材工分離発注 実施設計が終わった段階 ( 施工者を決定する前 ) で木材を地方自治体が調達し施工者に支給する メリット 木材調達に十分な期間が持てる 製材所の作業を一時期に集中させないなど加工スケジュールの工夫がしやすい デメリット 地方自治体や設計者の労的負担が大きい 品質管理 調達が材工で別々と

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Ⅲ. 木材の発注方式 工程計画と設計者 施工者の選定方式 木造建築物を計画する場合 用途や規模 内装木質化や現しの柱 梁といった空間の質 性能など要望によって 適用する建築法規 設計手法 工法技術 施工技術を様々に組み合わせる必要がある上 材料品質 木材の種類 ( 集成材や製材等 ) 木材調達スケジュールなど多くの条件が加わるため 何通りもの解法がある また 木材の調達エリアを国から県 流域 市町村などに小さく絞るほど 木材量や材料品質 木材の種類 ( 集成材や製材等 ) 木材調達スケジュールが限られることになり一つの解法しかないこともある 規模についても住宅と同様の規模であれば難なく木材調達ができるが 大規模になると事前に木材の伐採から乾燥 製材までのスケジュールを把握し それに合わせた発注方法が必要となる また 設計者や施工者を選択することも住宅と同様の規模であれば容易であるが 大規模になると知識に長けた者は少ないことから それらを選択する上で注意する必要があることやそもそもの選択方式を工夫することなども考えなければならない そこで 発注者が木材供給者や設計者 施工者などの関係者の情報を収集し できることとできないことを明確にし木材の発注方式や工程計画 設計者 施工者の選定方式を検討することが重要になる Ⅲ -1. 木材の発注方式と工程計画 (1) 地域に適した木材の発注方式の選択通常の公共工事では 施工者決定後に施工者が材料の発注を行う その際 RC 造や S 造の場合には材料調達に関する配慮は特段必要ではない しかし 木造の場合は 材料の発注の時期を工夫する他 木材調達に配慮した余裕のあるスケジュールにする必要がある それは 以下の理由による 1 木材の発注後に伐採 製材 乾燥を行わなければならず手間が多い 2 木材は鉄やコンクリートなどの素材と異なり 短期間で量が揃わない 3 特殊な材を求める場合には 山元の伐り出し寸法から決定する必要がある 公共工事は単年度事業の場合が多く その場合 無理のあるスケジュールでの納品となり このことが木材品質 ( 特に含水率 ) などにも影響を与え 大規模建築物の建設における様々な問題を生じさせている原因の一つとなっている 特に地域材の使用を条件とした場合は 地域の木材の状況に応じて発注方式を検討し 工程計画を立てる必要がある 木材の発注方式は 表 1-1 のような方式がある ( 平成 23 年度 - 2 - pp.97-98 木材調達 発注 0: 木材発注方式の考え方 ( 分 離発注 一括発注 )) 詳細を (2) 項に記す 表 1-1 発注方式の種類 概要 材工一括発注 施工者を決定した後に木材を含む材料を施工者が調達する メリット 地方自治体や設計者の労的負担が小さい 品質管理が材工ともに施工者となり 責任範囲が明確である デメリット 納期に間に合わない もしくは納期に間に合わせようとすると乾燥期間がとれず 乾燥が不十分になる場合がある 森林組合が見込みで伐採に動くなど 山側に負担が掛かる場合がある 52

材工分離発注 実施設計が終わった段階 ( 施工者を決定する前 ) で木材を地方自治体が調達し施工者に支給する メリット 木材調達に十分な期間が持てる 製材所の作業を一時期に集中させないなど加工スケジュールの工夫がしやすい デメリット 地方自治体や設計者の労的負担が大きい 品質管理 調達が材工で別々となり 責任範囲があいまいである 経験を積むいざ大規模木造建築物を建設するとなった場合に 材工分離発注としなければ地域材の調達ができないケースがある それに備え 材工一括発注でも建設可能であるような保育園など規模の小さい物件であったとしても あえて材工分離発注とし 繰り返し経験しておくと 地域材の材料特性や調達状況などに慣れることができる上に協力体制も整い大規模木造建築物に挑戦しやすくなる 地域の木材生産体制の確認発注方式を決定する際に必要となる判断材料の一つに 地域の木材生産体制を知るということが挙げられる まず 表 1-2 にある分類のどこに当てはまるのか認識するとよい A は 木材を他地域に求めなければならないため 他地域の状況を把握する必要がある B は 