生エネルギー発電設備の認定容量の約 9 割が太陽光発電となっている ( 図表 2) 太陽光発電の電力買取価格は 図表 3のとおり FIT 制度開始時から毎年引き下げられており 本年度は当初の6 割の水準となっている この影響を受けて 新規の設備認定は減少してきているが 初期に設備認定されたまま現在も

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運用資産としての太陽光発電の概要 目次 Ⅰ. はじめに Ⅱ.FIT 制度の概要と太陽光発電の導入状況 Ⅲ. 太陽光発電のファンド運用の仕組みと特徴 Ⅳ. 今後の太陽光発電事業の見通し- 出力制御について Ⅴ. まとめ Ⅰ. はじめに 不動産アセットマネジメント部運用管理課調査役大住弘人調査役補香川万理阿久根崇 本邦における再生可能エネルギーの導入促進策の下 2012 年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度 (FIT 制度 ( 後述 )) 開始を機に全国各地に急増した太陽光発電所 その企画 開発から運営まで手掛ける太陽光発電事業は FIT 制度の下 収益面での安定が期待できることから 年金資金などの長期安定運用ニーズに合致した魅力のある運用資産と見込まれる一方 近時 太陽光発電所の想定外の増加により 一部地域においては電力需給に調整が必要な状況も生じている等 特有のリスクを抱える投資対象でもある 2015 年 東京証券取引所にインフラファンド市場が創設され 2016 年 6 月には太陽光発電設備を対象資産とする第 1 号銘柄が上場されるなど 太陽光発電ファンドは運用資産として注目され始めていることから 本稿では 現在の太陽光発電の導入状況 FIT 制度の改正点等や太陽光発電事業の一般的なファンドスキームに触れつつ 太陽光発電事業に特有な運用上の留意点について述べてみたい Ⅱ. FIT 制度の概要と太陽光発電の導入状況 1.FIT 制度地球規模の温暖化抑制の為 低炭素社会の実現をめざし 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 (FIT 法 ) が施行され 再生可能エネルギーの固定価格買取制度 (FIT(Feed In Tariff) 制度 ) が 2012 年 7 月に開始された FIT 制度は 太陽光 風力 地熱 中小水力及びバイオマス発電による電力を長期間 定額で電力会社が買い取る制度であるが 太陽光発電事業は開発コストや期間等から相対的に参入が容易であり 高い収益性も期待できる投資対象として FIT 制度開始後 数多くの企業が参入し その件数も大幅に増加した ( 図表 1) 現在 FIT 制度対象の再 1/17

生エネルギー発電設備の認定容量の約 9 割が太陽光発電となっている ( 図表 2) 太陽光発電の電力買取価格は 図表 3のとおり FIT 制度開始時から毎年引き下げられており 本年度は当初の6 割の水準となっている この影響を受けて 新規の設備認定は減少してきているが 初期に設備認定されたまま現在も稼働に至っていない案件が相当数滞留している このような状況は 経済産業省が策定した 長期エネルギー需給見通し における 2030 年度の再生エネルギー導入目安 ( 電源構成割合 22~24%) を実現する上で大きな障害となってきた 図表 1: 太陽光発電設備の認定量と運転開始量の推移 ( 万 kw) 10,000 9,000 8,000 7,000 導入量 6,000 設備認定量 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 2012 年 7 月 2012 年 10 月 2013 年 1 月 2013 年 4 月 2013 年 7 月 2013 年 10 月 2014 年 1 月 2014 年 4 月 2014 年 7 月 2014 年 10 月 2015 年 1 月 2015 年 4 月 2015 年 7 月 2015 年 10 月 2016 年 1 月 2016 年 4 月 未稼働案件 2016 年 7 月 出所 : 資源エネルギー庁公表資料に基づき三菱 UFJ 信託銀行作成 図表 2: 再生エネルギー設備認定量の内訳 出所 : 資源エネルギー庁公表資料に基づき三菱 UFJ 信託銀行作成 (2016 年 7 月末時点 ) 2/17

