W/B (%) 単位粗骨材絶対容積 s/a (%) 表 -1 ベースコンクリートの配合 空気量 (%) 単位量 (kg/m 3 ) VG W (m 3 /m 3 ) 計 C SF S G

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2. スランプフロー試験 3. 振動台式コンシステンシー試験 試験方法 対象 振動数 (rpm) 振動台式コンシステンシー試験 (JSCE-F501) VC 試験 ( 国土開発技術研究センター 道路協会 ) 供試体成形機による超硬練りコンクリートのコンシステンシー試験 ( 全国土木コンクリートブロッ

目次 1. はじめに 実施工程

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16 コンクリートの配合設計と品質管理コンクリートの順に小さくなっていく よって, 強度が大きいからといってセメントペーストやモルタルで大きい構造物を作ろうとしても, 収縮クラックが発生するために健全な構造物を作ることはできない 骨材は, コンクリートの収縮を低減させ, クラックの少ない構造物を造る

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骨材体積比 水セメント比 空気量 表 -2 調合絶対容積単位 (l/m 3 ) 水量 (kg/m 3 セメ ) 骨材ント 増粘剤 消泡剤.3.5 セメント : 普通ポルトランドセメント ( 密度 3.16g/cm 3 ) 骨材 : 硬質砂岩砕砂

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検証されている 4) しかし, この規定では, 凝結を遅延させたスラリー状モルタルの保存を 24 時間以内とし, 翌日の使用を想定しており, 日内の業務に適用することは適切でない 2. 付着モルタル量 2.1 実験の目的運搬車の洗浄モルタルを使用するためには, ドラム内等に付着しているフレッシュモル

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を変化させて加速度を調節するための制御盤の 3 点から構成されている 測定の手順としては初めに, 直径が 24cm の試験容器の中でスランプ試験を行い, 振動台にセットして振動をかける その際に試料の上面の沈下量と振動台の加速度, 振動数を記録する コンクリートの締固め性は, コンクリートのコンシス

(4) 単位水量 W および細骨材率 s/a の選定 細骨材率 s/a は, 所要のワーカビリティーが得られる範囲内で単位水 量 W が最小となるように, 試験によって定める. 粗大寸法(mm) 骨材の最空気量 AE コンクリート AE 剤を用いる場合 細骨材率 s/a 単位水量 W (kg) AE

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生コンクリートに関する基本情報 ここでは 生コンクリートの製造 供給態勢 生コンを注文する際に必要となる基礎的知識 コンクリート施工の要点について概説します 白鳥生コン株式会社 記事の無断転載を禁じます Copyright SHIRATORI NAMAKON CORPORATION.

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GBRC Vol.39 No 図 -1.1 圧縮強度試験対象の内訳 図 週圧縮強度の平均値の推移 ( 試験月で分類 図 週圧縮強度と 4 週圧縮強度との関係 36

の基準規制値などを参考に コンクリート構造物の長期的な耐久性を確保するために必要なフレッシュコンクリート中の塩化物量の規制値を主要な場合に対して示したものである 従って ここに示していない構造部材や製品に対する塩化物量規制値についてもここで示した値を参考に別途定めることが望ましい 第 3 測定 1.

に示す 2.3 練混ぜ水及び混和剤 練混ぜ水としては, 水道水を使用した 又, 混和剤と しては, ポリカルボン酸エーテル系の高性能 AE 減水剤 を使用した その性質を Table 4 に示す 2.4 セメント混和用ポリマー セメント混和用ポリマーとしては, スチレンアクリル 酸エステルエマルショ

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1. 標準価格 (1) 普通コンクリート ( スランプ 5~21cmAE 減水剤 ) 普通セメント 高炉セメントB 種早強セメント材齢 28 日粗骨材 (mm) 材齢 7 日粗骨材 (mm) スランプ 5 ~ 21 cm スランプ 5 ~ 21 cm 18 14,50

