COP21への約束草案作成に向けたわが国の取組み Japanese Perspectives to the Nationally Determined Contributions for Global Climate Response

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参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2

( 太陽光 風力については 1/2~5/6 の間で設定 中小水力 地熱 バイオマスについては 1/3~2/3 の間で設定 )) 7 適用又は延長期間 2 年間 ( 平成 31 年度末まで ) 8 必要性等 1 政策目的及びその根拠 租税特別措置等により実現しようとする政策目的 長期エネルギー需給見通

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エネルギー規制 制度改革アクションプラン (11 月 1 日 ) の概要 重点課題と詳細リスト 現時点で政府が取り組むこととしている又は検討中の事項を 実施 検討事項詳細リスト (77 項目 ) として取りまとめ その中から 3つの柱で計 26 項目の重点課題を特定 1 電力システムの改革 (9 項

資料 2 接続可能量 (2017 年度算定値 ) の算定について 平成 29 年 9 月資源エネルギー庁

スライド 1

次世代エネルギーシステムの提言 2011 年 9 月 16 日 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター Copyright (C) 2011 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

2 政策体系における政策目的の位置付け 3 達成目標及び測定指標 1. 地球温暖化対策の推進 1-2 国内における温室効果ガスの排出抑制 租税特別措置等により達成しようとする目標 2030 年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を 22~24% とする 租税特別措置等による達成目標に係る測定指

これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

平成 30 年度地方税制改正 ( 税負担軽減措置等 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 その他 ) No 8 府省庁名環境省 対象税目個人住民税法人住民税事業税不動産取得税固定資産税事業所税その他 ( ) 要望項目名 要望内容 ( 概要 ) 再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置の延長

タイトル

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

UIプロジェクトX


電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法改正に関する意見書

参考資料3(第1回検討会資料3)

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参考 :SWITCH モデルの概要 SW ITCH モデル は既存の発電所 系統 需要データを基にして 各地域における将来の自然エネルギーの普及 ( 設備容量 ) をシミュレーションし 発電コストや CO 排出量などを計算するモデルです このモデルでは さらに需要と気象の時間変動データから 自然エネ

政策体系における政策目的の位置付け エネルギー基本計画 ( 平成 22 年 6 月 18 日閣議決定 ) において 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 10% とすることを目指す と記載 地球温暖化対策基本法案 ( 平成 22 年 10 月 8 日閣議決定 )

資料1 美しい星へのいざない「Invitation to 『Cool Earth 50』」~3つの提案、3つの原則~」

RIETI Highlight Vol.66

市町村から国への要望一覧 事項名要望内容改善案 ( 省庁名を記入してください ) いつまでに実施するか 効果 ( 現状との数値比較等 ) 再生可能エネルギーの導入促進 要望事項 1 政府は将来を見据えた責任あるエネルギー政策を実行するためにも エネルギー基本計画に掲げている再生可能エネルギーの導入量

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FIT/ 非 FIT 認定設備が併存する場合の逆潮流の扱いに関する検討状況 現在 一需要家内に FIT 認定設備と非 FIT 認定設備が併存する場合には FIT 制度に基づく買取量 ( 逆潮流量 ) を正確に計量するため 非 FIT 認定設備からの逆潮流は禁止されている (FIT 法施行規則第 5

1. はじめに 1 需要曲線の考え方については 第 8 回検討会 (2/1) 第 9 回検討会 (3/5) において 事務局案を提示してご議論いただいている 本日は これまでの議論を踏まえて 需要曲線の設計に必要となる考え方について整理を行う 具体的には 需要曲線の設計にあたり 目標調達量 目標調達

はじめに 福島県は復興の大きな柱として 福島を 再生可能エネルギー先駆けの地 とすべく 再生可能エネルギーの拡大 関連する産業の集積 研究開発を進めている 2012 年 3 月に改訂された 福島県再生可能エネルギー推進ビジョン ( 改訂版 ) においては 2040 年頃を目途に福島県内の 1 次エネ