図表 3: 太陽光発電電力買取価格の推移 年度 2012 年度 2013 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 買取価格 40 円 36 円 32 円 29 円 /27 円 24 円 買取期間 20 年間 ( 発電規模 10kW 以上 kwh あたり 税抜 ) 出所 : 各種資料より三菱 UFJ 信託銀行作成 この未稼働案件を解消すること等を目的に FIT 法の初の改正が 2016 年に行われた 法改正により 未稼働で事業実現性の低い案件や 稼働済でも運営が適切でない案件の排除 太陽光以外の電源の導入拡大 より低コストな案件の導入の促進等が期待されている 図表 4は FIT 法改正のポイントとその目的の概要をまとめたものである 図表 4:FIT 法改正のポイント改正のポイント 目 的 1. 未稼働案件の発生を踏まえた事業の実現性を確認した上で認定する制度への 新認定制度の創設 転換等により事業化の実現性の低い案件を排除 する 2. 適切な事業実施を確保する仕組みの導入 事業期間中の点検 保守や 終了後の設備撤去等の順守を求め 違反時の改善命令 認定取消 を可能とすること等により 適切な事業実施を 確保する 3. コスト効率的な導入 中長期的な買取価格目標を設定したり 買取価 格の入札制度を導入すること等により 低コス トな事業の導入を促進させる 4. 地熱等リードタイムの長い電源の導入拡大 数年先の買取価格を提示すること等 将来の事業採算性の見通し等を明らかにすることにより 開発期間が長い電源の導入を促進する 5. 電力システム改革を活かした電力の広域融通をより円滑化することにより 導入拡大 より広域的な電力供給を可能とし 再生可能エ ネルギーの導入促進に繋げる 出所 : 各種資料より三菱 UFJ 信託銀行作成 3/17

2. 投資環境の整備超低金利の経済状況下において 比較的高い投資利回りを安定して確保できる投資対象へのニーズ等を背景に 不動産業 建設業 商社 メーカー等様々な業種の企業がスポンサーとなって 数多くの太陽光発電所が開発されてきた その際の資金調達手段としては 従前からの不動産私募ファンドと同様の投資スキームを利用しているものも多く 機関投資家や事業法人が出資する数百億円規模のファンドから個人投資家向けの小規模な私募ファンドまで 発電規模に応じて多様な規模のものが存在する 更に 2015 年には東京証券取引所にインフラファンド市場が創設され 2016 年 6 月には太陽光発電設備を対象資産とする第 1 号銘柄が上場されるなど 投資家の裾野の拡大にあわせた投資環境の整備も進みつつあるといえる 図表 5: インフラファンド市場上場投資法人概要 投資法人名 : 上場時期 : 対象資産 : 資産規模 : 投資法人名 : 上場時期 : 対象資産 : 資産規模 : タカラレーベン インフラ投資法人 2016 年 6 月太陽光発電設備等 ( 約 17.9MW) 発電所 10 件約 78 億円いちごグリーンインフラ投資法人 2016 年 12 月太陽光発電設備等 ( 約 25.8MW) 発電所 13 件約 100 億円 出所 : 各種資料より三菱 UFJ 信託銀行作成 一方で 対象資産となる新規の太陽光発電所の開発案件は減少しており 今後の対象資産は稼働中案件が中心となっていくものと想定される 但し この際に重要となる稼働中の太陽光発電所を売買するプレーヤーにより形成されるセカンダリーマーケットは 未だ成熟途上といわざるを得ない 今後 様々なファンド等が組成 運用され それらファンド等の間での売買の事例が蓄積されていき 運用資産として適正な評価手法が確立されていくことが 投資環境の一層の整備には不可欠といえる また 急増した太陽光発電所の中には 稼働中の案件においても 特に中小規模のものには 短期的な投資回収が重視され 長期的な運用に欠かせないメンテナンス等の管理面が不十分なものも多いといわれている 2016 年の法改正により これら運営上問題を含むものはある程度淘汰されるとともに FIT 制度終了後においても発電事業が継続可能となるような より低コストで効率的な運用技術や運営体制が採用されることで 太陽光発電事業の全体的な運営適正化が進むことも 投資環境に寄与することが期待される 4/17

