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大学スポーツ選手におけるスポーツ外傷 障害の現状と対策 Injuriesincollegiateathletes 体育学部体育学科飯出一秀 IIDE,Kazuhide DepartmentofPhysicalEducation FacultyofPhysicalEducation メディカルセンター簀戸崇史 SUDO,Takashi MedicalCenter 長崎国際大学大学院健康栄養研究科小出光秀 KOIDE,Mitsuhide NagasakiInternationalUniversity 長崎国際大学大学院健康栄養研究科今村裕行 IMAMURA,Hiroyuki NagasakiInternationalUniversity メディカルセンター井上陽子 INOUE,Yoko MedicalCenter キーワード : スポーツ傷害, アンケート調査, 大学生選手 Abstract: Thepurposeofthisstudywastoinvestigatetheoccurrenceofinjuriesincollegiate athletes.subjectswere605collegestudents.thefollowingresultswereobtained. 1. Mostinjuriesoccurredinfreshmen(66%). 2. ManyinjuriesoccurredduringexerciseinMarch,followedbyMayandOctober. 3. Wheninjurieswereclassifiedbybodyregion,ankleaccountedforthelargestpercentage(26%), followedbyknee(17%)andshoulder(11%). 4. Wheninjurieswereclassifiedbydiagnosis,ruptureofligamentsaccountedforthelargest percentage(18%),followedbysprain(17%)andfractureofbones(14%) Basedontheresultsofthisstudy,weneedtoeducatecoachesandathletestoevaluatethe effectivestrategiestominimizetheriskofinjuries. Keywords:sportinjury,questionnairesurvey,collegestudent Ⅰ. はじめに本学は2007 年 4 月に開校し, 現在ほぼ4 年が経過しようとしている 建学の精神に基づき 教育と体育の融合 を提唱し, 体育会クラブに入会している学生は全学生の約 7 割を超えている どのクラブも中四国レベルでは優秀な成績を残しているが, 中でも女子柔道部や男子ソフトボール部は創部 4 年目にして全国優勝を成し遂げた さらに女子レスリング部はアジア選手権優勝, 世界大学選手権優勝, 世界ジュニア3 位などの世界レベルでの入賞を果たしている このようにス ポーツが大変盛んな大学での大きな問題であろうと考えられるものの中にスポーツ外傷 障害の発生がある しかし本学では, スポーツ外傷 障害の大学全体の状況を把握した資料は未だに見当たらない 本学におけるスポーツ外傷 障害への対応はメディカルセンターや学内に設置された付属鍼灸 整骨院で行われているが, 完全にすべてに対応できるものではなく, 学外の医療機関を受診している学生も多く見受けられる そこで本研究においては, 本学でのスポーツ外傷 障害の動向と現状を調査し, 本学におけるスポーツ外傷 障害予防に何が必要であるのかを調査することで, 本 127