資料1 :住宅(家庭部門)の中期の対策・施策検討

バイオ燃料

MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

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4 木質バイオマス発電設備 (2 万 kw 未満 木質バイオマス燃料の年間利用率 80% 以上と見込まれるもの ) < 下記要件のいずれかを満たすもの > 年間稼働率 80% 以上と見込まれるもの kw あたりの資本費一定以下 2,000kW 未満 62 万円 /kw 以下 2,000kW 以上 2

熱効率( 既存の発電技術 コンバインドサイクル発電 今後の技術開発 1700 級 ( 約 57%) %)(送電端 HV 級 ( 約 50%) 1500 級 ( 約 52%

1. 調整力公募について 本年 4 月に施行された第 2 弾の改正電事法により 新しいライセンス制度が導入されたことを受け 一般送配電事業者が電力供給区域の周波数制御 需給バランス調整を行うこととなっている そのために必要な調整力を調達するにあたって 一般送配電事業者は原則として公募の方法で調達する

新旧対照表

資料2:地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)(案)

H28秋_24地方税財源

地球温暖化対策のための税の効果について 1. 平成 20 年 11 月中央環境審議会グリーン税制専門委員会 環境税等のグリーン税制に係るこれまでの議論の整理 より 税収を温暖化対策の費用に充てる 又は温暖化対策に係る減税に活用する場合 CO 2 削減に関し大きな効果が見込める ( 前略 ) 環境利用

整力を確保する一方 小売部門が GC までの自社需要の想定誤差に対する予備力を確保する対 応をしていることから 一部の旧一般電気事業者については 送配電部門と小売部門が確保し ている予備力の合計値が 調整力公募制度開始以前と比較して増加している ( 卸電力取引所活性化の必要性 ) 旧一般電気事業者の

□120714システム選択(伴さん).ppt

本日の説明内容 1. グリーン購入法の概要 2. プレミアム基準策定ガイドライン


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1. 入札制度について (1) 総論 (1-1) 保証金における不可抗力事由の取扱い (1-2) 旧制度下の認定案件の失効状況 (2) バイオマス発電について (2-1) バイオマス液体燃料区分の取扱い ( 新規のバイオマス燃料種の取扱いを含む ) (2-2)2018 年度の入札量 (2-3) 石炭

200kW 未満 272 万円 /kw 以下 200kW 以上 1,000kW 未満 109 万円 /kw 以下 1,000kW 以上 3 万 kw 未満 39 万円 /kw 以下 4 木質バイオマス発電設備 (2 万 kw 未満 木質バイオマス燃料の年間利用率 80% 以上と見込まれるもの ) <

御意見の内容 御意見に対する電力 ガス取引監視等委員会事務局の考え方ることは可能です このような訴求は 小売電気事業者が行うことを想定したものですが 消費者においても そのような訴求を行っている小売電気事業者から電気の小売供給を受け 自らが実質的に再生可能エネルギーに由来する電気を消費していることを

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電力システム改革に関する意見 <ポイント>

北杜市新エネルギービジョン

Ⅱ 主な改革内容 上記の 3 つの目的からなる電力システム改革につき 以下の 3 つの柱を中心として 大胆な改革を現実的なスケジュールの下で着実に実行する 1. 広域系統運用の拡大 電力需給のひっ迫や出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大に対応するため 国の監督の下に 報告徴収等により系統利用者

はじめに Ⅰ 豊かで活力ある経済社会を支えるエネルギー政策のあり方 はじめに Ⅰ 1 エネルギー政策に関する基本的考え方と現在のエネルギー情勢 (1) エネルギー問題は 国民生活と事業活動の基盤となる極めて重要な政策課題 (2) 安全性の確保を大前提に 安定供給 経済合理性 環境適合性のバランス S

