個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

Similar documents
2018年夏のボーナス見通し

2017年夏のボーナス見通し

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

2017・2018年度経済見通し(17年8月)

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

Economic Indicators   定例経済指標レポート

タイトル

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

【No

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

Economic Indicators   定例経済指標レポート

別紙2

2016年冬のボーナス見通し

Microsoft Word - 55_3

各商品の動きについて 新規出店を含めた全店ベースの前年比でみると 衣料品の減少と飲食料品の増加がここ数年のトレンドとして定着しており 7 年も衣料品は減少し 飲食料品は増加した 衣料品が減少傾向にあるのは 販売形態の多様化により 購入先として衣料品専門店や通販 インターネットショッピングなどの選択肢

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

Microsoft Word - 20_2

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

月初の消費点検(3/4)~消費税増税の判断を控えて~

2. 消費税率引き上げが個人消費に与える影響 (1)1997 年度の消費増税時のレビュー ~ 大きかった駆け込み需要の影響消費税は 89 年 4 月に税率 3% で導入され 97 年 4 月に 5% に引き上げられた 89 年度の導入時は従来の物品税廃止によって自動車など耐久財の多くが実質減税となっ

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

[000]目次.indd

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

関西の景気動向 2013 年 5 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直している 輸出は 円安が進み 米国経済も回復基調をたどるなど 環境が

Microsoft Word - 49_2

Microsoft Word - Research Focus最終.docx

CW6_A3657D13.indd

<4D F736F F D20819A819A8DC58F49835A C C8E816A2E646F63>

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

月初の消費点検(1/4)~消費税増税の判断を控えて~

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

CW6_A3657D14.indd

住宅取得支援政策とその効果

Microsoft PowerPoint - 0.表紙.ppt

1 概 況

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

01Newsletterむさしの7.indd

2014~2016年度 東海経済見通し

シニア層の健康志向に支えられるフィットネスクラブ

エコノミスト便り【日本経済】消費動向の分析①/マーケット情報 - 三井住友アセットマネジメント

個人消費 ( やや良い ) スーパー 百貨店売高 スーパー売高は 全店ベースで前年同期を 年 月期の個人消費関連 は スーパー売高が 全店ベース ( 前年同期比.% 増 ) は 新規出 回り 既存店ベースは 前年同期を下回る 百貨店売高は前年同期を回る 店効果などにより 前年同期を回 りました 品目

2 自動車登録台数 ( 台 ) 2,, 図 2 消費税導入 税率引き上げ時における自動車登録台数 ( 三重県 ) の推移 景気後退期, 6, 物品税の廃止による反動増 駆け込み需要 反動減 4, アジア通貨危機平成 9 年 5 月 ~ リーマンショック 2, 平成 9 年 月金融危機 ( 三洋 拓銀

25_2

01Newsletterむさしの6月.indd

○ユーロ

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活

図 3 世界の GDP 成長率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas Piketty ホームページ 図 4 世界の資本所得比率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas P

報通信の現況 コンテンツ市場の動向 マルチユース市場の内訳をみると 映像系コンテンツ 1 兆 4,243 億円の主な内訳は 地上テレビ番組が 5,074 億円 映画ソフトが 4,884 億円 衛星 CATV 番組が 3,530 億円となっている 音声系コンテンツの内訳は 音楽ソフトであり 1,353

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

1 ( ) 4.1% 4.4% 4.% 1 ( ) 1.2%( ) 1.6% 3.8% 1( ) 5.6% 4, % 8 6.5% % 2 4.3% 47.8% 18.8% % 13 2, % 2.2% 13.% 218 ( ).

月別の売上でみると 百貨店については 夏物衣料が好調だった 7 月と一部店舗で閉店セールを行った 9 月を除いて前年同月を下回っています 一方 スーパーについては 台風の影響があった 8 月を除いて 前年同月を上回っています 1,2 1-3 平成 28 年百貨店 スーパー販売額合計 ( 北海道 :

平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

社団法人日本生産技能労務協会

<4D F736F F D BD90AC E937E82CC837B815B B83678C8B89CA5B315D2E646F63>

関西の景気動向 2013 年 11 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直しのペースがひところと比べて鈍化している 輸出 ( 円ベース )

