21033 マイクロスケール実験器具の開発 要旨実験費用の削減 身近なものでの器具の代用 環境への配慮 安全性の確保 主にこの 4つを目的とし基礎実験を基に改善点を探し より良いマイクロスケール実験器具を考えた 塩素発生実験 ハロゲンの反応性の実験 電気分解などにおいて研究を行った その結果開発した器具でも元の実験と同じ結果を得ることができ マイクロスケール化に成功した 1. 動機 私たちは以前から 学校の授業の際 一度の実験で使用する薬品の量が多く廃棄物を大量に出してしまっている事が気になっていた そんな時に学校の先生から実験の小規模化を図る研究をしてみてはどうかという提案を頂き この研究を始めることにした 始めにインターネットで実験のマイクロスケール化について調べてみると マイクロスケール実験には実験廃棄物の少量化だけでなく 試薬と経費の節減 試薬が少量で危険が少なく 事故防止に役立つ 実験時間の短縮 個人実験が可能で理科実験室でなく 通常の教室でも実施が可能などさまざまなメリットがあるという事が分かった マイクロスケール化が進めば実験がより良いものになると思い 私たちは できる限り身近にあるもので実験器具の代用をする ということも目的のひとつに加え 研究を進めることにした 2. 目的 実験やそれに用いる器具を簡素化 小規模化し 実験費用の削減 身近なものでの器具の代用 環境 への配慮 安全性の確保を目指す 3. 研究の流れ 1 学校の通常授業で行われている基礎実験を実際に行い 改善点を探す 2 改善点をもとにマイクロスケール化に向けたアイディアを考える 3 実験の計画を立て 実際に考えた実験を行ってみる 4 安全性や実験結果の正確さを確認し 新たな改善点や課題を探す 5 課題を克服するためのアイディアを考える 6 3 ~ 5 を繰り返す 33 1
4. 使用した器具 材料 今回は特に塩素発生実験とハロゲンの反応性の実験と電気分解に着目して研究を行った 理由は 塩素発生実験のように危険の伴う実験をもマイクロスケール化できたら 今までできなかったクラスのグループや班単位での実験も可能になり 授業の幅が広がると考えたからである ハロゲンの反応性の実験と電気分解を選んだ理由は 色や沈殿や気泡の発生を観察する実験のためマイクロスケール化し易かったからである 塩素発生実験 ペットボトル 醤油さし ( スポイト ) 綿棒 練り消しゴム ストロー クリップ 花びら カッター セロハンテープ 塩酸 (0.6mol/L) チオ硫酸ナトリウム ( 粒状 ) 銅粉 ハロゲンの反応性の実験 ディスポサブルセル ( 簡易試験管 ) ビーカー 水 ヨウ化カリウム水溶液 (0.1mol/L) 臭化カリウム水 溶液 (0.1mol/L) 塩素水 臭素水 電気分解 ディスポサブルセル ( 簡易試験管 ) シャープペンシルの芯 電池 硫酸銅水溶液 (0.1mol/L) ワニ口 クリップ セル仮スタンド 発泡スチロール クリップ 木製スタンド 木片 針金 油性スプレー ( 白 ) 5. 研究 実験の手順 塩素発生実験塩素発生実験 POINT POINT 使用する溶液の量を減らすため 容器自体を小さいものに変える 身近にあるもので( つまり低価格で ) 塩素発生の実験と同じ効果を得る 容器を変える事で結果が観察しにくくならないこと 塩素を扱う実験であるため安全性にも問題がないこと (1) 安全のため 塩素吸収剤を作る 醤油やソースなどの入っている容器の先端に十分に空気が出入りできるように小さな穴を開ける 容器に切り込みを入れ 綿と砕いたチオ硫酸ナトリウムを入れる セロテープなどで切り込みをふさぎ チオ硫酸ナトリウムが出てこないようにする 33-2