学のスポーツ外傷 障害の減少に役立てたいと考えた 11 項目とした Ⅱ. 目的 Ⅳ. 結果 本学におけるスポーツ外傷 障害の予防法の確立や減少を目的とする そのためには本学におけるスポーツ外傷 障害の動向と現状をまず把握することが必要である そこで本学におけるスポーツ外傷 障害の傾向をアンケート調査し, スポーツ外傷 障害の基礎データ作りをすることを目的とした 1. アンケート回収率 ( 表 1) アンケート調査表の回収率は2 4 年生 868 名のうち605 名で, 回収率は69.7% であった 内訳は2 年生 90.8%,3 年生 65.2%,4 年生 51.2% であり,4 年生の回収率が他に比較して低値であった 男女別では男子 345 名で女子は260 名であった ( 図 1) Ⅲ. 対象及び方法 対象は環太平洋大学の全学生である 2010 年 4 月初旬に行われたオリエンテーションにおいて1 4 年生にアンケート調査用紙を配布した 記入に先立ち, アンケート調査の趣旨を説明し, 同意した学生のみに記入, 提出させた アンケート調査の内容は学年で分類し,2 4 年生は過去 1 年間でのスポーツ外傷 障害の調査を行った さらに新入生に関しては高校生 3 年間を通したスポーツ外傷 障害の調査を行ったが, 今回の調査では本学におけるスポーツ外傷 障害の動向と現状としているので新入生の調査データは今回の報告から除外した 1. アンケート調査内容アンケート調査は自身の受傷した外傷 障害のうち, 最も重篤な外傷 障害の2 部位までとした 1ヶ月以内または1ヶ月以上疼痛が続いた外傷 障害に 1ヶ月 を目安にしたことで軽微な外傷 障害と区別するために1ヶ月という期間を設定し, 1ヶ月以上疼痛が続いた外傷 にアプローチできるデータ収集を目標にしたためである 1) 調査内容 1 過去 1 年間のスポーツ外傷 障害の有無 2 受傷時期 3 受傷部位 4 受傷場所 5 受傷時時の処置 6 治癒期間 7 受診した医療機関 8 診断名 9 治療内容 10 現在の状態 11その後の経過 ( 記述 ) の 図 1 2010 年調査対象者男女別総数 2. 外傷 障害が発生した学年 ( 図 2) 外傷 障害が発生した学年では1 年次 66%(225 名 ) で最も多く, 続いて2 年次の26%(88 名 ),3 年次は8% (28 名 ) であった 1 年生時での受傷が多かった 図 2 外傷 障害が発生した学年 3. 月別受傷者数 ( 図 3) 月別受傷者数では3 月が一番多く受傷していて, 続 表 1 アンケート回収率 学年 2 年 3 年 4 年 全体 性別 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男女別数 ( 人 ) 187 118 171 111 168 113 526 342 全体数 ( 人 ) 305 282 281 868 回収数 ( 枚 ) 277 184 144 605 回収率 (%) 90.8 65.2 51.2 69.7 128

いて5月 10月 7月の順であった 6 受傷時の処置 図 6 受傷した際にどのような処置を行ったかではアイシ ング51 243名 が多く 安静22 106名 固定 22 105名 とほぼ同数であった 図 3 月別受傷者数 4 受傷部位 図 4 図 6 受傷部位では足関節26 89名 膝関節17 59名 受傷時の処置 肩関節 39名 大腿部10 34名 腰部7 23名 7 治癒期間 図 7 の順であった 外傷発生から治癒するまでの期間では1ヶ月以内 37 115名 1ヶ月 2ヶ月が31 98名 3ヶ 月以上が14 43名 で6ヶ月以上が18 58名 で あった 図 4 受傷部位 5 受傷場面 図 5 図 7 受傷から治癒までの期間 8 受傷後の通院先 図 8 受傷場面では練習中が71 246名 と圧倒的に多く 続いて試合中19 65名 であった 受傷後通院先ではが大学病院または総合病院の受診 者は38 135人 続いて整骨 接骨院が32 113名 医院 クリニックが21 74名 の順であった 図5 図 5 受傷部位 受傷場面 図 8 受傷後の通院先 129