調査結果の概要 1. 自社チャンネルの加入者動向については消極的な見通しが大勢を占めた自社チャンネルの全体的な加入者動向としては 現状 では 減少 (50.6%) が最も多く 続いて 横ばい (33.7%) 増加 (13.5%) の順となっている 1 年後 についても 減少 (53.9%) 横ばい

( 平成 31 年 1 月判断 ) 平成 31 年 1 月 財務省北陸財務局 富山財務事務所 富山市丸の内 1 丁目 5 番 13 号 ( 富山丸の内合同庁舎 5 階 ) TEL(076) ( 財務課直通 )

Microsoft Word - ke1106.doc

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

1. 総論 総括判断 都内経済は 回復している 項目前回 ( 1 月判断 ) 今回 (3 年 1 月判断 ) 前回比較 総括判断回復している 回復している ( 注 )3 年 1 月判断は 前回 1 月判断以降 1 月に入ってからの足下の状況までを含めた期間で判断している ( 判断の要点 ) 個人消費

高値となった後 下がり始めた 前述の通り CI 一致指数は 生産や雇用など様々な経済指標を統合し算出されている そのため CI 一致指数の上昇 下降にどの指標 が寄与しているのかについても 内閣府は詳細に発表している 表 1は 各指標がCI 一致指数に対してプラスに寄与したのか マイナスに寄与したの

金融政策決定会合における主な意見

丸紅経済研究所 Economic Review エコカー販売促進政策の効果 2009/8/11 1. 国内乗用車販売の現状 国内乗用車販売の最近の動向をみると ( 図表 1) 07 年までは 1 中期的な クルマ離れ ( 若年人口減尐 嗜好の変化など ) が進行する中 2 平均賃金の伸び悩みや 3ガ

untitled

CW6_A3657D16.indd

2013 年 2 月 27 日 富士重工業 2013 年 1 月度 生産 国内販売国内販売 輸出実績 ( 速報 ) 生産 ( 単位 : 台 %) 台数 前年比 登録車 49, % 国内生産 軽自動車 0 0.0% 計 49, % 海外生産 登録車 16,

2012 No

4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

共働きは 収入源の分散化や世帯所得の増加をもたらすことから 基本的には消費に対する自由度を高めるものと予想される つまり 配偶者収入も含めて 収入が消費に結びつきやすくなる可能性があるということだ しかし 実際には 共働き世帯が増加しているにも拘わらず 家計は消費に対して慎重になっているようだ 世帯

資料1

1. 総論 総括判断 県内経済は 緩やかに回復しつつある 項目前回 (3 年 4 月判断 ) 今回 (3 年 7 月判断 ) 前回比較 総括判断緩やかに回復しつつある 緩やかに回復しつつある ( 注 )3 年 7 月判断は 前回 4 月判断以降 足下 (7 月末 ) の状況までを含めた期間で判断して

2019年の日本経済

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

本文

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

. 消費増税が消費に影響を与える 3 つのメカニズムそもそも 消費増税は どのようなメカニズムで消費に影響するのだろうか 本稿では 消費増税による消費への影響を 代替効果 所得効果 3 節約志向効果の3つに分けて説明する 図表 は これら3つのメカニズムを概念図として表したものである 代替効果は 本

2018~2020年度経済見通し(18年11月)

富山県金融経済クォータリー(2018年夏)

第1章

3_2

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

チーフエコノミスト : 高田創 [ 経済予測チーム ] 山本康雄 ( 全体総括 ) 米国経済小野亮 山崎亮

調査結果の概要 1. 自社チャンネルの加入者動向について 横ばい との見方が拡大自社チャンネルの全体的な加入者動向としては 現状 では 減少 (40.0%) が最も多く 続いて 横ばい (35.6%) 増加 (23.3%) の順となっている また 1 年後 については 横ばい (41.1%) が最も

世帯収入 DI 増えた と 減った 二極化の傾向現在の 世帯収入 DI ( 増えた やや増えた ) と回答した割合から 減った やや減った と回答した割合を引いた値 ) は - で前回 ( 年 6 月 :-8) から - ポイントとなりほぼ横ばいとなった 回答の内訳をみると やや増えた が + ポイ

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

富山県金融経済クォータリー(2018年秋)

【別添3】道内住宅ローン市場動向調査結果(概要版)[1]