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

平成20年度税制改正(地方税)要望事項

スライド 1

成 25 年 4 月 1 日から平成 27 年度 3 月 31 日まで ) 平成 26 年度縮減産業競争力強化法に基づく生産性向上設備投資促進税制の創設に伴い 一部の対象設備を見直した 平成 27 年度延長風力発電設備の即時償却の適用期限を1 年間延長した ( 平成 28 年 3 月 31 日まで

地球温暖化対策計画について 地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため 政府が地球温暖化対策推進法に基づいて策定する 我が国唯一の地球温暖化に関する総合計画 温室効果ガスの排出抑制及び吸収の目標 事業者 国民等が講ずべき措置に関する基本的事項 目標達成のために国 地方公共団体が講ずべき施策等に

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200kW 未満 272 万円 /kw 以下 200kW 以上 1,000kW 未満 109 万円 /kw 以下 1,000kW 以上 3 万 kw 未満 39 万円 /kw 以下 4 木質バイオマス発電設備 (2 万 kw 未満 木質バイオマス燃料の年間利用率 80% 以上と見込まれるもの ) <

お知らせ

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報告書の主な内容 2012 年度冬季の電力需給の結果分析 2012 年度冬季電力需給の事前想定と実績とを比較 検証 2013 年度夏季の電力需給の見通し 需要面と供給面の精査を行い 各電力会社の需給バランスについて安定供給が可能であるかを検証 電力需給検証小委員会としての要請 2013 年度夏季の電

新とする理由⑴ 政策目的 車体課税については 平成 23 年度税制改正大綱において エコカー減税の期限到来時までに 地球温暖化対策の観点や国及び地方の財政の状況を踏まえつつ 当分の間として適用される税率の取扱いを含め 簡素化 グリーン化 負担の軽減等を行う方向で抜本的な見直しを検討 することとされて

部分供給については 例えば 以下の3パターンが考えられる ( 別紙 1 参照 ) パターン1: 区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ( 又は他の小売電気事業者 ) が一定量のベース供給を行い 他の小売電気事業者 ( 又は区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ) がを行う供給

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マートシティ 省エネルギー対策の推進 <ビル 工場等における省エネルギー対策の推進 > 大規模事業所が対象のキャップ & トレード制度 * ( 以下 C&T 制度 という ) について 2020 年度からの第 3 計画期間に向け 専門家による検討会の設置に係る準備等を実施 新規 東京 2020 大会

整力を確保する一方 小売部門が GC までの自社需要の想定誤差に対する予備力を確保する対 応をしていることから 一部の旧一般電気事業者については 送配電部門と小売部門が確保し ている予備力の合計値が 調整力公募制度開始以前と比較して増加している ( 卸電力取引所活性化の必要性 ) 旧一般電気事業者の

とを目指す必要がある このためには以下の10 領域における政策課題に取組む必要がある また 分類 Ⅳに分類される意見に基づく場合であっても 原子力施設の廃止措置やこれまで原子力発電の利用に伴い発生した放射性廃棄物の処分の取組に関するこれらの領域における政策課題に取組まなければならない (1) 福島第

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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二国間クレジット制度について

温暖化問題と原子力発電

Microsoft Word - (基本計画)民間主導による低炭素技術普及促進事業(set)

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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23 年のエネルギーミックス 一次エネルギー供給構成 発電構成 6 原油換算百万 kl 億 kwh % 24% 再生可能 ( 含水力 ) 原子力 % 1% ,666 9,88 1,65 17% 程度の省エネ 再生可能 22~24

資料3-1 温室効果ガス「見える化」の役割について

Microsoft Word 後藤佑介.doc

福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律 について <1. 特定復興再生拠点区域の復興及び再生を推進するための計画制度の創設 > 従来 帰還困難区域は 将来にわたって居住を制限することを原則とした区域 として設定 平成 29 年 5 月復興庁 地元からの要望や与党からの提言を踏まえ 1 帰還困難区

