野田さん 本当におめでとう 26 日発売の 週刊新潮 に第三者の卵子で妊娠したとする手記を掲載した自民党の野田聖子元郵政相 (49) が同日 自らのブログでも妊娠の報告を掲載した 長年ひとりの女性として 国を預かる政治家のひとりとして 夢であった 家族 を持ち 母親 になるために 今出産に向け手さぐりながら頑張っているところです と報告 これからも体調管理のもと しっかりと国会議員としての仕事を全うしていきます 出産後も当然仕事を続けていきます と政治活動を続ける意思も示した また 生殖補助医療に関する法律が国内で整備されていないことを念頭に いろいろなご意見あると思いますが おなかのこどもには罪はないので 温かい目で見守って頂ければ幸いです と締めくくった 野田氏は 今年 5 月に米国で第三者から卵子提供を受けて妊娠 来年 2 月が出産予定という
民法 E( 親族法 ) 第 9 回 親子 3 2010 年 11 月 19 日 ( 金 )1 時限 12 月 06 日 ( 月 )1 時限 11 月 25 日 ( 木 )2 時限 講義担当者近畿大学法学部教授小川富之
生殖補助医療の規制 生殖補助医療の規制は 生殖に人為的に介入することがどこまで許されるかという問題 諸外国の状況 : イギリスやフランス等の国々では 十分議論をした上で生殖補助医療の規制を実施 日本は 長い間議論の無いままに生殖補助医療の利用のみが進んだ 日本産科婦人科学会の会告による自主規制 1983 年の体外受精の実施以来 個別問題ごとに出され 生殖補助医療全体について考慮するものではない
日本政府 ( 旧厚生省 ) の対応 1998 年 10 月生殖補助医療技術に関する専門委員会の設置 2000 年末精子 卵子 胚の提供等による生殖補助医療の在り方についての報告書基本的な考え方 1 生まれてくる子の福祉を優先する 2 人を専ら生殖の手段として扱ってはならない 3 安全に十分配慮する 4 優性思想を排除する 5 商業主義を排除する 6 人間の尊厳を守る
公的管理運営機関 公的審議機関と公的管理運営機関を設置する 利用できる生殖補助医療の範囲 1AID 2 提供精子による体外受精 3 提供卵子による体外受精 4 提供胚の移植 非配偶者間生殖補助医療を受けられる人 不妊のために子を持つことができない法律上の夫婦 精子 卵子 胚の提供者 精子 : 満 55 歳未満の成人 卵子 : 既に子のいる満 35 歳未満の成人
生殖補助医療の実施者 ( 医師 施設等 ) 国が指定する医療施設 親子関係の確定 子を出産したものを母とする 妻が夫の同意を得て非配偶者間生殖補助医療により出産した子はその夫の子とする 出自を知る権利 提供者を特定できずかつ提供者がその子に開示することを承認した情報 近親婚にならないことの確認 移植胚数の制限 1 回に子宮に移植する胚の数は原則 2 個 罰則による禁止
厚生審議会生殖補助医療部会 2001 年 6 月に 専門委員会の報告内容に基づく制度整備の具体化のための検討を行うことを目的として設置 20 名の委員で構成 9 名女性 医療系が 12 名 2003 年 4 月報告書公表 1 提供された精子 卵子 胚による生殖補助医療を受けことができる者の条件 2 精子 卵子 胚の提供を行うことができる者の条件 3 提供された精子 卵子 胚による生殖補助医療実施の条件 4 インフォームド コンセント カウンセリング 5 実施医療施設及び提供医療施設 6 提供された精子 卵 胚による生殖補助医療に係る公的管理運営機関の業務 7 規制方法
生殖補助医療の進歩と問題点 精子 卵子 子宮が無い人よる子の誕生 生殖補助医療 : アシスティッド リプロダクティブ テクノロジー (Assisted Reproductive Technology, ART) 生殖補助医療は 1978 年にイギリスにおいて ロバート エドワードとパトリック ステプトーが体外受精を始めたことにより飛躍的に進歩 日本における生殖補助医療の推移 1949 年に非配偶者間の人工授精 (AID) を実施 1983 年に体外受精児誕生
日本における生殖補助医療の進展 1949 年 8 月非配偶者間人工授精 (AID) 児誕生 ( 慶應義塾大学 ) 1983 年 8 月減数手術 (4 胎 双胎 ) 1983 年 10 月体外受精児誕生 ( 東北大学 ) 1986 年 5 月パーコール法による男女生み分け法の公開 1989 年 12 月凍結受精卵による妊娠 出産 ( 東京医科歯科大学市川病院 ) 1991 年 11 月日本人夫婦が渡米し 米国人女性に子宮を借り代理出産
1992 年 4 月顕微授精児誕生 ( 宮城県岩沼市 ) 1993 年 5 月日本人夫婦が米国人女性から卵子提供を受け 妊娠 出産 1996 年 8 月民間精子バンク開設 ( 東京都 ) 1997 年 2 月骨髄移植前の受精卵凍結 ( 慶應義塾大学 ) 1998 年 5 月非配偶者間体外受精児誕生 ( 長野県 ) 2001 年 5 月妻の妹による代理出産 ( 長野県 ) 2003 年 3 月妻の義姉による代理出産 ( 長野県 )
不妊治療の方法 不妊治療を受けている人の数 :28 万 5000 人 ( 排卵誘発剤の使用 人工授精 体外受精 顕微授精 ) 不妊の原因の40パーセントは男性にある女性は44~45 歳くらいが生殖年齢の限界 人工授精の方法男性の精子の数は10パーセントくらい減少乏精子症 精子無力症等性交障害その他