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

本稿のポイント における個人消費と所得の動向をみると 所得が対比弱めで推移してきた一方 個人消費の堅調さは並みで推移するなど 所得対比でみた個人消費の堅調さ が目立つ の個人消費の特徴を業態別にみると 百貨店 がに比べて好調である一方 スーパー が弱めの姿となっている また 品目別にみると 衣料品

Newsletterむさしの_2.indd

エコノミスト便り

Transcription:

ニッセイ基礎研究所 2010-05-14 個人消費の回復を後押しする政策以外の要因 ~ 所得の減少に歯止め 節約志向も一段落 経済調査部門主任研究員斎藤太郎 (03)3512-1836 tsaito@nli-research.co.jp 1. 個人消費はエコカー減税 補助金 エコポイント制度などの政策効果を主因として 2009 年春頃から回復を続けている 2. ここにきて政策効果は一巡しつつあるが 雇用 所得環境の持ち直し 消費者心理の改善といった政策以外の要因が個人消費の押し上げ要因となっている 3. 消費者の節約志向が一段落したことも明るい材料のひとつである 2008 年秋のリーマン ショック以降 支出を切り詰めるためにタクシーの利用を控え バス 鉄道の利用に切り替える動きが見られたが ここにきてバス 鉄道の利用回数が減る一方 タクシーの利用回数が増えている また 外食の平均単価は下がり続けているが 外食の回数が増えているため 家計の外食費は増え始めている 4. 雇用 所得環境の持ち直しが続くことが見込まれるなか 6 月からは子ども手当の支給も始まるため 2010 年度前半の個人消費は引き続き堅調に推移する可能性が高い 5. 個人消費が正念場を迎えるのは エコカー補助金 エコポイント制度の終了に伴う反動減が懸念される 2010 年度後半と考えられる その頃までに雇用 所得環境の改善が明確なものとなることが個人消費の回復が持続するための条件と言えるだろう 2 1 1 鉄道 バス タクシーの利用回数 1 タクシー 0601 0604 0607 0610 0701 0704 0707 0710 0801 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001 ( 注 ) 利用回数は購入頻度 (100 世帯当たり ) 3ヵ月移動平均 バス 鉄道 低 節約志向 消費者の節約志向は一段落か 2 1 1 1 タクシー利用回数 - バス 鉄道利用回数 消費者態度指数 ( 右目盛 ) ( 前年差 ホ イント ) 15 10 2 高 15 0601 0607 0701 0707 0801 0807 0901 0907 1001 ( 注 ) バス 鉄道利用回数 は両者の平均値 内閣府 消費動向調査 10 5 0 5 1

政策効果が弱まる中 堅調を維持する個人消費 個人消費は 2009 年春頃から回復を続けている GDP 統計の家計消費支出は 2008 年 4-6 月期以降 前期比で減少を続けていたが 2009 年 4-6 月期に 5 四半期ぶりに増加に転じた後は比較的高い伸びを続けている 2010 年 1-3 月期の実績値は 5/20 に内閣府から公表されるが 当研究所では前期比 0.9% と 10-12 月期の同 0.7% からさらに伸びを高めると予想している 個人消費の減少に歯止めをかけたのは 言うまでもなく定額給付金 エコカー減税 補助金 エコポイント制度といった政策効果である まず 約 2 兆円規模の定額給付金の支給が 2009 年 4 月から本格的に始まり 個人消費の底打ちに大きく寄与した 2009 年 4-6 月期の家計消費支出は前期比 1.2% の増加となったが 当研究所ではこのうち定額給付金による押し上げが 0.6% と試算している 定額給付金の効果は 4-6 月期のうちにほぼ出尽くしたとみられるが 2009 年夏頃からは エコカー減税 補助金 エコポイント制度の効果が顕在化し 自動車 エコ家電 ( テレビ 冷蔵庫 エアコン ) の回復基調が鮮明となった 新車販売台数は 2009 年 8 月に前年比でプラスに転じた後 11 月以降は前年比 2 台の高い伸びを続けており エコポイント対象品目の中では地上デジタル放送対応への需要もあってテレビが特に高い伸びを示している テレビについては エコポイント対象品目が 4 月から変更されたこともあり 年度末にかけて駆け込み需要が発生し 2010 年 3 月には前年比で 30 近い急増を記録した ( 実質 家計消費状況調査ベース ) 3 2 1 1 2 ハイブリッド車その他普通乗用車軽乗用車 新車販売台数 新車販売台数 ( 含む軽乗用車 ) の推移 3 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001 1004 ( 注 ) ハイブリッド車はプリウスとインサイトの合計 ( 資料 ) 日本自動車販売協会連合会 全国軽自動車協会連合会 ( 実質 前年比 ) エコポイント対象品目の実質支出の伸び 30 25 テレビ 20 15 10 冷蔵庫 5 エアコン 5 0801 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001 ( 注 ) 品目毎のCPIで実質化 ( 資料 ) 総務省統計局 家計消費状況調査 ただし 自動車販売台数の伸びは 2009 年末頃から頭打ちとなっており 季節調整値 ( 当研究所による試算値 ) で見ると 2010 年 1-3 月期には前期比 2.6% と 4 四半期ぶりに減少に転じた 政策関連 4 品目 ( 自動車 テレビ エアコン 冷蔵庫 ) による家計消費支出の押し上げ幅 ( 前期比ベース ) を試算すると 2009 年 7-9 月期には 0. まで拡大したが 10-12 ( 前期比 ) 実質家計消費支出の内訳 1. 1. 0. 0. 0. 1. 1. 2. 自動車エコポイント関連その他全体 0801 0802 0803 0804 0901 0902 0903 0904 1001 ( 注 ) エコポイント関連はテレビ エアコン 冷蔵庫 家計消費支出の内訳は当研究所による試算値 ( 資料 ) 内閣府 四半期別 GDP 速報 日本自動車販売協会連合会 新車販売台数 総務省 家計消費状況調査 2