総合資源エネルギー調査会基本政策分科会第 18 回会合資料 2-5 火力発電の高効率化 資源エネルギー庁 平成 27 年 11 月

再生可能エネルギーの自立に向けた取組の加速化 1 FIT 制度の創設当初は 量 の拡大を重視し 固定価格と買取義務に依拠した売電モデルの下で 高コストで大量 多様なプレーヤーが再生可能エネルギー発電事業に参入 世界的に脱炭素化へのモメンタムが高まり 再生可能エネルギーがコスト競争力のある主力電源とな

( 別紙 ) 中国電力株式会社及び JFE スチール株式会社 ( 仮称 ) 蘇我火力 発電所建設計画計画段階環境配慮書 に対する意見 1. 総論 (1) 石炭火力発電を巡る環境保全に係る国内外の状況を十分認識し 本事業を検討すること 本事業を実施する場合には 本事業に伴う環境影響を回避 低減するため

接続契約締結先 電源接続案件募集プロセスへの参加の有無 東京電力パワーグリッド株式会社 有 ( エリア名 : 栃木県北部 中部エリア ) 無 工事費負担金 20,000,000 円 ( 税抜き ) 連系工事期間 特定 ( 買取 ) 契約締結先 平成 29 年 9 月 25 日 ~ 平成 31 年 1

公開用_ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の定義と評価方法(150629)

Transcription:

COP21 への約束草案作成に向けた わが国の取組み Japanese Perspectives to the Nationally Determined Contributions for Global Climate Response 山地憲治 Kenji YAMAJI ( 公財 ) 地球環境産業技術研究機構 (RITE) 理事 研究所長 Director-General, Research Institute of Innovative Technology for the Earth (RITE) 平成 26 年度 ALPS 国際シンポジウム 気候変動問題のための実効性ある取組みと評価 -COP21 に向けて - 2015 年 2 月 27 日 @ 大手町サンケイプラザ 東京 1

過去 10 年間におけるわが国の地球温暖化対策の経緯 2005 年 : 京都議定書の発効 (2 月 ); 京都議定書目標達成計画を閣議決定 (4 月 ) 2007 年 5 月 : 美しい星 50(Cool Earth 50) :2050 年までに世界の温室効果ガス排出量半減を提唱 2009 年 9 月 : 鳩山首相が 2020 年の排出削減目標として 90 年比 25% 削減を表明 2010 年 6 月 : 第 3 次エネルギー基本計画 ;2030 年の電源構成としてゼロエミッション電源比率 70%( 内訳は原子力 50% 再生可能エネルギー 20%) 2012 年 4 月 : 環境基本計画に 2050 年までに 80% の温室効果ガス削減を記載 2013 年 9 月 : 環境エネルギー技術革新計画を取りまとめ 2013 年 11 月 :COP19 にて原子力による削減効果を見込まない現時点での目標という位置付けで 2020 年の削減目標を 2005 年比 3.8% 減に修正 2014 年 4 月 : 第 4 次エネルギー基本計画を閣議決定 民主党への政権交代 福島原子力事故 自公政権の復帰 2014 年 10 月 :ICEF(Innovation for Cool Earth Forum) を東京にて開催 2

京都議定書 ( 第 1 約束期間 ) の目標は超過達成したが 温室効果ガス排出量の急増 1. 原発が停止した結果 電力分野の温室効果ガス排出量は 2010 年度に比べ 1.1 億トン増加 これは日本の温室効果ガス排出総量の約 1 割に相当する水準 一方 電力分以外の温室効果ガス排出量は 2010 年度に比べ 0.3 億トン減少 14 13 12 11 10 9 4 3 温室効果ガス排出量の推移 2008 年度 2009 年度 2010 年度 2011 年度 2012 年度 エネ起 CO2 排出量 11.4 10.8 11.2 11.7 12.1 +0.5 +0.8 うち電力分 4.0 3.6 3.7 4.4 4.9 +1.1 +0.7 うち電力分以外 7.4 7.2 7.5 7.3 7.2 0.2 0.3 5 年平均実排出 +1.4% 森林吸収 -3.9% 京メカ -5.9% 合計 -8.4% 出典 日本の温室効果ガス排出実績 ( 環境省 ) 電気事業連合会 電気事業における環境行動計画 (2009 年度版から 2013 年度版 ) より作成 3