9. 診断名 ( 図 9) 受診先での診断名で, 多いのは靱帯断裂 18%(56 名 ), 捻挫 17%(52 名 ) とほぼ同数であり, 続いて骨折 14% (43 名 ), 肉ばなれ13%(41 名 ) で同数であった 図 9 受診先での診断名 10. 受診先での処置 ( 図 10) 受診先で受けた処置では固定が最も多く32%(104 名 ), 続いて投薬 ( 鎮痛消炎剤 ) 湿布等が26%(87 名 ) で, 手術が20%(65 名 ) であった 図 10 受診先での治療 11. 現在の状況 ( 図 11) 現在の状況は特に問題ない34%(116 名 ), 痛いがプレーできる26%(88 名 ), 完治 25%(85 名 ), うまくプレーができない5%(18 名 ) であった 図 11 現在の状況 Ⅴ. 考察本学では全学生 1,237 名中,871 名が体育会クラブに所属し, 日々練習に明け暮れている 当然ながら練習時間が多くなるとスポーツ外傷 障害の発生頻度が上がる 1) しかし, 本学ではまだスポーツ外傷 障害の大学全体の状況を把握した資料は見当たらず, ソフトボールにおける外傷 障害報告のみである 2) スポーツ外傷 障害の予防が大きな問題と考えられるため, 本学におけるスポーツ外傷 障害の傾向や現状を把握し, スポーツ外傷 障害の予防にアプローチできる基礎資料は大変重要と考えられる 3) 2 4 年生までのアンケート回収率は全体で 69.7% であった 4 月のオリエンテーションでのアンケート調査であり,4 年生の参加者が少なかったため回収率の低下につながったと考えられる しかし,2 年生では90.8% と高率であり,3 年生も65.2% であることからある程度信頼性が高いデータであると考える また4 年生のオリエンテーション参加者から回収したアンケート調査表は144 名全員から回収でき, その時点では回収率 100% であった 来年度より3 4 年生のアンケート調査は日時の設定が重要であると考えられた スポーツ外傷 障害の発生した学年では圧倒的に1 年生時に発生しており, スポーツ外傷 障害予防は, データが示すように1 年生の練習が開始される4 月から働きかけることが重要であると思われる また,2 年生で3 割近い学生が受傷していることから1 年生に限らず,2 年生にもスポーツ外傷 障害の予防の啓蒙活動が必要と考えられる また, 受傷時期では3 月, 5 月,10 月に受傷しているケースが多く, 冬季と夏季には減少傾向を示している これは大久保ら 4)5) の報告と同様の傾向を示しているが, 多少の違いがみられる 大久保らは4 月 7 月と10 月 12 月の2 峰性を示したとしているが, 本研究では3 月,5 月に増加傾向を示し, さらに10 月に増加傾向を示している 確かに大久保らが言う2 峰性は示しているが, 大きな違いは4 月の新年度練習開始前の3 月に多く受傷していたことが分かる これは4 月の練習に備えて急な練習量の増加によるものと, 冬季の間練習量が減少していたにもかかわらず, 急激な練習量と練習の質の増大に問題があるものと推察される 1) スポーツ外傷 障害が多く発生する部位は多くの報告と同様の足関節, 膝関節, 肩関節, 大腿部, 腰部の順であった これはどの報告でも多少の順位の入れ替 130

えはあるが, 同様な傾向を示している 1)3)5)6) 今回, この報告には取り上げていないが, 本学 1 年生の高校時代の外傷で最も多かったのが足関節の外傷であった 足関節の外傷は高校生時代に受傷していて大学入学してから再発を繰り返すケースが多く見受けられ, 高校生からの予防や再発予防を徹底して行うことが重要であると考えられる 受傷場面では練習中が圧倒的に多く,71% であった これらのことから練習中の外傷が多いことを監督, コーチ, 選手に啓蒙を行っていく必要がある 今回のアンケート調査では練習中のどのような場面や状態であったのか, また予防は可能だったのかなどさらに詳細な調査が必要であることを感じた 受傷して現場でどのような処置が行われたかに関してはRICE 処置でのアイシング, 固定, 安静が多く, 受傷時の教育が行き届いていると考えられ, 何もせず放置した学生は受傷者中のわずか5% であったことが分かった 体育学部の学生は授業等で応急処置の教育を受けていることから, 次世代教育学部の学生にも RICE 処置を徹底させることにより放置, 悪化させることが無いような教育 指導を行う必要がある 治癒までの期間では当然ながら1ヶ月以内が37% と多いが,1 ヶ月以上かかった選手が31%,3 