Ⅲ. 太陽光発電のファンド運用の仕組みと特徴 Ⅱ 章では FIT 制度や太陽光発電への投資環境に関する概要と取り巻く環境について説明してきたが 本章では 太陽光発電設備を対象資産とする太陽光発電ファンドの仕組みや特徴について説明し 次に太陽光発電ファンドを運用する上での留意事項について触れ その留意事項がファンド運用にどのように影響を及ぼし得るのかについて言及したい 1. 太陽光発電ファンドのスキーム太陽光発電ファンドのスキームとしては 不動産ファンドでも一般的な匿名組合出資を用いるものや 投資事業有限責任組合を利用したものが多く見受けられるようである 以下図表 6に 合同会社を SPC とし 出資形態として匿名組合出資を用いる太陽光発電ファンドの一般的なスキームを示す なお 前述したインフラファンド市場上場投資法人の場合でも 合同会社が投資法人 出資形態が投資口となる等の相違はあるが 基本的な枠組みは同等である 図表 6: 太陽光発電ファンドのスキーム ( 匿名組合出資 ) 出所 : 当社で運用中の太陽光発電ファンドを参考に三菱 UFJ 信託銀行作成 このように太陽光発電ファンドの場合でも SPC を中心とするスキーム全体の構成 スキームに関与するローン貸付人 匿名組合出資者やアセットマネージャーなどのスキーム関係者の役割は オフィスやマンションを対象資産とし 物件の運営管理を外部の専門知識を有する者に委託する通常の不動産私募ファンドと同等である 一方で 太陽光発電ファンドにおけるスキームの特徴の一つは 一部 特有のスキーム関係者が事業の 5/17

運営を支えていることである 以下 太陽光発電ファンドに特有なスキーム関係者につ いて説明する 太陽光発電ファンドスキームの関係者太陽光発電ファンドのスキームでは 不動産ファンドにはみられない 以下のスキーム関係者が事業の運営を支えている 1 電力会社電力会社は 発電事業者が発電した電力を FIT 制度に基づいて固定価格で一定期間買い取ることが義務付けられている このため 太陽光発電事業は発電実績による変動の影響はあるものの 電力会社のクレジットに基づいて 安定したキャッシュフローを確保することが可能である 但し 電力会社によっては 管轄下の電力需要に応じて太陽光発電の接続可能量の設定がなされており 接続可能量を超過し発電が行われる事態となると 発電が抑制される可能性があることに留意すべきである 2EPC EPC(Engineering( 設計 ) Procurement( 調達 ) Construction( 建設 )) は 太陽光発電所の設計 施工を行い 設計 資機材調達から建設工事を含む一連の工程を請負う役割を果たしている 最終的に EPC は太陽光発電設備の試運転等を実施し 稼働できる状況で発電事業者に引き渡すことになる 太陽光発電事業は 開発時の建設等の初期コストとその後のメンテナンスコストの多寡に その収益性が大きく左右される その為 EPC には発電所稼働後の設備のメンテナンスの容易さや運営にかかるコスト等 太陽光発電事業特有の事情を考慮した適正な施設の設計 施工を行うための技術 ノウハウが求められることになる 3O&M O&M(Operation( 運用 )& Maintenance( 保守 )) は 太陽光発電所の運用と管理等の事業運営全般を行う役割を果たしている 太陽光発電事業は 基本的に収入の多寡を天候に依存しており 不動産ファンドで行われるテナントへのリーシングやテナントとの賃料改定交渉などによる 収入を積極的に増加させるようなオペレーションは必要ない 一方で適正な修繕 リニューアルや用途転換などの場合と同様に 日常的の適正な運営管理とコストコントロールが同様に必要であるため 事業計画達成の可否は O&M の運営管理能力に大きく依存しており 次項の電気主任技術者の指示の下 太陽光発電設備の効果的 効率的な管理運営が求められている 4 電気主任技術者電気主任技術者とは 電気事業法に基づく事業用電気工作物における維持 管 6/17

