日 ASEAN 包括的経済連携 (AJCEP) 協定 交渉妥結等について 平成 19 年 11 月
目次 Ⅰ. 日 ASEAN 関係基礎情報 Ⅱ. 日 ASEAN 貿易の概況 Ⅲ. 日 ASEAN 投資の概況 Ⅳ.AJCEP 協定のメリット Ⅴ. 交渉の経緯と現状 Ⅵ. 物品 Ⅶ. その他の分野 ( 参考 ) 東アジア諸国とのEPA 交渉の現状
Ⅰ. 日 ASEAN 関係基礎情報 1. 日 ASEAN 関係の歩み 1967 年 :ASEAN 成立 1977 年 : 第一回日 ASEAN 首脳会議 ( 福田ドクトリン 心と心のふれあい ) 1997 年 : アジア経済危機 ( 日本は800 億ドルの支援実施を表明 ) 第三回日 ASEAN 首脳会議 ( 以降毎年開催 ) 2003 年 : 日 ASEAN 特別首脳会議 (ASEANの全首脳が域外 ( 日本 ) で初めて一堂に会する歴史的な首脳会議 ) 2005 年 : 小泉総理とASEAN 各国首脳は 日本とASEANが戦略的な パートナーシップを深化 拡大させる決意を再確認 2.ASEAN の重要性 (1)5 億の人口 成長著しい経済を有するASEANの安定は東アジ図 2:ASEANへの旅行者数アの安定に直結する またASEANは日本にとって重要なシー日本域外からの旅レーンに位置する 11.9% 行者数 3120 万人うち日本中国 (2)ASEANは日本にとりアメリカ 中国に次ぐ貿易相手 かつ日本 370 万人その他 11.0% 50.1% (2006 年実績 ) 韓国の重要な投資先 ( 貿易については3 4 頁 投資は5 頁参照 ) 10.7% 米国 (3) 日本とASEANは30 年以上に亘る信頼関係 日本人にとってア台湾 8.1% 香港 5.1% 3.0% メリカに次ぐ旅行先 ( 右図参照 ) 出所 : 日本 ASEANセンター 1 豪 NZ 3.9% 香港 5.6% 台湾 5.2% 韓国 11.3% 図 1: 日本人の旅行先 その他 9.2% EU 13.9% 米国 18.1% 中国 15.8% ASEAN 17.0% 旅行者数 : 2,151 万人 ( のべ ) うち ASE AN:367 万人 (2005 年実績 ) 出所 : 国際観光振興機構
Ⅱ. 日 ASEAN 貿易の概況 1 ASEANから見た日本 日本から見たASEAN 日本は 最も重要な貿易相手国 米中 EUに並ぶ重要な貿易パートナー ASEANの対域外貿易総額 (11,150 億米ト ル ) のうち 対日貿易額が占める割合は15.1% で 米国 に並び最も重要な貿易相手国 (2006 年実績 ) 日本の貿易総額 (142.6 兆円 ) のうち 対 ASEAN 貿易総額が占める割合 12.7% で 米 中に次い で第 3 位 (2006 年実績 ) インド 2.6% 豪 NZ 4.3% 台湾 4.8% 韓国 5.7% 香港 7.9% その他 16.7% EU 12.4% 米国 16.1% 中国 14.3% 日本 15.1% インド 0.7% 香港 3.1% 豪 NZ 3.7% 台湾 5.3% その他 21.0% 韓国 6.3% EU 12.5% 米国 17.4% 中国 17.2% ASEAN 12.7% 対域外国合計 :11,150 億米ト ル 対日本 :1,678 億米ト ル (2006 年実績 ) 出所 : IMF DOTS QUARTERLY June 2007 台湾国際貿易局 Web Site 対世界貿易額 :142.6 兆円 対 ASEAN:18.2 兆円 (2006 年実績 ) 出所 : 財務省 貿易統計 2
Ⅱ. 日 ASEAN 貿易の概況 2 真珠 貴金属並びにこれらの製品等, 2.0% 銅及びその製品, 1.8% 有機化学品, 2.2% 鉄鋼製品, 3.2% プラスチック及びその製品, 3.8% 精密機器 医療用機器 その他並びにこれらの部品等, 4.1% 鉄鋼, 7.4% 日本から見た ASEAN 一体化した生産ネットワーク 日本企業の生産拠点の進出により 部品の輸出が多い ( 例えば タイ向け自動車及び自動車部品の輸出のうち 77% 以上は 自動車部品 ( ) ) 車両並びにこれらの部品等, 9.0% その他, 15.3% 電気機器並びにこれらの部品等 29.6% 機械類並びにこれらの部品 21.6% ASEAN への日本の輸出品目別シェア (2006 年実績総額 8 兆 3485 億円 ) 出所 : 財務省 貿易統計 ( )HS87 類及びHS84 類の一部 ( 自動車用エンジン ) のうち 自動車部品関連の品目の輸出の占める割合 精密機器 医療用機器 その他並びにこれらの部品等, 2.1% プラスチック及びその製品, 2.3% 魚並びに甲殻類 軟体動物及びその他の水棲無脊椎動物, 2.6% 履き物及びゲートルその他これに類する物品並びに部品, 0.6% ゴム及びその製品, 3.3% 鉱石 スラグ及び灰, 3.9% 木材及びその製品並びに木炭 4.4% ASEAN から見た日本 重要な輸出市場 ASEAN からの輸入のうち 約 85% が鉱工業品 15% が農林水産品 その他 22.8% 機械類並びにこれらの部品 10.3% 出所 : 財務省 貿易統計 鉱物性燃料及び鉱物油並びにこれらの蒸留物, 28.8% ASEAN からの日本の輸入品目別シェア (2006 年実績総額 8 兆 9928 億円 ) 電気機器並びにこれらの部品等, 18.8% 3