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コンクリート工学年次論文集,Vol.37,No.1,215 論文 短繊維のかさ容積による高強度繊維補強コンクリートの流動性の評価 佐々木亘 *1 谷口秀明 *2 樋口正典 *3 宮川豊章 *4 要旨 : 本稿では短繊維以外の配合条件を一定としたもとで短繊維混入率を変化させ, 種々の短繊維が高強度繊維補強コンクリートの流動性に与える影響について検討を行った その結果, 短繊維混入率が大きくなるとフレッシュコンクリートの流動性が低下するが, 低下の程度は短繊維の種類によって異なること, 骨材の実積率の測定方法を準用して測定した短繊維の実積率から計算できる短繊維かさ容積を用いることで, 短繊維の種類や寸法によらず, 短繊維の混入によるコンクリートのスランプやスランプフローの変化を推定できる可能性があることなどがわかった キーワード : 短繊維補強コンクリート, フレッシュコンクリート, 流動性, かさ容積, 実積率 1. はじめに短繊維をコンクリートやモルタルといったセメント系材料に均一に分散させることで, ひび割れの抑制, じん性や耐衝撃性の向上, 引張強度, 曲げ強度, せん断強度の改善を図ることができる セメント系材料への短繊維補強の適用については,2 世紀初頭から検討が行われてきた 近年では高い強度を有する高性能な繊維補強セメント複合材料として超高強度繊維補強コンクリート (UFC: Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete, 以下 UFC と呼ぶ ) が開発されている 土木学会で設計施工指針案 1) ( 以下,UFC 指針と呼ぶ ) が取りまとめられ, 実構造物への適用 2) も進められている 一方, 一般のレディーミクストコンクリート工場やコンクリート製品工場で常備しているような骨材を用いた短繊維補強コンクリートについて考えた場合, 配合設計の参考となる指針類は 鋼繊維補強コンクリート設計施工指針 ( 案 ) 3) および 鋼繊維補強コンクリート設計施工マニュアル 4) である ( 以下, それぞれ SFRC 指針およびマニュアルと呼ぶ また, これらを総称して指針類と呼ぶ ) これらは, 水セメント比 5% 程度のコンクリートを対象としており,SFRC 指針では, 粗骨材の最大寸法を繊維長の 2/3 以下とすることを標準としている これらに示された条件を外れるような高い強度域や異なったマトリクスの材料, 短繊維の使用を検討する場合の適用性については必ずしも明らかではない 筆者らはこれまでに指針類の範囲外となるような強度域 ( 水結合材比 ) や短繊維を用いた短繊維補強コンクリートについての検討を進めてきた 5), 6) 本稿では短繊維補強コンクリートの材料特性のうちワーカビリティーに着目し, ワーカビリティーの中でも特に流動性について検討を行う 通常のコンクリートにおける配合とスランプの関係については, 配合の目安や補正方法が示方書等に示されている 骨材に関する情報としては細骨材率または単位粗骨材かさ容積が示されており, 単位粗骨材かさ容積については, 一般に, プラスチックなコンクリートにおいては, スランプや水セメント比に関係なく, 細骨材の種類や粗骨材の粒径, 実積率によらず単位粗骨材かさ容積が一定になる 7) とされている また, 配合設計理論の代表的なものに余剰ペースト理論があり, この考え方を拡張することで, 流動性 ( スランプ ) が最大となる最適細骨材率は, 細骨材と粗骨材を混合した試料の実積率を最大にする細骨材率とほぼ一致することなどが報告されている 8) 細骨材と粗骨材の混合試料の実積率が最大となることで, 空隙を埋めるのに必要なペースト量が少なくなり, ひいては, 流動性に寄与するペースト量が多くなるというものである セメントペースト中に, 骨材だけでなく短繊維も混入している短繊維補強コンクリートでは, 短繊維単独の実積率はもとより, 短繊維と骨材の混合物の実積率を把握することにより, フレッシュコンクリートの流動性に影響を与える要因についての情報が得られる可能性がある そこで, 短繊維, ならびに細骨材, 粗骨材および短繊維の混合物の実積率の測定を行い, 短繊維が高強度繊維補強コンクリートの流動性に与える影響の評価方法について検討を行った 2. 短繊維の種類および混入率が高強度繊維補強コンクリートの流動性に与える影響 2.1 実験概要表 -1 にベースコンクリートの配合を示す 水結合材比 *1 三井住友建設 ( 株 ) 技術研究開発本部技術開発センター土木材料グループ博 ( 工 ) ( 正会員 ) *2 三井住友建設 ( 株 ) 技術研究開発本部技術開発センター土木材料グループ上席研究員博 ( 工 ) ( 正会員 ) *3 三井住友建設 ( 株 ) 技術研究開発本部技術開発センター土木材料グループ長博 ( 工 ) ( 正会員 ) *4 京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻教授工博 ( 正会員 ) -37-

