道の駅 と大学との連携による地域活性化への取り組みについて 三浦義則 1 澤弥 2 中野友里加 2 1 道路部 ( 950-8801 新潟県新潟市中央区美咲町 1-1-1) 2 道路部道路計画課 ( 950-8801 新潟県新潟市中央区美咲町 1-1-1) 道路休憩施設である 道の駅 は 近年 農業 観光 福祉 防災 文化など 地域の個性 魅力を活かした様々な取り組みがなされ 地域の活力として重要なツールとなっている このような魅力集まる 道の駅 を観光振興や地域振興を学ぶ学生の課外活動やインターンシップの場として活用し 地域活性化を図る取り組みが平成 27 年度から全国的に実施されることとなった 本論文では 平成 27 年度に北陸地整管内で取り組んだ事例について報告する キーワード道の駅 大学 地域活性化 1. はじめに 道の駅 とは 主に市町村が設置し国土交通省が登録する道路休憩施設であり 駐車場やトイレのほか 道路情報の提供や地域振興施設を備え 地域の情報発信や交流の場として活用されている ( 図 -1) 図 -1 道の駅 の基本コンセプト 品の販売や観光の窓口 診療所や役場機能 更には防災拠点としての役割など 多様な役割を担い 地域の資源 個性 魅力を活かした様々な取り組みがなされている 2. 道の駅 と大学との連携 道の駅 には 前述のとおり地域の資源が集まっているため 地域の課題を解決し 地域の活力として機能する場となる可能性を持っている そのため 地域づくりや観光などを学ぶ学生にとって 道の駅 は最適な実習フィールドであると考えられる こうしたことから 将来を見据えた地域活性化方策として 道の駅 と大学との連携 交流を図り 地域の魅力集まる 道の駅 を 観光振興や地域づくりを学ぶ学生の課外活動や就労体験の場として 活用することが平成 26 年度より進められた 道の駅としては 学生の実行力によるイベントの実施 SNS や HP の作成による情報発信 学生の企画力 デザイン力を活かした商品開発など学生の力を活用できるメリットがある ( 図 -2 3) 平成 5 年に制度を創設してから 20 年以上が経過し 当初 103 駅であった 道の駅 は現在までに 1,09 3 駅に広がっている 道の駅 は 当初 道路利用者が安心して立ち寄ることが出来る休憩施設であったが 近年は 地域の特産 図 -2 道の駅 と大学との連携イメージ
地域活性化を目的に地元特産の白エビを使用した新商 品開発を行った また 人材育成を目的に大学生が企画 した 青森県産ホタテ貝焼 の販売を実施した カモンパーク新湊からは 新商品の参考になる地域の 情報や若者ならではの発想が頂けたとの声があった 図-3 実施のメリット この取り組みにより 道の駅 における新たな価値 を創造し 観光 地域づくりを担う将来の人材を育成す るとともに 地域活性化に寄与できるものと考えられる 道の駅 と大学との連携には 主に夏季休暇を活用 して行うインターンシップ型の実習である 就労体験 型 大学のゼミ等で付加価値を創出する企画 立案等 を行う 連携企画型 がある 表-1 表-1 就労体験型と連携企画型 写真-1 学生自ら企画した 青森県産ホタテ貝焼 の販売 (2) 道の駅 ちぢみの里おぢや 新潟県小千谷市 図-4 連 携 型 連携企画型 連携学生 長岡技術科学大学学生 7名 佐野教授 連携期間 H27.6.6 (土) H27.6.7 (日) 内 容 スタンプラリーの開催 物産販売 写真-2 山形県 新潟県 福島県 小千谷市 道の駅 ちぢみの里おぢや 長野県 群馬県 図-4 位置図 3. 北陸地整管内での取り組み 次に 取り組みの概要について報告する (1) 道の駅 カモンパーク新湊 射水市 図-3 連 携 型 就労体験型 連携学生 青森中央学院大学学生 2名 連携期間 H27.9.11 (金) H27.9.23 (水) 内 容 新商品の企画 写真-1 イベントの企画 実行 観光振興を目的に学生が道の駅の周辺地域を巡るスタ ンプラリーコースを設定した コースには普段あまり人 が訪れない場所を組み込み地域の魅力を再発見してもら えるよう工夫が施された また 人材育成や道の駅利用 者との交流を目的に学生が物産販売を行った 新潟県 射水市 写真-2 (左)学生が作成したイベントポスター 道の駅 カモンパーク新湊 長野県 石川県 岐阜県 図-3 位置図 (右)物産販売
