第 5 農林水産業を担う人材の確保 育成
第 5 農林水産業を担う人材の確保 育成 1 動向 (1) 新規就農者数は横ばい平成 29 年の新規就農者数は 昨年より 3 名減少の273 人であり 目標 (280 人 ) の98% となった 就農形態は近年と大きな変化はなく 農業法人等への就業者数が全体の過半 親元就農者が 4 割を占めるほか 農業次世代人材投資資金の活用により 独立 自営就農者 は平成 26 年以降約 1 割で推 移している 農業法人等就業者の定着状況は 平成 26 年に就業した者の 3 年後の定着率が約 6 割で 県新規学卒就職者 ( 高卒 ) と同程度である 新規就農者数の推移 300 285 276 263 273 251 250 200 146 135 146 153 147 150 100 100 109 50 96 93 104 0 28 30 30 22 9 H25 H26 H27 H28 H29 農業法人等就業 親元就農 独立 自営就農 資料 : 経営普及課調査 ( 各年 12 月末日現在 ) 注 : 15 歳以上 44 歳以下をカウント ただし 28 年以 前は15 歳以上 42 歳以下 独立 自営就農者 : 経営基盤がない状況から資産等を独自に調達し就農した者 (2) 林業就業者数は減少 森林整備を主体的に担っている林業認定事業体の林業就業者 ( 森林技術員 ) は減少傾向に あり 平成 28 年度は前年より 15 人減少して 532 人となった 一方で 39 歳以下の森林技術員の 比率は 32% となっており 年齢構成は若返りの傾向を示している 1000 人 認定事業体の森林技術員の推移( 新潟県 ) 認定事業体の森林技術員の推移 ( 新潟県 ) 39 歳以下 40 歳 ~59 歳 60 歳以上 39 歳以下割合 40% 800 28% 28% 29% 32% 32% 30% 資料 : 森林組合一斉調査 林政課調査 600 400 566 587 172 185 530 547 532 154 156 163 20% 認定事業体 :5 人以上の林業労働者を雇用し 雇用管理の 200 0 238 240 221 216 199 156 162 155 175 170 H24 H25 H26 H27 H28 10% 0% 改善と事業の合理化に取り組む事業体 ( 県認定 ) 林業新規就業者数の推移 年度 H24 H25 H26 H27 H28 林業新規就業者数 48 72 45 41 29 注 : 認定事業体へ就業した森林技術員 資料 : 林政課調査 - 101 -
(3) 漁業就業者は減少漁業就業者は長期的な減少傾向が続いており 平成 25 年の漁業就業者は2,579 人で平成 20 年から19.7 % 減少した 平成 29 年の新規就業者数は 69 人で 過去 5 か年平均 (73.2 名 ) を若干下回った 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 漁業就業者数の推移 8,303 7,131 6,640 6,513 6,262 5,355 4,546 3,960 3,501 3,211 2,579 S38 S43 S48 S53 S58 S63 H5 H10 H15 H20 H25 資料 : 漁業センサス 新規就業者数の推移 年 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 新規就業者数 69 72 52 54 81 75 71 68 71 69 うち中核的漁業 26 29 13 12 25 15 13 11 23 12 割合 (%) 38% 40% 25% 22% 31% 20% 18% 16% 32% 17% 資料 : 水産課調査 中核的漁業 :3トン以上の漁船を使用して行う定置網 底びき網 いか釣り 知事認可の刺網 かご漁業 2 施策の取組状況と成果 (1) 人材の確保 育成ア農業非農家出身者やU Iターン等 多様なルートからの就農を促進するため 新規就農相談センターを核とした県内外における就農相談活動を支援するとともに 先進農家等の協力を得て 高校生を含め学生への農業インターンシップ等を実施した 新規就農者の過半を占める法人就業を進めるため 就業を希望する学生と農業法人等との 就業マッチングフェア を開催し 参加した卒業予定の学生 24 人のうち6 人の就業が内定した また 既就業者に対するスキルアップとして農業機械整備研修等を実施したほか 雇用主を対象とした労務管理に関する研修会などを開催し 法人等就業者の定着を図った 新たな取組として 若手経営者候補等 23 名を対象に新潟県版農業経営塾を開講し 経営戦略や組織マネジメントなどの経営スキルの習得を通して 今後の本県農業を牽引する人材育成に取り組んだ 県農業大学校では 学生の応用力や実践力向上に向け 昨年度からのGLOBAL.G.A.Pの認証取得を通じたGAP 手法の演習に加え 輸出用米の生産と海外での販売実習 実務者等の客員教授による特別講義の導入などを進めた 更に 県内の農業系学校が各校の特色を活かした講座を相互に公開し合う 共通講座 を年 5 回設け 教育環境の充実を図った イ林業林業への就業を目指す3 人の学生に就業準備給付金を支給し 必要な知識や技術の習得を支援したほか 高校 専門学校でのガイダンスや学生向け林業体験ツアーを開催し 若者等の就業意欲の喚起を図った また 平成 27 年度から林業労働力確保支援センターに設置した就業相談 あっせん窓口において 求人 求職マッチングを行い 平成 27 年 ~28 年の2 年間で27 人が県内の林業事業体 - 102 -