理 運用に関する保安監督者である 出力 50kW 以上の太陽光発電設備は電気事業法上の 自家用電気工作物 に該当し 適切な維持管理 運用に関する保安のために 電気主任技術者の選任が義務づけられている オフィスビル等の自家用電気工作物についても 主に保守点検のために電気主任技術者を選任しているが この場合は電気設備の管理を専門家に委託しているに過ぎないのに対して 太陽光発電事業の場合には 電気設備である太陽光発電設備を適切に維持管理することが そのまま事業の収益性となって現れるため 電気主任技術者は太陽光発電ファンドにおいて 極めて重要な役割を担っているということができる 2. 太陽光発電ファンドにおけるキャッシュフローの特徴太陽光発電ファンドの最大の特徴は 日射量等の天候の状況により発電量 すなわちキャッシュフローに影響が生じることである 当然のことながら 日照時間が長ければ発電量は多くなり 曇りや雨の日は発電量が少なくなるため 日々一定の発電量を維持することは困難である しかし 日射量については 過去の日照実績等に基づき 想定値を算定することが可能であり 多くの発電事業者は 過去の日照実績の統計的な中庸値に基づき得られる日射量を推定して事業計画を策定している 実際の日射量は 想定値との差異はあるものの 基準とすべき過去の日照実績の選択や補正等を適正に行うことで FIT 制度における 20 年間という長期の買い取り期間でみると 想定の日射量と実績値との間に大きな差異は生じず 長期的には想定に基づいた安定収入が得られると考えられている 3. 太陽光発電ファンドの運用における留意点これまで 太陽光発電ファンドにおける一般的なスキームとその特徴について述べてきた 本項では 実際に太陽光発電ファンドを運用する上での留意すべきリスクについて言及する (1) ファンド運用における留意点 FIT 制度を前提とした太陽光発電ファンドには 不動産ファンド等には通常みら れない特有の運用上のリスク要因がある ( 図表 7) 7/17

図表 7: 太陽光発電ファンド運用に特徴的な運営リスク要因の例 自然リスク 天候 災害 リスク要因 影響 対応 雨 雪 雲 高温 売電収入 - 台風 雷 地震 降灰 動物 設備修繕費 保険契約 設備リスク 劣化 故障 パネルの劣化 システム (PCS 等 ) の故障 売電収入 設備修繕費 出力保証 瑕疵担保 (EPC) メーカー保証 O&M 制度リスク 制度 FIT 制度の変更 出力制御 売電収入 - 出所 : 当社で運用中の太陽光発電ファンドを参考に三菱 UFJ 信託銀行作成 これらのリスク要因は それぞれ売電収入の減少や設備等の修繕に要する費用増等により 事業収支に影響を与える可能性がある しかし 適切にリスクマネジメントを行うことで コントロール可能なものも存在する 次項では 各種リスク要因の説明と当該リスクに対するマネジメントについて説明したい (2) 各種リスク要因とリスクマネジメント 1 自然リスク天候によって発電量に影響がでるものの 長期的には想定値と大きな差異は生じないと考えられていることについては既に述べたとおりである その他 自然リスクの中で特徴的なリスクについて触れる まず 運営をしている中で 実際に起きているトラブルには落雷によるものが多い 一般的に雷の被害は 雷が直撃する 直撃雷 を想像しがちであるが 直撃しない場合でも 発電設備等の近くに落ちた雷が誘導電流を起こし 送電ケーブルや通信線などに侵入することで電気機器に損傷を与える 誘導雷 が発生する可能性がある ( 図表 8) 雷が落ちやすい広い平坦な土地や人家の少ない地域では 落雷による被害を受ける可能性が高いことに留意する必要がある なお 落雷による被害を避けるためには 避雷針等の避雷設備を設置することが対応として考えられるが 広大な発電所全体をカバーするための設置コスト等の費用対効果を考慮した場合 最善とされる方策が一般的に確立していないのが現状である 8/17

図表 8: 直撃雷と誘導雷 出所 : 三菱 UFJ 信託銀行作成 次に コストや手間がかかる雑草対策について説明する 太陽光パネルと地面の距離が近い場合 雑草が伸びてきてパネルの上に覆いかぶさり パネルに影を落とすケースがみられる 当然ながら太陽光が遮られれば 当該部分の発電量は低下することに加え 更に当該部分に負荷がかかることで 太陽光パネルの故障原因にもなり得る 実際に取られている対策としては 草刈り機による草刈り 除草剤の散布 防草シートの敷設 コンクリート舗装等が挙げられる 最も確実な方法は 周囲をコンクリートで舗装することであるが 初期コストが膨らむことや 太陽光発電所の多くにみられる借地形態に必須な 20 年後の原状回復の費用負担を理由に 主流になっていないのが現状である 一般的にメンテナンスフリーのイメージが強い太陽光発電ではあるが 除草については 日常的に施設を観察し 適切に対処しなければならず 人件費増の要因となる [ 雑草を放置するとその陰がパネルに落ち発電効率に影響を与える ] 上記以外にも 動物の侵入やカラスの落石による設備の破損等があるが この ような自然災害による損害の多くは 保険によりカバーすることが可能である 9/17

