スポーツ産業学研究,Vol.22,No.1(2012),91 ~ 96. 91 研究ノート Jリーグクラブにおけるユース出身選手に関する調査 * 兼清文彦 * 平田竹男 Research on Players from Youth Academy in J-League Clubs Fumihiko KANEKIYO * and Takeo HIRATA * Abstract The purpose of this research was to find out the performance of the players from youth teams in Japanese Professional Football League (J-League)clubs. Firstly, to measure the performance of the players from youth teams, we researched the J-League s official website referring to the players participation records. Secondly, we used the Youth Development Index (YDI)and classified the players from youth teams into three groups (starters, substitutes, others). In this research, we used YDI as the number of the players from youth teams who are starters or substitutes in each club. As a result, it was found that YDI of the entire J-League clubs rose between the 2002 season and the 2010 season. The average YDI of J-League clubs increased from 1.22 (2002 season)to 2.52 ( 2010 season). It can be said that youth development achievement has gone up in the entire J-League. On the other hand, it was found that the others (the players who were not in YDI)who scarcely participate in the games in top teams increased more than YDI. It was shown that the number of the others increased from 1.33 (2002 season)to 4.11 (2010 season). Thus it can be said that this is a problem to be solved in the entire J-League. Key words:j-league, Player Participation Record, Youth Development Index 1. 序論日本プロサッカーリーグ ( 以下,Jリーグ) に所属するクラブ ( 以下,Jクラブ) は, アカデミー ( 第 2 種, 第 3 種及び第 4 種のチームの総称 ) と呼ばれる育成組織を持ち, サッカー教室などのスクール事業をはじめとする選手育成を行っている.Jリーグによれば, アカデミーはJリーグプレーヤーの輩出を目的とし, 日本サッカーの強化につながるよう活動を推進している 1). 日本サッカー協会 ( 以下,JFA) もまた, 日本サッカーが世界と対等に戦っていくた めに, 三位一体の強化策を掲げ, 代表強化, 指導者養成とともに, ユース育成をそのひとつに位置づけている 2). これらのように, アカデミーにおける選手育成はJリーグや日本サッカーの将来に関わる重要な事業の一つであろう.Strattonら 3) は, ユース育成はクラブだけでなく, 国 ( 代表チーム ) にも関わるものであり, ユース育成を強化していくことは, 直接的ではないにしろ, 将来の代表チームにも利益をもたらすと述べている. しかしながら,Jクラブの事業内容を研究した永冨ら 4) によると,20 クラブにおいて,( アカデミーの活動領域に含 原稿受付 2011 年 11 月 1 日原稿受諾 2011 年 12 月 15 日 * 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科 169-8050 東京都新宿区西早稲田 1-6-1 * Graduate School of Sport Sciences, Waseda University, 1-6-1, Nishi-Waseda, Shinjuku-ku, Tokyo, Japan (169-8050)
