研究成果の概要ビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) に1 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を与えた群 2 充分なビタミンCを与えた群 3 水のみを与えた群の 3 群に分け 1 ヶ

Similar documents
イシガミ石神 アキヒト昭人 略歴 1990 年東邦大学薬学部大学院薬学博士大日本インキ化学工業株式会社総合研究所研究員 1992 年米国国立衛生研究所 (NIH) 米国国立老化研究所 (NIA) 客員研究員 1994 年東京都老人総合研究所細胞化学部門研究員 2005 年東京都老人総合研究所老化制御

<4D F736F F D E30392E32398B5A8F70838A838A815B83588BE391E594C55F8D4C95F18DC58F49816A2E646F63>

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

Microsoft Word - 3.No._別紙.docx

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

平成14年度研究報告

細胞膜由来活性酸素による寿命延長メカニズムを世界で初めて発見 - 新規食品素材 PQQ がもたらす寿命延長のしくみを解明 名古屋大学大学院理学研究科 ( 研究科長 : 杉山直 ) 附属ニューロサイエンス研究セ ンターセンター長の森郁恵 ( もりいくえ ) 教授 笹倉寛之 ( ささくらひろゆき ) 研

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

さいたまセントラルクリニック 水素水ステーションプロジェクト 株式会社ドクターズ マン

Untitled

目次 はじめに例 1) Superoxide の検出およびSuperoxide dismutaseによるsuperoxide 消去活性例 2) 過酸化水素の検出およびCatalaseによる過酸化水素消去活性例 3) OHラジカルのおよびクロロゲン酸による OHラジカル消去活性 1 頁 2 頁 3 頁

ⅱ カフェイン カテキン混合溶液投与実験方法 1 マウスを茶抽出液 2g 3g 4g 相当分の3つの実験群と対照群にわける 各群のマウスは 6 匹ずつとし 合計 24 匹を使用 2 実験前 8 時間絶食させる 3 各マウスの血糖値の初期値を計測する 4 それぞれ茶抽出液 2g 3g 4g 分のカフェ

スライド 1

Microsoft Word - 【変更済】プレスリリース要旨_飯島・関谷H29_R6.docx

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

31608 要旨 ルミノール発光 3513 後藤唯花 3612 熊﨑なつみ 3617 新野彩乃 3619 鈴木梨那 私たちは ルミノール反応で起こる化学発光が強い光で長時間続く条件について興味をもち 研究を行った まず触媒の濃度に着目し 1~9% の値で実験を行ったところ触媒濃度が低いほど強い光で長

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

PowerPoint プレゼンテーション

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

生物時計の安定性の秘密を解明

2. PQQ を利用する酵素 AAS 脱水素酵素 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ AAS 脱水素酵素の前半部分 (N 末端側 ) にはアミノ酸を捕捉するための構造があり 後半部分 (C 末端側 ) には PQQ 結合配列 が 7 つ連続して存在していました ( 図 3

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

スライド 1

本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

1 Q A 82% 89% 88% 82% 88% 82%

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

研究室HP掲載

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 新技術説明会配付資料rev提出版(後藤)修正.pp

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

■リアルタイムPCR実践編

要旨 グレープフルーツや夏みかんなどに含まれる柑橘類フラボノイドであるナリンゲニンは高脂血症を改善する効果があり 肝臓においてもコレステロールや中性脂肪の蓄積を抑制すると言われている 脂肪肝は肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった状態で 動脈硬化を始めとするさまざまな生活習慣病の原因となる 脂肪肝

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

<4D F736F F D A F817A985F95B6838A838A815B B8905F94E6984A82C991CE82B782E9836D836A82CC896

1 編 / 生物の特徴 1 章 / 生物の共通性 1 生物の共通性 教科書 p.8 ~ 11 1 生物の特徴 (p.8 ~ 9) 1 地球上のすべての生物には, 次のような共通の特徴がある 生物は,a( 生物は,b( 生物は,c( ) で囲まれた細胞からなっている ) を遺伝情報として用いている )

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

No. 2 2 型糖尿病では 病態の一つであるインスリンが作用する臓器の慢性炎症が問題となっており これには腸内フローラの乱れや腸内から血液中に移行した腸内細菌がリスクとなります そのため 腸内フローラを適切に維持し 血液中への細菌の移行を抑えることが慢性炎症の予防には必要です プロバイオティクス飲

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

<8CBA95C4985F95B62E786477>

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

2006 PKDFCJ

記 者 発 表(予 定)

長寿遺伝子検査マニュアル

2 肺 老化による息切れ 慢性肺疾患の予防改善 3 肌 老化によるシミ シワの予防改善 4 副腎 老化によるストレス 高血圧予防改善 ビタミンCは結構摂っていると思われるが 意外と消費量が多い ストレスによるビタミンCの変化を見てみよう 一