月期が 0.3% 2010 年 1-3 月期が 0.2% と 追加的な押し上げ幅は徐々に縮小している 一方 政策効果の恩恵を受けていない品目の伸びはこのところ高まっており 個人消費の回復は裾野の拡がりを見せ始めている 雇用 所得環境は持ち直しの動き 政策効果が一巡しつつあるにもかかわらず個人消費が堅調を維持しているのは 政策効果以外の要因が個人消費の押し上げ要因となりつつあるためである 実質家計消費支出の変動を所得要因実質家計消費支出の変動要因 ( 雇用者報酬 その他所得 ) 消費性向 6% 要因 デフレーター要因に分けて見る 4% 2% と 雇用者報酬は 2009 年を通して大幅 な減少が続き消費の下押し要因となっ 2% てきた 雇用者数が大幅に減少したこ雇用者報酬要因 4% その他所得要因とに加え 2008 年度の企業収益の急速デフレーター要因 6% 消費性向要因な悪化を受けたボーナスの大幅減を主 8% 0601 0602 0603 0604 0701 0702 0703 0704 0801 0802 0803 0804 0901 0902 0903 0904 1001 因として一人当たり賃金も大幅な下落 ( 注 ) その他所得は財産所得 所得税 社会給付等 が続いたためである 0902 以降のその他所得 消費性向要因は予測値 1001は全て予測値 しかし 雇用 所得環境の悪化はここ ( 資料 ) 内閣府 国民経済計算年報 四半期別 GDP 速報 にきて歯止めがかかってきた 2009 年 7 月に 5.6% と過去最悪を記録した失業率は 2010 年 3 月には 5. まで低下した 雇用者数は前年比で 1% 台の減少が続いていたが 2010 年 1-3 月期には前年比 0.3% まで減少幅が縮小した (3 月単月では前年比 0.3% と 1 年 1 ヵ月ぶりの増加 ) また 大幅な下落が続いていた賃金も 残業時間の増加に伴う所定外給与の増加を主因として下落幅は大きく縮小している 2009 年 10-12 月期の雇用者報酬は前年比 4. の大幅減少となったが 2010 年 1-3 月期には前年比で横ばい程度まで改善するだろう ( 万人 ) 5550 5500 5450 雇用者数の推移 雇用者数 2. 2. 1. 1. 0. 賃金の下落幅は急速に縮小 2. 1. 0. 1. 特別給与所定外給与所定内給与 5400 5350 5300 0. 1. 1. 2. 0201 0301 0401 0501 0601 0701 0801 0901 1001 ( 資料 ) 総務省統計局 労働力調査 前年比 ( 右目盛 ) 0. 2. 3. 4. 5. 0401 0403 0501 0503 0601 0603 0701 0703 0801 0803 0901 0903 1001 ( 資料 ) 厚生労働省 毎月勤労統計 現金給与総額 ( 一人当たり ) 3