(3) 道の駅 すずなり ( 石川県珠洲市 ) 連携型 : 連携企画型 連携学生 : 金沢星稜大学学生 36 名捧教授青木准教授 連携期間 :H27.8.24 ( 月 )~H27.8.25 ( 火 ) 内容 : 地域振興方策の提案 ( 詳細については後述 ) この 3 事例の中から 道の駅 すずなりについて 次で詳細に紹介する 4. 道の駅 すずなりと金沢星稜大学の取り組み (1) 珠洲市の課題 道の駅 すずなり ( 写真 -3) が位置する珠洲市は 能登半島の先端に位置し 美しい里山里海が広がっている しかし 珠洲市へは金沢市から車で 3 時間 公共交通機関を利用すると 4 時間以上かかり 地理的不利な位置にある ( 図 -5) また 人口減少や高い高齢化率 (H26 高齢化率 44%) といった課題を有している 人口減少社会の中で 地域活性化のためには 定住人口増加はもちろんのこと 観光振興等によって交流人口の増加を図る必要がある (2) 金沢星稜大学の取り組みこのような課題を抱えた珠洲市の地域活性化策を提案するため 金沢星稜大学は 道の駅 すずなりと連携し 調査研究を行った 以下に取り組みスケジュールを示す 0 平成 26 年度 1 月金沢星稜大学と 道の駅 すずなりへ取組概要を説明 2 月金沢星稜大学と 道の駅 すずなりへ取組意向を確認 取組決定 平成 27 年度 5 月 道の駅 すずなりとの調整 地域の課題 調査テーマを抽出 学生の受け入れの体制 ( 珠洲市の協力要請 ) 金沢星稜大学との調整 調査内容の検討 スケジュール 体制 06 月調査内容等の決定 金沢星稜大学が事前調査を開始 8 月現地調査実施 (24 日 25 日 ) 11 月調査研究発表会を開催 12 月 道の駅 すずなりへ調査研究成果を提出 写真 -3 道の駅 すずなり 珠洲市 道の駅 すずなり 現地調査は 金沢河川国道事務所 珠洲市 道の駅 すずなり 金沢星稜大学で事前打ち合わせや各種調整を行い実施に至った また 現地調査当日 学生の取り組みを支援するため 北陸地整より 道路計画課 2 名 金沢河川国道事務所 2 名の計 4 名が参加した 調査研究を 4 つのテーマに分類し 調査研究の内容 解決策 ( 企画提案 ) を示す 金沢市 福井県 石川県 岐阜県 図 -5 位置図 a) 道の駅 すずなりの調査研究 目的 : 観光案内所の役割を担う 道の駅 すずなり利用促進策の提案 調査内容 : 事前調査 道の駅 現地調査 来訪者のニーズアンケート ( 写真 -4) 等 企画提案 : 店内商品のマップ作成 特産品や食材を使用したスイーツの新商品 方言を使用したPOP SNSの活用方法等
d) 珠洲市観光調査研究 目的 : 珠洲市の良さを知ってもらうための観光ルートやPR 方法を提案 調査内容 : 事前調査 現地観光ルート調査 アンケート調査 企画提案 : 各観光地の連携 ストーリー設定を行う 沿岸部を周遊するための自転車拠点整備 レンタサイクルの導入 写真 -4 来訪者へのアンケート調査 b) 祭り振興の調査研究 目的 : 蛸島キリコ祭り 燈籠山祭りの魅力アップへの提案 調査内容 : 事前調査 現地調査 ( 写真 -5) 企画提案 : 祭りについて HPやSNS で写真等を頻繁に情報更新 遠方より参加する観光客のための宿泊施設の充実等 この取り組み結果は 平成 27 年 11 月 2 日に金沢星稜大学の学生から 道の駅 すずなりに提案された ( 写真 -7) 写真 -7 調査研究発表会 (3) 取り組み成果道の駅 すずなり は 学生からの企画提案を受け 以下の 2 つの取り組みを実施した 接客英会話集の配布 レンタサイクル 写真 -5 祭り関係者にヒアリング c) 宿泊施設の調査研究 目的 : 観光客が快適に民宿を利用してもらうための宿泊者の利便性 満足度向上の提案 調査内容 : 事前調査 現地調査 ( 写真 -6) 企画提案 : 高齢者 障がい者 子供 外国人に対応するサービスの充実 外国人観光客に対する接客程度の言語習得の必要 ( 接客英会話集の作成 ) 等 a) 接客英会話集 ( 宿泊施設の調査研究 ) 輪島市が外国人に対応するための取り組みを行っていることから 学生は同様の取り組みが珠洲市でも実施できないかと考え 外国人でも利用しやすいよう接客程度の英会話集を作成し 各宿泊施設に配布した 宿泊施設の方からは 現在のところ外国観光客が少ないが 平成 29 年 9 月上旬 ~10 月下旬に開催される 奥能登国際芸術際 2017 に多くの外国人観光客が見込まれることから 接客英会話集の有効活用ができるとの声を頂いている 写真 -6 民宿施設にヒアリング b) レンタサイクル ( 珠洲市観光調査研究 ) 公共交通機関が発達していない珠洲市で 観光客の行動範囲を広げるためレンタサイクルの導入を提案した ( 写真 -8)H27.10 月より 道の駅 すずなりで導入され H28.5 月末現在で利用状況は 10 台となっている オフシーズンに入る時期に導入したことや 認知度が広がっていないことで 現段階では結果が出ていないが 認知度の向上やレンタサイクルを利用した観光マップの作成など 利用促進につながる提案は多く考えられ 今後期待される
