平成 20 年 9 月 24 日全国信用組合中央協会 平成 21 年度税制改正に関する要望 1. 協同組合組織金融機関の貸倒引当金の特例措置について存続させること 具体的には 1 法定繰入率 ( 現行 1,000 の 3) を存置すること 2 割増特例 ( 本則の 100 分の 116) の期限 ( 平成 21 年 3 月末 ) 2. 貸倒れに係る無税償却 引当基準の見直し及び欠損金の繰戻還付の拡充を行うこと 具体的には 1 貸倒れに係る無税償却 引当の範囲を拡大すること 2 欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し 繰戻期間 ( 現行 1 年 ) 3. 現行の住宅借入金等の所得税額の特別控除制度を恒久化すること 少なくともその適用期限 ( 平成 20 年 12 月末 ) あるいは これに代わる新たな税制上の措置を講じること 4. 登録免許税の税率をその手数料的な性格から低額の定額税率とする等 軽減 簡素化すること 5. 金融所得課税の一体化に向けて具体的な制度設計が行われる際には 金融資産に対する課税の簡素化 中立化を図る観点から 実務面における十分な検討を踏まえ 課税方式の均衡化を図るとともに 預金を含め損益通算を幅広く認めること
1. 協同組合組織金融機関の貸倒引当金の特例措置について存続させること 具体的には 1 法定繰入率 ( 現行 1,000の3) を存置すること 2 割増特例 ( 本則の100 分の116) の期限 ( 平成 21 年 3 月末 ) 信用組合の主たる取引先である小規模事業者は 経営体質が脆弱で大手企業の倒産の影響を受け易く また 財務諸表の正確性も大企業と比較すると相対的に低いため 小規模事業者の倒産予測は困難な状況にあり さらに 過去の貸倒実績のブレも大きくなりがちで このため 過去の貸倒実績率だけでは 翌期の貸倒れに備えるには十分とは言えず 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金について法定繰入率を利用している信用組合が多数に上っている また 協同組合組織金融機関の貸倒引当金の割増措置 ( 本則の100 分の1 16) は 経営体質が脆弱な小規模事業者に対する円滑な資金供給 地域密着型金融の推進に大きく寄与している 加えて この2つの貸倒引当金に係る税制上の措置は 信用組合の自己資本の充実にも寄与し 金融機関の財務の健全性が強く求められている今日 その重要性は益々増大しているところである したがって 協同組合組織金融機関の貸倒引当金の1 法定繰入率 ( 現行 1, 000 分の3) を存置すること および2 割増措置 ( 本則の100 分の116) の適用期限 ( 平成 21 年 3 月末 ) を延長することを要望する 2. 貸倒れに係る無税償却 引当基準の見直し及び欠損金の繰戻還付制度の拡充を行うこと 具体的には 1 貸倒れに係る無税償却 引当の範囲を拡大すること 2 欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し 繰戻期間 ( 現行 1 年 ) 長年の懸案である不良債権問題については 主要行はその解決に目処がついたとしているが 小規模事業者等を主たる取引先としている信用組合においては 減少傾向にはあるものの未だ高水準で推移しており その処理が課題となっている 一方 不良債権を処理する過程においては 貸倒れに係る無税償却 引当の範囲が極めて限定的であること等から 貸倒れに係る企業会計と税務上
の取扱いに大きな差異が生じているが それらについては できる限り縮小させていくことが望ましく そのためにも 金融機関が実施している自己査定等に基づく無税償却 引当の範囲や実務上の取扱いを見直し 債権棄損の実情に応じて貸倒れに係る無税償却 引当の範囲を幅広く認めていくことが必要である 法的整理手続き開始の申立てがあった場合の個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入割合 ( 現行 50%) を引上げるなど 貸倒れに係る無税償却 引当の範囲を拡大することを要望する 一方 法人税における欠損金の繰戻還付 繰越控除制度は 事業年度ごとの課税負担を平準化し 経営の中長期的な安定性を確保するうえで重要な制度である しかしながら 繰戻還付制度については 現状 繰戻期間が1 年に限定されているうえに平成 4 年度以降凍結されているなど 十分な措置が講じられているとは言いがたく 繰越控除制度についても その期間が7 年とされ 欧米主要国との比較においても わが国の制度は見劣りしていることから 平成 22 年 3 月末に期限が到来する欠損金の繰戻還付制度の凍結措置を解除し 繰戻期間 ( 現行 1 年間 ) を少なくとも2 年に延長することを要望する 3. 