あい愛サポート研修会 平成 25 年 4 月 28 日 あい愛サポート西支援センター 青木日出夫 Ⅰ 事例研究 別紙 ( 遺言公正証書の撤回と死後事務委任契約の解除 ) Ⅱ 遺言 相続 成年後見に関する諸問題 こんな時あなたはどう対処しますか? 問題提起 1. 遺言執行者の責務について 民法 1011 条には遅滞なく相続財産の目録を作成し 相続人に交付しなければならない とあります さて 民法 1011 条にある相続人とは相続人全員なのでしょうか? それとも 遺言書に記載された相続人や利害関係者だけなのでしょうか? 遺言執行者である行政書士 X( あなた ) は財産目録等を誰に交付しますか? 民法 1011 条 ( 相続財産の目録の作成 ) 同 1015 条 ( 遺言執行者の地位 ) 弁護士 司法書士等の見解 弁護士は 平成 19 年 12 月 3 日東京地裁判決 新たな疑問 全員に知らせられないケースも ( 私見 ) 問題提起 2. 遺言者 A は 生前最も A の面倒を見てくれた友人 B に遺産の全部を遺贈する旨の遺言をし 遺言執行者として行政書士 X( あなた ) を指定しました A の相続人は 長男 長女です X が遺言を執行しようとしたところ 長男 長女から遺留分減殺請求の通知がなされました X( あなた ) はどのように対処しますか? また 遺留分減殺請求への対処が遺言執行の職務権限に含まれるでしょうか? 遺言執行者の職務権限 遺言執行者としての対処方法の選択肢は 3 つあると考えられる (1) (2) (3) 1
遺言執行者は相続人の代理人( 民法第 1015 条 ) 最判昭和 30.5.10 遺言執行者の就任 辞任 解任とその効果遺留分を侵害された相続人等から その遺言内容と執行に不満がでて強烈な遺産争いに巻き込まれることもある 事前に就任を辞退するのも 1 つの選択肢 一旦就任したら 正当事由があり 家裁の許可が無いと辞任が認められない また 強烈な紛争事案では 遺言執行者の解任請求が申し立てられることもある 解任の効果は? 問題提起 3. 遺言執行者がいない場合 相続人全員の同意があれば遺言と異なる遺産分割を成立されることができるといわれています では 遺言執行者がいる場合においても 相続人全員の同意があれば 遺言と異なる遺産分割を成立させることができるのでしょうか? 遺言執行者である行政書士 X( あなた ) はどう判断しますか? 遺言執行者の権利義務( 民法 1012 条 ) 遺言の執行の妨害行為の禁止( 民法 1013 条 ) 遺言執行者は その相続財産の遺言執行について専属的権限を有しており 相続人は相続財産を処分する権限が無いので 遺言執行者を遺産分割調停に参加させる必要がある ( 注釈相続法 ( 上 ) ) 遺言執行者が同意する場合実務においては--- ( 実務解説遺言執行 P62) 遺言執行者が同意しない場合 (1) 無効説東京地判平成元年 2 月 27 日大阪地判平成 6 年 11 月 7 日 (2) 有効説 ( 設問解説相続法と登記 ) 東京地判平成 13 年 6 月 28 日東京地判平成 6 年 11 月 10 日民法 986 条遺贈の放棄 あなたはどっち? 弁護士鬼丸論文 遺言執行の法律と実務 ( 私見 ) 2
* 遺言執行者が遺言の解釈及び執行上の問題点を整理 解決するために働きかけたことにより成立した相続人 受遺者 遺言執行者間の合意東京地判昭和 63 年 5 月 31 日 相続させる 旨の遺言がされている場合には 直ちに当該相続人に相続により所有権が帰属することになり 遺産分割の対象となる遺産ではなくなる * 特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言は 遺産分割方法の指定 ( 最判平成 3.4.19) 家裁に遺産分割申立があっても実質的な手続はできない ( 遺産分割 遺留分の実務 ) 遺言執行者がある場合 とは 遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前をも含むものと解されている 最判昭和 62.4.23 今後の課題遺言執行者と登記東京地判平成 13.6.28 問題提起 4. 民法 7 条 ( 後見開始の審判 ) の中で 申立人に検察官が含まれています 行政書士 X( あなた ) は どのような場合に検察官に申立てを依頼しますか? その際の申立て費用は どうなりますか?( 誰が負担するのですか?) また 民法 7 条には市町村長が申立人に入っていませんが 申立てができる根拠は何ですか? 成年後見関係事件の概況 ( 最高裁 H23/1 月 ~12 月 ) 福岡地方検察庁 家事手続法第 28 条 3 項 ( 非訟事件手続法第 26 条 3 項 ) ( 手続費用の負担 ) 日本成年後見法学会( 新井理事長 ) 市町村長申立ての根拠 (1) (2) (3) 福祉を図るために特に必要があると認めるとき 3