92 J リーグクラブにおけるユース出身選手に関する調査 まれる ) スクール 教室事業の数が全体の事業の中で最も少ないことが明らかになっている. 以上のように,JリーグやJFAは日本サッカーの強化につなげるためにアカデミーが存在していると認識している一方で,Jクラブが選手育成活動に積極的であるとは言えない. また, Jクラブのアカデミーに関しては, これまであまり研究対象として取り上げられていない. その理由としては,Jクラブのアカデミーに関するデータが公開されていないことが一因であろう. 確かに,Jリーグのホームページでは, スペインやブラジルの育成環境に関する海外研修レポートや,Jクラブのアカデミーの活動報告は行われている 5). しかし, アカデミーのJリーグプレーヤーを輩出するという目的に対してどれほど達成しているのかに関しては, 情報公開がなされていない.Jリーグプレーヤーの輩出というアカデミーの事業目的を達成しているのかを評価するためには, 各クラブが育成実績を公開することが望まれる. 一方, 海外では, プロサッカークラブのユース育成に対する注目が高まっており 6), 近年, ユース育成に関する研究や文献が数多く見られる. ユース育成とは, 選手の能力を高め, 彼らの潜在能力を引き出すものである 7), と言われている. また, ユース育成には, 練習や指導方法, スポーツ医学だけでなく, 組織の効率的な運営など様々な要素が絡んでおり 8), ユース育成はクラブの経営にも関わるものである. 以上のように, プロサッカークラブにとって, ユースチームで時間や費用をかけて育成した選手 ( 以下, ユース出身選手 ) がトップチームに昇格することが, クラブの経営においても望ましいと言える. ただし, ユース出身選手がトップチームにおいて期待通りの活躍ができるとは限らない 9). したがって, アカデミーの役割を考えると, 選手を育成することと同時に, トップチームで活躍できる選手を輩出することがより重要であろう. しかしながら, 前述したように,Jクラブの選手育成に関しては, これまであまり研究対象として取り上げられておらず, アカデミーからトップチームに輩出した選手に関する研究もない. そこで, 本研究では,Jクラブを分析対象とし, ユース出身選手がトップチームにおいてどれほど活躍しているのかを明らかにすることを目的とする. 2. 研究手法本研究では,Jクラブに所属する選手がどれほど活躍しているのかを明らかにするために, Jリーグのホームページで公開されている試合記録 10) を参考にして出場時間を調査した. 得点数やアシスト数はポジションによって偏ってしまう可能性が考えられるので, 本研究においては, 選手の活躍状況を判断するための指標として出場時間を用いた. まず, 日刊スポーツJリーグプレーヤーズ名鑑 11) のプロフィールを参照しながら,Jリーグの試合記録に登録された選手のうち, 各クラブのユース出身選手数を調査した. なお, 本研究においては,Jリーグの試合に出場可能な全ての選手を対象としているので, トップチームに追加登録されたユース出身選手や,Jクラブのユースチームに所属しながらJリーグの試合に出場することが可能な2 種登録選手も, ユース出身選手に含めた. それらの選手を把握するために,Jリーグのホームページのニュースリリース 12) を参照した. 次に, 出場時間がチーム内 11 位以内の選手をレギュラークラス, 同じく12 位から18 位以内の選手をサブメンバークラスとして, それぞれのクラスに含まれるユース出身選手の人数を算出した (1,2). 出場時間が18 位の選手までをサブメンバークラスとしたのは, スターティングメンバー (11 人 ) にベンチ入り可能な人数 (7 人 ) を含めると18 人となるためである. 本研究では, ベンチ入り可能メンバーを含む18 人の選手を各クラブにおける戦力要因と見なし, 各クラブがトップチームに輩出したユース出身選手のうち, どれほどの選手が戦力要因に含まれるのかを調査した. さらに,Jクラブにおける1と2の合計値
スポーツ産業学研究,Vol.22,No.1(2012),91 ~ 96. 93 表 1 ユース出身選手数 輩出数 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 平均 東京 V 5 8 11 8 15 8 6 11 15 9.67 横浜 FM 7 6 5 6 7 14 13 13 16 9.67 G 大阪 9 8 7 10 8 8 8 10 17 9.44 広島 3 4 9 9 9 12 12 13 12 9.22 清水 8 7 8 9 8 9 6 6 7 7.56 柏 5 6 6 7 6 6 4 14 12 7.33 磐田 2 3 3 6 9 9 8 8 5 5.89 F 東京 2 3 3 3 2 6 4 6 16 5.00 浦和 1 1 3 2 4 5 5 10 12 4.78 千葉 4 6 6 5 7 4 2 3 6 4.78 京都 7 4 3 3 3 3 3 3 7 4.00 鹿島 4 2 3 4 6 5 2 4 3 3.67 湘南 4 2 3 3 2 5 4 4 6 3.67 名古屋 1 1 3 2 3 5 7 8 3 3.67 大分 0 1 1 2 4 5 4 6 6 3.22 札幌 1 1 3 4 3 3 2 4 7 3.11 C 大阪 3 1 1 2 1 3 3 2 7 2.56 福岡 1 0 1 1 1 1 2 4 5 1.78 大宮 1 1 1 1 0 1 1 5 4 1.67 神戸 0 0 0 0 2 2 2 2 3 1.22 川崎 F 0 0 0 0 1 2 3 1 3 1.11 新潟 0 0 0 0 0 0 3 3 4 1.11 山形 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1.00 仙台 0 1 1 0 0 0 0 1 0 0.33 横浜 FC 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0.11 甲府 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0.11 水戸 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0.00 平均 2.56 2.48 3.04 3.26 3.78 4.33 3.89 5.30 6.63 をユース育成指数 YDI(Youth Development Index) と定義し, 戦力要因となる選手に占めるユース出身選手数を算出したうえで, ユース出身選手がトップチームのレギュラークラスなのか, サブメンバークラスなのかを分析した. 