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CO 2 の部門別排出量 ( 電気 熱配分後 ) の推移 ( カッコ内の数字は各部門の 2013 年度排出量の 2005 年度排出量からの増減率 ) 5

使用端 CO2 排出原単位の推移 ( 一般電気事業者 10 社計 他社受電を含む ) 6

地球温暖化対策の国際交渉の流れ 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 2020 年 2020 年以降の取組み 2020 年までの取組み カンクン合意京都議定書 将来枠組みの議論 (ADP) COP 19 COP 20 COP 21 カンクン合意の実施 ( 日本は現時点の目標として 2005 年度比 3.8% 減を登録 ) 第 1 約束期間 (~2012 年 ) すべての国は 2015 年の COP21 に十分先立って約束草案を提示 気候サミット (2014 年 9 月 ) ポーランド COP21 で採択 第 2 約束期間 (2013 年 ~2020 年 ) ( 日本は不参加 ) ペルー フランス 各国による批准 締結 全ての国が参加する法的枠組み発効 実施 7

合同専門家会合 ( 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会と産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループとの合同会合 ) における審議状況 第 1 回 (2014 年 10 月 24 日 ): 地球温暖化対策 国際交渉の現状 ; エネルギー政策の現状 第 2 回 (2014 年 11 月 12 日 ):IPCC 第 5 次統合報告書 ; 非エネルギー起源温室効果ガス対策 ; 低炭素社会実行計画 第 3 回 (2014 年 12 月 5 日 ): エネルギー需要対策 ; 国民運動 第 4 回 (2015 年 1 月 23 日 ): エネルギー供給対策 ( 同日午前には親会議である中央環境審議会地球環境部会と産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会の合同会合も開催された ) 8

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現行エネルギー基本計画における原子力の位置づけ 1 安全性の確保を大前提に エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源 2 規制基準に適合すると認められた場合には その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める 3 原発依存度は可能な限り低減させる その方針の下で 確保していく規模を見極める - 廃炉の制度整備 ( 地元対応を含む ): 会計制度 L1 廃棄物処分ルール 40 年運転制限制の見直し - 競争環境下での原子力維持 ( フロント側 ): 規制や政策の変更に伴うストランデッドコストの処理 新設投資環境整備 原子力損害賠償制度の見直し - サイクルバックエンド問題 : 使用済燃料貯蔵 六ヶ所再処理 HLW 処分 高速炉 - 技術 人材維持 - 国民 自治体との信頼関係構築 - 世界の原子力平和利用と核不拡散への貢献 16

原子炉 40 年運転制限制の影響 1. 現存する全ての原子炉が 40 年で運転終了するとすれば 2028 年に設備容量が現在の半分 2036 年に現在の 2 割を切り 2049 年にはゼロとなる 2.60 年で運転終了するとすれば 2048 年に現在の半分 2056 年に現在の 2 割を切り 2069 年にはゼロとなる 設備容量 (kw) 5,000 4,500 28.6% :2010 年の原子力比率 ( 発電電力量ベース ) ( 前提条件 : 廃炉決定済みの炉を除く全ての炉 48 基 ) 4,000 3,500 3,000 2,500 現在の約半分 60 年で運転終了する場合 2,000 1,500 1,000 40 年で運転終了する場合 現在の約 2 割 500 0 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024 2026 2028 2030 2032 2034 2036 2038 2040 2042 2044 2046 2048 2050 2052 2054 2056 2058 2060 2062 2064 2066 2068 2070 17 17