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

実習科目回 テーマ 授業内容および学習課題 担当者 酸塩基反応及び抽出法による薬毒物混合物の系統 グループ 薬毒物の系統分離と確認 分離法を実施できる 薬毒物の化学構造や反応性を理解し 薄層クロマ 森本 敦司 トグラフィーや各種確認試験を利用して 含有成分 を同定できる C2-(3) A

共同研究報告書

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

第2章マウスを用いた動物モデルに関する研究

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

 

論文の内容の要旨

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

Microsoft Word - プレスリリース最終版

<4D F736F F D F4390B388C4817A C A838A815B8358>

PowerPoint プレゼンテーション

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

アントシアニン

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

「ゲノムインプリント消去には能動的脱メチル化が必要である」【石野史敏教授】

-2-

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

同志社商学部父母会60.indd

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

スライド 1

Microsoft Word - PRESS_

グルタチオンの作用 1. 抗酸化作用 ( 細胞を守る ) 1 食品添加物 薬品 ( アセトアミノフェン等 ) 化学物質 アセトン ( 除光液など ) 農薬 重金属 ( 水銀 鉛 カドミウム など ) 人口甘味料 洗剤 消臭スプレー カビ取りクリーナー 紫外線 放射線 電磁場 大気汚染物質 ショック

untitled

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 2 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の進行に二つのグリア細胞が関与することを発見 - 神経難病の一つである ALS の治療法の開発につながる新知見 - 原因不明の神経難病 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は 全身の筋

を確認しました 本装置を用いて 血栓形成には血液中のどのような成分 ( 白血球 赤血球 血小板など ) が関与しているかを調べ 血液の凝固を引き起こす トリガー が何であるかをレオロジー ( 流れと変形に関わるサイエンス ) 的および生化学的に明らかにすることとしました 2. 研究手法と成果 1)

前ページの反応から ビタミン C はヨウ素によって酸化され ヨウ素はビタミン C によって還元された と説明できます あるいはビタミン C は還元剤として働き ヨウ素は酸化剤として働いた ともいう事ができます 定量法 ある物質の量や濃度を知りたいとき いくつかの定量法を使って調べることができます こ

Product | Grab-and-Go Cans | On-the-Go Packets | Berry Bars | Tropical Blast | Vitalagy | Product FAQs

Microsoft Word - tohokuuniv-press _03(修正版)

< 備考 > 本研究は 文科省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 バイオメタルと生体反応の連関解明に基づいた疾患治療ファルマコメタロミクスの確立 (S20008) 文科省科学研究費補助金 基盤研究(C) (8K06940) 公益財団法人武田科学振興財団の薬学系研究助成などの支援を受けて行なわれました

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

テイカ製薬株式会社 社内資料

6. 研究対象者として選定された理由 当科を受診された各種慢性肝疾患の方が研究対象者に含まれます 7. 研究対象者に生じる利益 負担および予想されるリスクノベルジン錠の国内臨床試験に置ける安全性評価対象例 74 例中 23 例 (31.1%) に副作用が認められ 主な自覚症状では悪心 4 例 (5.

ナノ水素水の企画提案

Microsoft Word - 01.doc

現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

Transcription:

研究詳細 水素 (H 2 ) を高濃度に溶解した水素水の飲用 は脳での活性酸素の増加を抑制する ポイント ヒトやサル モルモットは体内でビタミンCを合成できない しかし マウスをはじめ犬 猫 鳥など多くの動物は自らの体内でビタミンCを合成できる 私たちはビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) を作成し ビタミンCの不足が脳での活性酸素を増加させることをリアルタイムに脳での活性酸素量を測定する装置を用いて初めて明らかにした また 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) をビタミン Cの不足したマウスに毎日与えることにより 脳での活性酸素の増加を抑制することも初めて明らかにした 東邦大学薬学部生化学教室石神昭人准教授 高橋良哉教授 佐藤安訓大学院生らと梶山内科クリニック梶山静夫院長 東京都老人総合研究所 京都府立医科大学 神戸薬科大学 アイロム製薬株式会社の共同研究グループは 水素を高濃度に溶解した水素水の飲用がビタミン Cの不足による脳での活性酸素の増加を抑制すること世界で初めて明らかにした この研究成果は平成 20 年 8 月 14 日にオランダの学術雑誌である Biochemical and Biophysical Research Communications に速報版として掲載された 研究の背景活性酸素は糖尿病 動脈硬化 アルツハイマー病などの各種疾患や老化の一因であると考えられている 水素ガスは神経細胞からの活性酸素 特に毒性の強い活性酸素であるヒドロキシラジカルの発生を抑制 又は減少させることが 2007 年 日本医科大学の太田らにより Nature Medicine に報告された また 最近では水素ガスの吸引は一時的に血流が止まる虚血 再灌流により発生する活性酸素の生成を抑制することも報告されている しかし 水素ガスを日常的に吸引することは難しい 私たちは水素ガスを高濃度に溶解した水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を開発し 糖尿病患者に毎日 900 ml を飲用した結果 酸化ストレスマーカーが減少し 軽度糖尿病の改善が見られた しかし 水素水が生体内で どのように活性酸素の増加を抑制するのかその正確なメカニズムは分かっていない 私たちは 今までにビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) を作成し ビタミンCの長期的な不足が老化を促進することを明らかにした ビタミン Cは水溶性の強力な抗酸化剤である 従って ビタミン Cの不足は体内での活性酸素の増加をもたらすと考えられる しかし 動物個体を用いてビタミン C 不足による活性酸素の増加を科学的に証明する実験結果は無かった 今回 私たちは 脳での活性酸素の発生をリアルタイムに捉える装置を用いて ビタミンCの不足が脳での活性酸素を増加させること 又 水素水を飲用することにより脳での活性酸素の増加が抑制されることを世界で初めて科学的に明らかにした

研究成果の概要ビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) に1 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を与えた群 2 充分なビタミンCを与えた群 3 水のみを与えた群の 3 群に分け 1 ヶ月間 飼育した 水素は揮発性が高いため 1 日に 2 回交換した 1 ヵ月後に脳のビタミンC 量を測定した結果 1 水素水と3 水のみを与えた群では脳でのビタミンC 量がビタミンCを十分に与えた群に比べて 6% 以下にまで減少していた 次に 脳での活性酸素の発生をリアルタイムに捉える装置を用いて測定した結果 1 水素水を与えた群では3 水のみを与えた群に比べて活性酸素の発生が 27% も減少していた このように 水素水の飲用はビタミンC 不足による活性酸素の増加を抑制してくれた 発見の意義ビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) を用いて 水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) の飲用がビタミンC 不足による脳での活性酸素の増加を抑制することを明らかにした 私たちの研究結果は水素ガスの吸引だけではなく 水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) の飲用によっても脳での活性酸素の増加を抑制することを示している 活性酸素は糖尿病 動脈硬化などの生活習慣病やアルツハイマー病など神経変性疾患の原因の1つと考えられている 水素水は これら疾患を予防する手軽に飲用できる水としてその効果がとても期待される 本研究は 現在市販されている水素を含有する特定の健康飲料水や健康サプリメントの効果を実証するものでは無い 純粋に科学的に水素 (H2) ガスを飽和状態まで溶かした高濃度水素溶解精製水が脳での活性酸素の増加を抑制することを調べた研究成果である 掲載論文の要旨 水素 (H2) は 毒性の強い活性酸素であるヒドロキシラジカルを消去することが神経細胞を用いた実験から明らかになっている しかし 水素ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした精製水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) が生体内で活性酸素を消去できるかは明らかになっていない 筆者らは ビタミンCを合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) 及び脳での活性酸素の量をリアルタイムに測定できる装置を用いて 水素水の飲用が脳での活性酸素の増加を抑制することを明らかにした 水素水は 酷い酸化ストレスがかかる条件下で有用な抗酸化物質であると考えられる 掲載紙 この新発見の掲載紙は Biochemical and Biophysical Research Communications である 平成 20 年 8 月 14 日に速報版が電子ジャーナルで掲載された 掲載論文の英文表題とその和訳 Hydrogen-rich pure water prevents superoxide formation in brain slices of vitamin C-depleted SMP30/GNL knockout mice 高濃度水素溶解精製水はビタミンCが不足した SMP30/GNL ノックアウトマウスの脳においてスーパーオキシドの生成を抑制する