(2) 次の図のように装置を組み立てる 塩素吸収剤 ( チオ硫酸ナトリウム ) 塩酸 練り消しゴム 綿棒 ペットボトル ストロー 花びら さらし粉 (3) 容器 ( スポイト ) の塩酸を注入し 発生する気体の色 臭い 銅粉との反応 花びらの変化を観察す る 一般的な実験による結果 小規模化 簡素化した実験による結果 [ ハロゲンの反応性の実験の実験 ] POINT POINT 使用する溶液の量を減らすため 容器自体を小さいものに変える 容器を小さくする事で結果が観察しにくくならないこと (1)6 個の容器に 水 臭化カリウム水溶液 (0.1mol/L) ヨウ化カリウム水溶液 (0.1mol/L) をそれぞれ 1ml ずつ 2 本ずつ取る (2) 各水溶液の 1 本ずつに塩素水を約 0.33ml ずつ加えて 色の変化を観察する 水と比較する (3) 各水溶液の 1 本ずつに臭素水を約 0.33ml ずつ加えて 色の変化を観察する 水と比較する 33-3
一般的な実験による結果 小規模化した実験による結果 ( 今回 先生のアドバイスを受け 容器 ( セル ) を立てるスタンドも製作した 身近なもので作ろうと いう事で発泡スチロールとクリップを用いたものと木製で長持ちするタイプのスタンドの二つを製作 した ) この実験の他にも 色の変化や沈殿の様子を観察する実験に成功した 銅 (Ⅱ) イオンと硫化水素水 (H2S) との反応 黒色沈殿 CuS の様子 銅 (Ⅱ) イオンとアンモニア水 (NH3) との反応 青白色沈殿 Cu(OH)2 深青色溶液 [Cu(NH3)4] 2+ の様子 鉛 (Ⅱ) イオンと硫化水素水 (H2S) との反応 黒色沈殿 PbS の様子 33-4
[ 電気分解 ] POINT POINT 使用する溶液の量を減らすため 容器自体を小さいものに変える 容器を小さくする事で結果が観察しにくくならないこと (1) シャープペンシルの芯 (2 本 ) を電池の正極 負極に繋いだワニ口クリップの先にそれぞれ挟む (2) セルに硫酸銅水溶液 (0.1mol/L) を入れ シャープペンシルの芯を漬ける 一般的な実験による結果 小規模化 簡素化した実験による結果 今回の実験の使用溶液量の比較 6. 結果 [ 塩素発生実験 ] 三角フラスコからペットボトルに変えても結果は十分に観察できた またペットボトルに蓋をする事で発生した塩素を安全に管理できると分かった 小規模化により実験に使用する溶液の量を減らす事ができた 33-5
[ ハロゲンの反応性の実験 ] 小規模化しても色の変化や沈殿の様子を確認するのに支障は無く 試薬の削減に成功した また 容器が小さいために溶液の入った容器を水平に倒しても表面張力が働いて試薬がこぼれないというメリットを発見した [ 電気分解 ] 小規模化しても銅の抽出と気体の発生が観察でき 試薬の削減に成功した セルが小さいため気泡 を観察し易かった 7. 考察 課題 マイクロスケール化に向け主に三つの実験を行い 特に塩素発生実験において安全かつ正確な実験結果を得る事に成功した また セルを立てるスタンドを製作した事で実験及び観察が行い易くなった セルを使えば今後様々な実験をマイクロスケール化できるのではないだろうかと考えられる しかし 課題もある 塩素発生実験は簡素化した場合における安全性を正確に数値化できていないため 塩素検知管を用いて確かめたい 電気分解では銅の抽出と気体の発生が観察できるが その気体が水素であるという確認をすることが出来ていない それには発生する水素の量自体が少ないということもあるが 何とかして気体が水素であるいう証明が出来るように考えていきたい ダニエル電池の実験の小規模化はまだ研究途中のため これからも実験や改良を積み重ねていって研究を進めたいと考えている 私たちの研究の マイクロスケール化 は今回の 塩素発生実験 ハロゲンの反応性の実験 電気分解 だけでなく 様々な実験において応用が利くと考えられる よってこれからも様々な実験において研究を進めて行きたい 8. 参考文献 引用文献 授業プリント フォトサイエンス化学図録改訂版数研出版 化学 Ⅰ Ⅱ の実験岐阜県高等学校理化教育委員会 33-6