地域で生産体制がない もしくは生産量が小さすぎるため 木材を他地域に求めなければならないか 材料調達の日程に猶予をもたさなければならない C は 加工を他地域で行う必要があり そのための輸送について 日程 コストに気を使いながら検討する必要があるだろう D は 産業として木材加工が成立している地域であって 発注方式の選択としては幅が広く 材料のゆとりもある可能性が高い 上記のような地域性から発生する条件を元に 地域や建設予定の建築物に最も適した発注方式を選択する 平成 24 年度に支援したいなべ市では 地域の状況を把握しながらどのような工程で進めるか いくつかのケーススタディを行っている ( 平成 24 年度 - 1 -pp.207-210 木材調達の様々なケース ) 表 1-2 木材利用に取り組む市町村の分類 原木 製材 プレカット 平成 23 年度の例 A: 山林がほとんどない地域 B: 山林はあるが林業が成立していない地域 関 連 Ⅰ-2 C: 山林があり林業が成立している地域 会津地域豊田市香美町 D: 山林があり 林業が成立しており かつ 木材加工業も成立している地域 亀山市鹿沼市長和町豊岡市 木材調達先の状況と事業スケジュールの把握 設計者の立ち会いの下 森林関係者 木材加工業者に改めて ( ここでは 1 回目は体制づ くり (Ⅰ -2-(3)) で行ったと想定する ) 打合せを行い 計画している木材について長さ 使用量 強度 品質 納期に関する情報を交換し 事業スケジュールを把握する 具体的 関 連 Ⅰ-2-(3) 53

にどのような話を進めていくのか 何を合意するのかという点について 平成 24 年度に支援した龍 いるか 西山設計集団の打ち合わせ例が参考となる ( 平成 24 年度 - 1 -pp.589-590 森林組合との打ち合わせ例 ) なお 製材所は通常は住宅用製材等の加工などの業務を行っている 公共建築物の仕事が入ったとしても通常業務が滞りなく行われるような配慮が必要である そのため製材所への納材が一時期に集中することはなるべく避けることが望ましい 調達方法とその難易度を知る設計で決定する構法計画によって使用する木材の形態が異なり 調達が容易になるかどうかが変わる 表 1-3 に木材の形態別の調達の容易性を示す 製材で特殊な寸法を扱う場合に発注方式などを工夫する必要がある また 木材使用量の大きい物件では 保管場所 加工場所を確保する必要がある 使用する木材が多い場合や特殊な材料を用いる場合 森林整備事業で発生する木材を利用する場合などでは 基本設計段階から どこの山からどのような材をどのくらい調達できるかを調査しておく必要がある その情報を手に入れるために森林組合などの生産者や原木市場の方などの指導を受けるなど 知識のある者の指導を受けることが考えられる また森林側には地域の木材状況が分かるように前もって調査を促しておく必要がある 平成 24 年度に支援した五木村では 原木市場に調査を行い 伐採時に原木市場の方が素材生産者と一緒に山に入り玉伐りの際のアドバイスを行うことがあることがわかった ( 平成 24 年度 - 2 -pp.112-120 木材利用の考え方 3: 地域の材料を無理なく利用するための基礎知識 ) 表 1-3 形態 木材の形態別の調達の容易性 概要 製材 集成材 特殊材 流通材 ラミナ 調達が容易ではない 量を少なく計画する 材工分離発注とするなどの工夫が必要である 大量に必要な場合は 保管場所 加工場所が必要となる 調達が容易である ただし大量に必要な場合は 時間をかけて保管しておく必要があり 保管場所が必要となる 調達が容易である 必要な時に必要な加工を行い納品することが可能である 大量の場合には 材工分離発注を行うが ストックしやすいため特段の工夫は必要ない (2) 発注方式別の実施方法発注方式 ( 表 1-4) 別に参考事例を挙げる 表 1-4 発注方式の整理発注方式 1 材工一括発注 2 材工分離発注 複数年度事業 単年度事業 複数年度事業 単年度事業 54