W/B (%) 単位粗骨材絶対容積 s/a (%) 表 -1 ベースコンクリートの配合 空気量 (%) 単位量 (kg/m 3 ) VG W (m 3 /m 3 ) 計 C SF S G 16..2 55.4 2. 175 194 985 19 66 528 19..2 6. 2. 175 921 829 92 84 528 22..2 62.9 2. 175 795 715 8 911 528 25..2 64.2 3.5 175 7 63 7 938 528 B (W/B) は 25, 22, 19, 16% の 4 水準とし, 単位水量は 175 kg/m 3, 単位粗骨材絶対容積 (VG) は.2 m 3 /m 3 とした これら短繊維を含まないベースコンクリートに所定量の 短繊維を混入させ, 流動性に与える影響について確認し た コンクリートの練混ぜは公称容量 1 リットルの強 制 2 軸ミキサを使用し, 空練りを 3 秒, モルタル練りを 所定の時間行った後, コンクリート練りを 9 秒行った 短繊維を投入する場合はコンクリートが練りあがった後 に短繊維を投入し, 短繊維投入完了後, さらに 6 秒の練 混ぜを行うことを基本とした モルタル練りの時間は, W/B = 25% および 22% では 9 秒,W/B = 19% では 15 秒, W/B = 16% では 3 秒とした 練混ぜ終了後, 直ちにス ランプフローおよびスランプの測定を行った 2.2 使用材料 表 -2 使用材料 材料種類産地, 物性, 成分 結合材 細骨材 セメント 混和材 砕砂 山砂 粗骨材砕石 25 化学混和剤 短繊維 高性能 AE 減水剤 高性能減水剤 消泡剤 アラミド繊維 鋼繊維 普通ポルトランドセメント, 比表面積 33 cm 2 /g 低熱ポルトランドセメント, 比表面積 374 cm 2 /g エジプト産シリカフューム, BET 比表面積 15.8 m 2 /g 茨城県岩瀬産硬質砂岩, 吸水率 1.44%, 実積率 66.2% 千葉県富津産, 吸水率 1.7%, 実積率 62.3% 茨城県岩瀬産硬質砂岩, 最大寸法 2 mm, 吸水率.67%, 実積率 63.8% ポリカルボン酸エーテル系化合物 ポリカルボン酸エーテル系化合物 ポリアルキレングリコール誘導体 集束タイプ, 繊維径.5 mm, 繊維長 3 mm 密度 (g/cm 3 ) 3.15 N 3.24 L 2.25 SF 2.61 S1 2.63 S2 記号 表 -2 に本実験で用いた材料を示す 結合材は普通ポル トランドセメントまたは低熱ポルトランドセメントに対 C 2.66 G - SPA SPB Ad 1.39 繊維径.2 mm, 繊維長 22 mm 7.85 繊維径.2 mm, 繊維長 15 mm 両端フック, 繊維径.62 mm, 繊維長 3 mm 7.85 B S SP 注 ) 骨材の密度は表乾密度である して質量の 1% をシリカフュームで置換したものを用いた W/B = 25% では普通ポルトランドセメント,W/B = 25% 未満の条件では低熱ポルトランドセメントを用いた 細骨材は砕砂を単独で用いることを基本とし,W/B = 25% の配合では砕砂と山砂を容積比 6:4 で混合したものを用いた 粗骨材には最大寸法 2 mm の硬質砂岩砕石を用いた 短繊維として 3 種類の鋼繊維および集束アラミド繊維を用いた 鋼繊維 はコンクリート補強用として一般的に用いられているものである 鋼繊維 および は一般には粗骨材を用いない UFC に使用されているものであり, 繊維長は粗骨材の最大寸法と同程度またはそれ以下であるが, 粗骨材を用いた高強度繊維補強コンクリートに用いても高い補強効果を有することを確認している 5), 6) 集束アラミド繊維 は繊維径.12 mm のパラ型アラミド繊維 ( コポリパラフェニレン 3.4 オキシジフェニレン テレフタラミド ) をエポキシ系の樹脂により集束し, 所定の繊維径としたものである および と同様に, 高強度繊維補強コンクリートに用いる短繊維として高い補強効果が期待できるものである 5), 6) 化学混和剤として W/B = 25% では高性能 AE 減水剤, W/B = 25% 未満の条件では高性能減水剤を使用した 使用量は, 各 W/B 毎に実験を通じて材料分離が生じない量で一定とした 空気量は消泡剤を用いて設計値の ±.5% 程度となるよう調整した 2.3 実験結果図 -1 に短繊維混入率とスランプフローの関係, 図 -2 に短繊維混入率とスランプの関係を示す 図 -1 より, いずれの W/B でも短繊維混入率の増加に伴ってスランプフローが低下していることは明らかであるが, 短繊維の種類によって低下の程度が異なり, が最もスランプフローへ与える影響が大きい また, いずれの短繊維であっても,W/B が小さくなると, 短繊維の混入によるスランプフローへの影響が小さくなる傾向がみられる 一方, 図 -2 よりスランプについても概ね同様の傾向が確認できる ただし, スランプフローの大きい領域ではスランプの変化が小さく, 要因毎の差異は必ずしも明確ではない -38-