現行エネルギー基本計画における再生可能エネルギーの位置づけ 1 ( 新エネルギー小委員会の資料に基づく ) 第 2 章エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針第 2 節各エネルギー源の位置づけと政策の時間軸 (1) 再生可能エネルギー 現時点では安定供給面 コスト面で様々な課題が存在するが 温室効果ガスを排出せず 国内で生産できることから エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で 重要な低炭素の国産エネルギー源 第 3 章エネルギーの需給に関する長期的 総合的かつ計画的に講ずべき施策 第 3 節再生可能エネルギーの導入加速 ~ 中長期的な自立化を目指して~ 2013 年から3 年程度 導入を最大限加速していき その後も積極的に推進 再生可能エネルギー等関係閣僚会議を創設し 政府の司令塔機能強化 関係省庁間連携を促進 これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準( 注 ) の導入を目指し エネルギーミックスの検討に当たっては これを踏まえる ( 注 )2009 年 8 月に策定した 長期エネルギー需給見通し ( 再計算 ) (2020 年の発電電力量のうちの再生可能エネルギー等の割合は 13.5%(1,414 億 kwh)) 及び 2010 年 6 月に開催した総合資源エネルギー調査会総合部会 基本計画委員会合同会合資料の 2030 年のエネルギー需給の姿 (2030 年の発電電力量のうちの再生可能エネルギー等の割合は約 2 割 (2,140 億 kwh)) 固定価格買取制度の適正な運用を基礎としつつ 環境アセスメントの期間短縮化等の規制緩和等を今後も推進するとともに 低コスト化 高効率化のための技術開発 大型蓄電池の開発 実証や送配電網の整備などの取組を積極的に推進 1. 風力 地熱の導入加速に向けた取組の強化 風力 環境アセスメントの迅速化 地域内送電線整備を担う事業者の育成 広域的運営推進機関が中心となった地域間連系線の整備 大型蓄電池の開発 実証 低コスト化に向けた技術開発等を推進 洋上風力は 2014 年度に固定価格買取制度の新たな価格区分を創設 浮体式洋上風力は 世界初の本格的な事業化を目指し 福島沖や長崎沖で浮体式洋上風力の実証を進め 2018 年頃までにできるだけ早く商業化 地熱 投資リスクの軽減 環境アセスメントの迅速化 地域と共生した持続可能な開発等を推進 18

現行エネルギー基本計画における再生可能エネルギーの位置づけ 2 第 3 章エネルギーの需給に関する長期的 総合的かつ計画的に講ずべき施策 第 3 節再生可能エネルギーの導入加速 ~ 中長期的な自立化を目指して ~ 2. 分散型エネルギーシステムにおける再生可能エネルギーの利用促進 木質バイオマス等 大きな可能性を有する未利用材の安定的 効率的な供給により 木質バイオマス発電 熱利用を 森林 林業施策等や農山漁村再生可能エネルギー法等を通じて積極的に推進 中小水力 河川法改正で水利権手続の簡素化等が図られたところであり 今後 積極的な導入拡大を目指す 太陽光 遊休地や学校 工場の屋根の活用など 地域で普及が進んでおり 引き続き こうした取組を支援 再生可能エネルギー熱 熱供給設備の導入を支援 バイオ燃料の利用 ( 輸入が中心となっているバイオ燃料については 国際的な動向や次世代バイオ燃料の技術開発の動向を踏まえつつ 導入を継続する 2 章での記述 ) 3. 固定価格買取制度の在り方 固定価格買取制度は 安定的かつ適切な運用により制度リスクを低減 固定価格買取制度等の再生可能エネルギー源の利用の促進に関する制度について 再生可能エネル ギーの最大の利用促進と国民負担抑制を最適な形で両立させる施策の組合せを構築することを軸に総 合的に検討 4. 福島の再生可能エネルギー産業拠点化の推進 浮体式洋上風力の実証研究に加え 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所 を開所す るなど 再生可能エネルギー産業拠点化を推進 19

