2011.9 リニヤポンプについて
目次 1. 羽根車 ( クローズド羽根車 ) 開放羽根車 ( オープン羽根車 ) P.1 2. スキマ制御をするしくみ P.5 3. 圧力制御のしくみ P.7 4. インバータ方式との比較 P.13
1. 羽根車 ( クローズド羽根車 ) と開放羽根車 ( オープン羽根車 ) 1 クローズド羽根車 - 通常の遠心ポンプに使用される一般的な羽根車 - 1 前面にフタがあるため ブレードの全体は見ることはできません ブレード
1. 羽根車 ( クローズド羽根車 ) と開放羽根車 ( オープン羽根車 ) 2 オープン羽根車と羽根プレート - リニヤポンプの羽根車 - 2 前面のフタと羽根車を分離し 前面がオープンな状態なのでブレードの全体を見ることができます 弊社では前面のフタ部を 羽根プレート と呼んでいます ブレード
1. 羽根車 ( クローズド羽根車 ) と開放羽根車 ( オープン羽根車 ) 3 リニヤポンプのスキマ制御特性 (1/2) 3 オープン羽根車と羽根プレートのスキマを調整することにより ポンプ性能を変化させることができます リニヤポンプはこの特性を利用し 圧力制御を行っています
1. 羽根車 ( クローズド羽根車 ) と開放羽根車 ( オープン羽根車 ) 3 リニヤポンプのスキマ制御特性 (2/2) 4 スキマが最小の場合は通常のクローズド羽根車とほぼ同じ構造となるため ポンプ性能としては最大となります スキマが開いてくるとポンプ性能は少しずつ下がり それに伴い軸動力も下がってきます スキマが開ききった状態がポンプの最小性能となります ( ポンプによっても異なりますが スキマの動き代は約 0.2mm~30mm です )
2. スキマ制御をするしくみ 1 単段型リニヤポンプの構造 5 1 モータが回転すると 主軸及び羽根車はモータと同じ回転速度で回転します 2 羽根プレートはスピンドルを介してピストンと接続されており 軸方向にのみ動きます また 羽根車により加圧された圧力水が羽根プレート外壁に掛かるため 右向きの力 F1 がスラスト力として残ります 3 シリンダ内はピストンにより切り分けられた水室が 2 つあります 定圧室はオリフィスで絞られているため 定圧室圧力 < バランス室圧力 となっており ピストンには左向きの力 F2 がスラスト力として残ります (F1=F2 で羽根プレート静止 ) 4 パイロット弁にてバランス室の圧力をコントロールすることにより F2 の力を調整し 羽根プレートを軸方向に動かします 例えば ある位置で F1=F2 となり羽根プレートが停止していた場合 バランス室の圧力を下げる バランスくずれ F1 > F2 となる 羽根プレートは右側に移動 スキマが狭くなる 吐出圧力が上がる バランス室の圧力を上げる バランスくずれ F1 < F2 となる 羽根プレートは左側に移動 スキマがひろくなる 吐出圧力が下がる パイロット弁でコントロール
2. スキマ制御をするしくみ 2 多段型リニヤポンプの構造 6 バランス室の圧力を下げる 例えば ある位置で F1=F2 となり羽根車が停止していた場合 バランスくずれ F1 > F2 となる 羽根車は左側に移動 スキマが狭くなる 1 モータが回転すると 主軸及び羽根車はモータと同じ回転速度で回転します 2 主軸に装着されたベアリングは軸受内のホルダーに納められています ホルダーはスピンドルを介してピストンと接続されており 回転している主軸はホルダーごと 軸方向に動きます また 羽根車には ポンプから発生する軸スラスト力が左向きの力 F1 として掛かっています 3 シリンダ内はピストンにより切り分けられた水室が 2 つあります バランス室にはパイロット弁で調整された圧力が入っており ピストンに右向きの力 F2 として掛かっています (F1=F2 で羽根車静止 ) 4 パイロット弁にてバランス室の圧力をコントロールすることにより F2 の力を調整し 羽根車を主軸ごと 軸方向へ動かします 吐出圧力が上がる バランス室の圧力を上げる バランスくずれ F1 < F2 となる 羽根車は右側に移動 スキマがひろくなる 吐出圧力が下がる パイロット弁でコントロール
3. 圧力制御のしくみ 1 吐出圧力一定制御 7 例えば 左記の a 点で運転していたとします ( 単段型リニヤポンプの場合 ) 水量が Q1 から Q2 に減少した場合 水量が Q1 から Q3 に増加した場合 ポンプ性能 1 にそって運転点が b に移動するため吐出圧力上昇 ポンプ性能 1 にそって運転点が d に移動するため吐出圧力低下 P パイロット弁の主弁が押し上げられバランス室圧力が上昇 パイロット弁の主弁が押し下げられバランス室圧力が低下 羽根プレートが左側に移動しスキマ S がひろがる その結果 ポンプ性能が変化し圧力が低下していく 羽根プレートが右側に移動しスキマ S がせまくなる その結果 ポンプ性能が変化し圧力が上昇していく もとの圧力に戻った時 ( ポンプ性能 2 運転点は c) パイロット弁の主弁がもとにもどる その結果バランス室圧力も復帰し 羽根プレートが停止する もとの圧力に戻った時 ( ポンプ性能 3 運転点は e) パイロット弁の主弁がもとにもどる その結果バランス室圧力も復帰し 羽根プレートが停止する 上記のように 電気的なフィードバック制御がないことと 水圧変化を直接制御力 ( 羽根プレート 又は羽根車を動かす力 ) に利用しているため 下記の特徴があります 1. ポンプの圧力制御に電気的な計装はまったくない 2. 非常に速い応答性 3. ほとんどハンチングしませんので 圧力変動が非常に少ない 弊社では上記を自力水力制御と呼んでいます