体外受精の方法 採卵 媒精 培養 4 細胞期 胚移植 体外受精の実施施設数 :552 施設 (2001 年 ) 実施数 :6 から 7 万回 ( 年間 ) 妊娠率 :21.7 パーセント (2001 年 ) 但し 子どもを産んで自宅に戻れる割合は 19 パーセント程度 流産率は 20 パーセント程度 ( 通常の妊娠の倍程度 )
顕微授精 1990 年以降実施されるようになる 実施方法 : 精子は一個で可能 透明帯切開法 囲卵膣内精子注入法 卵細胞質内精子注入法 妊娠率 :21.2パーセント 問題点 : 精子は一個で可能 1 万 3000 人が体外受精で出生 この内 4 割が顕微授精 全出生児数に対する体外受精児の割合の増加 2000 年に1パーセントを超える (100 人に1 人 ) 現在は75 人に1 人程度 5 年後には50 人に一人程度になるであろう
生殖補助医療と戸籍 卵の提供を受けて代理出産した事例 ( 父母の年齢が 50 歳以上であるケース ) カリフォルニア州の代理出産業者と契約し 中国系アメリカ人の女性の卵子と夫の精子を体外受精し別のアメリカ人女性の子宮に移植して子を出産した カリフォルニア州のでは 出生証明書の父母欄に依頼した夫婦の氏名が記載される 通達により 母親の年齢が 50 歳以上の場合 法務局長の指示を求めること ( 通達 ) 先例および判例で母子関係は分娩の事実により生じる ( 大正 5 年 10 月 25 日民 805 号回答 昭和 37 年 4 月 27 日最高裁判決 民集 16 巻 1247 頁 )
法務省は 生まれた双子が胎児のうちに日本人である夫が認知したものと看做すことができる として 日本国籍取得を認める 子の夫婦がその子と特別養子縁組するという方法が説明された 嫡出子としての出生届けが不受理扱いになったことにつき この夫婦から家庭裁判所に訂正を求める申立てがなされたが 家庭裁判所はこの申立てを認めなかった
父母の精子および卵子を用い体外受精し代理出産した事例 有名人である 40 代の男性と 30 代の女性のケース アメリカ人女性に体外受精型代理出産を依頼 平成 15 年 11 月に出生した双子を夫婦の嫡出子として東京都内の区役所に対して出生届け 届出の受理が保留され 法務局の調査の結果 妻の分娩の事実は認められない として不受理とされた この女性は 以前子宮の摘出手術を受けており 代理出産をすることもマスコミ等の報道により一般に知られていた アメリカで代理出産契約 出産するケースは 100 例程度存在 これらの代理出産により生まれた子は 日本人夫婦の嫡出子として届出が受理 区役所の不受理処分に対して不服申し立て
夫死亡後に 夫の凍結精子を用いて出産した子の事例 1998( 平成 10) 年当時 夫が無精子症になる可能性の高い放射線治療を受けるのに備えて 医療機関で精子を凍結保存した後で 1999( 平成 11) 年に死亡した 夫の死後 その妻がその凍結精子を用いて体外受精を行い 2001( 平成 13) 年に子どもを出産し 死亡した夫との間の嫡出子として出生届けを行ったが 夫の死後 300 日以上経過しているとの理由で 夫婦の嫡出子とは認められなかった ( 民法 772 条 ) この扱いに対して 2003( 平成 15) 年 6 月に松山地裁に認知の訴え ( 民法 787 条 ) を提起した
松山地裁 請求を棄却 理由 1 夫が生前 死後の体外受精に同意していたとは認められないこと 2 死者との間で法律上の親子関係を認めることが子の福祉に適うとはいえないこと 3 学会などの動向を見ても消極的な意見が多いこと ただ 早急に何らかの法的手当てが望ましい との意見もつけられていた 認知に関しては 父親の死亡の日から 300 日以内であれば 死後認知の訴えの提起を認めている ( 民法 787 条但書 ) 父が生きている間の懐胎 ( 出産 ) を想定したもの
高松高裁 妻の懐胎時にはすでに夫が死亡していたというケースでの死後認知を認める判断 自然妊娠で無い人工授精等の生殖補助医療による出産において認知請求を認めるには父親が生殖補助医療の実施に同意していることが必要であるが 本件では 死亡した男性は 妻の同意が得られれば保存してある精子を使って子を出産することを希望しており 死後の懐胎に対する同意が存在すると認定 法の制定答辞に想定しなかったことを理由に 生殖補助医療で生まれた子が認知請求できないとする理由にはならないと判断
法制審議会における 親子法 の検討 中間試案の要点 1 提供された卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し 出産したときは その出産した女性を子の母とする 2 妻が夫の同意を得て 夫以外の男性の精子を用いた生殖補助医療によって子を懐胎したときは その夫を父とする 3 生殖補助医療のために精子を提供した者は その生殖補助医療により女性が懐胎した子を認知 ( 任意認知 強制認知 ) することはできない
今日の講義は以上です 次回も引き続き親子関係のお話をします 養子縁組の問題について 一緒に考えていきましょう 忘れ物をしないで退出してください