1 材工一括発注材工一括発注とは 施工者を決定した後に木材を含む材料を施工者が調達する方式である メリットとしては 地方自治体や設計者の労的負担が小さい 品質管理が材工ともに施工者となり責任範囲が明確である等が挙げられる 一方 デメリットとしては 納期に間に合わない もしくは納期に間に合わせるために乾燥が不十分になる場合がある 森林組合が見込みで伐採に動くなど山側に負担が掛かる場合がある等が挙げられる 事業の年度には 複数年度事業の場合と単年度事業の場合があり 従来は単年度事業が多い ただし 量の確保や伐り旬を活かすなど木材調達の関係で複数年度事業とする場合がある 複数年度事業 木材調達期間も含め複数年度にまたぐ予算を組む 無理のないスケジュールが組めるため前述のように量の確保や切り旬を活かすことが可能な手法である ただし 木材利用することによる補助金や交付金等を複数組み合わせたり 材料の保管場所や保管期間中の管理方法 瑕疵範囲を事前に調整しておく必要がある 平成 23 年度に支援した鹿沼市では 大分県中津市の複数年度事業の対応事例について学んだ ( 平成 23 年度 - 2 - pp.105-108 木材調達 発注 3: 一括発注の実例 ( 複数年度での対応 )( 大分県中津市の事例 )) 単年度事業 木材調達期間も含め単年度で予算を組む 量の確保や切り旬に配慮した伐採ができないため 調達可能な木材を無理せず使用する手法である 平成 23 年度に支援した三重県では 富山県入善町の単年度事業の対応事例について学んだ 富山県入善町では 地域材 ( 入善町産材 ) を指定せず県産材や国産材を指定し 無理なく調達できるように配慮している ( 平成 23 年度 - 2 - pp.109-110 木材調達 発注 4: 一括発注の実例 ( 地域材利用を無理なく進める場合 )( 富山県入善町の事例 )) 2 材工分離発注材工分離発注とは 施工者決定前に ( 多くは実施設計が終わった段階 ) 木材を地方自治体が調達し施工者に支給する方式である 平成 25 年度の支援では 材工分離発注を行う事業者に向けて書き込み形式のマニュアルを作成 支給した 当マニュアルに沿って地域の情報を調査することで材工分離発注を実現する助けとなる 材工分離発注のメリットには 木材調達に必要な期間を確保できる 製材所の作業を一時期に集中させないなど加工スケジュールの工夫がしやすい等が挙げられる デメリットや注意点について以下に記す デメリットデメリットとしては 発注者 ( 地方自治体 ) や設計者の労的負担が大きい 品質管理 調達が材工で別々となり 責任範囲があいまいである等が挙げられる まず 発注者 ( 地方自治体 ) や設計者の労的負担が大きいことについてである 発注者 ( 地方自治体 ) に係る労的負担とは 通常は施工者との契約 監理報告書の受理だけで済むものが 材料の発注書 品質 55

証明書 保管などの実質的な作業が増えることを指す ( 例えば製材所に対する 納材特関連記仕様書 や発注者から施工者に対する 支給木材特記仕様書 などの書類が増えることや Ⅳ-1-(1) 設計段階から木拾いを行うことなどが増加する労的負担として考えられる ) 平成 23 年度に支援した奈良県では 材工分離発注の配慮事項について整理し 必要となる図書などを把握した ( 平成 23 年度 - 1 - pp.448-449 分離発注時の品質管理の注意点 ) 設計者に係る労的負担とは 基本設計段階から木拾いを意識し設計を進める必要があることや 木材調達に関する情報収集を行わなければならないことを指す 設計段階から木拾いを行って準備する必要がある場合で 設計が十分に詰まっていない時に木拾いした場合には 設計の変更による材料関連のロスが多くなり費用が嵩みやすくなるため注意する その場合 実施設計後に木拾いし Ⅲ-3-(2) て確定した不足材を二次発注する方法も考えられる また 製材購入とするか原木購入とするかで地方自治体や設計者の労的負担が異なる 製材の一括購入であれば 発注者が材を保管する手間がないが 製材の分割購入や原木購入であれば 保管者の決定と保管の委託に係る条件 現場搬入材料の品質の合意などが必要となり 伐採から納入に至るまでのそれぞれの段階で書類が必要となる 平成 24 年度に支援した小林市では 製材購入に取り組んできた鶴岡市の事例を学んだ ( 平成 24 年度 - 2 -pp.121-126 木材調達 発注 5: 材工分離発注の手法 ) 次に 品質管理 調達が材工で別々となり 責任範囲があいまいであることについては 木材の品質に 関する責任範囲について十分に協議する必要がある ( 例えば 施工ミスでの数量不足分については施工者の負担で補填する 品質の基準に満たないものは納材者の負担で差し替える 納品検査に施工者へ立会を求めるなどが考えられる ) 加工図を設計者と施工者のどちらが描くかによっても責任範囲が異なるため 十分に協議する必要がある なお 不良材 未利用材の代金に関する責任範囲についても同様である 関連 Ⅱ-2-(3)-3 関連 Ⅲ-3-(2) 材工分離発注に係る業務地方自治体側が木材品質管理業務を外部に委託する場合 当該業務について必要となる費用の予算化 