再生可能エネルギー ( 大規模水力除く ) 発電設備の導入状況について 2012 年 7 月の固定価格買取制度開始後 本年 3 月末までに 新たに運転を開始した設備は約 895.4 万 kw( 制度開始前と比較して約 4 割増 ) 経済産業大臣の認定を受けた設備は約 6,864 万 kw 現在 固定価格買取制度の認定を受けた設備について 都道府県別に認定状況と運転開始状況を公開しているところであるが より詳細な情報の公開 ( 市町村別 発電設備の名称 所在地 出力規模 設置者等 ) が課題 再生可能エネルギー発電設備の種類 <2014 年 3 月末時点における再生可能エネルギー発電設備の導入状況 > 設備導入量 ( 運転を開始したもの ) 認定容量 固定価格買取制度導入前 平成 24 年 6 月末までのの累積導入量 固定価格買取制度導入後 平成 24 年度の導入量 (7 月 ~3 月末 ) 平成 25 年度の導入量 固定価格買取制度導入後 平成 24 年 7 月 ~ 平成 26 年 3 月末 太陽光 ( 住宅 ) 約 470 万 kw 96.9 万 kw 130.7 万 kw 太陽光 ( 非住宅 ) 約 90 万 kw 70.4 万 kw 573.5 万 kw 風力 約 260 万 kw 6.3 万 kw 4.7 万 kw 中小水力 約 960 万 kw 0.2 万 kw 0.4 万 kw 268.8 万 kw 6,303.8 万 k W 104.0 万 kw 29.8 万 kw バイオマス約 230 万 kw 3.0 万 kw 9.2 万 kw 156.5 万 kw 地熱約 50 万 kw 0.1 万 kw 0 万 kw 合計 約 2,060 万 kw 各内訳ごとに 四捨五入しているため 合計において一致しない場合があります 176.9 万 kw 718.5 万 kw 895.4 万 kw (619,701 件 ) 1.4 万 kw 6,864.2 万 k W (1,199,482 件 ) 20 20

2015 年 1 月 15 日の調達価格等算定委員会資料による最新データ 21

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固定価格買取制度 (FIT) の政策的位置づけ - 生産する電気の価値より高い価格で買取り 投資を促進する - 劇薬 : 導入促進効果は高いが副作用も大きい - 負担は賦課金として薄く電力消費者へ ( 大きな抵抗勢力がない ) ( 補助金と異なり税金を使わない ;RPS と異なり電力会社に負担がない ) - 導入量の制御が効かない ( 買取価格を政策変数とし これを調整して導入量制御すべきだが わが国の FIT 法のように 再エネを種別規模別に区分し それぞれに原価 + 利益で買取価格を決めると リードタイムの短い太陽電池が先行する ) - 再エネの種類を問わず均一価格で買取れば 理論的には RPS と等価になる ( 炭素税 (FIT に相当 ) とキャップ付き排出権取引 (RPS に相当 ) との関係と同じ ) 23

再生可能エネルギー普及促進の課題 大規模導入と電力系統安定化 - 送配電網の整備と広域運用 - 火力やダム式水力による出力調整 容量確保策 - 電力システム改革後の買取 小売事業? 送配電事業? 卸市場? - 蓄電池やデマンドリスポンスの活用 - 自然変動電源の出力抑制 スマートグリッド 普及のための規制緩和 - 環境アセスメントの迅速化 - 土地利用制約の緩和 ( 工場 建築関係 自然公園 農林業関係 ) - 設備保安関係基準 電力系統情報の開示 国民負担の適正化 - 自然変動電源の年間 累積導入量の上限制約 - 年間国民負担の上限制約 etc. 効率的な普及促進 - 再生可能エネルギーのポートフォリオ ( 系統連系容量制約下での最適化 ) - 競争環境の中での自律的普及 技術革新へのインセンティブ 24

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ご清聴ありがとうございました 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 Research Institute of Innovative Technology for the Earth 26