Ⅲ. 日 ASEAN 投資の概況 ASEAN から見た日本 長期に亘る多額の投資蓄積 日本企業の生産拠点としての実態を反映して 中 韓等他の ASEAN の対話国 (dialogue partners) に比べ 圧倒的な金額の投資蓄積を有する 日本から見た ASEAN 東アジア最大の投資先 ASEAN は 我が国にとって東アジアにおいて最も重要な投資先 インド 0.5% その他 31.4% EU 28.5% 台湾 0.8% 韓国 1.3% 香港 1.6% 豪 NZ 3.0% その他 16.2% EU 31.5% 中国 1.0% 韓国 1.6% 台湾 2.7% 米国 15.5% 日本 16.2% 中国 4.9% ASEAN 9.3% 北米 30.8% 香港 3.0% ASEAN 域外からの対 ASEAN 直接投資域外国投資累計 :2,922 億米ト ル日本投資累計 :497 億米ト ル (1996-2006 年累計 ) 出所 :ASEAN 事務局 FDI FLOWS TO ASEAN BY COUNTRY OF ORIGIN 1996-2006 日本からの対外直接投資対外直接投資累計 :51 兆 6,512 億円 対 ASEAN 4 兆 8,032 億円出所 : 財務省 国別 地域別対外直接投資状況 (1995-2004 年度累計 ) ( 平成 16 年度まで ) 出所 : 財務省 対外及び対内直接投資状況 ( 平成 16 年度まで ) 4
Ⅳ.AJCEP のメリットー原産地規則の 累積 の適用 ( 注 ) < 二国間 EPA+ASEAN 自由貿易地域 (AFTA) のみの場合 > < AJCEP > フラット パネル TV を A 国で組み立てる場合 ( 日本側で生産した部品 ( パネル ) の付加価値が フラット パネル TV 全体の付加価値の 60% 以上を占める場合を想定 (= ASEAN 域内の追加付加価値が 40% 未満のケースを想定 )) 日本 60% 以上 想定 - 日本 60% 以上 ASEAN (AFTA) ASEAN 産として見なされるためには 40% 以上の付加価値分が ASEA N 内で生産される必要有り I J H G TV set 二国間 EPA A 国 (40% 未満 ) MFN 税率 F ( 市場 ) B 輸出 無関税 E C 二国間 EPA パネル 二国間 EPA D ( 市場 ) AJCEP の実現 単一の市場 としての供給網 I H J ASEAN G TV set 無関税 TV set A 国 (40% 未満 ) 無関税 F 市場 B 輸出 無関税 E C パネル D 市場 5 ( 注 ) 累積とは 一般的に 締約国 A の原産品が締約国 B で生産される産品の材料として使用される場合に その原産品が締約国 B の原産材料としてみなされることをいう AJCEP 協定の下では 二国間 EPA に比し原産品として認定されることがより容易となるとのメリットがある
Ⅴ. 交渉の経緯 2002 年 1 月小泉総理 ( 当時 ) 演説 ( 於シンガポール ) にて 日 ASEAN 包括的経済連携構想 を提唱 2003 年 10 月日 ASEAN 包括的連携協定の枠組みを採択 2005 年 4 月日 ASEAN 包括的連携協定交渉開始 以来 11 回の正式交渉会合を開催 2005 年 12 月日 ASEAN 首脳会議 交渉を 2 年以内に終えるように最善の努力を行う ことを首脳間で確認 物品貿易自由化の構造の議論については 他の締約国に等しく単一の譲許表を適用する共通譲許方式を採用 2007 年 1 月日 ASEAN 首脳会議にて 2005 年 4 月の交渉開始から 2 年以内に妥結するという決意を再確認 2007 年 5 月の日 ASEAN 経済大臣会合 ( 於 : ブルネイ ) において 物品貿易自由化の方式 ( モダリティ ) について原則的に意見が一致した 2007 年 5 月に原則的に意見が一致したモダリティを踏まえ 日本と ASEAN 各国間でオファー交換を行った その後の交渉を通じて 各国のオファー リストの品目の微調整 ( ファイン チューニング ) を実施し オファー リストを確定 これを踏まえ 8 月 25 日に開催された日 ASEAN 経済大臣会合にて大筋合意を確認 2007 年 11 月に開催される日 ASEAN 首脳会議にて各国首脳に交渉妥結を報告 6