スランプフロー,FL (mm) 1 9 8 7 6 5 4 3 2..5 1. 1.5 短繊維混入率,V f (vol.%) 図 -1 短繊維混入率とスランプフローの関係 3 種類 鋼繊維 PVA 繊維 アラミド繊維 表 -3 実積率の測定を行った短繊維 記号 繊維径 (mm) 繊維長 (mm) アスペクト比.62 3 48 22 11 15 75.2 SWC 18 9 SWD 12 6 SWE 33 11 SWF.3 22 73 SWG 15 5 VF 3 45.66 VF2 2 3 3 6 25.5 25 5 2 2 4 B.4 15 38 C.2 15 75 密度 (g/cm 3 ) 7.85 1.3 1.39 スランプ,SL (cm) 25 2 15 1 5..5 1. 1.5 2. 短繊維混入率,V f (vol.%) 図 -2 短繊維混入率とスランプの関係 短繊維 VF 表 -4 実積率の測定結果の一例 実績率 (%) 実績率 (%) 測定値 平均値 短繊維 測定値 平均値 11.7 7.83 11.65 11.6 7.58 7.7 5.67 8.12 5.69 25 5.72 8.4 8.8 1.6 6.32 11.21 C 11.83 6.68 6.5 3. 短繊維および短繊維と骨材の混合物の実積率 3.1 短繊維の実積率 (1) 測定を行った短繊維実積率の測定を行った短繊維を表 -3 に示す 前章で用いた短繊維に加えて, コンクリート補強用として一般的に用いられている繊維径.66 mm の PVA 繊維も測定を行うこととし,2 種類の繊維長のものを測定した また, 鋼繊維および集束アラミド繊維についても複数の繊維径, 繊維長のものを用意し測定を行った 繊維径.3 mm の鋼繊維は表 -2 に示した および と同様の形状で繊維径が大きいものである (2) 実積率の測定方法実積率の測定は JIS A 114 骨材の単位容積質量及び実積率試験方法 に準じた方法で行い, 測定容器は容積が 1 リットルのものを用いた 試料の詰め方は, 突き固めでは短繊維の折れ曲がり等が懸念されたため, ジッギングに拠って行った また, 短繊維の実積率測定では, 容器の上縁から 3 cm 上方より落下させることにより試料を容器に投入することとし, 試料の投入方法を統一した (3) 測定結果表 -4 に測定結果の一例を示す JIS A 114 に準じて測定は 2 回行い,2 回の測定値の平均値を実積率とした いずれの短繊維も 2 回の測定値が大きく異なるようなことはなく,2 回の測定値の平均値を用いることは妥当であると判断した 図 -3 に短繊維のアスペクト比と実積率の関係を示す この図より, 全体的な傾向としては, アスペクト比が小さくなるほど実積率が大きくなっており, 実積率はアスペクト比の逆数に比例するような関係にあることがわかった 短繊維の種類に着目すると, アラミド繊維は鋼繊維や PVA 繊維に比べ実積率が若干小さい傾向にある 実積率に影響を与える要因として, 自重や短繊維同士の摩擦が異なることや, 例えばアラミド繊維では繊維径.12 mm の短繊維を集束したものであるため表面が平滑ではなく, 詰め込んだ際に空隙が多くなってしまうこと等が考えられる 3.2 混合物の実積率と短繊維のかさ容積 (1) 測定の概要細骨材, 粗骨材および短繊維の混合物の実積率の測定 -39-

