世界遺産を目指す北の縄文シンポジウム縄文から JOMON へ ~ 北の縄文を世界遺産に! ~ 北の縄文の価値 今後の可能性とまちづくりを考える ~ 日時 : 平成 24 年 3 月 24 日 ( 土 ) 14:40 ~ 16:00 場所 : 京王プラザホテル札幌 3 階扇の間 1 主催者挨拶 北海道知事高橋はるみ 2 世界遺産登録推進の現状 北海道環境生活部くらし安全局道民活動文化振興課縄文世界遺産推進室長村井篤司 3 基調講演 北の縄文の世界観とその価値 今後の可能性 國學院大学名誉教授小林達雄氏 4 対談 縄文遺跡とまちづくり 小林達雄氏と山重明氏 ( 株式会社ノーザンクロス代表取締役 ) 5 その他 添付資料資料 1 北の縄文世界を語る ( 小林先生配布資料 ) 資料 2 北海道 北東北を中心とした縄文遺跡群 の世界遺産登録に向けた取組について MEMO
資料 1 北の縄文世界展実行委員会編 2010 北の縄文世界- 土偶からのメッセージ より 北の縄文世界を語る 考古学者 / 國學院大學名誉教授小林達雄 氷河期の厳しい寒気がしだいに緩みはじめた約 15,000 年前 日本列島を舞台とする歴史が大きく動き出した 人間の営みを支えてきた道具箱の石器の中身ががらりと様変わりしたのである それまで広く発達していた独特な細石刃の製作と使用が途絶え 入れ替わりに有舌尖頭器や木葉形石槍や大形局部磨製片刃石斧や有溝砥石 ( 矢柄研磨器 ) 断面三角形錘 そして石鏃などいずれ劣らぬ個性豊かな顔触れである それぞれの形態が個性的であるというのは勿論だが 機能用途に並々ならぬ歴史的意味がある 有舌尖頭器は投槍の可能性があり 片刃 ( 丸ノミ形 ) 石斧は丸木舟製作と密接に関係するのかもしれない なかでも石鏃は矢柄の先端に装着された矢じりであり それまで絶えてみることのできなかった弓矢の登場につながる歴史的新基軸を代表する これら全てが一斉に出揃ったのではなく 北の北海道から南の九州まで遅速の差がある この事実は 日本列島内部の内発的発展の成果だけではなく むしろ大陸側から北海道 九州そして日本海側にそれぞれが別ルートを辿り あるいは時を違えて上陸してきた事情を物語るものといえよう だから渡来石器のいくつかを大陸側の母郷土に探り当てることのできるのも当然である 石器分野のめざましい動向とは別に さらに重視すべきものとして土器がある 青森県太平山元遺跡の無文土器の年代測定値は 15,000 年以上も遡る 土器の発明地と目される西アジアの土器をはっきりと圧倒する古さである しかし縄文土器の誕生地を特定することは依然として無理な話ではあるが 少なくとも東アジアで独自に発明された土器と直接的にかかわるものと考えられる やがて縄文土器として新たな伝統を確立して日本列島に根付き とりわけ煮炊き用として普及し 縄文食糧事情の安定を導き 縄文文化力の充実促進に絶大なる貢献を果たした ところが 北海道は 本州以南における著しい土器文化に対して なかなか土器の製作と使用に踏みきらず 普及が遅れ 無土器文化が続いた 最古の土器群を保有するのは今のところ江別市大麻 1 遺跡と帯広市大正 3 遺跡の二ヶ所の発見にとどまっている 結局 縄文土器文化に全面的に同調するのは三千年以上遅れて早期に入ってからである もっともそれからは土器の製作量においても遜色なく 文化的な段差は解消された
縄文土器の造形は 加除修正が自由自在であり ある時期 ある地方の集団特有の様式を大いに発達させた つまり 一万年以上の縄文時代を通じて 80 前後の土器様式が各地で消長を繰り返したが その分布圏は時期を超えてほぼ重なって安定していた 縄文時代のクニグニが列島をモザイク状に覆っていたのであり ちょうど方言区に相当すると見てよいと思われる 北海道は ほぼ石狩低地帯附近で二分され 道南はとくに津軽海峡を挟んで東北北部と密接に関係し いわば津軽海峡文化圏を維持し 本州以西の縄文文化の動向にも通じていた 秋田 新潟県域で産出する天然アスファルトを積極的に入手して接着剤などに活用し さらに新潟県産のヒスイを基軸とするネットワークにおいて 関東北をさしおいて北東北とともに最も大量に入手するなどの底力を誇り さらに漆文化の最右翼を担っていた その文化力は 縄文文化の牽引力の発揮にもつながり それがやがて新しい米作りの弥生文化と敢然と対立し 続縄文文化を確立し アイヌ文化発展の地盤となってゆくのである 縄文文化は日本列島全域に行き渡っていた その北辺に位置する北海道では 大陸との文物の往来があり 道産の黒曜石が渡海しており 一方早期の石刃鏃文化は石器も土器文様もほとんど改変することなく そのまま受け入れており 石狩低地帯にまで侵入している ほかにもモノとしては残らなかったさまざまな情報が入って来ていたのであろうが 北海道は終始文化的にぶれることなく 本州以西とともに縄文世界の有力な集団グループとしての存在感を誇っていたのである なお縄文世界の傘下は 縄文日本語による文化としてのまとまりを意味するものと考えられる 縄文土器に発達する口縁の突起は 同時代の沿海州や朝鮮半島 中国大陸には見られないが 単にカタチのデザインの問題ではなく 突起に対する名づけが突起を概念として縄文文化に定着させ 特有の観念を持つものであったと考えられる 樺太や朝鮮半島との往来が低調であったのは まさに言葉の壁によって妨げられていたというわけである 周辺大陸に土偶や石剣 石棒その他の縄文文化に発達した第二の道具がないのは 言葉によって初めて合意され 共有される世界観の違いを意味することにほかならない