通常 屋外に設置される太陽光発電設備は 常に自然災害に巻き込まれるリスクがあるため 万が一の災害時に大きな出費とならないよう 保険契約は太陽光発電設備の運営にとって必要不可欠である 但し 災害による損害を保険により支払対応した場合には 契約更新の際の保険料に影響が及ぶことにも留意が必要である 2 設備リスク太陽光発電の歴史はまだ浅いため 設備の中でも最も重要な太陽光発電パネルが何年程度の耐久性を有しているかについては 明確な実績は蓄積されていないのが現状である 但し パネルの耐久年数は一般的に 20 年以上といわれており 技術や品質の向上によって 25 年から 30 年の寿命が期待されている しかし これらも装置や精密機器である以上 絶対に 故障しない 性能が低下しない という事はないため 太陽光パネルについても 当然劣化が進み 劣化に伴い発電効率 ひいては売電収入が減少することが考えられる 発電事業者はパネルの劣化の程度を想定した上で事業計画を策定しているが 太陽光パネルメーカーや発電事業者が想定している以上の劣化が生じる可能性も有り得る このような場合に対応するため 太陽光パネルメーカーはパネルの出力保証を設けている 出力保証の内容や期間はメーカー毎に異なるが 保証期間は 10 年 ~25 年間程度とされているのが一般的である 一例を挙げると 保証期間は 20 年間とし 発電効率が 10 年で 10% 以上低下 20 年で 20% 以上低下した場合には 交換または修理を行うといったものである 太陽光パネルはメーカー毎にサイズ等の規格が異なるため 稼働途中で製造メーカーを変更する際は パネルを支える架台の手直し等のコストも必要となる パネルの価格や発電効率といった性能も重要であるが 長期間に亘ってパネルの供給を継続できるか 出力保証に基づく交換等を履行できるか等の観点でのメーカー選定も肝要であり これによって 当初想定以上の劣化が生じた場合の修繕や設備更新にかかる支出を抑えることができる また 不動産の場合には 重要な設備は屋内に設置してあるものが大半であるが 太陽光発電設備の場合には 太陽光パネル以外にも パワーコンディショナー 電力量計( 電力メーター ) 接続ケーブル 等の電気設備が屋外に設置されている 装置の中には湿気や温度に弱い装置もあるため 太陽光発電所の事業運営全般を担う O&M が 発電実績等の日々の観測を通じて設備不良による発電量の変化を迅速に検知できる体制を敷き 適時適切に維持管理 保守を行っていくことが重要となる 3 制度リスク Ⅱ 章で述べたとおり 太陽光発電所の急増により 一部地域では需要を大きく上回る発電が行われることが想定される状況にある 従前は電力会社自身が対応できる範囲内で需給の調整を行っていたが この電力会社自身によるコントロー 10/17

ルのみでは限界を迎えようとしている 先述の FIT 制度では このような事態に陥った際 発電事業者に対して太陽光発電の出力抑制 ( 制御 ) を要請することを可能とする仕組みがある 出力抑制が実施された場合には 天候が快晴で発電実績が好調であっても 売電収入はゼロとなってしまうが これによる事業計画に対する影響は 現状では予測が難しいといわざるを得ない 更に 各電力会社による出力制御の取扱いが異なることや 天候等の自然リスクを踏まえれば 太陽光発電ファンドに投資する際は リスク軽減の観点から 対象資産となる太陽光発電設備の地域分散に特に配慮する必要があるといえよう 以上 太陽発電事業に特有なリスク要因について説明したが 上述のとおり 太陽光発電ファンド運営における自然リスクおよび設備リスクについては 適切にリスクマネジメントを実施することで かなりの割合でコントロールすることが可能である 一方で制度リスクについては 発電事業者による主体的なリスクコントロールが困難であるため 制度動向を注視し 事業に与える影響を判断した上で 適切に対処していくことが求められる 次章では 現在 太陽光発電事業のリスクとして顕在化しつつあり 現段階でその影響度合いの予測が難しい 出力制御 について詳述する 11/17

