 1 3 4 5 CASE1 CASE5 CASE9 12 1 φ6 t=9 4 1 単位 :mm 図 -11 吊金具 CASE2 CASE6 CASE1 CASE3 CASE7 CASE11 CASE4 CASE8 CASE12 6 125 125 支間中央からの橋軸方向荷重位置 (mm) (b) 上端溶接 : 垂直補剛材側止端 鉛直方向応力 (N/mm 2 ) 3 1 1 3 4 5 CASE1 CASE5 CASE9 CASE2 CASE6 CASE1 CASE3 CASE7 CASE11 CASE4 CASE8 CASE12 6 125 125 支間中央からの橋軸方向荷重位置 (mm) (c) 上端カット : ウェブ側止端 橋軸直角方向応力 (N/mm 2 ) 3 1 1 3 4 5 CASE1 CASE5 CASE9 図 -12 溶接止端部応力と荷重載荷位置の関係 CASE2 CASE6 CASE1 CASE3 CASE7 CASE11 CASE4 CASE8 CASE12 6 125 125 支間中央からの橋軸方向荷重位置 (mm) (d) 上端カット : 垂直補剛材側止端 側溶接止端部と垂直補剛材側止端部の橋軸直角方向応力と鉛直方向応力の分布, 図 (c),(d) は上端カットモデルの主桁ウェブ側溶接止端部と垂直補剛材側止端部の鉛直方向応力と橋軸直角方向応力の分布である. これらは要素応力の値であり, 要素の位置は溶接止端部において最大, 最小の応力発生位置, すなわち上端溶接モデルのデッキ側と上端カットモデルの主桁ウェブ側は補剛材板厚中心位置, 両モデルの垂直補剛材側止端部は補剛材板厚端部 ( 角部 ) 位置である. なお, デッキ- 主桁ウェブ溶接部や上端溶接モデルのスカラップ内部に発生する応力は垂直補剛材溶接部に発生する応力と比較して小さいことを別途確認している. 図 (a),(b) より上端溶接の場合にはデッキ側溶接止端部よりも垂直補剛材止端部で発生する応力が大きいこと, 両止端部ともに圧縮応力が卓越し, 左輪の左端部が着目溶接部近傍となる CASE2 で最大の応力が発生している. 図 (c),(d) をみると上端カットを行うことによる大幅な応力低減が確認できる. そして, ウェブ側溶接止端部で発生する応力が若干大きいこと, 両止端部ともに左輪の左端部が主桁ウェブ近傍となる CASE 3 で最大の圧縮応力, 右輪の右端部が主桁ウェブ近傍となる CASE11 で最大の引張応力が発生すること,U リブ支間中央載荷で最大の応力が発生していることが確認できる. 8