北海道 北東北を中心とした縄文遺跡群 の世界遺産登録に向けた取組みについて 1 世界遺産の動向 (1) 概要 ユネスコ総会で世界遺産条約の採択 (1972 年 ) ~ 遺跡 景観 自然など普遍的価値を持つものを登録 保存 文化遺産 自然遺産 文化と自然が一体となった複合遺産の 3 種類があり 有形の不動産が対象 (2) 世界遺産登録数 (H23.8 現在 ) 区分計文化自然複合 H23 に 平泉 ( 文化 ) 小笠原 ( 自然 ) が世界遺産に登録世界 936 725 183 28 日本 (16) (12) (4) (-) (3) 登録までの流れ 自治体が国に提案 国の文化審議会で審議 ユネスコ暫定一覧表の記載 国へ推薦書案を提出 国がユネスコに推薦書提出 専門機関の調査 勧告 ユネスコの審議 登録 縄文遺跡群 H20 ( H 27 ) (4) 暫定一覧表 1 彦根城 滋賀県 2 古都鎌倉の寺院 神社 神奈川県 3 富岡製糸場と絹産業遺産群 群馬県 4 富士山 山梨県 静岡県 5 飛鳥 藤原の宮都とその関連資産群 奈良県 6 長崎の教会群とキリスト教関連資産 長崎県 7 国立西洋美術館本館 ~ル コルビュジエの建築と都市計画東京都 ( 関係 7ヵ国 ) 8 九州 山口の近代化産業遺跡群 福岡県ほか 5 県 9 宗像 沖ノ島と関連遺産群 福岡県 10 北海道 北東北を中心とした縄文遺跡群 北海道 北東北 3 県 11 金を中心とする佐渡金山の遺跡群 新潟県 12 百舌鳥 古市古墳群 大阪府 2 北海道 北東北を中心とした縄文遺跡群 (1) 概要 北海道 青森県 秋田県及び岩手県にある 15 の遺跡で構成 ( 詳細は別紙のとおり ) 内訳 : 北海道 -4 箇所北黄金貝塚 ( 伊達市 ) 青森県 -8 箇所入江 高砂貝塚 ( 洞爺湖町 ) 秋田県 -2 箇所鷲ノ木遺跡 ( 森町 ) 岩手県 -1 箇所大船遺跡 ( 函館市 ) 上記 4 道県及び遺跡のある 12 の市町が共同で世界遺産登録に向けた取組を推進 平成 27 年の登録を目指す (2) 経緯 H15. 9 第 7 回北海道 北東北知事サミット 北の縄文文化回廊づくり に合意 ~ 世界遺産も視野にアピール H19. 8 第 11 回北海道 北東北知事サミット 世界遺産登録に向け共同提案の合意 H19.12 提案書を国に提出 H20. 9 文化庁文化審議会世界文化遺産特別委員会 暫定一覧表の記載が適当 H21. 1 ユネスコ世界遺産センターの暫定一覧表に記載 H21. 6 4 道県共同による世界遺産登録推進事業のスタート ( 体制整備 登録推進事業の実施 ) H23. 4 12 市町も加わり世界遺産登録の推進 資料 2 H23 に 武家の古都鎌倉 ( 左記から名称変更 ) 及び 富士山 の政府による正式推薦が決定 現在 推薦書案の作成 国内外の理解促進等を実施
Jomon Archaeological Sites in Hokkaido, Northern Tohoku, and other regions 北海道 北東北を中心とした縄文遺跡群 世界遺産暫定一覧表記載資産 北海道 青森県 岩手県 秋田県 縄文文化は 温暖湿潤な気候の下に自然と人間が共生し 約 10,000 年もの長期間にわたって狩猟 漁撈 採集を主な生業とする定住生活によって繁栄 成熟した世界的にも稀な新石器時際の文化です 日本列島の全域に及んだ縄文文化の中でも 広く落葉広葉樹林が展開した東日本においては 食料資源の安定化とその利用技術の発展による定住生活域の拡大 集落の大型化 土偶や石棒などの祭祀具の発達などが顕著にみられます 北海道 北東北を中心とした縄文遺跡群は 海岸部 河川流域 丘陵地帯などの多様な地形に位置する集落跡 貝塚 環状列石 低湿性遺跡などから成り 様々な自然環境への適合の在り方とそれに伴う定住の確立 展開の様子を顕著に示し 独特の文化伝統を示す 物証として 顕著な普遍的価値を持つ可能性が高いことから 世界文化遺産の登録を目指した取組を進めています 北黄金貝塚 ( 伊達市 ) 前期 ( 約 6,000 年前 ) の大規模な貝塚を中心とした集落遺跡 ( 別紙 ) 入江 高砂貝塚 ( 洞爺湖町 ) 前 ~ 後期 ( 約 6~4,,000 年前 ) の貝塚を伴う集落遺跡 鷲ノ木遺跡 ( 森町 ) 後期前半 (4,,000 年前 ) の北海道最大規模の環状列石 青森県三内丸山遺跡 青森県小牧野遺跡 大森遺跡 ( 函館市 ) 中期後半 (4,,500 年前 ) の盛土遺構を伴う大規模集落遺跡 秋田県大湯環状列石 岩手県御所野遺跡 お問い合わせ先 : 北海道環境生活部くらし安全局道民活動文化振興課縄文世界遺産推進室 ( 011-204-5168)