3. バイナリーコリメータを用いた方法 4. ロボット型治療装置を用いた方法 IMRT 施行に際する施設 人的要件 IMRT の施行に際しては 厚生労働省保険局医療課長通知 ( 保医発第 号平成 20 年 3 月 5 日 ) に記載の施設基準を満たすことが必要である また 上記に加え

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Transcription:

強度変調放射線治療 (IMRT) ガイドライン 2008 年 4 月 編集 : 日本放射線腫瘍学会 日本医学放射線学会 高精度外部放射線治療研究会 はじめに強度変調放射線治療 :intensity modulated radiation therapy (IMRT) は リスク臓器に近接した複雑な形状をもつ複数のターゲットに対しても自在に線量を調整投与することができ 放射線治療の可能性を大きく広げる革新的治療法である すでに一部の先駆施設より 前立腺がん 頭頸部がん 中枢神経がんにおいては有望な臨床成績が報告されており その他の多くのがん種で治療成績向上や合併症の軽減が期待されている 一方 IMRTは従来の外照射法にない複雑な照射 治療計画技術を用いており 治療計画やQuality Assurance (QA) / Quality Control (QC) が適切になされないと治療成績の低下 有害事象の増加をもたらす危険性も孕んでいる 従って IMRTの臨床適応に際しては 医学物理および臨床の両面から十分な検討 検証が必須である 本ガイドラインは IMRT を有効かつ安全に実施するために整備すべき目的で制定した IMRT の定義 IMRT は 三次元原体照射の進化形であり 逆方向治療計画 ( インバースプラン ) に基づき 空間的 時間的に不均一な放射線強度を持つ照射ビームを多方向から照射することにより 病巣部に最適な線量分布を得る放射線治療法である IMRT は field-in field 法を用いた従来型三次元原体照射法とは異なり IMRT の保険請求は 3 方向以上の照射角度から各門 3-5 ステップ以上の線束強度変化をもつビームによる治療計画を逆方向治療計画法にて立案のうえ加療した場合に限るべきである 本ガイドラインが対象とする IMRT 照射法 1. 物理的補償フィルターを用いた方法 2. 従来型マルチリーフコリメータ (MLC) を用いた方法 1/5

3. バイナリーコリメータを用いた方法 4. ロボット型治療装置を用いた方法 IMRT 施行に際する施設 人的要件 IMRT の施行に際しては 厚生労働省保険局医療課長通知 ( 保医発第 0305003 号平成 20 年 3 月 5 日 ) に記載の施設基準を満たすことが必要である また 上記に加え 以下の人的 設備的体制を構築することを推奨する 1. 放射線治療を専ら担当する常勤の医師放射線治療の経験を 5 年以上有するものについては 放射線治療の経験として 頭頸部および体幹部の従来型三次元原体照射の経験を 3 年以上有する放射線腫瘍医であること 2. 放射線治療を専ら担当する常勤の診療放射線技師放射線治療の経験を 5 年以上有するものについては 放射線治療の経験として 頭頸部および体幹部の従来型三次元原体照射の経験を 1 年以上有すること 3. 放射線治療における機器の精度管理 照射計画の検証 照射計画補助作業等を専ら担当する者 ( 診療放射線技師その他の技術者等 ) 放射線治療の臨床現場における機器の精度管理 照射計画の検証 照射計画補助作業等の経験を 1 年以上有すること 尚 医療機器安全管理の観点からも IMRT のスタッフとして 医師と照射に直接携わる診療放射線技師の他に 1 名以上の放射線治療に関する機器の精度管理等を専ら担当する常勤の者 ( 診療放射線技師 放射線治療品質管理技術者 ) および1 名以上の常勤の医学物理技術者がいることを推奨する 付記 放射線治療品質管理技術者 : 放射線治療の研修体制及び審査制度を設けている団体が行う専門性に関する認定を受け 放射線治療にあたる医師と共同で 専ら放射線治療の品質管理に当たる者 医学物理技術者 : 放射線診療の審査制度を設けている団体が行う専門性に関する認定を受け 放射線治療にあたる医師と共同で 物理工学の基盤をもとに専ら放射線治療計画および品質管理の立案 支援に当たる者 推奨資格 : 医師 : 放射線科専門医 ( 治療 ) 日本放射線腫瘍学会認定医 2/5