分析対象とする期間は,Jリーグのホームページにおいて, 試合記録の情報開示が開始された2002 年度から2010 年度までの9 年間とし, それぞれの年度について分析を行った. 分析対象とするJクラブは,2002 年度時点でJリーグに加盟していた全 27クラブ ( コンサドーレ札幌, ベガルタ仙台, モンテディオ山形, 鹿島アントラーズ, 水戸ホーリーホック, 浦和レッズ, 大宮アルディージャ, ジェフ千葉, 柏レイソル, FC 東京, 東京ヴェルディ1969, 川崎フロンターレ, 横浜 Fマリノス, 横浜 FC, 湘南ベルマーレ, ヴァンフォーレ甲府, アルビレックス新潟, 清水エスパルス, ジュビロ磐田, 名古屋グランパス, 京都サンガFC, ガンバ大阪, セレッソ大阪, ヴィッセル神戸, サンフレッチェ広島, アビスパ福岡, 大分トリニータ ) とした. 3. 結果 3.1 ユース出身選手数表 1に,Jクラブにおける2002 年度から2010 年度までのユース出身選手数を示した. 東京ヴェルディと横浜 Fマリノスのユース出身選手数の平均値が最も高く, 直近の2010 年度においては, ガンバ大阪のユース出身選手数が最も多かった. 全クラブの平均を見ると,2002 年度から2010 年度にかけて, ユース出身選手数が増加していることが示された.2002 年度と2010 年度
94 J リーグクラブにおけるユース出身選手に関する調査 表 2 YDI( レギュラークラス, サブメンバークラス ) YDI 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 平均 G 大阪 5 (5, 0) 6 (5, 1) 6 (4, 2) 7 (5, 2) 5 (4, 1) 6 (3, 3) 5 (3, 2) 4 (3, 1) 6 (5, 1) 5.56 広島 3 (3, 0) 3 (3, 0) 3 (3, 0) 5 (2, 3) 4 (4, 0) 8 (4, 4) 9 (6, 3) 8 (4, 4) 7 (5, 2) 5.56 東京 V 3 (1, 2) 5 (2, 3) 5 (1, 4) 6 (2, 4) 4 (3, 1) 3 (3, 0) 4 (2, 2) 6 (2, 4) 8 (5, 3) 4.89 横浜 FM 2 (0, 2) 3 (0, 3) 3 (2, 1) 5 (3, 2) 4 (3, 1) 5 (5, 0) 4 (3, 1) 6 (2, 4) 6 (3, 3) 4.22 清水 5 (3, 2) 3 (2, 1) 5 (3, 2) 4 (1, 3) 4 (2, 2) 4 (1, 3) 3 (2, 1) 5 (3, 2) 3 (1, 2) 4.00 千葉 3 (2, 1) 4 (3, 1) 5 (3, 2) 4 (3, 1) 5 (3, 2) 4 (3, 1) 2 (2, 0) 3 (3, 0) 4 (2, 2) 3.78 柏 3 (2, 1) 3 (2, 1) 3 (3, 0) 3 (2, 1) 2 (1, 1) 4 (2, 2) 3 (2, 1) 4 (2, 2) 5 (4, 1) 3.33 磐田 1 (0, 1) 1 (0, 1) 2 (0, 2) 3 (1, 2) 3 (2, 1) 3 (2, 1) 3 (2, 1) 3 (1, 2) 4 (3, 1) 2.56 F 東京 0 2 (0, 2) 2 (1, 1) 2 (1, 1) 2 (1, 1) 1 (1, 0) 2 (1, 1) 3 (2, 1) 4 (3, 1) 2.00 鹿島 2 (1, 1) 1 (1, 0) 2 (1, 1) 2 (2, 0) 2 (2, 0) 2 (2, 0) 2 (1, 1) 2 (2, 0) 2 (2, 0) 1.89 湘南 1 (1, 0) 2 (2, 0) 2 (1, 1) 3 (0, 3) 1 (0, 1) 2 (0, 2) 2 (1, 1) 3 (1, 2) 1 (1, 0) 1.89 京都 3 (2, 1) 2 (2, 0) 1 (1, 0) 1 (1, 0) 2 (2, 0) 2 (2, 0) 2 (1, 1) 1 (1, 0) 1 (1, 0) 1.67 札幌 0 1 (1, 0) 2 (0, 2) 1 (0, 1) 2 (1, 1) 2 (1, 1) 2 (1, 1) 2 (2, 0) 2 (1, 1) 1.56 大分 0 0 0 1 (1, 0) 3 (2, 1) 2 (1, 1) 1 (1, 0) 3 (2, 1) 3 (3, 0) 1.44 浦和 0 1 (0, 1) 0 0 0 0 2 (0, 2) 4 (1, 3) 5 (1, 4) 1.33 名古屋 1 (0, 1) 1 (0, 1) 1 (0, 1) 1 (0, 1) 1 (1, 0) 3 (1, 2) 2 (0, 2) 2 (1, 1) 0 1.33 福岡 0 0 1 (0, 1) 1 (1, 0) 1 (0, 1) 1 (1, 0) 2 (1, 1) 2 (2, 0) 2 (0, 2) 1.11 大宮 1 (0, 1) 0 1 (1, 0) 1 (0, 1) 0 0 1 (0, 1) 2 (1, 1) 2 (1, 1) 0.89 山形 0 0 1 (0, 1) 0 1 (0, 1) 1 (1, 0) 1 (1, 0) 1 (1, 0) 1 (1, 0) 0.67 C 大阪 0 0 1 (0, 1) 0 0 1 (1, 0) 2 (0, 2) 1 (0, 1) 1 (1, 0) 0.67 新潟 0 0 0 0 0 0 0 1 (0, 1) 1 (1, 0) 0.22 神戸 0 0 0 0 1 (1, 0) 0 1 (0, 1) 0 0 0.22 仙台 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00 水戸 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00 川崎 F 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00 横浜 FC 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00 甲府 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00 平均 1.22 1.41 1.70 1.85 1.74 2.00 2.04 2.44 2.52 を比較すると,Jクラブのユース出身選手数の平均は2.56から6.63へと約 2.5 倍に増加しており, また, トップチームに選手を輩出していないクラブ数を見ると,2002 年度から2010 年度へかけて,8から2へと減少していることが明らかになった. 3.2 YDI 本研究においては, 出場時間がチーム内で 18 位に含まれるユース出身選手の人数をYDIとし,11 位以内の選手をレギュラークラス,12 位から18 位までの選手をサブメンバークラスと位置づけた. 表 2に,Jクラブにおける2002 年度から2010 年度までのYDIと,YDIの内訳( レギュラークラス, サブメンバークラス ) を示した. ガンバ 大阪とサンフレッチェ広島の平均 YDIが最も高いことが分かった. また, ガンバ大阪のYDIの内訳を見ると,2002 年度から2010 年度のYDIにかけて, レギュラークラスの人数がサブメンバークラスの人数を上回っていることが明らかになった (2007 年度は同数 ). 全クラブの平均では,2002 年度から2010 年度にかけて,YDI が上昇していることが示された.2002 年度と 2010 年度を比較すると,J クラブの平均 YDIは, 1.22から2.52へと約 2 倍に増加しており, また, YDIが0であるクラブ数は,2002 年度から2010 年度にかけて,14から7へと半減していることが明らかになった. 3.3 ユース出身選手の内訳図 1に,Jクラブにおける2002 年度から2010
スポーツ産業学研究,Vol.22,No.1(2012),91 ~ 96. 95 7.00 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 0.00 4.11 2.85 2.33 2.04 1.85 1.33 1.41 1.33 1.07 1.11 0.89 0.48 0.56 0.81 0.93 0.56 0.74 0.93 0.74 0.85 0.89 0.93 1.19 1.26 1.11 1.33 1.63 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 YDI( レギュラー ) YDI( サブメンバー ) その他 図 1 ユース出身選手 (J クラブ平均 ) の内訳 年度までのユース出身選手の内訳 ( レギュラークラス, サブメンバークラス, その他 ) の推移を年度ごとの平均値で示した. レギュラークラスとサブメンバークラス, その他 ( のユース出身選手 ) を足しあわせた値が,Jクラブのユース出身選手数の平均値となる. ユース出身選手の内訳を見ると,2002 年度から2010 年度にかけて, レギュラークラスとサブメンバークラスの選手が増加していることが明らかになった. 2002 年度と2010 年度を比較すると, レギュラークラスは0.74から1.63へ, サブメンバークラスは0.48から0.89へと, ともに約 2 倍に増加していることが示された. また, その他の選手数の推移を見てみると,2002 年度から2010 年度にかけて,1.33から4.41へと約 3 倍に増加していることが明らかになった. 4. 考察本研究により,2002 年度から2010 年度にかけて,Jクラブのユース出身選手数が増加していること, ユース出身選手を輩出していないクラブ数が減少していることが明らかになった. また,2002 年度と2010 年度におけるYDI( レギュラークラスとサブメンバークラスの合計 ) を比較すると,Jクラブ全体で約 2 倍に増加していること,YDIが0であるクラブが半減していることが明らかになった. 