研究内容の詳細 酸化ストレスは糖尿病 動脈硬化やアルツハイマー病などの各種疾患や老化と密接な関連がある 生体は過剰な活性酸素を消去するため 多くの抗酸化酵素や抗酸化物質を備えている 主要な抗酸化酵素として スーパーオキシドジスムターゼ グルタチオンペルオキシダーゼ カタラーゼなどが挙げられる また 抗酸化物質として ビタミンC ビタミンE グルタチオンなどが挙げられる ビタミン Cは 他の臓器に比べて脳では高濃度に存在する これは ビタミン Cが脳における抗酸化物質としてとても重要であることを示している 生物は進化の過程で多くの抗酸化防御システムを発達させてきた しかし 過剰な活性酸素を全て消去できる訳ではない 水素 (H2) ガスは毒性の強い活性酸素であるヒドロキシラジカルを消去することが神経細胞を用いた実験から明らかになった また 私たちは水素 (H2) ガスを高濃度に溶解した水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を開発し 糖尿病患者に毎日 900 ml を飲用した結果 酸化ストレスのマーカーが減少し 軽度糖尿病の改善が見られることを明らかにした これらの結果は水素水が生体内で抗酸化作用を持つことを示している しかし 水素水が生体内で活性酸素を本当に消去できるかは明らかではない 加齢指標タンパク質 30 (SMP30) は ラット肝臓より同定された加齢で減少するタンパク質である 最近 私たちは SMP30 がビタミンC 合成経路の重要な酵素であるグルコノラクトナーゼ (GNL) であること SMP30/GNL 遺伝子を破壊した (KO) マウスはビタミンCを体内で合成できないことを明らかにした 従って SMP30/GNL KO マウスは 体内でビタミンCを合成できないヒトに極めて類似したモデル動物である 本研究では 水素水の飲用が脳での活性酸素の増加を抑制できるかを SMP30/GNL KO マウス及びリアルタイムに活性酸素 ( スーパーオキシド ) の量を測定できる装置 ( リアルタイムバイオグラフィー装置 ) を用いて比較 検討した SMP30/GNL KO マウスは 生後 30 日で離乳後 水素水を与えた群 ( 水素水投与群 ) ビタミン C(VC) 水を与えた群 (VC 投与群 ) 水のみを与えた群 ( 水投与群 ) に分けて 1 ヶ月間 飼育した 水素は揮発性が高いため 飲料水の交換を毎日 1 日 2 回行った 体重は全ての群で飼育期間中 順調に増加した 水素水投与群 VC 投与群 水投与群の間で飼育期間中に体重変化は認められなかった 次に各群の脳でのビタミン C 量を測定した その結果 水素水投与群と水投与群の脳でのビタミン C 量は VC 投与群の 6% 以下にまで減少していた 脳での活性酸素 ( スーパーオキシド ) の検出には スーパーオキシドに特異的に反応する化学発光試薬 ルシゲニンを用いた 化学発光量は高感度 CCD カメラでリアルタイムに撮影を行い 15 分ごとの積算画像を数値化し定量した その結果 水素水投与群の化学発光量は水投与群に比べて 27% も減少していた ( 図を参照 ) 今回 私たちは活性酸素の 1 つであるスーパーオキシドをリアルタイムに測定できるリアルタイムバイオグラフィー装置を用いて 水素水の飲用が脳での活性酸素の増加を抑制することを初めて科学的に明らかにした 通常 水素は毒性の強い活性酸素であるヒドロキシラジカルを消去する しかし 水素は生体内で過剰な活性酸素が発生するような条件下ではヒドロキシラジカル及びスーパーオキシドの両方を消去する可能性が考えられる また 水素は容易にミトコンドリア膜を透過できるため ミトコンドリア内でのスーパーオキシドの生成を直接的に抑制する可能性も考えられる 今回の研究成果により 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした精製水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) の飲用は生体内で過剰なスーパーオキシドの発生を抑制することが明らかになった このように 水素水は酷い酸化ストレスがかかる条件下で有効な抗酸化物質であると考えられる

水素水投与群の活性 酸素は水投与群に比べ て 27% も減少していた 共同研究グループ 1. 東邦大学薬学部生化学教室石神昭人 ( 准教授 ) 研究責任者高橋良哉 ( 教授 ) 佐藤安訓 ( 大学院生 ) 2. 東京都老人総合研究所丸山直記 ( 副所長 ) 佐々木徹 ( 研究員 ) 近藤嘉高 ( 研究員 ) 半田節子 ( 研究助手 ) 天野晶子 ( 研究生 ) 3. 梶山内科クリニック 梶山静夫 ( 院長 ) 4. 京都府立医科大学生体機能制御学教室中村直登 ( 教授 ) 長谷川剛二 ( 講師 ) 福井道明 ( 講師 )

5. 神戸薬科大学病態生化学研究室 太田光熙 ( 教授 ) 6. 生体応答情報科学研究所 尾林博 ( 所長 ) 7. アイロム製薬株式会社 森豊隆 ( 代表取締役会長 ) 藤縄彦人 ( 取締役 ) 問い合わせ先 274-8510 千葉県船橋市三山 2-2-1 東邦大学薬学部生化学教室石神昭人 ( いしがみあきひと ) 准教授 E-mail : ishigami@phar.toho-u.ac.jp TEL & FAX:047-472-1536( ダイヤルイン )