Ⅳ. 今後の太陽光発電事業の見通し - 出力制御について 1. 出力制御の概要 (1) 出力制御の目的出力制御とは 電力の需給バランスを保つことを目的として 電力会社が各発電源から供給される電力を出力停止等することで 電力の需要に応じて供給をコントロールすることである 電力の供給量が消費量に比較して過多になると 電力系統網への負担増から大規模停電発生のリスクが高くなる このため 電力会社は常に管内の電力供給量と電力消費量をモニタリングし その均衡を図るために 供給過多となることが見込まれる場合は 出力制御を実施する必要がある 2012 年の FIT 制度導入以降 太陽光発電所等の建設計画が急増し 各電力会社への売電を目的とした接続申込が相次いだため 東京電力 中部電力 関西電力を除く大手電力会社の管内では 接続申込量 1 が接続可能量 2 を超過している状況である そのため 各電力会社とも出力制御の実施可能性が高まったとして 必要な規定の整備等 実施に向けた体制を整えつつある状況である 以下では 出力制御の上限規定 および出力制御が実施された場合の取り決め さらに事業計画への影響について述べる (2) 出力制御の可能性 - 上限規定について FIT 制度では 電力会社が出力制御を実施する場合の上限期間を 原則として 事業者が接続申込を行った時期別に 年間 30 日 または 年間 360 時間 と設定している 一方で 接続申込量が接続可能量を超えると 当該地域を管轄する電力会社は 経済産業省から 指定電力会社 の指定を受ける 指定を受けた以降に接続申込をした事業者に対しては 出力制御を無制限 無補償に行うことが可能となる 東京電力 中部電力および関西電力を除く大手電力会社は既に指定電力会社の指定を受けており 現時点で接続申込をした事業者に対する出力制御を無制限 無補償としている このように 出力制御の上限は 発電事業者が接続申込をした時期により 1 年間 30 日 2 年間 360 時間 および3 無制限無補償 の3つに区別することができ それぞれを1 旧ルール 2 新ルール および3 指定ルール と呼んでいる 1 接続申込量 : 電力会社へ系統連系接続契約申込済の発電設備の容量 2 接続可能量 : 電力会社が 30 日 360 時間 ( 太陽光 ) 等の出力制御を行うことで 受入可能な最大の接続量であり 30 日等出 力制御枠 ともいわれる 12/17

(3) 出力制御の可能性 - 電源停止の順番について実際に出力制御実施の判断がなされた場合 電力会社が出力を停止する発電源毎の順番に関するルールは以下のとおりである 発電源停止の順番については 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則第 6 条第 1 項各号 および電力広域的運営推進機関 ( 以下 推進機関 ) 3 が定める送配電等業務指針第 173 条 第 174 条 及び第 175 条に規定されており これらの規則 指針に基づく太陽光発電源の出力制限の順番を ( 図表 9) に示す 石炭 石油および LNG 等の火力発電は発電出力の機動的な制御が比較的容易であるため1 番目となるが ベース電源と呼ばれる原子力 地熱および水力のように機動的な制御が困難なものは対象外となっている 太陽光発電は風力発電とともに ベース電源より上の順位に位置するが 揚水発電やバイオマスを含む火力発電よりは後順位となっている 図表 9: 各電源の出力制御の順番に関するルールついて 出力の抑制等を行う順番 1: 燃料貯蔵の困難性 技術的制約等により出力の制御が困難な場合 ( 緊急時は除く ) は抑制対象外 2: 電力広域的運営推進期間の指示による融通 電力広域的運営推進機関送配電等業務指針 ( 下げ調整力の活用 ) 第 173 条 ( 下げ調整力が不足する場合の措置 ) 第 174 条 ( 出力制御又は揚水発電の実施に係る事前協議 ) 第 175 条 出所 : 九州電力 優先給電ルールの考え方について 3 電力広域的運営推進機関 :2015 年 4 月 電気事業法の一部を改正する法律に基づき 電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備を進めて 全国大での平常時 緊急時の需給調整機能を強化することを目的として設立された 英語の機関名である Organization for Cross - regional Coordination of Transmission Operators, JAPAN の略称で OCCTO ( オクト ) と呼ばれる 13/17