以上のことから,Jクラブ全体として, ユース出身選手の 数 ( 量 ) も, 選手の 質 も高まっており, ユース育成のレベルが向上していると考えられる. これらをJリーグにおけるユース育成の実績として評価することができよう. ただし, ユース出身選手数の内訳を分析したところ, その他のユース出身選手数が増加傾向にあることが示された. 本研究においては,YDIに含まれるレギュラークラスとサブメンバークラスを戦力要因と見なし, 分析を行った. つまり, その他のユース出身選手数の増加は, 戦力要因として活躍できているとは言えないユース出身選手数の増加を示唆する. また,2002 年度と2010 年度のユース出身選手の内訳を比較すると,YDI( レギュラークラスやサブメンバークラス ) が約 2 倍の増加であったのに対し, その他のユース出身選手が約 3 倍に増加していた. このことから,Jクラブにおけるユース出身選手数は増加しているものの, 戦力要因としての活躍ができないユース出身選手が相対的に多いことが考えられる. これは, Jクラブにおけるユース育成の課題と見なすことができよう. 5. 結論本研究では,Jクラブを分析対象とし, ユース出身選手がどれほど活躍しているのかを明らかにすることを目的とした.Jリーグのホームページより選手の出場記録を参考にし, ユース
96 J リーグクラブにおけるユース出身選手に関する調査 育成指数 YDI(Youth Development Index) を用いて分析を行った. 本研究によって,2002 年度から2010 年度にかけて,Jクラブにおけるユース出身選手数が増加していること,YDI( レギュラークラスやサブメンバークラスとして活躍するユース出身選手数 ) が増加していることが明らかになった. 一方で, ユース出身選手数の内訳を見ると, レギュラークラスやサブメンバークラスのユース出身選手の増加以上に, その他のユース出身選手が増加していることが示された. 今後のJクラブのユース育成における課題としては, ユース出身選手に占めるYDI( レギュラークラスやサブメンバークラス ) を増加させること, すなわち, トップチームにおいて戦力要因となり得る選手を育成 輩出していくことであろう. 参考文献 1)Jリーグ, http://www.j-league.or.jp/aboutj/ activity/index_06.html, 2010 年 12 月 13 日閲覧. 2) 日本サッカー協会, http://www.jfa.or.jp/ training/players_first/index.html, 2010 年 12 月 13 日閲覧. 3)Stratton, G., Reilly T., Williams A.M., and Richardson D;Youth Soccer, Routeledge, 2004. 4) 永冨慎也, 藤本淳也, 古谷孝生 ;Jリーグチームのマネジメントに関する研究 -プレスリリースを用いた事業分析 -, 大阪体育大学紀要, 第 35 巻, pp.149-155, 2004. 5)Jリーグニュースhttp://www.j-league.or.jp/ document/jnews/124/vol0124.pdf, 2010 年 12 月 13 日閲覧. 6)Franks, A., Williams, A.M., Reilly, T. and Nevill, A.;Talent identification in elite youth soccer players:physical and physiological characteristics, Journal of Sports Sciences, 17, p.812, 1999. 7)Reilly, T., Williams, A.M., Nevill, A. and Franks, A.;A multidisciplinary approach to talent identification in soccer, Journal of Sports Sciences, 18, pp.695-702, 2000. 8)Maguire, J. and Pearton, R.;The impact of elite labour migration on the identification, selection and development of European soccer players, Journal of Sports Sciences, 18, pp.759-769, 2000. 9)Relvas, H., Richardson, D., Gilbourne, D and Littlewood, M.;Youth development structures, philosophy and working mechanisms of top-level football clubs:a pan-european perspective, Science and Football VI:The Proceedings of the Sixth World Congress on Science and Football (Eds T. Reilly and F. Korkusuz), pp.476-481, 2008. 10) J リーグ, http://www.j-league.or.jp/data/, 2011 年 10 月 17 日閲覧. 11)Jリーグプレーヤーズ名鑑, 2002-2010, 日刊スポーツ出版社. 12)Jリーグ, http://www.j-league.or.jp/release/, 2011 年 10 月 17 日閲覧.