第 10 回目 008 年 6 月 3 日 ( 月 ) 更新
復習 7 16 膜平衡と浸透圧 生体膜 半透膜 ある物質を透過させ 他の物質を透過させない 物質輸送の選択性 受動輸送と能動輸送能動輸送と化学的自由エネルギー生体輸送非平衡系 平衡系を考える 浸透圧 (...)
復習 浸透圧とは 浸透圧とは 濃度を同じにしようとする水の流れ圧力である 濃度が違う液体は 濃度を同じにしようとする 半透膜があると 水が濃度を同じにする方向に流れる http://www.cosmo-1.co.jp/rom/genr.html より
復習 不純物の入った水とフレッシュな水を 不純物を通さない膜 でさえぎると水は不純物の入っている水槽に流れます これが濃度を同一にしようとする浸透圧の仕組みです ここで不純物の入った水槽のほうに力を加えると水の分子だけが逆浸透膜を透過しフレッシュな水が水槽に貯まるのです これが逆浸透膜システムのフレッシュな水を作る原理です http://www.cosmo-1.co.jp/rom/genr.html より
浸透圧 化学において半透膜をとおして 濃度の薄い溶液から濃い溶液に 溶媒が移動するように働く圧力のこと 小さな分子だけを透す膜で隔てられた 室に濃度の異なる つの溶液があると 濃度の薄い溶液 ( 相対的に小さい分子の多い溶液 ) から濃度の濃い溶液に移動する分子の数は逆向きの分子数より多くなるので 溶媒は濃度の濃い溶液のほうへ移動して ある平衡位置に達する 理想溶液の浸透圧はファントホッフ (van t Hoff) の式で表せる c 従って 半透膜にかかる浸透圧勾配は半透膜内外の濃度差に比例する c 濃度 c の単位はモル密度 ( モル / 体積 ) 注意 : 理想溶液の浸透圧は理想気体の状態方程式と同じ形をしている P ( n/ V) c 5
復習 7 16 膜平衡と浸透圧 (1) () 溶媒 (1) () 溶媒 溶液 P P 1 P P1 溶液 P P 1 P P 等温等圧条件では (1) () が理想溶液とすると ( ) ( 1) () X 等温条件では溶媒が 1 から へ流れ続けると の圧力が上昇 平衡時 ( 1, P1 ) (, P )
復習 (1) () 溶媒 溶液 P P 1 P P () の体積が一定だとすると (1) の溶媒 が () に流入するため () の圧力が上がる そのため () の溶媒の化学ポテンシャルがあがる () P V : 溶液相の溶媒の部分モル体積 T V ( dg VdP SdT) d () V dp V dp V: 純溶媒のモル体積 P (, P ) (, P1 ) d () (, P1 ) V ( P P1 ) 平衡の条件 : ( 1, P1 ) (, P ) P 1 従って (, P ) V P 1 P 1 ( P 1 V P ) 1 (1, P ) 1 [ (1, P1 ) (, P1 )] V 1 X
...) 3 ( ) (1 3 x x x x ) (1 X X X X X X X X X ) (1 1...) 3 ( ) (1 3 の時に X V 1 V X X V 1 続き復習
復習 浸透圧 単位 : : Pa=N/m :J/mol=Nm/mol : mol/l=10 3 mol/m 3 は浸透圧という は溶液中の溶質のモル濃度 多数ある場合はその和である ( 注意 : 高分子の場合 高分子の本数のモル濃度である ) 浸透圧とは 異なる濃度間の平衡を保つために 必要な圧力である または 濃度を同じようにしようとする溶媒 ( 水 ) の流れの圧力である
9 6 膜平衡のイオン効果 生体膜 半透膜 イオン輸送 溶質の濃度差 膜を横切る浸透圧の差 イオンの濃度差 膜を横切る静電ポテンシャルの差膜電位 神経系の機能に重要
1) 半透膜 : ) 濃度が異なる : G el l, zf を透過させ l, を透過させない が右へ移動 右の静電ポテンシャルが上がる 平衡の条件 : 電気化学ポテンシャル 電気的中性の条件により l G el はイオン 1 モルあたりの電気的自由エネルギー
化学ポテンシャル o o z F z F F( 電気化学ポテンシャルは化学的自由エネルギー 静電的自由エネルギーの両方を含んでいる + が平衡状態にあるため z ) イオンと対イオンの相互作用による局部的静電自由エネルギーの変化を含む 第 項は溶液全体としての静電自由エネルギーの変化 o z F ( 1と近似 ) z F