実績率 (%) 2 18 鋼繊維 16 アラミド繊維 14 PVA 繊維 12 1 8 6 4 2 5 1 15 アスペクト比図 -3 短繊維のアスペクト比と実積率の関係 混合物の実積率 (%) 8 75 7 65 6 55 5 45 s/a = 6.6% 4..5 1. 1.5 2. 2.5 3. 混合物中の短繊維混入率 (%) 図 -4 混合物中の短繊維混入率と混合物の実積率の関係 は,2 章で流動性の確認を行った配合のうち, 代表的な ものとして W/B = 19% の配合に着目して行った すなわ ち, 表 -2 に示した細骨材 S1 と粗骨材 G を s/a が 6.6% と なるよう混合した骨材試料に対し, 同じく表 -2 に示した 各短繊維を所定の量だけ混入し, 混合物の実積率を測定 した 実積率の測定は 3.1 と同様であり, 混合物の実積 率 G m (%) は以下の式で計算した G m = W(ρ Gρ F W S + ρ F ρ S W G + ρ S ρ G W F ) 1 Vρ S ρ G ρ F (W S + W G + W F ) (1) 近似直線の傾き -1-2 -3-4 -5-6 -7-8 短繊維の実積率 (%) 5 1 15 y =.8278x - 11.411 R² =.999 ここに,W: 容器中の試料の質量 (kg),w S : 配合に基づく容器中の細骨材の質量 (kg),w G : 配合に基づく容器中の粗骨材の質量 (kg),w F : 配合に基づく容器中の短繊維の質量 (kg),v: 容器の容積 (l),ρ S : 細骨材の絶乾密度 (g/cm 3 ),ρ G : 粗骨材の絶乾密度 (g/cm 3 ),ρ F : 短繊維の密度 (g/cm 3 ) (2) 測定結果図 -4 に混合物中の短繊維混入率 ( 混合物の絶対容積に対する短繊維の絶対容積の比率 ) と混合物の実積率の関係を示す それぞれの短繊維について, 細骨材率一定の細 粗骨材に対して短繊維混入率が増加するに伴って, 混合物の実積率は直線的に低下した 混合物中の短繊維混入率と混合物の実積率の関係を直線で近似したときの傾きの値と短繊維の実積率の関係を図 -5 に示す 短繊維混入率の増加による混合物の実積率の低下の度合いは短繊維の種類によって異なるが, これは短繊維の実積率によって表現可能であった 本実験の範囲内では短繊維の実積率が低下すると, 短繊維混入率の増加による混合物の実積率の減少の度合いは直線的に大きくなることがわかった 図 -6 に混合物のかさ容積と短繊維かさ容積の関係を示す ここで, 混合物, 短繊維それぞれのかさ容積とは, コンクリート 1 m 3 に含まれる混合物または短繊維の絶 混合物のかさ容積 (m 3 /m 3 ) 図 -5 短繊維の実積率と近似直線の傾きの関係 1..9.8.7.6.5.4.3 s/a = 6.6%.2.1...5.1.15.2 短繊維かさ容積 (m 3 /m 3 ) 図 -6 短繊維かさ容積と混合物のかさ容積の関係対容積をそれぞれの実積率で除した値であり,2 章の W/B = 19% の配合におけるかさ容積を求めたものである 図からわかるように, 混合物のかさ容積と短繊維かさ容積は短繊維の種類によらず一意に定まる直線関係を示した 余剰ペースト理論では, 一般に, コンクリート 1 m 3 から全骨材のかさ容積を差し引いた容積を流動に寄与する余剰ペーストと考える 9) ことから, 混合物のかさ容積はフレッシュコンクリートの流動性に大きな影響を与え -31-