3. 圧力制御のしくみ 2 吐出圧力一定制御 - 実際の圧力 流量変化記録 - 8 約 4 分間で 0 4350L/min 0 と水量を変化させていますが 圧力 350kPa の変動はほとんどありません
3. 圧力制御のしくみ 3 抵抗制御 9 上図の場合 理論的には管路抵抗曲線 R より上側にポンプ性能があれば 水は流れることになります 1 汎用ポンプの場合 圧力特性は e - c となります 2 リニヤポンプ ( 圧力一定 ) の場合 圧力特性は d - c となり 1 と比較すると緑斜線部の圧力エネルギーが節約されることになります 3リニヤポンプ ( 抵抗制御 ) の場合 圧力特性はa - b - cとなり 2と比較すると青斜線部の圧力ルギーが節約されることになります 上記のようにできるだけ抵抗曲線 R に近い圧力特性を実現できれば 省エネ的にも最大になります エネ
3. 圧力制御のしくみ 4 抵抗制御 - 実際の抵抗制御特性 - 10 前記のように 3 が最も省エネとなりますが 実際の運用上 管路抵抗 R にそわせるようにすると ポンプからの距離が最遠端の負荷で水量が不足する可能性があります ( 近いところに水が流れすぎ 遠いところの水が不足する ) よって 実際の運用では上図のように少し余裕をみた設定で運用しています
3. 圧力制御のしくみ 5 抵抗制御 - 抵抗制御のしくみ - 11 パイロット弁で設定した圧力は一定制御となるため そのままでは抵抗制御に利用できません 水量の変化にともなってパイロット弁の設定を変更するしくみが必要になりました そこで 弊社では電動パイロット弁を開発し 抵抗制御に使用しています 圧力上昇命令の場合 圧力下降命令の場合 制御モータを正転させ パイロット弁の設定圧力をあげる 制御モータを逆転させ パイロット弁の設定圧力をさげる パイロット弁の主弁が押し下げられ 水の通過面積が減少する パイロット弁の主弁が押し上げられ 水の通過面積が増加する バランス室の圧力が少しずつ減少し羽根プレートが右に移動 バランス室の圧力が少しずつ増加し羽根プレートが左に移動 スキマ S がせまくなり吐出圧力が上昇 スキマ S がひろくなり吐出圧力が減少 現在圧力 = 目標圧力で制御モータを停止 現在圧力 = 目標圧力で制御モータを停止
3. 圧力制御のしくみ 6 抵抗制御 - 実際の圧力 流量変化記録 - 12 B 点 (130kPa 2450L/min) から C 点 (250kPa 3550L/min) の設定で動作させています 圧力変動はほとんど見られず 水量に合わせて圧力がきれいに追従していることが判ります
4. インバータ方式との比較 (1/2) 13 項目リニヤポンプ判定インバータ方式判定 システムの構成 圧力制御方法と特徴 圧力制御の応答性 イニシャルコスト ライフサイクルコスト 対応性 圧力制御が自力水力制御のため簡素 インバータ 計装設計が不要 圧力制御部がユニット化されているため 手数がまったく掛からない 開放羽根スキマ制御 羽根のスキマが大きくなるとポンプ効率が低下する 回転数が一定のため モータ効率は低下しない 自力水力制御のため応答性に優れ 変動幅も極めて少ない 高揚程 大容量については 価格は安価となる 本体が鋳造品で肉厚が厚いため耐用年数が長い 圧力制御部がポンプに含まれているため 保守管理が容易で コストは少ない 受注生産を基本とし ユーザーの要望を 製品に反映させることができる ポンプは汎用ポンプであるが インバータ 計装が必要ゆえ 取りまとめに手間がかかる また 納品後のメンテナンスもバラバラとなる 周波数変換による回転数制御 ポンプ効率は低下しない 周波数変換により回転数を落とすにつれて 総合効率 ( モータ効率 インバータ効率 ) は低下する 慣性効果で制御に遅れが生じ 負荷変動に対し圧力変動幅も大きい 給水システムのユニット化が進み 小容量が安価になっている 汎用ポンプを使用しているが 鋼板を原材料とした小型 量産化により 耐用年数は短い傾向にある インバータに関しては半導体素子の耐久力に左右される 標準化されているため オプションに含まれない項目は製作できないことがある 故障時の対応ポンプメーカで全て対応できる インバータ故障の場合 原因が判りづらく 復旧に手間取ることがある
4. インバータ方式との比較 (2/2) 14 項目リニヤポンプ判定インバータ方式判定 コンピュータへの影響 高周波およびノイズが一切でない 汎用モータを一定回転で運転するため 騒音は汎用ポンプと同程度の低騒音 高周波およびノイズ対策が絶対条件となる 低騒音型インバータも市販されているが 汎用モータを商用電源で運転した場合より 騒音は高くなる 騒 音 省エネ効果 軸動力は基本性能圧力との比の 0.5 乗で求められ 仕様水量付近においてはモータ効率の低下がないことから 負荷 ( 流量等 ) が大きい場合に有利 軸動力は相似法則により 回転数比 ( 周波数比 ) の 3 乗で求められるが 総合効率が低下することから 負荷 ( 流量等 ) が小さい場合に有利 省エネ効果の検証をする場合 電動機入力 ( 消費電力 ) にて行う 電動機入力は 軸動力をモータ効率 ( インバータは総合効率 ) で除することで求められる リニヤポンプとインバータ方式では 各々の有利な点も含め 総合的に見るとほぼ同等