イオンの濃度差が電位差を生じる 任意の平衡状態にあるイオンに対して 濃度差による電位差 ( 静電ポテンシャルの差 ) z F この関係は膜を自由に透過できないイオン ( たとえば l- イオン ) には成立しないことに注意
例 9-11 ZnSO 4 溶液を10-5 M( 左 ) と10-4 M( 右 ) とにZn + のみを透過させる膜で分離する 平衡での膜両側の電位差 ( 膜電位 ) を計算せよ L 答 R L zf R 10 zf 10 0.096V 濃度が低い側 電位が高い 5 0.0568 0.1 4 9.6mV
ネルンストの式との相似性と違い 例 9-11 と例 9-3 との違いに注意しよう 例 9-11 平衡系 ΔG=0 例 9-3 非平衡系 ΔG=0
復習 例 9-3 理想溶液を仮定して 5 における次の電池の x と x o を計算せよ 正し 二重線は l の塩橋を示す 5 4 Zn ZnZnSO (10 M ) ZnZnSO (10 M ) Zn 4 答 反応は両側で同じである ただ Zn + の濃度が異なる 従って x o =0 4 左 Zn 右 全体 Zn Zn (10 Zn 4 (10 M ) (10 4 5 M ) e e Zn M ) Zn (10 5 M ) ( 酸化 ) ( 還元 ) x x o.303 nf log 10 10 10 5 4 M M 0.3038.3J mol 1 1 96487 mol 1 98 log 10 0.1 0.059 log 10 0.1 0.096V
例 9-3( 電池の系 ) 系は平衡にない Zn + が10-4 Mから10-5 Mへ移動するのに伴う自由エネルギー変化は G nfx F 0.096J / mol 二つの ZnSO 4 溶液は 塩橋で結ばれているので 同じ静電ポテンシャルをもつ 電位差 (9.6mV) は 二つの電極間のものである Zn + をある場所から他の場所へ移動させるために要する自由エネルギーを零にするためには 低い濃度側での溶液と電極を 9.6mV まで増加させなければならない これは電極間のポテンシャルを零にすることである 例 9-11( 膜の系 ) 系は平衡にある Zn + がある側から他の側へ移動する自由エネルギー変化は G 0 低い濃度でのより高い静電ポテンシャルエネルギーが低い濃度の溶液中でのより大きいモルエントロピーに打ち消されてしまう
能動輸送は仕事を必要とする 自発的な輸送 : 受動輸送仕事を必要とする輸送 : 能動輸送 イオンが電気化学ポテンシャルの低い側から高い側へ運ばれるとき 能動輸送 仕事を必要とする G x ( n) x ( out) 0 x が外部から内部へ能動輸送
例 9-1 5 で 神経細胞内のカリウムイオン濃度を測定すると 細胞外の濃度より 0 倍高い 逆に ナトリウムイオン濃度は細胞内より細胞外のほうが 0 倍高い 細胞膜を横切る電位差は細胞外に比べて細胞内が負になり その値は 77mV である 能動的に移動する成分を同定せよ ( 理想溶液と仮定して ) 細胞外 ( out) ( n) 77mV + 1:0 細胞内 能動輸送の成分? + 0:1
答 膜を横切る +, + の電気化学ポテンシャルの差を計算する 0 zf zf ( out) ( ) ( ) out n z F ( out) ( n) ( n) + について ( out) ( n) (1/ 0) 1 F 0.077 8.314 98 0 96487 0.077 7.4 7.4 0 + について + が平衡にある ( out) ( n) 0 /1 7.4 7.4 14.8kJ / 1 F 0.077 8.314 98 0 96487 0.077 mol + が非平衡にある
例 9-1( 続き ) 細胞の外側の + の電気化学ポテンシャルは内側より 14.8kJ/mol 高く 能動輸送は 細胞の外へ + を組み上げることになる + のくみ上げは 細胞の共通した特徴である + + ポンプによって保持される + の非平衡分布 + の細胞外の Pumpng は自由エネルギーが必要とする + 1:0 ( out) ( n) 77mV ( out) 0:1 ( out) ( n) 14.8kJ / mol 細胞内 ( n) 0 + 能動輸送 細胞外