診療放射線技師 : 日本放射線腫瘍学会認定技師 放射線治療専門技師放射線治療品質管理技術者 : 放射線治療品質管理士医学物理技術者 : 医学物理士 IMRT 施行における医学物理的 QC/QA IMRTの施行に際しては 直線加速器 三次元治療計画装置の保守管理 品質保証用測定装置の整備 スタッフのトレーニングが必須である また IMRTの施行に必要な機器の精度管理に関する各施設の指針が策定されており 実際の線量測定等の精度管理が当該指針に沿って行われていなければならない そのため コンピュータ最適化法による治療計画結果の事前検証ならびにその検証結果などを症例ごとに文章または図表にて保存する必要があり 必要に応じて外部調査などの公開要請に応えられるようにしておかなくてはならない これらの QC/QA の詳細に関しては 日本放射線腫瘍学会 QA 委員会より発表された多分割コリメータによる強度変調放射線治療の機器的精度確保に関するガイドライン (ver.1) に従うことを推奨する 尚 従来型 MLC を用いる方法以外で同ガイドラインに当てはまらない部分は適宜準拠のこと IMRT 施行における臨床的 QC/QA IMRT では 線量投与の自由度が極めて高い このため 適切な治療計画を立案すれば 従来法による治療と比較して臨床上の利点が大きい治療が提供できる しかしながら 逆方向治療計画を用いた計画立案には多くの知識 経験を要し 適切な治療計画立案は必ずしも容易ではなく 場合によっては臨床上患者に不利益な計画を意図せず立案してしまう危険性もはらんでいる したがって 治療対象疾患においては従来型の放射線治療法に対する IMRT の優位性の検討を十分に行い 臨床プランで採用したターゲット並びにリスク臓器線量の妥当性に関する事前検討結果を文書で保存する必要がある さらに 立案された治療計画に対応する患者固定法や治療関連エラー修正法の妥当性については 放射線腫瘍医 診療放射線技師および医学物理技術者の共同責任のもとで検討しその結果を保存すべきである また 個々の症例に対する治療計画に関する記録を照射録に保存することが必要である IMRTによる総線量増加 標的体積内の1 回線量増加部分の許容 治療期間短縮などが治療成績向上に結びつくか 安全性の確保が可能かについては明確ではない場合が多い このような場合にはIMRTの臨床適応は慎重に行い 必要に応じて倫理審査委員会の審査を受けた臨床試験の形態をとることが望ましい 3/5

おわりに IMRT は発展途上の技術であり わが国における臨床経験の蓄積も十分ではない したがって 本ガイドラインは作成時点の知見に基づいて作成されており 将来の技術開発または臨床データの蓄積により本ガイドラインの改定が必要になると考えられる 強度変調放射線治療 (IMRT) ガイドラインワーキンググループ グループ長西村恭昌大西洋白土博樹中川恵一平岡真寛幡野和男溝脇尚志 近畿大学放射線腫瘍科山梨大学放射線科北海道大学放射線科東京大学放射線科京都大学放射線治療科千葉県がんセンター放射線治療部京都大学放射線治療科 4/5

参考資料保医発第 0305003 号第 83の2 強度変調放射線治療 (IMRT) 1 強度変調放射線治療 (IMRT) に関する施設基準 (1) 放射線科を標榜している保険医療機関であること (2) 放射線治療を専ら担当する常勤の医師が2 名以上配置されており このうち1 名は放射線治療の経験を5 年以上有する者であること なお 当該放射線治療の経験を5 年以上有する者は 放射線治療専任加算 外来放射線治療加算 直線加速器による定位放射線治療に係る常勤の医師を兼任することができる (3) 放射線治療を専ら担当する常勤の診療放射線技師 ( 放射線治療の経験を5 年以上有するものに限る ) が1 名以上配置されていること なお 当該常勤の診療放射線技師は 放射線治療専任加算 外来放射線治療加算 直線加速器による定位放射線治療に係る常勤の診療放射線技師を兼任することができる (4) 放射線治療における機器の精度管理 照射計画の検証 照射計画補助作業等を専ら担当する者 ( 診療放射線技師その他の技術者等 ) が1 名以上配置されていること なお 当該担当者は 直線加速器による定位放射線治療に係る担当者を兼任することができる (5) 強度変調放射線治療 (IMRT) を年間 10 例以上実施していること (6) 当該治療を行うために必要な次に掲げる機器 施設を備えていること ア直線加速器イ治療計画用 CT 装置ウインバースプラン ( 逆方向治療計画 ) の可能な三次元放射線治療計画システムエ照射中心に対する患者の動きや臓器の体内移動を制限する装置オ平面上の照射強度を変化させることができる装置カ微小容量電離箱線量計又は半導体線量計 ( ダイヤモンド線量計を含む ) 及び併用する水ファントム又は水等価個体ファントムキ二次元以上で相対的な線量分布を測定 比較できる機器 (7) 当該保険医療機関において 強度変調放射線治療 (IMRT) に関する機器の精度管理に関する指針が策定されており 実際の線量測定等の精度管理が当該指針に沿って行われているとともに 公開可能な精度管理に係る記録が保存されていること 5/5