写真 -8 試行開始されたレンタサイクル 他の提案について 道の駅 すずなりは 今後も活用できるものは 取り入れていくとしている てくれる大学を増やしたい 道の駅 には この取り組みを理解し 参加してもらえるよう 引き続き取り組み内容の情報共有を行っていく そして 多くの大学と 道の駅 が協力し 地域活性化を図る取り組みを広げていきたい また今回 一般の方にもこの取り組みを知ってもらうため 実施前に記者発表をおこなった 3 つの取り組み全てが 新聞に掲載された 今年度も引き続き 記者発表などを利用し メディアへの働きかけを行いたい また SNS などを利用した活動の PR もあわせて行っていく 5. まとめ 7. おわりに 今回の取り組みは 道の駅 と大学の両方にメリットがあったと考えられる 道の駅 は SNS を活用した情報発信や新商品の企画などの学生視点の地域活性化策が提案され 実際に 道の駅 に導入されるなど学生の力を活用できた 学生も自らイベントを企画 実行し 課題に対して解決策を提案するなど 非常に良い経験が得られたと考える 学生からも 新商品を企画 プレゼン発表を行うなど良い勉強になったとの声があった また 学生に地域活性化方策を提案してもらうことで これからの地方が抱えていく課題を理解してもらうきっかけとなったと考える 6. 今後の課題 展開 (1) 就労体験型 就労体験型 では 全国の学生を対象としているため 遠方にいる学生と取り組み実施前に打合せ等が困難であり 事前のやり取りは 大学を通して行う事になる 就労体験型 の連携を終えて 道の駅 から 実施前に大学との事前調整を密に行いたかったとの声があった 北陸地整は このことを踏まえ 仲介役として連携実施前に 道の駅 と密に連絡をとり 道の駅 が必要とすることに対し 協力 サポートをしていき 連携事業をより良くするための環境づくりに努めたい (2) 企画連携型 今回初めての取り組みということもあり 手を挙げる 道の駅 が少なかった 良い成果となれば 参加する 道の駅 が増えると考えられるため 継続的に取り組みを行っていく 参加していない 道の駅 に 情報共有を行い 取り組みへの理解 関心を広げていきたい (3) 全体をとおして平成 27 年度から実施した事業であるため この取り組みを知らない大学が多いと思われる 取り組みを知ってもらうために 大学に活動を PR し この活動に参加し 学生の提案 ( レンタサイクルの導入 ) が 今の段階で良い結果に繋がらなかったことから 提案策がすぐに結果に結びつくのは 難しいものであると感じた 利用促進につながる提案は多く考えられるため 1 回の取り組みで終わるのではなく 継続的に行う必要がある 平成 28 年度も 道の駅 ちぢみの里おぢや 道の駅 すずなりで企画連携型の調査を引き続き実施する また 道の駅 カモンパーク新湊と新たに 2 つの道の駅で 連携企画型の取り組みを今年度から行う予定である 昨年度培ったノウハウや課題を踏まえ 今年度の取り組みを更に良いものにしていきたい 今回の事業は 地域活性化の解決策とまでいかないとしても 学生の視点で自由なアイディアをたくさん聞くことができた 継続的に取り組みを行い 道の駅 と大学の両方が知見 ノウハウ等を蓄積していくことで 地域活性化の糸口が発見されることに期待したい 北陸地整としても 経験を蓄積させ 大学と 道の駅 のニーズを把握し 取り組みがスムーズにおこなえるよう サポートをおこなっていく 最後に 本報告をとりまとめるにあたり ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます 参考文献 1) 国土交通省 HP http://www.mlit.go.jp/road/michi-no-eki/index.html 2) 北陸地方整備局 HP http://www.hrr.mlit.go.jp/road/miti_eki/front.html 3) 全国 道の駅 連絡会 HP http://www.michi-no-eki.jp/college/ 4) 国土交通省 道の駅 における大学との連携 交流を本格実施します 平成 26 年 11 月 21 日 (Press Release) 5) 全国 道の駅 連絡会 道の駅 と大学との連携の実施結果について 平成 28 年 4 月 1 日 (Press Release)