例 9-13 例 9-1 で示した + をくみあげるのに必要な最小の自由エネルギーを計算せよ 答 + をくみあげるのに消費される最小の仕事は可逆過程で得られ G ( out) ( n) で表される G 14.8kJ / mol 3.5kcal / mol TP 加水分解するときの標準自由エネルギ -(-30kJ/mol) の半分より小さい TP あたり二つの + をくみあげることが熱力学的に可能
細胞外 ( out) ( n) 77mV 細胞内 + 1:0 平衡にある + 1:0 + ポンプによる能動輸送エネルギー源は TP + 負のポテンシャルへ受動輸送 ( 漏れ ) ( out) ( out) ( n) 14.8kJ ( n) 0 / mol
第 10 回目宿題 1) 細胞膜を横切る電位差は 外側に対して内側で負の 40mV をもつ 平衡分布を仮定して Mg + イオンについて濃度比 Mg (out)/ Mg (n) を計算せよ ただし T=37 である ) 内側と外側の濃度が等しいとして 前問の細胞の細胞外へ + を汲み上げるに要する 1 モルあたりの自由エネルギーを計算せよ ( 教科書 33 ページ問題 10 問題 11)
第 11 回目 008 年 6 月 30 日 ( 月 ) 更新
ドナー平衡は電解質の特徴である 細胞小さいイオン ( +, +, a + など ) 巨大イオン ( 蛋白質 DN など ) が存在 細胞膜が半透膜の役割 ( 溶媒 小さいイオンを透過させるが 巨大イオンを透過させない ) 小さいイオンの濃度分布が非対称 膜電位を生じる ( ドナー効果 ) 電解質ゲルゲルの網目に固定されている電荷が動けない その対イオンが動けるため ゲルの外に行こうとする 電気的に中性を保たなければならないため 対イオンはゲル中にとじ込まれている その結果 ゲルが膨潤する ゲルと外部溶液の間に電位差を生じる
半透膜によって 隔離されるセルを考える 巨大イオンの溶液 (Ex: 細胞の内側 ) l Z P, H O H l 半透膜 (Ex: 細胞膜 ) 透析物 (Ex: 細胞の外側 ) O P, 平衡状態では透過できる分子 イオンは両側での電気化学ポテンシャルが等しい H l O H l O
ドナー平衡 は膜両側の溶質分子のモル濃度差 を求めるを使って 浸透圧 ( の差 ) を求める並びにイオン濃度分布ドナー電位により平衡条件 ),,,, 1) P P O H O H l l l l (9 7 浸透圧とナトリウムポンプ )
透析物側の 種イオンの電気化学ポテンシャル o a z F P V 巨大イオン側の 種イオンの電気化学ポテンシャル o a z F PV 平衡状態 o a z F PV o a z F P V よって z F a a V z F P P 浸透圧差
ドナー電位 z F a a V z F ( ドナー電位 ) は ドナー電位 またはドナーポテンシャルという 仮定 1) 活量が濃度で置き換えられる ) V が小さい z F z F P P ( ドナー電位が moble on の濃度比で決まる )
次に ドナー電位と膜を通過するイオンの濃度比を解く z F + と l - にそれぞれ上式を適用 zf zl F l l F z 1, z 1 l F l l l l (1) 膜の両側 低分子イオンの濃度積が等しい l l
膜の両側 それぞれ電気的中性のため z z b From From z z ( ) l l z 1, z 1 (3) z z l b l 0 ( z ) b l b は高分子が持っている z 価イオンのモル濃度である ( 高分子の繰り返し単位のモル濃度 ) 浸透圧の式の とは異なる定義に気をつけよう 区別するために 前者が b と標記した ( 教科書の記号と異なる ) Put (),(3) nto (1) l 0 l () (3) Y Y Y Y z b 1 z zb / 次方程式を得る b Y 1 1 zb となる 0 1のため zb 高分子イオンのモル濃度 z b が透析液のイオン濃度 より遥かに薄いときに