へ就業した さらに 林業労働力確保支援センターや林業 木材製造業労働災害防止協会と連携し 技術者の知識 技能の習得やレベルアップを支援した結果 新たに10 人のフォレストワーカーを養成し 6 人が森林施業プランナーとして認定された ウ漁業新潟県漁業協同組合連合会が実施する漁業就業のための研修活動を支援し 平成 29 年度は小型底びき網などの中核的漁業経営体において12 名が研修を受講した また 新規就業者候補の掘り起こしのため 高校生等を対象とした出前授業及び漁業体験研修を実施し 19 名が受講した これに加え 地域の実情に合わせた担い手の受入 < 漁業体験研修 > 体制を構築するため 各地域に担い手地域検討委員会 ( 漁業者 漁協 市町村 県で構成 ) を設置し 新規就業者の受入れ 育成に向けた取組を支援した 農業大学校のシンガポール ベトナムへの農業研修 ~ 海外市場に挑戦する経営者を目指して ~ 県農業大学校では これまでに国際水準である GLOBAL.G.A.P 認証を実際に取得するなど 市場 のグローバル化に対応できる実践的な内容が授業で学べるよう取り組みを進めてきた 平成 29 年 度は 海外市場に対する意識をより高めることを目的に 輸出 及び 現地生産 をテーマと した海外農業研修を実施した 輸出 の研修先としては 本県産米の主要な輸出先であるシンガポールを選定し 流通状況 の調査 現地で農業大学校産米の精米と学生デザインのパッケージへの袋詰作業を行った後 シ ョッピングモール内の店舗で店頭販売を実習した 現地生産 の研修先については 日本人農業経営者の進出事例が多く 輸出先の有望市場で もあることからベトナムを選定し 現地での園芸品目の栽培や販売方法とともに富山県の企業が 花き部門で進出している事例について研修した また 現地研修に先立ち 輸出については JETRO 米の輸出取組企業及び現地販売先企業 ベトナム事情については国際課職員から事前に講義を受け 知識を深めた 学生からは 日本ではできない貴重な体験を得られた 輸出の難しさを肌で感じた 自 分たちでつくった米の販売ができてよかった 若い人が多く活気あるベトナムの状況を学ぶこ とができてよかった といった感想が寄せられ 将来の糧となる学習の機会となった < シンガポール : 米の店頭販売 > < ベトナム : 視察先の園芸施設 > - 103 -
(2) 経営資産の円滑な継承 ア 農業 リタイアする農業者が所有する経営資産の継承に 向け 就農希望者を受け入れ研修等を実施する産地 の取組を支援し 14 地区で就農希望者の受入体制づ くりが行われた また これら資産継承を希望する 受入産地と就農希望者の出会いの場として 就農ポ ータルサイト 就農にいがた スタートナビ を開 設し 継承できる資産や研修受入体制等の情報を県 内外の就農希望者に向けて発信し マッチングを促 進した 首都圏在住の就農希望者を対象に 経営資産を有する産地を訪問する産地見学ツアーを実 施し ( 全 3 回 ) 延べ 29 人から参加を得た ツアー後に 短期の農業研修を受ける参加者も おり 本県での就農をより具体的に捉える動きに繋がった < 就農にいがた スタートナビトップ画面 > 併せて 首都圏において本県の農業や農産物を紹介する講座 新潟アグリフードカレッジ を全 3 回開催し 延べ 48 人に就農に関する支援の情報提供や就農相談等を行った イ 漁業 円滑な技術の継承と 新人漁業者の経営の早期安定化を図るため ベテラン漁業者 を講師とした独立後のアフターフォロー研修を実施し 平成 29 年度は4 名が受講した また 資産の継承や新規独立を推進するため 中核的漁業経営体への漁船リースを支 援し 10 経営体が漁船を取得 整備した 3 今後の課題 新規就業者の継続的な確保のため 就業体験や講習会等を通じて農林水産業の魅力を発信し 若者等の就業意欲を喚起するとともに 雇用の受け皿となる事業体に対し就業環境の整備を促進することが必要である 就農 就業後の経営課題や地域課題に対応できる人材を育成するため 後継者候補の経営スキルや技術者の能力の向上を図ることが重要である 優れた就農人材を確保 育成するため 農業大学校で実践的教育を実施するとともに 農業教育機関の連携などによる 農業教育環境の充実が必要である 高齢化等でリタイアする生産者が経営資産を継承する時期と 受け手が継承したい時期が一致せず 樹園地や漁船等の資産が損失に至るケースがあることから 継承候補者を受け入れる産地の体制づくりと併せ 必要に応じ資産の保全管理等により継承に掛かるタイムラグを吸収する仕組みをつくることが必要である - 104 -