2. 出力制御実施時期の見通しと太陽光発電事業への影響実際に上記の出力制御が発動される時期の見通しは 出力制御が売電収入の減少に直結し 今後の事業計画への影響が大きいことを考えれば 各発電事業者の大きな関心事項であろう (1) 実施時期の見通し図表 10 によると 2015 年 7 月時点の各電力会社への接続済量は接続可能量の3 分の1から3 分の2の水準にまで上昇しており これに接続契約申込量を加えると 北海道 東北および九州の各電力会社は既に 100% を超えている状況である 現時点では未だ本格的な出力制御の実施に踏み切った電力会社は無いものの 2017 年度以降 出力制御が実施される可能性は高まりつつあると考えられる 図表 10: 電力各社の接続可能量 接続済量 接続申込量の状況について 電力会社名 1 接続可能量 (30 日等出力制御枠 ) 2 接続済量 2 1 3 接続済量 + 接続契約申込量 3 1 ( 万 kw) ( 万 kw) (%) ( 万 kw) (%) 北海道電力 117 75 64.1% 203 173.5% 東北電力 552 182 33.0% 753 136.4% 東京電力 - 675-1,456 - 中部電力 - 420-808 - 北陸電力 110 44 40.0% 85 77.3% 関西電力 - 312-574 - 中国電力 558 211 37.8% 511 91.6% 四国電力 257 148 57.6% 251 97.7% 九州電力 817 528 64.6% 1,481 181.3% 沖縄電力 50 24 48.5% 37 74.7% 合計 - 2,619-6,159 - 出所 : 三菱 UFJ 信託銀行作成 (2015 年 7 月時点 ) 接続可能量に対する接続済量の割合から判断すると 各電力会社の中でも早期に出力制御実施が見込まれるのは九州電力 および北海道電力である 特に九州電力管内では 2014 年から種子島と壱岐の両島において出力制御が既に実施されている 具体的な実施時期の目途は明らかになってはいないが 九州本土管内でも 2017 年度以降に出力制御の実施が予想されている (2) 事業計画への影響 実際に出力制御が実施された場合に 売電収入はどの程度減少すると予想される 14/17

のであろうか この点は 上記の上限規定のパターンと出力制御の順番だけではなく 他の発電源の稼働状況 特に出力制御の対象外となっている原子力や水力等のベース電源による発電状況にも依存することから 出力制御が未発動の現状では予測しきれない部分が多いといわざるを得ない そのため 現時点で売電収入の減少を 事業計画へ合理的に反映することは困難である 他方で 電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備を進めるとともに 全国規模で平常時 緊急時の需給調整機能を強化することを目的として推進機関が設立 運営されており 同機関により全国的な需給調整が可能となった場合には 各電力会社は出力制御によらずとも 太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの潜在能力を最大限に生かしつつ 安定した電力供給が可能になることが期待される 太陽光発電事業においても 出力制御による負の影響が 徐々に低減していくものと考えられる このように現状では不明確な点が多いものの 無制限 無保証の出力制御の対象となっている前記の 指定ルール 案件に該当していない太陽光発電事業であれば 今後 出力制御の運用状況をみながら 売電量の減少を事業計画に合理的に織り込んでいくことも可能となるものと予想される Ⅴ. まとめ FIT 制度開始当初は 現状より高い買取価格が 太陽光バブル ともいわれ その後の FIT 制度見直しに繋がったが 本来 太陽光発電はリスクが比較的低く 収益面で安定した魅力の高い運用資産に位置付けられるものである よって 太陽光発電事業は FIT 制度の下でミドルリターンを目指すポートフォリオに適したインフラ資産として REIT や私募ファンド等の形態で 資産運用の領域に浸透していくことが期待できると考える 本稿で述べた出力制御のように 今後の動向によっては投資リターンの水準に影響を与え得る要素もあるが 魅力的で安定的な投資利回りを実現できる案件も多く 将来的には 現在 制度整備が進められている推進機関主導による全国レベルでの電力需給調整により リスク予測の現実性も高まることが期待できる 但し 現状では太陽光発電事業が運用資産として成熟していくためには 案件数増加によるマーケットの成長 REIT や私募ファンド等の立ち上りによるセカンダリーマーケットの形成が不可欠と考えられ その意味では 不動産ファンドの創生期と同様の課題を抱えていることを考慮する必要があろう 以上 本稿中で述べた意見 考察等は 筆者の個人的な見解であり 筆者が所属する組織の公式見解ではない 15/17

参考文献 総合資源エネルギー調査会省エネルギー 新エネルギー分科会新エネルギー小委員会系統ワーキンググループ ( 第 4 回 ) 配布資料 総合資源エネルギー調査会省エネルギー 新エネルギー分科会新エネルギー小委員会系統ワーキンググループ ( 第 6 回 ) 配布資料 16/17

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