Ⅵ. 物品 (1) - 物品貿易自由化に関するモダリティー - 日本 :10 年以内に貿易額 93% の部分について関税撤廃を行い その他のものの一定割合について 関税率を一定水準以下にするとの規律を導入する ASEAN6 ヵ国 ( ブルネイ インドネシア マレーシア フィリピン シンガポール タイ ):10 年以内に貿易額 品目数共に 90% について関税撤廃を行い その他のものの一定の割合について関税率を一定水準以下にするとの規律を導入する ASEAN4 ヵ国 ( カンボジア ラオス ミャンマー ベトナム ): 関税撤廃 引下げのスケジュール等について それぞれの経済発展段階に応じて ASEAN6 ヵ国との差を設ける 貿易額基準 品目数基準 (HS6 桁 ) 貿易額基準 品目数基準 (HS6 桁 ) 品目数基準 (HS6 桁 ) 除外又は関税率を一定水準以下にする 段階的関税撤廃 (10 年以内 ) 93% 90% 90% 除外又は関税率を一定水準以下にする 段階的関税撤廃 (10 年以内 ) 90% 90% 除外又は関税率を一定水準以下にする 段階的関税撤廃 (15 年以内 ) 85% 除外又は関税率を一定水準以下にする 15 年以内に関税率 0-5% 段階的関税撤廃 (18 年以内 ) 即時関税撤廃 即時関税撤廃 < 日本のモダリティ > < アセアン 6( インドネシア シンガポール タイ フィリピン ブルネイ マレーシア ) のモダリティ > < ベトナムのモダリティ > <CLM( カンボジア ラオス ミャンマーのモダリティ > 7
Ⅵ. 物品 (2) - 品目別概況 - 日本側のオファー 鉱工業品については 殆どの物品について 10 年以内に関税撤廃を行う 農林水産品については 守るべきものは守りながら ASEAN 側の関心品目について 関税削減等を通じ 日本側として可能な努力を行う 農林水産品のオファー概要 (1) 関税撤廃に応じた品目 ( これまでのアセアン各国との二国間 EPA で関税撤廃に応じた品目 ) 即時関税撤廃する品目の例ドリアン えび えび調製品等 10 年以内に段階的関税撤廃する品目の例塩蔵なす カレー調製品 くらげ等 (2) 関税撤廃に応じなかった品目 関税削減する品目の例鶏肉調製品 合板 ( 熱帯産木材を使用したもののうち関税が 6% 及び 8.5% のもの ) 等 除外等 関税撤廃 削減の対象外とした品目の例国家貿易品目 ( 米麦 米麦調製品 乳製品 ) 牛肉 豚肉 鶏肉 砂糖 砂糖調製品 でん粉 パインアップル ( 缶詰等を含む ) 合板 ( 熱帯産木材のうち関税が 10% のもの 熱帯産木材以外のもの ) かつお まぐろ 水産 IQ 品目等 ASEAN 側のオファー AJCEP 協定は 日本とASEAN 域内での原産地規則の 累積 の適用によって 日本及びASEAN 域内全体での生産ネットワークを強化することにその主要な意義がある そのような原産地規則の 累積 の適用によって裨益する効果が大きい品目 ( 例えば 薄型テレビや薄型テレビパネル 自動車部品等 ) については 殆どの国において 十分な関税の撤廃 削減が約束される等 質の高い内容を実現 8
Ⅶ. その他の分野 原産地規則 原産地規則の 累積 のメリット - 原産地規則とは ある産品が AJCEP 協定に基づく特恵関税の対象となる原産品として認められるためのルール 日本と ASEAN 域内での原産地規則の 累積 ( ある産品が締約国 A で生産される場合 その生産に使用された締約国 B の原産材料を締約国 A の原産材料とみなすこと ) の適用によって AJCEP 協定の下では 二国間 EPA に比し原産品として認定されることがより容易となるとのメリットがある 投資 サービス 既に二国間枠組みでの取組みが存在 - 二国間 EPA や投資協定を通じて 一定の自由化が確保されている 将来的な地域レベルの取組みにむけた基盤整備 - AJCEP 協定においては 将来的な地域レベルの自由化に向けた基盤を構築 サービス貿易 並びに投資の自由化及び保護についての今後の交渉を規定 協力 開発格差の是正や ASEAN 全体の統合に資する協力を実施 - AJCEP 協定の下で 知的財産分野や農林水産分野 ( 違法伐採対策を含む ) における協力 CLMV 向け支援等を含め ASEAN 地域内の開発格差の是正や ASEAN 統合に資するような協力を実施予定 9
( 参考 ) 東アジア諸国との EPA 交渉の現状 韓国 2003.12 交渉開始 2007.1 交渉開始 インド タイ 2007.11 発効 2006.7 発効 2007.1 交渉開始 2002.11 発効 2006.9 署名 2006.12 国会承認 2007.11 交渉妥結 マレーシア ベトナム 2007.3 改正議定書署名 2007.6 国会承認 2007.6 署名 フィリピン ASEAN 全体 2007.4 交渉開始 2007.8 署名 ブルネイ シンガポール インドネシア 豪州 10