現行の住宅借入金等の所得税額の特別控除制度を恒久化すること 少なくともその適用期限 ( 平成 20 年 12 月末 ) あるいは これに代わる新たな税制上の措置を講じること 平成 16 年度の税制改正において 持家取得に伴う初期負担の軽減により住宅投資を促進し 景気浮揚にも資するとの観点から措置された現行の住宅借入金等の所得税額の特別控除制度は 平成 17 年居住分以降 平成 20 年居住分まで段階的に縮減され 本年 12 月末をもって廃止することとされている 住宅は 国民の経済活動や社会生活の基盤となる重要な資産であると同時に 家族を育むかけがえのない生活空間であり 全ての国民が自らの努力に応じて良質な住宅を確保することができる環境を整えることは 若年者の夢や勤労者 高齢者の安心に支えられた安定的な経済成長や健全で活力にあふれた社会につながるものである こうした中 本年 8 月 29 日に政府が決定した 安心実現のための緊急総合対策 ( 政府 与党会議 経済対策閣僚会議合同会議 ) の中では 住まい対策として 住宅投資の活性化とともに 住まいとまちの再設計を推進する観点から 環境負荷の低減に資する 省エネ長寿命住宅 の振興 高齢者の安心 安全を支える居住空間の確保 地域再生等まちづくりと連動した住宅整備等を進め
る ことが盛り込まれている 社会経済情勢等の変化に左右されることなく 安定かつ公平な住宅取得の機会が確保されることは 経済を下支えするという観点からも住宅取得の促進に資する税制措置の拡充は重要であることから 現行の住宅借入金等の所得税額の特別控除制度を恒久化すること 少なくとも その適用期限 ( 平成 20 年 12 月末 ) を延長することを要望する あるいは 現行制度に代わる税制上の措置として 住生活の安定の確保および向上の促進に資する新たな税制上の措置を講じることを要望する 4. 登録免許税の税率をその手数料的な性格から低額の定額税率とする等 軽減 簡素化すること 現行の登録免許税は 手数料的な性格を持つ流通税であるにもかかわらず負担が極めて重く わが国経済の構造改革のために必要な企業の組織再編成や資産流動化等の経済取引に影響を与え 経済の活性化を阻害している面がある 登録免許税が持つ手数料的な性格を踏まえ 低額の定額税率とする等 大幅に軽減 簡素化することを要望する 5. 金融所得課税の一体化に向けて具体的な制度設計が行われる際には 金融資産に対する課税の簡素化 中立化を図る観点から 実務面における十分な検討を踏まえ 課税方式の均衡化を図るとともに 預金を含め損益通算を幅広く認めること 少子高齢化の進展に伴い貯蓄率が顕著な低下傾向を示す中で経済の活力を維持するためには 個人金融資産にとって魅力のある効率的な金融 資本市場を構築する必要があり 金融資産に対する課税については 簡素でわかり易く 金融商品の選択を歪めることのない中立的な税制の整備が求められる 政府税制調査会が平成 16 年 6 月に公表した 金融所得課税の一体化についての基本的考え方 においても 金融商品に対する課税方式を均衡化し 損益通算の範囲をできる限り拡げていく方向性が打ち出されている 個人投資家にとって魅力的な金融 資本市場とは 金融商品がリスクに見合ったリターンを形成し 個人投資家のリスク選好に応じて自由に金融商品を選択できる市場であり そのためには 金融商品に対する課税が納税者にとって簡
素でわかり易く かつ金融取引における選択を歪めることのない形にする必要がある また 実効性のある税制を構築する観点から 個人投資家の税制面の事務負担や商品を提供する金融機関の負担や準備期間に十分配慮すること必要である したがって 金融所得の一体化を推進するに当たっては 金融資産に対する課税の簡素化 中立化を図る観点から 実務面における十分な検討を踏まえ 金融商品間の課税方式の均衡化を図るとともに 預金を含め損益通算を幅広く認めること さらに 具体的な納税の仕組みについては 納税者 金融機関の事務負担等に配慮した受入れ可能な実効性のある制度とするとともに その導入に当たっては十分な準備期間を設けることを要望する