スランプフロー,FL (mm) 1 9 8 7 6 5 4 3 2 図 -7 短繊維かさ容積とスランプフローの関係 スランプフロー,FL (mm) 1 9 8 7 6 5 4 3 FL = -1123Vbf + 83 R² = 1 FL = -157Vbf + 874 FL = -493Vbf + 798 R² =.695 [W/B] 青 : 16%, 赤 : 19%, 緑 : 22% R² =.997 FL = -183x + 683 R² =.518 FL = -2684Vbf + 953 R² =.934 FL = -5177Vbf + 1139 R² =.871 2 図 -1 短繊維かさ容積とスランプフローの関係 スランプ,SL (cm) 3 25 2 15 1 5 図 -8 短繊維かさ容積とスランプの関係 SL = -7.74Vbf + 27.5 SL = -15.Vbf + 28.5 R² = 1 SL = -21.9Vbf + 27.4 R² =.967 3 R² =.353 25 2 SL = -85.5Vbf + 33.6 R² =.82 スランプ,SL (cm) 15 1 5 SL = -131Vbf + 25.8 R² =.989 SL = -136Vbf + 37.8 R² =.812 SL = -141Vbf + 33.9 R² =.693 図 -11 短繊維かさ容積とスランプの関係 スランプフロー比 1.2 1..8.6.4.2. 図 -9 短繊維かさ容積とスランプフロー比の関係る要因の一つであると考えられる 本実験の結果より, s/a が一定の条件下では骨材と短繊維の混合物のかさ容積は短繊維のかさ容積で決まることがわかった 4. 短繊維かさ容積による高強度繊維補強コンクリートの流動性の評価図 -1 および図 -2 の横軸を短繊維かさ容積で整理し直したものが, 図 -7 および図 -8 である これらの図より, 短繊維かさ容積で整理することでスランプフローやスランプに与える短繊維の種類の影響が小さくなることがわかる 換言すれば, 短繊維の種類および短繊維混入率の影響を短繊維かさ容積として表現できていると言える 図 -9 は, 図 -7 の各スランプフロー値を短繊維のかさ容積が m 3 /m 3 の場合のスランプフロー値で除し, スランプフロー比として無次元化して示したものである W/B = 25 % では短繊維のかさ容積が.8 m 3 /m 3 程度以上でスランプフローが下限値付近に達していることを考慮すると, 短繊維のかさ容積の変化が流動性に与える影響は W/B が小さくなるほど小さくなっていることがわかる 本実験では W/B に拠らず単位水量は一定としている そのため,W/B が小さくなるほど単位ペースト絶対容積が大きくなり, 相対的に短繊維が流動性に与える影響が小さくなったものと考えられる 図 -7 および図 -8 からスランプフローの変化量に対応する短繊維かさ容積の変化量の概略値を求めるため, W/B 毎に近似式を与えたものを図 -1 および図 -11 に示す 多くのデータがスランプでは評価できないスランプフローの範囲にある W/B = 16%, 19%, 22% では, スランプ値が低下を始める短繊維かさ容積の範囲である,.5-311-