問題提起 5. 行政書士 X( あなた ) は A の保佐人をしています この度 被保佐人 A の親族に相続が発生し A も相続人となることになりました 保佐人 X( あなた ) には遺産分割の代理権が付与されています 一方 遺産の分割については民法 13 条に同意権として列挙してあります 保佐人 X( あなた ) は 被保佐人 A が遺産分割協議を行うことに同意すべきですか それとも保佐人として代理権を行使して自ら遺産分割協議に参加すべきですか? 保佐人であるあなたはどのように判断しますか? 保佐開始申立時に 代理行為目録 ( 民法 876 条の 4 第 1 項 2 項 3 項 ) 民法 13 条 1 項 6 号 実務では ( 私見 ) 被保佐人が保佐人の同意を得ないで遺産分割をした場合保佐人は 民法 13 条 3 項 問題提起 6. A は姉 B の法定後見人です しかし A 自身も高齢となり今後のことを考え 行政書士 X( あなた ) と任意後見契約を締結しました A が死亡したり 認知症になった時 B はどうなるのでしょうか? また X( あなた ) が A よりも先に死亡した場合はどうなるのでしょうか? 任意後見人の死亡後も任意後見による支援が継続できる方法がありますか? 任意後見人の死亡により任意後見契約は終了 任意後見監督人死亡による終了の登記 遺族に事務終了の報告家裁に監督業務の終了報告 予め 2 つの任意後見契約を締結しておく問題点後の任意後見契約について 先の任意後見人が死亡した時 ( 任意後見契約が終了した時 ) に任意後見人を選任する という条件をつけると 法定停止条件以外の条件を付けたことになり 任意後見契約自体が無効となる 複数の任意後見契約について同時に任意後見契約を発行し其々任意後見監督人を選任問題点他方の任意後見人も対外的に任意後見人としての責任を負うことになる また 代理権の共同使用を定めていると 4
では法人を任意後見受任者に? 疑問点 一人の任意後見人が死亡すると任意後見契約全体が終了 任意後見制度の改善 改正の提言 ( 日本成年後見法学会 平成 24 年 7 月 ) 3. 予備的な任意後見受任者の定めを認めること 5. 任意後見監督人であった者の法定後見申立権の創設 問題提起 7. 本年度 4 月から 子や孫に対し多額の教育資金を一括贈与しても非課税で済む新制度がスタートしました 行政書士 X( あなた ) はあい愛相談会でこの教育資金贈与の非課税制度を使った相続税対策の相談を受けました さて この制度は相続税増税に対して有効な手段となるのでしょうか? あなたは相談者に対してどのような回答をし またアドバイスをしますか? 平成 25 年度税制改正大綱 ( 二資産課税 3 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 p49) 平成 25 年 4 月 1 日から平成 27 年 12 月 31 日までの間 条件( 入口 ) (1) 受贈者は ( ) 歳未満 (2) 受贈者 1 人につき ( ) 万円まで (3) 教育資金に充てるため ( 学校以外は ( ) 万円 ) (4) 直系尊属から (5) 金融機関と契約 ( 教育資金口座の開設 ) 教育資金非課税申告書 条件( 出口 ) (1) 教育資金口座からの引出しは教育資金支払のみ領収書及びその事実を証する書類の提出 < 教育資金とは?> * 学校に対して直接支払われる金銭等 ➀ 入学金 授業料 入園料 保育料 施設設備費 入学試験料等 ➁ 学用品の購入費 修学旅行費 学校給食費等 ( 教育に伴って必要な費用 ) * 学校以外 ➂ 教育 ( 学習塾 そろばん等 ) ➃スポーツ ( 水泳 野球 ) 文化活動 ( ピアノ 絵画 ) ➄ 教育に伴って必要な費用 (2) 教育資金口座に係る契約の終了 ➀ 受贈者が 30 歳に達したこと 30 歳の誕生日から残額に贈与税がかかる 5
➁ 受贈者が死亡したこと ➂ 口座残高がゼロになった 残額がある ➀ 又は➂の事由に該当した日の属する年の贈与税の課税価格に算入される (3) 信託銀行事務手数料や運用報酬の支払い 問題点 (1) (2) (3) (4) (5) 問題提起 8. 国民年金 ( 老齢基礎年金 ) の受給権者が死亡しました この方には未支給の年金があります 行政書士 X( あなた ) は この方の配偶者から相続手続きを依頼されました さて 未支給年金は相続財産になるのでしょうか? 配偶者に未支給年金の請求権があるのでしょうか? また 相続税の課税対象になるのでしょうか? あなたはどう対処しますか? 相続税法第 3 条第 1 項第 2 号 6 号所得税基本通達 34-2 国民年金法第 16 条 18 条 19 条最高裁判決 ( 平成 7 年 11 月 7 日 ) 問題提起 9. 独居の A さんが多額の財産を遺して亡くなりました A さんは全ての財産を町内会に遺贈するという遺言を遺していました 町内会長の B さんより相談を受けた行政書士 X( あなた ) はどう対処しますか? また 町内会に相続税がかかりますか? 相続税法第 12 条第 1 項 3 号 第 66 条第 1 項 6