モデル 表 -6 解析結果一覧 垂直補剛材溶接止端部 最大主応力 (N/mm 2 ) 最小主応力 (N/mm 2 ) 吊金具上端止端 最大主応力 (N/mm 2 ) 最小主応力 (N/mm 2 ) 上端 td b l 吊金具 デッキ側 ウェブ側 垂直補剛材側 デッキ側 ウェブ側 垂直補剛材側 12 38.7 91.4-59.3-824.5 16 28. 84.6-39. -757.2 12 26.2 62.8-411. -662.2 25 2,5 16 22.5 62.3-339.4-646.2 溶接 12 19.7 52.2-399.7-653.8 3 無 - - 16 16.9 5.5-321.6-622.8 - - 12 9.6 32.1-313.5-514.2 2, 16 7.9 3. -265.3-512. 12 5.2 11.2-497.8-793.6 25 3, 16 43.1 1.8-44.7-761.3 12 26.3 62.9-411.4-663.3 25.3-26.5 2,5 有 16 22.6 62.5-339.8-647.7 27.9-28.7 16 122.6 143.6-162.1-162.7 16 25 2,5 125. 146. -175.8-173.6 カット 16 3 無 127.6 148.7-191. -187. - - - - 16 2, 98.5 115.5-147.6-142.5 16 25 3, 15.2 174.9-22.4-23.3 16 2,5 有 124.9 146.7-175.8-173.9 15.2-38.6 3.3.2 各種パラメータの影響表 -6 に, 解析結果の一覧を示す. 表中の最大主応力と最小主応力は要素応力であり, 要素の位置は図 -12 の場合と同じである. 以下に, 各種パラメータが当該箇所の発生応力に及ぼす影響を示す. なお, 各モデルの溶接止端部応力と荷重載荷位置の関係については, 図 -12 に示した基本モデルと同様の傾向を示した. 全てのモデルにおいて, 最小主応力が卓越しており, 上端溶接モデルについては垂直補剛材側の応力が大きく, 上端カットモデルではウェブ側と垂直補剛材側の発生応力は同程度である. 上端溶接の場合の解析結果より, デッキを 12mm から 16mm と増厚した場合の最小主応力を確認すると, 曲げ応力が卓越するデッキ側では 15~23% の応力低減がみられるが, 鉛直方向応力が卓越する垂直補剛材側では,~8% の応力低減にとどまり, 効果は小さい. デッキ 16mm の場合について, 同一諸元の上端溶接モデルと上端カットモデルの結果を比較すると, 最小主応力の絶対値 ( 垂直補剛材側 ) は上端カットモデルの場合,69~79% 小さくなっている. 一方で応力値は最小主応力の絶対値 ( 垂直補剛材側 ) と比較して小さいものの最大主応力の絶対値 ( 垂直補剛材側 ) は大幅に増加している. 主桁ウェブから第 1 U リブウェブまでの距離 b について, 基本モデル (b=25mm) と比較すると, 上端溶接モデルでは b=mm の場合に発生応力が大きくなり, その割合はデッキが12mmの場合に大きい. また, b=3mm の場合の最小主応力は基本モデルよりも若干小さくなるが, ほぼ同じである. 上端カットでは b が大きくなると発生応力が大きくなるが, 発生応力に対する b の影響は上端溶接モデルよりも小さい. U リブ支間長の影響は両モデルともに大きく, 上端溶接の最小主応力, 上端カットの最大及び最小主応力は支間長が 5mm 大きくなると 2% 前後増加する. 上端溶接モデル, 上端カットモデルともに吊金具を有する場合の発生応力は吊金具がない場合の応力とほぼ同じであり, 吊金具の溶接部に発生する応力も小さく, 疲労上問題となるとは考え難い. 4. まとめ 1) スリット溶接部における改善構造の検討前年度に提案したスリット形状の改善構造に対し, 製作性の観点も踏まえ, 更なる形状改良の可能性の検討を FEM 解析により行い, 以下の結果が得られた. 当初提案形状の擦付け幅 B を当初提案の B=15mm から大きくした場合, 局部応力 ( 最大主応力の最大値 ) の低減効果は大きく低下する. 上方まわし形状(B=15mm,2mm) 及び斜めカット (B=15mm) の局部応力 ( 最大主応力の最大値 ) については, 両形状ともに差は小さく, 現行のスリット形状に対する比率は.95 であった. 今後は, 当初提案形状と上方まわし形状に着目して, FEM 解析による詳細解析と, 製作及び施工性確認試験を実施する予定である. 2) 垂直補剛材上端溶接部における改善構造の検討現行形状 ( 以下, 上端溶接モデル ) と改善形状 ( 上端カットモデル ) を対象とし,FEM 解析により上端 9

溶接部の局部応力に対する応力低減効果の検討を行い, 以下の結果が得られた. 最大応力が発生する載荷位置は, 上端溶接モデルと上端カットモデルともに, 直上載荷時ではなく輪端部が着目溶接近傍となる場合であった. 上端溶接モデルでは, 圧縮応力が卓越する傾向にある. また, 上端カットモデルでは, 載荷位置が箱外の場合に圧縮応力と同程度の引張応力が発生しており, 局部応力性状が載荷位置 ( 箱内又は箱外 ) によって異なる結果となった. 上端溶接モデルでは, デッキ厚を 12mm から 16mm にすることで, 垂直補剛材のデッキ側止端では 15~23% の応力低減効果がみられた. 一方, 垂直補剛材側止端では ~8% の緩和にとどまった. 今後は, 構造諸元 (U リブウェブまでの距離,U リブ支間, 吊金具 ) の検討ケースを追加し, 引き続きFEM 解析を行うとともに, 小型疲労試験により改善形状の疲労耐久性の確認を行う予定である. 参考文献 1) 日本道路協会 : 道路橋示方書 同解説,2.3 2) 日本道路協会 : 鋼道路橋の疲労設計指針,2.3 3) 土木学会鋼構造シリーズ 19: 鋼床版の疲労 (21 年改訂版 ),21.12 1

STUDY ON FATIGUE DURABILITY IMPROVEMENT OF ORTHOTROPIC STEEL DECK Budged:Grants for operating expenses General account Research Period:FY212-215 Research Team:Bridge and Structural Engineering Research Group Author:Jun MURAKOSHI Shu-ichi HIRANO Hideaki HARADA Abstract :Fatigue Design Guideline for Steel Highway Bridges was issued in 2. Requirement for standard structural details of orthotropic steel decks (OSDs) is specified to ensure fatigue resistance. After identifying various types of fatigue cracks observed in existing OSDs, from long-term performance point of view, it is important to evaluate fatigue strength of the present structural details and propose fatigue-resistant structural details. The purpose of this study is to improve structural details based on finite element analysis and fatigue testing. In FY214, analytical studies were conducted to clarify stress behaviors at welded connections between cross beam and U-shaped rib, and welded connections between deck plate and vertical stiffener. Also, structural details at these connections were investigated to improve fatigue durability and constructability compared with the current structural details. Key words : orthotropic steel deck, fatigue durability improvement, crossbeam, U-shaped rib, vertical stiffener - 11 -