木材品質管理者 ( 表 1-5) の設置などの体制づくりが必要となる 一方 庁内で木材品質管理業務を行う場合には 伐採 ~ 製材 ~ 建築現場搬入の各時期で指定された木材性能の確認検査立会 木材管理業務担当と工事担当間の各種調整が必要となる いずれの場合にも納材の時期や場所などを決定するために工事監理者との連携が必須となる また 事業で補助金や交付金等を使用する場合 材工分離発注を行うと補助対象とならない部分が発生することがある その場合 別途 地方公共団体の費用負担が生じることになるので 他の補助金との併用検討や予算確保を事前に行っておく注意が必要である ( 平成 25 年度 - 4 - 木材調達に関係する契約別分類例 ) 平成 24 年度に支援した小林市では 山形県鶴岡市での取り組みをもとにケーススタディも行われ 具体的なスケジュールや物流 書類関係等を検討した ( 平成 23 年度 - 2 - pp.99-101 木材調達 発注 1: 分離発注の実例 ( 行政がコーディネーターの場合 )) ( 平成 25 年度 - 4 - 木材利用フロー ( 行政がコーディネーターの場合 )) ( 平成 24 年度 - 2 -pp.121-126 木材調達 発注 5: 材工分離発注の手法 ) 56

( 平成 24 年度 - 1 -pp.365-366 木材の乾燥方法別の工程の確認 ) ( 平成 24 年度 - 1 -pp.367-368 流通経路 ( 原木調達もしくは製材調達 ) の確認 ) ( 平成 24 年度 - 1 -P369 分離発注の業務フロー ) ( 平成 24 年度 - 1 -pp.370-371 設計者選択方式に関係する分離発注についての項目の整理 ) ( 平成 24 年度 - 1 -pp.361-364 分離発注が可能かどうか整理 判断する手法 ) 表 1-5 製材時 木材品質管理者の業務 製材 乾燥 仕上げ段階の進捗状況の把握を行う 各工程での品質管理体制を確認し管理書類の提出を求める 納品時 判断 納品検査で現物の品質確認と納品書類の確認を行う 品質は 品質表示を確認する 地域材を調達する場合は 木材のトレーサビリティに関する書類を確認する 納材者 ( 製材時確認 ) と施工者 ( 納品時確認 ) の意見が異なる場合には 木材品質管理者が判断する 契約によっては工事監理者が代行することもある 地域材に限定して購入する場合の注意点議会への説明の他 会計検査の際に 確かに地域材を使用したという証明としてトレー 関 連 サビリティの書類が必要となる場合がある 地域材に限定して購入する場合 輸入材を含 Ⅰ-2-(4) め木材の流通価格で価格が決定するわけではないことから 木材価格が妥当であるかどう かの判断が付きにくい その場合には 公的な統計資料から適正コストの方針を決めておくとよい 平成 23 年度に支援した鹿沼市では 価格の妥当性を把握するための手法について学んだ ( 平成 23 年度 - 2 - pp.94-96 木材利用の考え方 1: 発注者側からみた木材価格の妥当性把握の手法 ) なお 材工分離発注の経験が少ない行政の場合は 地域の森林組合 木材協会や木材コーディネーター等に木材調達やサポート業務の委託を行って 事業を進めた事例もある その場合 品質管理については 業務委託先との合意内容を書面にした上で施工者へ材料を支給することとなる 平成 23 年度に支援した阿部 辺見 秋月設計共同体や豊岡市では 木材コーディネーターが参加する場合の材工分離発注の手法について学んだ ( 平成 23 年度 - 2 - pp.102-104 木材調達 発注 2: 分離発注の実例 ( 木材コーディネーターが参加する場合 ) 平成 23 年度 - 1 - pp.421-429 分離発注時の品質管理の注意点 ) 平成 23 年度に支援した阿部 辺見 秋月設計共同体では 町から地域の製材協同組合に対して学校林の伐採 製材 ~ 建築現場搬入を業務委託し 組合が町に納品したものを施工者へ支給した 平成 23 年度に支援した鹿沼市では 市から地域の木材協会に対して 既に伐採されていた財産区提供材の製材 設計終了後に確定した不足材の伐採 ~ 製材 ~ 建築現場搬入の2 種類を業務委託し 木材協会が町に納品したものを施工者に支給した 平成 23 年度に支援した香美町では 地域の森林組合に対して地域材の伐採 ~ 製材 = 建築現場搬入を業務委託するとともに 市から木材コーディネーターに対して木材調達管理業務の委託をし 森林組合が町に納品したものを施工者へ支給した いずれも 納品検査は発注者である地方公共団体が行っている 57