消費者の節約志向が一段落 消費者心理の改善も個人消費の回復を後押しし始めた 2008 年度下期に個人消費の減少ペースが加速したのは 消費者心理の急速な冷え込みが消費性向の大幅な低下をもたらしたことも大きかった しかし 消費者心理は景気底打ち 株価の持ち直し 雇用不安の緩和などから 2009 年春頃を底に改善を続けており 消費性向も 2009 年度下期には上昇に転じたと見込まれる ここにきて 消費者の節約志向が一段落してきたことを示す動きも散見されるようになっており このことも消費性向上昇の一因になっている可能性がある たとえば 総務省の 家計調査 を用いて毎月のタクシー バス 鉄道の利用回数を見てみると 2008 年秋のリーマン ショック以降 バス 鉄道の利用回数が大きく増える一方 タクシーの利用が大きく減少するという動きが顕著となった このことは 消費者の多くが支出を切り詰めるために単価の高いタクシーの利用を控え バス 鉄道の利用に切り替えたことを意味しており 消費者の節約志向の高まりを反映したものと捉えることができるだろう こうした動きは 2009 年秋頃まで続いたが ここにきて両者の関係は逆転している すなわち バス 鉄道の利用回数が前年比で減少に転じる一方 タクシーの利用回数は小幅ながらも増加に転じている 2 1 1 鉄道 バス タクシーの利用回数 1 タクシー 0601 0604 0607 0610 0701 0704 0707 0710 0801 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001 ( 注 ) 利用回数は購入頻度 (100 世帯当たり ) 3ヵ月移動平均 バス 鉄道 消費者の節約志向は一段落か 低 2 タクシー利用回数 -バス 鉄道利用回数 節約志向 1 1 1 消費者態度指数 ( 右目盛 ) ( 前年差 ホ イント ) 15 10 2 高 15 0601 0607 0701 0707 0801 0807 0901 0907 1001 ( 注 ) バス 鉄道利用回数 は両者の平均値 内閣府 消費動向調査 10 5 0 5 また 景気の急速な悪化を受けて 外食を控え家庭で食事する内食志向の高まりが指摘されることも多いが 最近の外食費の動向を見てみると 平均単価は依然として下落が続いているものの 外食の回数は 2009 年終わり頃から増え始めている 足もとでは回数の増加が単価の下落を上回ることにより 家計の外食費は増加に転じている 8% 6% 4% 2% 2% 外食費 ( 学校給食を除く ) の推移 外食費 4% 外食の回数 (= 購入頻度 ) 平均単価 (=1 回当たり支出額 ) 6% 0701 0704 0707 0710 0801 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001 ( 注 ) 平均単価 (1 回当たり支出額 )= 支出金額 / 購入頻度で計算 3 ヵ月移動平均 4

正念場は 2010 年度後半か このように 2009 年春以降の政策効果はここにきて弱まりつつある一方 雇用 所得環境の持ち直し 消費者心理の改善 節約志向の一段落などが消費を下支えしている 先行きの個人消費を取り巻く環境についてみると 好調な輸出を背景とした企業収益の急回復が続いているため 企業部門から家計部門への波及が次第にはっきりしてくることが期待されることに加え 6 月からは子ども手当の支給が始まり 家計の可処分所得を押し上げることが見込まれる 雇用 所得環境の悪化が個人消費の腰折れにつながるリスクはここにきてかなり低下したと考えられ 2010 年度前半の個人消費は引き続き堅調に推移する可能性が高い 個人消費が正念場を迎えるのは各種対策が期限切れを迎える 2010 年度後半だろう エコカー補助金は 2010 年 9 月末 エコポイント制度は 2010 年 12 月末に終了する予定となっており その前後には駆け込み需要とその反動減が生じることが予想される その頃までに雇用 所得環境の改善が明確になっていることが 個人消費の回復が持続するための条件と言えるだろう ( お願い ) 本誌記載のデータは各種の情報源から入手 加工したものであり その正確性と安全性を保証するものではありません また 本誌は情報提供が目的であり 記載の意見や予測は いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません 5