ヶ月や6ヶ月以上の重症者が32% と受傷者の約 3 割以上に上る このような重症例の減少を目指さなければならず, さらに詳細な調査を行い, 改善策を講じなければならないと思われる 受傷時の通院先では大学病院または総合病院が多く, この結果は重症例が多いことの裏づけではないかと考える なぜならば3ヶ月や6ヶ月以上の重症者が 32% と受傷者の約 3 割以上に上っていることがあげられる さらに受診先での診断名は靱帯断裂が捻挫を超えるほど多く, 骨折, 脱臼も合わせると20% を超え, 治癒への長期化や大学病院または総合病院への受診へと繋がったものと推察される また受診先の処置では手術やギブスまたは装具 サポーターでの固定が5 割を超えることから重症者が多いことが推察される しかし, 受傷者の現在の状況をみると完治やプレーを行うことに問題が無い選手が59% と競技復帰を果たしていることから順調な回復過程がとられたことと推察できる さらに疼痛が残存している選手でも 痛いながらプレーできる を合わせると85% の選手が復帰していることは学内のメディカルや学生トレーナー活動が機能していると推察される 今後の課題としては重症例の詳細なデータ収集と分 析を行うことにより, スポーツ外傷 障害の傾向や現状が解明でき, 予防対策が明確になることにより重症例の減少につなげることができると思われる また学内のスポーツ外傷 障害予防の啓蒙活動をさらに行うことでスポーツ外傷 障害を減少させることに繋げていきたい Ⅵ. まとめ環太平洋大学設立から4 年が経過しようとしているが, 本学におけるスポー外傷 障害に関する傾向が明確にされておらず, また対策等もとられていない 今回は全学生を対象にアンケート調査を行い,2 4 年生の本学クラブ活動中 ( 試合 遠征等外部活動も含む ) で発生したスポーツ外傷 障害の傾向を明らかにした 1. 本学におけるスポー外傷 障害が最も発症している月は月別でみると3 月,5 月と10 月であった 2. 受傷した学年では1 年生時で練習中が多かった 3. 受傷部位で多かった上位 3 部位は1) 足関節,2) 膝関節,3) 肩関節であった 4. 治癒までに要した期間では1ヶ月以内 (37%) が多かったが,1ヶ月以上 31%,3ヶ月 14%,6ヶ月以上 18% と重症例が目立った 5. 受診先では総合病院や大学病院など大規模病院が多かった 6. 受傷者の85% が競技復帰を果たしていた 今後, これらのデータを基に学内でのスポーツ外傷 障害の啓蒙活動を行い, 重症例を含むスポーツ外傷 障害の減少を目指したい 参考文献 1) 飯出一秀 (2006), 科学的研究成果を如何に現場に生かすか 現場の疑問を科学する ( アスレチック トレーナーの立場から ) 空手道研究 第 9 号 10 号,2006pp.7-17 2) 飯出一秀 (2009), 新設大学ソフトボール選手における外傷 障害の特徴 過去の外傷 障害統計報告との比較から 環太平洋大学紀要 第 2 号,2009pp.71-75 3) 飯出一秀 (2009), 空手道におけるリスクマネージメント : 分担小笠原正, 諏訪伸夫編著 スポーツのリスクマネージメント株式会社ぎょうせい 2009 pp301-304 4) 駒谷燾一, 藤巻悦男, 坂本桂造, 栗山節郎, 松本 131

忠重, 染谷 操, 杉村健太, 三雲 仁, 丸田敏也, 服部真紀 (1988) 最近 5 年間のスポーツ外傷 障害統計 過去 5 年間の統計と比較して 体力科学 198837,pp323-332 5) 大久保衛, 日下昌浩 (2006), 新設スポーツ大学におけるスポーツ外傷 障害相談の現状と問題点第 1 編びわこ成蹊スポーツ大学保健センターにおけるスポーツ外傷 障害相談について 統計的観察 びわこ成蹊スポーツ大学研究紀要 2006 第 4 号 pp89 94 6) 大久保衛, 日下昌浩 (2006), 新設スポーツ大学におけるスポーツ外傷 障害相談の現状と問題点第 Ⅱ 編頻発スポーツ外傷 障害に関する検討 特に筋肉損傷について びわこ成蹊スポーツ大学研究紀要第 4 号 2006 pp95-101 ( 平成 22 年 11 月 19 日受理 ) 132