ドナー平衡の物理的意味 負に帯電している高分子 (z<0) を例にしよう 1 zb Y 1 のため Y / 1 / Y 1 1 l これは負の高分子イオンが存在している場合 + の濃度 ( ) が透析物の濃度 ( ) より大きく l - の濃度 ( l ) が透析物の濃度 ( ) より小さいことを意味している z F Y 0 負の高分子イオンをもつ場合 細胞は周りの透析物より電位が低い 神経細胞 ( 負の核酸をもつ ) のケースと対応 細胞膜の負の電位は部分的にはドナーポテンシャルによる
例 9-14 5 で1mg/mlの濃度をもつDN 溶液をpH7, 0.001M lで透析平衡する 今 分子量 340g/molのヌクレオチドあたり一つ の負電荷があるとして Yとを計算せよ 答 負の電荷をもつ巨大イオンの電荷の濃度 z b は Y 3 z b 11g / l 340g / mol.9410 M z l 10 b / 3 M.94 であるので および.94 / 1 (.94 / ) 3 3.510 M および Y 1 z F 3.0810 Y 4 M 0.0303 3.5となる となる 30.3mVとなる 巨大イオン溶液は透析物に対して負となる Y Y zb 1 / zb
9 7 浸透圧とナトリウムポンプ P P (3) () (3) () / Y l ) ( () () 1 Y Y l l )] ( () [ 1 Y Y ドナー効果による浸透圧高分子イオン低分子イオン細胞は ナトリウムポンプにかなりの代謝エネルギーを消費する なぜナトリウムポンプが必要なのか? 浸透圧の観点で理解する
例 9-15 DN 分子は 10 7 の分子量を持つと仮定して 例題 9-14 での浸透圧を計算せよ 答 高分子 (DN) の本数を表す濃度は Y () 1g l 1 3.5, 10 () ( Y Y /10 3 1 7 g mol 1 10 Mを用いると ) 10 7 10 1.5610 3 7 3 M mol l 1 (3.5 1/ 3.5 10-7 M の高分子濃度は Δ に対する寄与を無視できる 即ち 浸透圧はドナー効果に基づいて生じることである 従って 次のようになる 0.0381atm 0.0806l atm 1 mol 1 98 1.5610 3 ) mol l 1
1atm 1.013510 0.0381atm 5 Pa 0.03811.0135 10 5 3.8610 3 Pa 細胞の中から外へ高い浸透圧がかかっている したがって 水が受動的に ( 自発的に ) 細胞内へ流れ込む この浸透圧を下げようとするために 細胞は ナトリウムポンプにかなりの代謝エネルギーを消費して イオンを細胞の外へ運び出すと考えられている 細胞の新陳代謝が止まって イオンポンプが阻害されるときに 赤血球が溶解 (Lyss) する速度が大きく増加する現象が観察されている これは 細胞内のイオン濃度が上昇することで 細胞内の浸透圧が増加したと考えられている 高分子電解質を含む溶液の浸透圧はほとんどドナー効果によるため 浸透圧で高分子電解質の分子量を測定するのは非常に難しい
ドナー平衡のまとめ 負に荷電する巨大イオンの溶液 (Ex: 細胞の内側 ) H O l Z P, 透析物 (Ex: 細胞の外側 ) H l O P, 平衡状態で l より P P l 半透膜 (Ex: 細胞膜 )
細胞外 ( n) ( out) 0 細胞内 P( n) P( out) 0 + 1:0 負のポテンシャルへ受動輸送 負に帯電する高分子 (DN など ) + 1:0 + ポンプによる能動輸送エネルギー源は TP + 負のポテンシャルへ受動輸送 ( 漏れ ) ( out) ( n) ( out) ( n)
( 教科書 33 ページ問題 1 13 14) 第 11 回目宿題 (7 月 7 日月曜日まで提出 ) 1) 100mg/ml の濃度をもつ trn を 0.1M l で平衡透析する ドナー電位と濃度比 ( 溶液 )/ ( 透析物 ) を計算せよ ただし 分子量 M=340 のヌクレオチドあたり 1 電子とする また T=37 である ) trn による寄与と非対称なイオン分布による寄与を別々に計算して 前問の溶液の浸透圧を計算せよ ただし trn の分子量は 5000 とする また この溶液の浸透圧に相当する水柱の高さを求めよ 3) 前問の結果と16.6cm 3 /molの部分モル体積を用いて + イ オンについて / zf a / a に対する式 a V z F a z F から導かれる V z F の比を計算せよ /