スランプフロー,FL (mm) 1 9 8 7 ~.1 m 3 /m 3 程度を境に 2 直線をあてはめた この短繊 維かさ容積の範囲 (.5~.1 m 3 /m 3 程度 ) は, 本実験で 用いた短繊維ではおおむね.5 % の短繊維混入率に対応 する 図より, この 2 直線による近似は, 短繊維かさ容 積とスランプフローの関係に対してもよい対応を示して いることがわかる また,W/B が小さくなるにしたがっ て近似直線の傾きも概ね小さくなる傾向にあり, この図 からも,W/B が小さくなるほど短繊維のかさ容積の変化 が流動性に与える影響が小さくなっていることがわかる ここで得られた短繊維かさ容積の変化量の目安を, 既 往のスランプフロー試験の結果と比較してその妥当性を 検討する 図 -12 は筆者らの過去の実験データ 1) を短繊 維かさ容積を用いて整理し直したものである この図か らも, 短繊維かさ容積とスランプフローの間には良好な 相関関係があることがわかる 図中の破線は図 -1 に示 した W/B = 16% の近似直線であるが, 図 -12 に示される 各プロットも概ねこの近似直線上に分布しており, 同程 度の s/a であれば, 図 -1 で得られた関係式を適用するこ とは妥当であることがわかった 短繊維かさ容積が. m 3 /m 3 の点 (Base) は, これのみ単位粗骨材絶対容積や s/a が大きく異なるため, 近似直線に比べスランプフローが 小さくなったものと考えられる 5. まとめ 6 5 文献 1) のデータ W/B=16% 4 W=175kg/m 3 単位粗骨材絶対容積 : 3 (Base).3m 3 /m 3, ( その他 ).2m 3 /m 3 2 本稿ではその他の配合条件を一定としたもとで短繊 維混入率を変化させ, 種々の短繊維が流動性に与える影 響について検討を行った その結果, 以下のことが明ら かとなった (1) 短繊維混入率が大きくなるとフレッシュコンクリ ートの流動性が低下するが, 低下の程度は短繊維の 種類によって異なる また,W/B が小さくなると短 繊維の混入による流動性への影響が小さくなる傾 向にある Base VF C B 図 -12 短繊維かさ容積とスランプフローの関係 (2) 骨材の実積率の測定方法を準用して測定した短繊維の実積率から計算できる短繊維かさ容積を用いることで, 短繊維の種類や寸法によらず, 短繊維がコンクリートの流動性に与える影響を評価することができた (3) 短繊維の実積率および短繊維かさ容積を用いることで, 短繊維の種類や寸法によらず, 短繊維の混入によるコンクリートのスランプやスランプフローの変化を推定できる可能性がある 参考文献 1) 土木学会 : 超高強度繊維補強コンクリートの設計 施工指針 ( 案 ),24. 9 2) 例えば, 石井精一, 西村一博, 児山祐樹, 一宮利通 : 超高強度繊維補強コンクリートの道路橋への適用事例, 第 15 回プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム論文集,pp. 13-16, 26. 1 3) 土木学会 : 鋼繊維補強コンクリート設計施工指針 ( 案 ),1983. 3 4) 日本鉄鋼連盟 :22 年改訂鋼繊維補強コンクリート設計施工マニュアル-トンネル編 -, 技法堂出版, 22. 11 5) 佐々木亘, 谷口秀明, 樋口正典, 宮川豊章 : 高強度コンクリートの力学特性に及ぼす各種短繊維の影響, 第 21 回プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム論文集,pp. 549-554, 212. 1 6) 佐々木亘, 芦塚憲一郎, 出口宗浩, 谷口秀明 : 高強度コンクリートの力学特性に与える鋼繊維の影響, コンクリート工学年次論文集,Vol. 35, No. 1, pp. 277-282, 213. 7 7) 土木学会 :212 年制定コンクリート標準示方書 施工編,pp. 84-85, 213. 3 8) 三宅淳一, 松下博通, 取違剛 : 余剰水膜によるモルタルおよびコンクリートのコンシステンシーの評価に関する研究, 土木学会論文集 E, Vol. 62, No. 2, pp. 36-319, 26. 5 9) 松下博通, 近田孝夫, 前田悦孝 : コンクリートの配合設計への余剰ペースト理論の適用に関する基礎的研究, 土木学会論文集,No. 578/V-37, pp. 57-7, 1997. 11 1) 佐々木亘, 谷口秀明, 樋口正典, 宮川豊章 : アラミド短繊維を用いた高強度繊維補強コンクリートに関する基礎的研究, 繊維補強セメント系複合材料の新しい利用法に関するシンポジウム論文集,pp. 319-324, 212. 9-312-